差別化マスターへの道
美人へ「美人だね」と褒めても、女性は落ちない――こんな恋愛の黄金ルールをご存知でしょうか。
たとえば職場にモデル級も美女がいたとします。あまりの美しさに周りの男性も「今日もかわいいね」「本当に美人だね」「モテてしょうがないでしょう」と飲み会などで誉めそやします。もしあなたがこの美女を落としたいなら、どうすべきでしょうか?
こんなとき、あなたが群がっている男性の3倍「今日もきれいだね」と褒めたところで、女性の心はピクリとも動きません。いつも褒められている言葉を聞かされても「またか」と思いつつ、笑顔で「ありがとうございます」と返すことしかできないからです。
女性を落としたいなら「差別化」褒めしよう
ですが、あなたがこんな言葉をかければチャンスは上がります。「○○さんって、本当に仕事を覚えるのが早くていいね」「応用力があるから、とっさのトラブルでも○○さんがいてくれると助かるよ」「手が器用なんだね。仕事も丁寧なのは、そのおかげかな?」
いつも美人、美人と誉めそやされている女性ほど「どうせ皆、私の顔しか気にしてないんだ……。中身は誰も見てくれていないんだ」とコンプレックスを抱くことがあります。そんな女性へ仕事の優秀さや丁寧さを伝えると「この人は私の中身を見てくれた!」と差別化されるのです。
モテてからでも、真実の恋愛はできる
さて、あなたは競合分析をした上で美人に向かって「美人だねと3倍褒める」ような差別化をしてはいないでしょうか? 特に自社製品が優れている企業ほど、他社より機能で秀でていることを売りたくなる傾向があります。
「つい似たサービスで優位に立とうとする」のは、頑張れば実際に優位にたてる企業だからこそ行えるワザだからです。
しかし、実際に自社サービスで優れていることを売りにするよりも、「全く違う強み」をアピールした方が皮肉なことに売れてしまうことがあります。そういった場面で「ウチの強みをわかってない!」と憤懣やるかたない経営者さんを多く拝見しましたが、「社長が売りたい本当の強みは、まず製品がバカ売れしてから伝えてはいかがでしょう」と私は考えています。
売れなければ誰も「本当の強み」を知らないままですが、1,000人に売れれば、10人は間違いなく「本当の強み」に気付いてくれるからです。
まず1,000人にモテよう
男女関係にたとえるなら、年収5,000万円ある方がお金持ちだとアピールすれば、間違いなくモテるでしょう。その上であなたが実は持っている良さ――たとえば音楽に詳しい、スポーツ観戦をする姿が生き生きしていてカッコいい、家庭的で子煩悩……といったものは、モテてから真価に気付ける女性へだけ伝えればいいのです。
1,000人の女性にモテればそのうち10人くらいは「年収なんてなくてもいいの、でもあなたの性格が好き」というファンが生まれるもの。そうして始めて、気に入った女性と付き合うことができます。「年収目当ての女ばかり寄ってくるから、俺は貧乏なフリをするぞ!」とわざわざ強みを隠しても、相思相愛になることは難しいはず。売りたいものより、売れるものを最初は見せびらかすべきなのです。
ここまでをご覧いただければ、下記の例が企業の「売りたいもの」を優先しており「売れるもの」を見せる差別化になっていないと伝わるかと思います。
・ エステの痩身コースを調べたら、他社は10,000円で提供していた! ウチは8,000円で提供しよう!
・ 同じ街にあるあの本屋は、マンガが200種類揃ってるらしい。よし、競合に負けないためにウチはマンガを250種類揃えるぞ!
・ あのマッサージ屋はヘッドスパを売りにしているらしいから、うちは特殊技術を備えたヘッドスパの店員を採用しよう!
差別化とは、競合を徹底的に調べた上で「ライバルと全く違う方向性」で強みを発揮することを言います。競合の強みを真似てしまうとお客様から差が見えなくなってしまうのです。
正しい差別化は「一目で違いがわかる」もの
それでは、均質化ではない正しい差別化は、どうすればできるでしょうか? 簡単にまとめると「一目で違いがわかる」ものを作ればいいのです。たとえば……
・エステの痩身コースが他社は売れてるから、ウチはシワ取りを売りにしよう
・あの本屋はマンガが200種類揃ってるらしいから、ウチは文庫を充実させよう
・プラスチックの原料を1000円/kgで売っている業者があるから、ウチは加工製品を売りにしよう
このように「一目で違う」と伝わる内容であれば差別化に繋がり、1,000人にモテるサービスを提供できます。
最後に宿題として差別化の事例を記しますので、本当の差別化に当たるかを考えてみてください。
1. あの居酒屋は日本酒が揃ってるって人気だし、ウチも5種類くらい入荷しよう
2. オーダーメイドの眼鏡屋が人気だから、ウチは30分で眼鏡をお渡しできるサービスで売ろう
3. 同僚のショップ店員は着合わせの提案が上手だから、私は在庫管理のプロになろう
4. 隣町の学習塾はイギリス人講師を雇ったらしいから、うちはアメリカ人を採用しよう
正解は、スクロールした下にあります。
正解:1.差別化できていない 2.差別化できている 3.差別化できている 4.差別化できていない
トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com