日本の「おもてなし」のウソ 本当の気遣いを見せる集客とは?

こんにちは、トイアンナです。
2020年東京オリンピック関連のニュースも増える昨今、外国人観光客も増加しています。2013年に1036万人だった訪日外国人観光客が、なんと2016年には2404万人。わずか3年で倍以上の外国人観光客が日本へ押し寄せているのです。

外国人観光客が増えて影響を受けるのはホテルや遊園地など観光に直結している産業だけではありません。エステサロンや飲食店など「旅行中に使いたくなる関連施設」から、いざというときの病院や歯科医院も多言語の対応を迫られるでしょう。さらには観光をきっかけにビジネスチャンスを見出した外国人パートナーとの取引もありえます。ですから誰にとっても外国人観光客増加は他人事ではないのです。

そこで今回はそのチャンスを逃さない方法を再考してみましょう。

「お・も・て・な・し」は本当に意味があるのか?

ここで少しさかのぼって、オリンピック招致が決まった瞬間を思い出してください。当時の映像で私たちが必ず思い出すのは「お・も・て・な・し」と滝川クリステルさんがスピーチする場面でしょう。

確かに細やかな気を遣ってくださる日本のサービスは素晴らしい……と語る滝川クリステルさんのスピーチ。しかし現実は相反します。融通がきかない、杓子定規だと外国人から不評も多いのが日本のサービスなのです。

たとえば京都では市内観光バスがすし詰めとなってしまい急遽値上げに踏み切るなど観光客増に追いつけない受け入れ態勢が課題となっています。

以前の連載でも申し上げましたが、日本には富裕層向けサービスが不足しています。そのせいで富裕層が訪問したくても高級ホテルの数が「ベトナム並」しかないからと、訪問自体が白紙になるケースも報告されています。

また、いまだに英語への苦手意識からお客様を受け入れない方も多いのではないでしょうか。簡単な相談をしているのに「ノーイングリッシュ、ノーイングリッシュ!」とかわされてしまうことで、外国人も敬遠してしまうことが少なくありません。

「嫌なら来るな」と突っぱねるのは簡単ですが、外国人観光客を誘致したのは外ならぬ日本です。宣伝しておきながらいざ訪れたら冷たい対応をされる国との悪評が広まってしまえば「日本嫌い」の外国人が増えるリスクもはらんでいます。

実はこの兆候、すでにデータでも表れています。先述のとおり日本を訪れる観光客は増えたにもかかわらず、訪日客が使った金額は6.7%減となっているのです。

その背景には東京、京都など有名都市へ観光客が集中してしまい、すし詰め状態で観光客の満足度も下がっているようすがうかがえます。せっかくお金を使いに観光客が押し寄せているのに、魅力的な使い道を私たちが提案できていないのです。

地方への誘致は、バス1本でできる

さて、この記事をご覧になっている方には地方にお住まいの方も多いでしょう。そして日本の良いところは地方ごとに特色が強い点でもあります。世界のどこを見渡しても、スキーとビーチリゾートが両立しうる国はさほどありません。北海道でスキーを楽しんでから沖縄で海遊びなど、四季の違いを数日間で味わえるのは大きな魅力です。

さらに地方ごとに文化、言語、食べ物が違うのも魅力的です。都内から少し足を延ばすだけでも長野や仙台、鎌倉、日光など色とりどりの文化を体験できる環境が整っています。

しかし日本に足りないのは「簡単な交通手段」です。

都心へ上京された方なら誰しも、新宿や渋谷駅の複雑さに舌を巻いたことがあるでしょう。
出口の数は無限、複雑な矢印の案内図にくらくらします。東京住まいが10年弱となる私も、いまだに新宿からバスに乗らねばならないときはハラハラします。

そもそも電車の出口にたどりつけるのか、バスターミナルにたどり着いたところで難十か所もある中から正しいバス停へたどり着けるか。日本語でもわかりづらい表示のバス停一覧。英語表記も容易に見つかりません。

しかしもし、わかりやすい駅から近隣都市へ出られるバスが1本出ていたらいかがでしょうか。そしてバスに乗るだけで、その土地の良さを味わえるツアーが外国人向けに存在していたら?

地域の「熱愛なファンになる」ターゲットを考えよう

すでに熱海や箱根などの有名観光地はこの手段を取っていますが、まだまだ外国人向けの簡単なツアーは発掘されていません。

また「グルメ」「歴史」といったおおざっぱなツアーではなく廃墟巡りやアニメの聖地巡礼、伝統工芸の1日体験など特定の地域だからこそつかめるニーズは眠ったままです。多くの観光客は見向きもしないけれど、特定の層にだけ強く刺さる観光スポットさえあれば地方にとってはうれしい収入源となります。

おおざっぱに「外国人向け」を考えるよりも「イスラム教徒が感動するハラール(教徒に許された食事)を精進料理で提供できる」「地域に縁切り寺が多く、失恋した人ならきっとめぐりたくなる」といった、「熱烈なファンを獲得できそうな長所」を地域のみなさまと一緒に考えてみてください。


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com