投稿

マーケティング深化論:目次

◆ 目次 ◆
第1回:マーケティングはビジネスの「人間ドック」

第2回:「マーケティング」の基礎知識:モテる人はお断り

第3回:美容室をヒットさせるにはイケメンを雇え!?

第4回:売上に繋がるエクイティの育て方

第5回:「差別化」の秘密

第6回:ビジネスにも多い「差別化ごっこ」

第7回:競合分析とは

第8回:売上を6割上げた奇跡の旅館に学ぶ「競合」の考え方

第9回:差別化マスターへの道

第10回:ペルソナ」で分かるマーケティング

第11回:優秀な経営者だけが知っている「売れない」につける処方箋

第12回:テストプランの重要性:彼女にあげたいプレゼントから学ぶ

第13回:全員が活躍したくなる会社とは

第14回:マーケティングで判る恋愛論

第15回:チェーンに学ぶビジネスの勝ち方:1億杯のコーヒーを1週間で売る

第16回:ビール会社の差別化:飽和市場で成長するための挑戦

第17回:成功する美容室の秘密は「ホワイトスペース」

第18回:マーケティングでV字回復を狙うイギリス紅茶市場 集客を取り戻す差別化の鍵は?

第19回:マーケティングはピンチを操る 英国のEU離脱を活かした集客ビジネス

第20回:マーケティングの集客を成功させる秘訣は「季節感」

第21回:集客を考えるときはマーケティングと「善悪」を切り離そう

第22回:「雨が多いイギリスで傘を売るな」マーケティングで欠かせないヒアリングの技術

第23回:安易な無料配布で700人のリストラ!?マーケティングの失敗例に学ぶ

マーケティングで判る恋愛論 :彼女が欲しいなら…

こんにちは、トイアンナです。
最近ナンパ教室というものが流行っているようで、受講者のお話を伺うこともあります。
その名の通り街中でナンパするテクニックを教えてくれる講座なのですが、今まで彼女がいたことのないオクテ男子がこぞって参加しているようです。オクテ男子にとっては、ナンパ師が「女性を口説くプロ」に見えるので、説き方を教えてほしくなるのでしょう。
彼らはいつか女性を口説けるようになって、彼女を作るぞと頑張っています。

ところで、あなたの友達が「彼女が欲しいけど、どうしたらいいか分からないから」ナンパ教室へ参加していたらどう思いますか?
教室では1日100人に声をかけて連絡先をゲットする方法や、偶然を装って出会いを演出するテクニックを教えてもらえます。
もしあなたが賢明なら、その友達に「もっと上手い彼女の作り方があるんじゃないか」と再考をうながすと信じています(笑)

ではなぜナンパを頑張っても、彼女を作るのは難しいのでしょうか? 実はそこに、マーケティング論がかかわってきます。

目的を意識すれば、戦略ミスがわかる

ナンパ教室に通う友達の目的が「彼女を作る」だとすればそのためにするべきことも当然、彼女作りに効果がなくては意味がありません。
しかしナンパの目的は「不特定多数の女性をものにすること」なので、2者で目的がずれてしまっています。
おそらくナンパ教室へ通えばゆくゆくは100人の女性と関係を持てるでしょう。しかし心の通い合う付き合いをして、結婚を考えられる女性に出会って……という目的とは合致していませんから、下手すると「どうせナンパに引っかかるような女しかこの世にはいないんだ」と女性不信になってしまうリスクすらあります。

目的が「彼女を作ること」なら、ナンパ教室よりも女性が多くいる習い事を始めたり、友達にお願いして共通の知人を紹介してもらったりしたほうが信頼のおける女性と出会えるはず。目的に適った戦略を立てれば、リスクも少なくなります。

そのマーケティング、目的に適っていますか?

今回はナンパ教室という変わったたとえから始めましたが、目的の考え方はビジネスの現場でも同じです。私はこれまでに様々な企業マーケティング支援をしてまいりましたが、強く感じているのは目的からズレているものへ予算を投入しても浪費になってしまうということ。

マーケティングでは少ない投資で爆発的に売上を伸ばす火薬を作れることもあれば、どんなに注いでも一向に返ってこない浪費になることもあります。その大きな差は「目的」をきちんと設定できているかどうかです。

たとえば「レストランのリピーターを増やしたい」という目的なのに、お友達を連れてきてくれたらディナー10%割引キャンペーンをしていたら、増えるのは新規顧客ばかり。目的に合わない戦略を選んでしまったがために、利益率が下がるだけとなります。

今なにが経営で問題になっているのかをまず洗い出し、その問題を解決する目的をまず設定しましょう。そして目的がかなう戦略は何かを考えましょう。問題を解決できない目的を設定してしまうと、ウェブマーケティング、マーケティング3.0といった新しそうな横文字に踊らされてお金をドブへ捨てることになります。

あなたの仕事を伸ばすうえで、一番の課題は何でしょうか。その課題を解決する「目的」はどういったものでしょうか? 思いついた戦略は、目的を達成できそうですか?

この考え方を日常的に持っていられるなら、もう新しい言葉に踊らされずに済むはずです。少ない予算で最大の成果を出すマーケターとして、一緒に歩き始めましょう。

←「マーケティング深化論」目次

 

 


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

新著に『恋愛障害 どうして「普通」に愛されないのか?』(光文社新書)

小さな会社が勝つためのマーケティング主導型もの作り

アメリカでマーケティングが進んできた理由は、人種が多種多様で様々な価値観を持つ人が集まる国であり、「阿吽の呼吸」や、そこはかとないイメージ戦略では、商品やサービスの内容が伝わらなかったためでしょう。

さらには、国土が広いので、ダイレクトマーケティングである通販が非常に早くから進んでいる点も、マーケティングが発展した大きな理由でもあります。

日本では、マーケティングと言えば、さすがに市場調査や、宣伝のことを指す人は少なくなりましたが、それでもまだまだ、中小企業では馴染みの薄い分野ではあります。オンラインで、情報弱者を釣り上げる手法を「マーケティング」と称して来た一部の人が居た事実も、そのイメージを損ねる原因になりました。

ですので、私は、人によって捉え方の幅がある「マーケティング」という語句を、なるべく使わないように執筆することにしていますが、実際は、マーケティングと経営は切っても切り離せません。ちなみに、英語ではSales=販売なので、日本語の「営業」にあたる言葉がありません。誤解を承知でかなり大雑把にくくると、本来の御用聞きの意味での「営業」は、そのまま英語的なマーケティングと言えるのではないでしょうか。ですので、私は、マーケティングと言いたいところを、ライティングの際に「営業戦略」などと書き換えることもあります。

『限界はあなたの頭の中にしかない』執筆の際に、ジェイ・エイブラハムに「ジェイにとってのマーケティングとは何か、定義してほしい」と聞いた際、しばらく考えさせてほしいと数日経ってから、

私にとってのマーケティングとは、顧客がより良い人生を歩むために導くこと。守り育てることに他ならない

との、非常に深遠な答えが返ってきました。この言葉は、単に「顧客を教育する」という辞書的な訳では誤解を招きます。彼のこの定義の前提となる、「ビジネスとは道である」という理念の上に立ち、理解を進めなければなりません。ジェイは、ビジネスという営みを通して、自らをより高みに磨き上げることという信念のもとに、マーケティングを定義しているからです。

ただ、誰しも自分のことはなかなか客観的に見えないものです。私自身も自らの戦略は、各方面のプロにアドバイスを受け、常に見直しをかけ続けています。ほんの小さな誤差が、1年後には取り返しのつかない「ズレ」になる場合もあるからです。目先の数十万円は確かに惜しいかもしれませんが、それをケチってビジネスがダメになることの方が、もっと怖いと思うからです。経営者は、従業員や取引先などチーム全員の人生を守る義務があります。

ところが、販売力や製品力があり、人脈と力技でそれなりの成功を勝ち取られて来た経営者の方々は、今はなんとか食べていけるだけに、戦略見直しを痛感している人は少ないものです。

ある地元の名士がおっしゃいました。
「もっと、とことん落ちるところまで落ちないと、気づかないんちゃうかな」と。

その言葉を裏付けるように、SONYから分離して以降赤字で、他社との統合構想が破綻に終わったVAIOは、IDCジャパン2015年国内パソコン出荷台数によると、他社が軒並み前年費マイナスになる中、前年比384.7%と躍進しました。国内シェアがわずか1.8%であるにも関わらず、です。

 

 

 

 

 

 

http://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20160218Apr.html

日経新聞の取材によると、VAIOは、

 薄型・軽量で高性能を売り物にした10万~20万円程度のノートパソコンが軸で、市場で売れ筋の数万円の機種は扱わない。

(7月26日)

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ26I6Z_W6A720C1TI1000/

と、マスマーケットを敢えて避け、技術者を営業に出向かせるなど、マーケティング主導のものづくりに戦略変更することで黒字転換。今期のさらなる増益を見込むとのことです。

つまり、経営陣こそが、マーケティングを深く理解する必要がありますし、「もの作りニッポン」にその知恵が日本式営業戦略に融合され、アレンジされていくことで、日本は、世界でまだまだ勝ち抜いていけると考えています。

具体的に小資本の企業が、ニッチ戦略を取り入れるための手順を、メンタークラブ8月号で音声教材にしました。

メンタークラブでは、全米5大ビジネスコーチのジェイ・エイブラハムを師として、その教えを学びつつ、日本人にわかりやすくアレンジしたマーケティング解説や、スタッフの経営者マインド育成に効果の上がる教材をオンラインでお届けしつつ、全国支部での勉強会を開催しています。

 

月5,800円から本格的なビジネスが学べるビジネスクラブなど
弊社提供講座の一覧はこちらから


島藤真澄 (ShimaFuji IEM代表)

フォーブス誌選出全米5大ビジネスコーチ,ジェイ・エイブラハムの東アジアディレクター(交渉代理人)。様々な案件のプロデュースや海外とのビジネスマネジメントを行う。

ジェイの『限界はあなたの頭の中にしかない』PHP研究所を企画・翻訳。

 

その他の島藤コラム:

日本で個人コンサルがエセ扱いされる理由

日清CM中止に思うこと?SNS時代の企業広告とマーケティング

 

テストプランの重要性をプレゼントから学ぶ

こんにちは、トイアンナです。
マーケティングの専門知識をわかりやすくお伝えする本連載、今回は「好きな子へあげるプレゼント、どうやって選んでいますか?」
という質問から始めさせていただきます。

彼女の好きなブランドから、それとも最近自分が気に入ったものから?
まずは、実際にあった失敗例をご覧ください。

キャバクラ嬢へ入れ込んだ男性の例
ある男性がキャバ嬢に本気の恋をしてしまいました。
この話をすると「もう21世紀になってしばらく経つのに、まだこんなことあるんですか?」
と女子大生なんかには呆れられてしまうのですが、惚れた腫れたはどうしようもない。

男性はそれまで勉強一筋のまじめが取り柄なサラリーマン。
趣味もなかったのでコツコツ貯めて、なんと30代前半で1,000万円をため込みました。
ところが取引先との付き合いで行ったはずのキャバクラで運命の恋に落ちてしまいます。

そこで彼はとんでもない冒険をします。
今までの貯金を全部切り崩し、なんと彼女へマンションを買ってあげたのです。
キャバクラでこのように有り金を全部注ぎ込んでしまう客は、かえって嬢に警戒されます。
有り金を使い果たして「パンク」してしまうと、ストーカーになってつきまとうケースも少なくないからです。

参照:キャバ嬢のちょっと怖い話
パンクした客がストーカー化。近所からの苦情で引っ越しするハメに…
http://npn.co.jp/article/detail/41090915/

そこでカレンさんも怖気づいたのか、彼との連絡をカット。
一緒に住むつもりだったマンションも受け取ってもらえず、今は彼ひとりで住んでいるそうです。

しかし、彼のことを笑う資格は少なくとも私にはありません。
恋愛でも貢ぐタイプだったから……というのもありますが、
仕事で「絶対にいける」と思った投資へ大金を放り込み、無駄にした古傷があるからです。

テストプランの重要性

「初めからそんな女選ぶなよ」と、キャバ嬢に貢いだ男性の話を聞いた私たちは思います。
でもそれをビジネスに置き換えて
「初めから失敗するような場所へ投資するなよ」と言い換えると、
そりゃ無理だと言いたくなりませんか?

恋愛でもビジネスでも、私たちは失敗をします。
時には周りから見さえすれば一目瞭然の間抜けな投資もします。
けれど、投資では失敗の傷を浅く済ませる方法があります。
小規模な投資で試すことです

キャバクラの男性に例えるなら、いきなりマンションを買うのではなく、
例えばバッグや財布など「ちょっとしたプレゼント」をしてもよかったでしょう。
そこで彼女がキャバクラを半年以内に辞めてくれそうな気配があるのか探れば、そんなことないと気づく日が来ます。

ビジネス、特にマーケティング領域では小さい額でまず試してみることを「テストプラン」と呼びます。
1,000万円の企画なら100万円以下で、100万円の企画なら10万円以下で。
懐があまり痛まない額で試し、失敗したときの傷を浅く済ませるのです。

負けないことで勝つマーケティングを

マーケティングの天才、ジェイ・エイブラハムは
「市場で何が起きているかテストしない、改善しないでは結果が得られるわけがない」
と言っています。

冒頭の彼もマンションを貢いでしまう前に
「バッグならどうか」「手料理ならどうか」
と様々な懐がそれほど痛まないテストプランを実施したら、もしかするとどれか1つが心に刺さって
「私、やっぱ仕事辞める。それで付き合いたい」
と言う可能性だってゼロではありません。

ここではさらに深く掘り下げて A/Bテストというテストプランをご紹介します。
まずこの世に出したい販売戦略を何個も考え、そのうち2つをA案とB案として世に低予算で出すのです。
その後はあたかもトーナメント戦のように、より良い売上を出したプランだけを生き残らせ、
もっともよい成果を出したプランだけに大きな投資をします。

たとえばあなたが個人で化粧品を販売しているなら
「日焼け防止に○○」と「焼けてからでも間に合う○○」の2パターンのチラシ配布を、
チラシを持って来店したら割引サービスをつけて試してみます。

もしより多く持ってこられたチラシが「焼けてからでも間に合う○○」だったら、
次の案「日焼け予防と美白を一緒にできる○○」と試し、そしてまた残ったものを別の案と試していくのです。

ここまで精密に比べていく必要があるの? と思われるかもしれませんが、
テストプランを重ねると最初の案とは大きな差が出ます。

実際にA/Bテストを繰り返して100万人に登録されたアプリ「ひまチャット」の事例がわかりやすいので、どうぞご覧ください。

参照:ABテストで「女の子クリエイティブ」の神話崩壊。
まったく出会えないチャットアプリ「ひまチャット」が教える、意外だったABテスト事例4選
http://appmarketinglabo.net/himachat/

マーケティングはあたかも山師のように「荒唐無稽なプランを練って、あてずっぽうに売り込む」と思われていることがあります。
しかし事実はその逆。
しつこいくらい低予算でテストプランを繰り返し、売れると思ったら投資する。
マーケティングは「負けないことで勝つ」考え方なのです。
あなたも必ずビジネスで勝つために、まずは負けない勝ち方を選んでみませんか?

←「マーケティング深化論」目次

 

 


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

「ペルソナ」で分かるマーケティング

こんにちは、トイアンナです。
今まで500名以上から人生相談をいただいておりますが、
その中でも「結婚したいんです」は断トツ多いです。
そして「結婚したいんです」とおっしゃられるたびに、
私が必ず質問していることがあります。

「どんな方と結婚したいんですか?」と。

具体的なイメージがあると婚活しやすい

質問に対して、たいていは「誠実な人」「優しい人」
「僕を好きでいてくれるんなら何だって……」という答えが返ってきます。
しかしそのフレーズだけでは1人の人間として結婚相手を想像するには至らないので、
もう少し具体的な言葉を入れてみましょう。

たとえば私の友人が創造した結婚相手のイメージは下記のとおりでした。

    1. – – – – – – –
  • 「普段は看護師として仕事を頑張る24歳の女性。
  • 仕事場ではキビキビ働くカッコイイ姉御肌。
  • トラブルもばしっと解決するけれど、プライベートでは家でのんびり過ごしたいタイプ。
  • 趣味は最近始めたパン作りで、よく作りすぎては近所へおすそ分けしている。
  • 彼女のお父さんは無口な人。彼女の進路へも口出ししてこなかったけど、大事な時は娘を守れる人。
  • 彼女の悩みは友達が女子ばかりなこと。
  • 姉御!と頼られるのが嬉しい反面、出会いがなくて悩んでる」
      – – – – – –

いくらなんでも妄想しすぎでしょう! と考えるかもしれませんが、
ここまで細かく設定があると具体的に結婚したい女性像が見えてきませんか?
婚活では理想の相手が出没しそうな場所を探すのも重要な戦略のひとつ。

「1人の人間」として頭に結婚相手を思い浮かべば、
おのずと出会いの場所も見えてくるはずです。

ペルソナマーケティングを知ろう

実はこのように「あたかも1人の人間がいるかのように、狙いたい相手を想像すること」は
マーケティングでもよく採用されており、専門用語で「ペルソナマーケティング」と呼びます。

ペルソナとはもともと演劇で使う「仮面」を意味する言葉。
あなたの狙いたい人が身にまとっている「仮面」を想像することで、
どうやって売り込むか戦略を立てるのです。

ここからは、実際にペルソナマーケティングを実施して大成功を収めている、
スープ専門店A社の事例を見てみましょう。

A社は関東圏の都心駅ナカを中心に発展したスープ専門店。
オープンからわずか10年で売上高42億円、店舗数52店舗を展開しています。
スープを売り出すうえでA社が徹底したのがペルソナマーケティングでした。

社内資料では実際に女性の名前を付けた「ペルソナ」を作成。
春日りさ(仮名)として人格をイメージしていました。
そのペルソナはこんなイメージです。

  • – – – – – –

  独身で経済的に余裕があるキャリアウーマン。

  郊外から都心へ通勤しており、駅ナカにあるカフェで休憩することが多い。

  社交的な性格でありながら、自分ひとりの時間も大切にしている。

  シンプルなインテリアを購入するのが好きで、

  装飾でゴテゴテしたものより機能重視。

  プールではクロールでいきなり泳ぎ始めるタイプ。

  • – – – – – –

スープ専門店のターゲティングなら「駅ナカをよく使う」は大切な情報ですが、
それ以外のインテリアを買う趣味や、泳ぎ方は一見商品と全く関係ありません。
しかしこういった情報が加わることで
「この内装って、春日りさっぽい」
「このテイストは春日りさじゃない」といったイメージを全員で持つことができます。

■ あなたの商品のペルソナは?

ではここから、あなたの商品やサービスで実際に「ペルソナ」を作る方法をお伝えしましょう。
一番簡単なのはすでに常連となっているお客様の顔を思い浮かべることです。
以下に例を挙げてみますので、あなたの事例でも考えるきっかけにしてみてください。

  • – – – – – –

  私のネイルサロンに来てくれるのは高橋麻里さん。

  33歳独身の派遣社員で、デスクワークからの冷え性と肩こりに悩んでる。

  仕事に疲れた瞬間にネイルを見ると癒される。

  選ぶインテリアはブラウン調のものが多いんだけど、

  たまにかわいいものが欲しくなってキャラクターグッズを買う。

  「まあ、しょうがないんだけどね」が口ぐせ。

  休みの日は10時まで朝寝坊するのが楽しみ。

  どっぷりスピリチュアルじゃないけど、カラーストーンとか置いてある。

  • – – – – – –

いかがでしょうか?
もし思いつかなくなったら「料理なら何を注文するか」
「スポーツをするなら何をしたがるか」
「旅行へ行くならどこにするか。それはなぜか」
といった妄想でターゲット像を広げてゆきましょう。

■ ペルソナが「狙いたい像」と違ったら

最後に、あなたが作るペルソナが「本当に売りたい人のイメージ」と異なった場合についてお伝えします。

ペルソナはいまあなたの商品やサービスを使っている人を明確にするだけで、理想像とは限りません。
もしこれから現在のペルソナとは別のタイプへ商品を売りたいのであれば、
まずは「理想のペルソナ」を作りましょう。
そして「理想のペルソナ」がどういった場所に現れるか、
あなたの商品にどういった良さを見出すかを考えてゆきましょう。

次回は「うちの商品を使うペルソナなんて、いないんだけど」
という悲しいご相談を解決いたします。

←「マーケティング深化論」目次

 

 


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

ビジネスにも多い「差別化ごっこ」:なぜ女性が髪を切っても気付かないのか? 

こんにちは、トイアンナです。
女性のささいな髪形の変化に気付くことができない。これは年齢問わず男性からよくご相談いただくものです。
前髪だけ1cm切った、髪色を少しだけ明るくした……そんな違いに毎回気付くことができる男性がいるならばさぞモテることでしょう。

とはいえ男性も学ぶもの。友人男性はある朝、女性スタッフが出勤してから、得意げにフロアを歩いているのが目に留まりました。こういうときは髪型が変化したときだ、と察した彼。「髪、切った?」と質問したところ「いいえ、髪は何も……変えたのはネイルです!」とたしなめられてしまったそうです。

ネイル、タイツの色、スカーフに化粧……いったいどうやってこんな違いに気付けと? と呪いたくなる、些細な変化を見抜くのは難しいものです。ですがそんな男性も趣味の領域となれば事態は一変。「この時計は盤面が全て手塗りで……」「革靴はパティーヌの最上級品で……」「手帳には結構こだわってて、こいつは各ページに糸綴じ製法が……」うっとりとした表情で語る、こんな男性をご覧になったことはありませんか?
男性だって、自分の好きな分野になればプロ顔負けの微細な違いに気付くことができるのです。

こんな風に、私たちは自分が熱中している部分なら細かな変化を察知することができます。しかしその一方で深い興味を持たない分野で起きた変化に対しては鈍感なもの
ここでビジネスに立ち返って考えていただきたいのが「あなたの製品・サービス」です。

あなたの製品に1番興味を持つのは「あなた」

あなたの製品やサービスへ1番深い興味を持っている人は誰でしょうか。答えは、あなた自身です。
例えばマーカーペンを販売している私の友人は、同じ「赤色のペン」でもインクの色からにじみ、長持ちする度合いまで誰よりも詳しく知っています。彼が扱っているペンは確かにインクがにじみにくいのが魅力です。しかしその魅力を誰も知りません。なぜなら、99%の人にとってペンのにじみ度合いは、深い興味を持たない分野だからです。

同じようなことは、他の業界でも起こります。
・ 他社より1.25倍ゴミをキャッチできる排水溝のネット
・ 今までで一番薄くて丈夫なスーパーの袋
・麻酔が上手な歯医者
・ 自由にメニューを組み合わせられるヘッドスパ

これらは全て同じ業界の人間であれば「すごい差別化だ!」と思うような変化でも、一般人には「どこが違うの?」と思われかねないものです。残酷な現実ではありますが、あなたが10年かけて作った盛大なイノベーションも、お客様から見たときには「女子のネイルが変わった」くらいにしか見られないというリスクがあるのです。

大切なのは「差別化」の伝え方

といっても「技術をどれだけ磨いても、差別化へは繋がらないから研究開発はいらない」という暴論を伝えたいのではありません。
まず、よい差別化とは「メッセージがお客様目線」になっているものです。先ほどの「差別化」は全て、製品やサービスを提供する側の目線でしか違いがわかりません。しかし全て下記のように言い換えてみたら、いかがでしょうか?

・カレーの残りも三角コーナーでキャッチ、排水溝が詰まらないネット
・5kgのお米を運んでも千切れないスーパーの袋
・無痛抜歯を約束できる親知らず専門の歯医者
・20種類のメニューから自由に選べるヘッドスパ

訴求している内容は全く同じでも、より「一般の方が興味を持つ言い方」に変わったと思います。このように差別化のほとんどは言い換えるだけでお客様の心に届く強いメッセージになります。

そもそも「差別にならない」差別化もある

その一方で「差別にならない」差別化もあります。たとえばこんな例です。

・友達を呼んだら300円オフになる割引券…「そのサービス、どこでもやってるよね?」と思われてしまいます。他社でもやっているようなキャンペーンを作っても、差別化にはつながりません。
・ 最寄りの喫茶店がわかる携帯電話の新機能…「それができたところで、何の役に立つの?」とお客様は考えてしまいます。お客様が直感的に今までと違ってすごい! と思っていただけるのでなければ、差別化にはつながりません。

このような差別化のダメ事例は、他業種であれば「なんでこんなのが差別化になると思ったの?」とすぐ気付くものです。しかし実際に自分が携わる製品になるとつい「これこそが差別化だ!」と妄信してしまいがちな落とし穴もあります。

自分が作った製品やサービスはわが子のように愛おしいもの。その子が市場でモテようがモテまいが「なぜ売れないんだ、こんなにいい子なのに」と考えてしまうのはごく自然な感情です。ですがもし、あなたが「市場でモテる」製品を作りたいのであれば差別化の最低条件は、下記を満たす必要があります。

(1)競合と比べて大きな差があること
(2)買い手にとっても「大きな変化」であること

従って、差別化をするためには競合とお客様の深い理解が必要となりますし、できれば製品ができた後ではなく「商品開発を始める前」から熟考する必要があります。差別化に繋がらない研究開発へ多額の投資をしてしまった後では、取り戻すのが難しくなるからです。

次回は、誰でも始められる簡単な競合分析のテクニックをお伝えしてまいります。

合わせて読みたい:男友達止まりの俺と 女を落とすアイツの違いは?「差別化」の秘密

←「マーケティング深化論」目次

 

 


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

「マーケティング」の基礎知識:「モテる人はお断り」

こんにちは、トイアンナです。
唐突ですが、あなたはモテますか?

学生時代から「あの、いつも同じ通学路なんですけど……、好きです!」と告白され、
バレンタインデーには靴箱にチョコが入りすぎて溢れんばかりでしたか?

それとも、バレンタインデーに「チョコが貰えるやつはいいよな」と少し羨ましく思いながら、
貰ったところで別にそんな甘いものが好きなわけでもないし……と少し強がってみたり、
男友達といることを選んだりするような甘酸っぱい学生生活を過ごしていましたか?

前者のような人は、マーケティングがいらない人ですから、ここから先は読まなくてもいいでしょう。
逆に後者の人こそ、マーケティングが必要な方です。
なぜなら、マーケティングとは
限られた資産の中で、自分がモテる場所」を探す技術だからです。

今回は恋愛を例にして、マーケティングがいかに成果を変えられるかをお伝えしたいと思います。

■ 全くモテない彼が引っ張りだこになったのは「モテる場所」を知ったから

ここで、マーケティングを使って恋愛が上手くいった実例をご紹介できればと思います。

ある40代の男性は、30代始めに起業しました。
お父様の会社を継いだ形にはなりましたが、地方のお得意様と細々と取引しているだけではいずれ競争が激しくなった時に会社がもたないと一念発起。
泥臭い営業から会計業務までがむしゃらに働き、全国区へ営業範囲を延ばすことに成功しました。

「そろそろ結婚したいな」と思った当時は42歳、ちょうど会社が軌道に乗ったころでした。
しかし地元の結婚相談所に相談したところ、ほとんど門前払いの冷遇を受けてしまいます。
結婚相談所から言われたのは「自営業の方はちょっと……」
「40代の男性は年齢的に厳しいとおっしゃる女性も多く」と、今までの努力を否定されるような言葉。

「もう結婚は無理かもしれない」と諦めていたそのとき、友人から銀座の異業種交流会へ誘われました。
今までは業務が忙しいからと断っていた彼も、1回だけ顔出ししておこうと参加したところ、信じられないくらいモテました。
その友人が「彼、ベンチャーの社長でさ、会社もめちゃくちゃ儲かってるんだよね」と女性陣に紹介してくれたのです。

地方では「安定性がない」と批判される中小企業の社長も、起業家が珍しくない都内では憧れの的。
その日だけで連絡先を10件以上交換した彼には、間もなく彼女ができました。

彼が結婚相談所に使ったお金は約100万円、対して銀座の異業種交流会は往復の交通費を足しても3万円。
彼は「自分がモテる場所」を知ったことで、お金も時間も余計にかけることなく、彼女を作ることができました。

この話は、ビジネスにそっくりそのまま当てはめることができます。
ある市場で受けなかったものが、別の市場では飛ぶように売れることがあります。
あなたの商品が売れなかったとしても、商品が悪いのではなく、単に売る場所が適していなかっただけかもしれないのです。

■ モテる場所を考えるのがマーケティング

このように、あなたの商品が「モテる場所」を探すことをマーケティングと言います。
濡れても洗える畳は、介護業界ではフローリングの床が一般的だから売れないかもしれません。
しかし、和室を入れる新築家屋で、ファミリー向け物件なら喉から手が出るほど欲しいでしょう。

商品・サービスを考えたときのお客様のイメージと、実際に買いたいと思っているお客様は違うかもしれません。

美容室の毛髪マッサージは、流行に敏感な20代女性よりも抜け毛が気になる40代男性に受けるかもしれません。
はっ水加工をしてくれるウェットティッシュは、家の掃除より洗車の仕上げで愛されるかもしれません。

「この商品は○○向けだから」と決め打ちしないで「もしかすると○○に受けるかもしれない。考えてみよう!」と
あなたの商品を新しい場所でバカ売れさせる技術。
それがマーケティングです。

■ より少ない資源と時間で

また、マーケティングで欠かせないのが「限られたお金と時間を有効活用する」考え方です。
先ほどの婚活の事例では、異業種交流会に行ったほうが結婚相談所よりも安く・早く彼女ができました。
予算が無限にある会社は存在しません。

だからこそ「マーケティング思考」では、あなたの商品・サービスが手間やお金をかけず、モテる場所を柔軟に探します。
モテる相手へアプローチすれば、「これ、いいね」と思ってもらえるので商品を買ってもらいやすいからです。

「マーケティングって、お金かかるんでしょ?」と思っていらっしゃる方もいるかもしれません。
しかし実際のところマーケティングはお金をいかに節約しながら、あなたの商品やサービスを売るかを考えるのが仕事です。

「最近はウェブの時代なんで、とにかくfacebookで告知しましょう!」
「お客様にウチの商品を知ってもらうために、まずは冊子を刷りましょう」
こんなことを言い出すマーケターがいたら要注意です。

本来マーケティングは「その冊子、本当に告知の役に立ってますか?」とあなたの商品がちゃんとモテているかを、確認するのが仕事のはず。
「とりあえず」で動いては、結婚相談所に100万円使った彼の二の舞です。
これから一緒に正しいマーケティング知識を身につけて「あなたの商品がモテる場所」を考えてみませんか?
←「マーケティング深化論」目次

 

 


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

マーケティングはビジネスの「人間ドック」

 勝つ経営者と負ける経営者の分かれ道

「営業も頑張ってくれてるんだけど、売りが立たない」
「満を持して新製品も作ったのに、前と販売実績が変わらなかった」
こういった失敗談を持つ経営者の方も多いのではないでしょうか。

成功したベンチャー社長の体験談にもこういった「過去の失敗」はつきもの。
その後、上場や大成功に至る経営者も多いことから、失敗は決してこの世の終わりではありません。
重要なのは「売れないぞ」となったときに、どうやって立て直すかです。

成功した経営者と、その後も失敗を続けて廃業へ至る経営者で明暗が分かれるのは
まず「失敗した!」となるべく早いタイミングで気付くことです。

そしてすぐに何が原因だったかを突き止め、次の一手を打つこと。
このように、ビジネスの失敗へ即座に気付き、
原因を突き止めてすぐ次の一手を打つ技術をまとめて「マーケティング」と呼びます。

人間にたとえるなら、人間ドックをして症状の原因を突き止め、
すぐ完治させる医者のようなものといえます。

マーケティングは販促ではない

ここまで読んで「えっ」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「マーケティングって、販売促進のことでしょ?
ウチだって販促用のリーフレット作ってるし、ホームページ作ってくれる子はいるよ」と。
実は、そういう仕事はマーケティングの真髄ではありません。

マーケティングの本業は「何が売上アップのネックになっているのか?」を
調べるところから始まるのです。

ではここで「マーケティングがうまく機能しているときと、していないとき」で
どう差が出るかを見てみましょう。
これは実際に私が失敗した起業の話です。

【事例】 帰国子女向け通信教育の事業で「失敗」!
毎年、海外の学校を卒業した「帰国子女」が1,000人ほど大学受験のタイミングで日本に戻ってきます。
日本の大学受験は「帰国子女入試」という特殊な試験を受けなくてはいけません。
各学習塾は月70万円というとんでもない相場で、帰国後に詰め込み試験対策を施します。
そこで、インターネットの動画を使った通信教育があれば授業料も安く抑え、受験指導ができると思いました。
しかし結果は泣かず飛ばず。1年で赤字が膨らみ、廃業しました。

マーケティングがあれば仕事の「健康診断」ができる

もしこの失敗した時期に、マーケティングの知識があったら何ができたでしょうか。
まずは1年もズルズル赤字を引きずる前に、売上が立たないことに気付き原因を分析します。
そして帰国子女への聞き取り調査からたとえば
・「予備校のお金を出すのは親であって子供ではない。
・子供向けのメッセージを宣伝文句に書いていても、親へはピンと来なかったのが失敗の原因だ」
と分析するはずです。

原因が分かれば、あとは簡単。
すべての宣伝文句を「ご帰国を控えたお父様、お母様へ」と書き換えるだけです。
当時こうしていれば、半年以内に事業を立て直せたはずでした。
マーケティングがビジネスの「健康診断」の役割を果たしてくれるからです。

マーケティングでわかる「お客様」の心

こういった失敗例は、話を聞く立場だと「なんだ、そんなことも分からなかったのか」と笑って読めるものです。
しかし同じような失敗例は中小企業・ベンチャー経営で山のように出てきます。
読者の皆さまはお客様のことを、どこまで分析できているでしょうか?

試しに、ご自身のお仕事で下記に当てはまることがすべて分かるか心の中で問いかけてみてください。

【あなたの仕事にお金を払う方の主なプロフィール】
・性別、年齢、職業は何か
・今抱えている「あなたの仕事に関係した」悩みにはどんなものがあるか
・悩みを解決するために、今あなたのサービス・商品を使っていない人は、どんな代替手段を使っているのか
・その代替手段にどのくらい満足しているのか
・なぜ、顧客になっていない方はあなたのサービス・商品ではなく代替手段を選ぶのか
・あなたのサービス・商品を使うと、顧客はどんな気持ちになるか
・代替手段を使うときと、あなたのサービス・商品を使った後の気持ちには差があるか

「ここまでお客様の考えていることを深く掘るの?」と驚かれた方は、きっとマーケティング職に向いている方です。
ここまでお客様の心理を深堀りするからこそ「何が売上に繋がっていないか」を掘り当てることができます。

売れないのはあなたのせいではない

会社の売上が思うように伸びないのは、あなたが悪いのではありません。

お客様の心へ商品やサービスが届く前に、商品が誤解されてしまったり、まだ知られていなかったりするだけです。
マーケティングは会社の商品とお客様の心の間にある「接続不良」な部分を探し出して「こうすればもっとよさが伝わるはず」と伝え方を修正していきます。

あなたの素晴らしいサービスや商品が少しでもお客様に広まるよう、マーケティングという道具をこのサイトで深めていただければ幸いです。

←「マーケティング深化論」目次

 

 


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

セールスに影響を及ぼす12の心理的バイアス

by マイク・ラナハン
あなたはこれまでにバスケットボールの選手たちが、試合中、
冷え切った表情をしているのを見たことがありませんか?
立て続けに13ポイントもシュートを決められ、20ポイントも差がついてしまった。
マイボールにもかかわらず、チーム全員がうなだれ、目を落としているのを見て、
あなたは「今度はこっちの番だ。次はシュートが決まるぞ」と心の中で思います。
現実は、13ポイントも立て続けに失点するようなチームは、
次のシュートを決められそうにもありません。
あなたはギャンブラーの誤謬に陥ったのです。
つまり、人生で起こることは最終的に平均値に落ち着く、ということです。
私たちの考えには、このようなバイアスがかかりやすいものです。
そうして、あなたのいる場所に応じて、
あるバイアスが、全体の成功に大きな役割を果たすのです。
セールスにおいては、バイアスは販売員にとって悪夢そのものです。
バイアスのせいで、販売員は見込み客や自分自身について、
まちがった結論に飛躍することにもなりかねず、
結果的に取引に失敗してしまいます。
誰もに独特のバイアスがかかっていることを認識することは、
そこからくるマイナスの影響を克服するための第一歩です。
以下に挙げた12の心理学的バイアスは、
いずれも私たち誰もが影響されやすい、
同時に販売員に大きな影響を与えるものです。

セールスに影響を及ぼす12の心理的なバイアス

1. アンカリング・バイアス

アンカリング・バイアスとは、私たちが意思決定の基準として、
最初に与えられた情報を過大に評価するという傾向を指します
販売員が見込み客の言葉から、最初の痛点をとらえて、
その後に聞いた話よりもそちらを重視するならば、
その販売員はアンカリング・バイアスの犠牲になったといえます。
見込み客が話題にした最初の痛点は、もしかしたら最も重要なものではないかもしれません。
販売員はどんな時にでも顧客の問題を解決しなければならないのに、
顧客にとって優先順位の低い問題を解決したとしても、成約には決して十分ではありません。
販売員は時間をかけて、調査や観察を通じて
見込み客のことをできるだけしっかりと知らなければなりません。
販売員は見込み客の目標や痛点を正確に理解しないうちは、
価値あるアドバイスを提供することはできません。

2) 双曲割引

人は、よく似た報酬が得られるなら、すぐにもらえるものに価値を置く傾向があります。
たとえば、もしあなたが今20ドルがもらえるのと、2か月後に30ドルもらえるのであれば
どちらを選ぶ? と聞かれたら、おそらく今20ドルもらえる方を選ぶでしょう。
販売員は、双曲割引というバイアスを利用することがよくあります。
長期的な計画を立て、見込み客の将来設計に関わろうとするのではなく、
自分のノルマをてっとりばやく達成するために、価格を引き下げるのです。
成約を早く完了したいがために、値引きした価格を提案したい誘惑にかられたとしても、
販売員は顧客との関係に基づく長期的な利益を優先すべきです。
長年にわたってひいきにしてくれる顧客の存在は、
数か月後に入れ替わる見込み客よりも、はるかに価値あるものです。

3. 確証バイアス

確証バイアスとは、情報を、あなたが信じているものを裏付ける方向で解釈する傾向のことです。
販売員が見込み客から特定の答えを引き出そうと誘導的な質問をしていくと、
この確証バイアスの犠牲となるかもしれません。
たとえば販売員が、見込み客には新発売のソフトウェアが役に立つ、と考えていた場合、
このように聞くでしょう。
「短時間で成果を上げる従業員がお望みですか?」
もちろんその答えはイエスでしょうが、だからといってその見込み客に
新発売のソフトウェアが必要だと裏付けられたことにはなりません。
見込み客に実際に話しかける前に、調査に基づいた仮説を立てることは役に立ちますが、
販売員は新しい情報に耳を傾け、自分の推測が間違っているかもしれないと
進んで認める必要があります。

4. クラスター幻想

まったくランダムな出来事が連続して起こる中から
あなたがひとつのパターンを見出したとしたら、
クラスター幻想を抱いている、ということです。
販売員がある販売戦略を用いて、2,3の見込み客に対して取引を成立させた場合、
このようなバイアスに陥ることがあります。
そうしてそれ以降、あらゆる販売でその手法を用いるようになるのです。
このバイアスは、セールスが台本どおりに実現するように思えるものです。
もし見込み客がたった1人なら、それも通用するかもしれませんが、
あらゆる見込み客にそれを当てはめようとするのです。
ひとつのパターンで数人の見込み客相手にうまくいくのは、すばらしいことですが、
あなたのそのアプローチの方法が、今後もあらゆる見込み客に効果的だということではありません。
ワンパターンの考え方では、契約を勝ち取るよりも、見込み客を失うことになるでしょう。
見込み客それぞれに合わせた特別な働きかけを続けることで、
販売員は見込み客と心からつながることができ、
目覚ましい価値を提供できるのです。

5. 計画錯誤

計画錯誤は、ある仕事を完了するまでにかかる時間を
大幅に過小に見積もるようなときに起こっています。
販売員が、ついでに残った仕事を片付けてから電話を取ったとしても問題はなかった、
そこで、どんな時もこうして大丈夫だと考えたとしたら、それは計画錯誤の罠に陥っています。
計画錯誤というバイアスによって、販売員は最小の努力であっても、良い結果が出る、
という期待を抱くようになります。
仕事に十分な時間を割くことが、成功のカギであることに変わりはありません。
最小の努力で最大の結果を期待するのではなく、
あらゆる面において最高の仕事が確実にできるように、
十分な時間を確保しておかなければなりません。

6. 知識の呪い

知識の呪いとは、あなたはすでに適切な情報を持っているために、
その情報を持っていない人の抱える問題に共感することができない、ということです。
専門知識を持ち、見込み客にとってその商品が有益であることを知っている販売員が、
見込み客の反論をはねつけるような場合は、
このバイアスにとらわれていると言えるでしょう。
見込み客の反論に耳を傾け、混乱している点について時間をかけて説明する代わりに、
このバイアスにとらわれた販売員は、このように言います。
「これは効果があるんです! 私の言うことを信じてください!」
商品が見込み客の問題に応えるものだと言い張る代わりに、
販売員は信頼のおけるアドバイザーとしてふるまう必要があります。
販売員は確かな論法やカスタマー・レビューや推薦によって、
見込み客の反論に対処しなければなりませんが、
大切なことは教育にあります。
あなたの見込み客の反論は、実はあなたの商品の価値が理解できなくて、
質問しているだけなのかもしれません。
見込み客は、その商品がどのような働きがあるかに興味があるのではなく、
自分のために役に立ってくれるかどうかが知りたいのです。

7. ガラテア効果

ガラテア効果とは、もしあなたが最高のパフォーマーだと自分のことを信じているなら、
そのマインドセットゆえに、あなたは実際にそうなる、というものです。
ガラテア効果は、販売員が自分こそがこの契約を獲得する(もしくは失う)にちがいない、
と確信したときに、頭をもたげます。
結局、契約がうまくいかなければ、販売員は自分のスキルに疑いを抱くようになり、
その結果、その販売員の行動は、ますますうまくいかなくなってしまいます。
反対に、契約がうまくいけば、自信が生まれ、
以降の連勝の土台となっていくかもしれません。
このバイアスを克服するためには、販売員は報告書のあらゆる要素を検証し、
客観的な立場にある管理者からのコーチングに耳を傾ける必要があります。
販売員が意思決定に重要な役割を果たす反面、
見込み客の購入するかしないかの選択は、さまざまな要因に影響を受けているからです。

8. 選択支持バイアス

選択支持バイアスとは、過去、私たちが選んだ選択肢を肯定的にとらえ、
選ばなかった選択肢を否定的にとらえる、という態度です。
セールスの場面では、選択支持バイアスは失敗をしたことに対するあなたの反応に
影響を及ぼします。
もし見込み客にある商品がふさわしくなかったことがはっきりしても、
このバイアスにとらわれていると、その失敗がなかなか認められません。
自分に対してあまりに厳しい現実から目を背けるために、
過去の否定的な面を忘れ、肯定的なことを思い出そうとするのです。
成功を重ねていくためには、関連する情報にすべて注意を払うようにしてください。
そうして、あなたの決定がかならずどれもすばらしいものだと考えるのではなく、
期待はずれに終わることもあるのだと、認めるようにしてください。
失敗から学んだことは、強力なツールになっていくのです。

9. 新近性バイアス

新近性バイアスとは、最近表れてきたパターンがあると、
それと矛盾する長期にわたるデータがあっても、
新しいパターンが今後も続いていく、と思いがちなバイアスのことです。
販売員が、直近の5つの取引に共通性があることに気がつき、
長い時間をかけて有効性が証明された戦略を捨ててしまったとしたら、
その販売員は、このバイアスにとらわれているといえます。
新しいデータはワクワクするものですが、それは例外かもしれません。
より大きなサンプル、たとえば数か月間にも及ぶ販売の履歴の方が、
正確さの度合いは高いでしょう。
けれども、その共通パターンが継続していくのなら、販売員は新しい洞察を
セールス時の会話に生かしていく必要があります。
直観的な決定は、現代のセールスにふさわしくありません。
データは目に見えてくるはずです。

10. ギャンブラーの誤謬

ギャンブラーの誤謬とは、たとえひとつの出来事の結果が、
統計的に見て、将来に何の影響も及ぼさないとしても、
現在、何度も起こったから、将来は起こりそうもない、と考える誤りです。
販売員が4、5回続けて取引がうまくいかなかったとすると、
次こそは、平均から考えて、きっとうまくいく、と思うかもしれません。
けれども、過去の取引は、これからのものに何の影響も及ぼさないことを考えれば、
誤った認識だといえそうです。
このバイアスは、販売員が自分の側の行動を、何ら改めることなく、
幸運を期待しているとすれば、危険なことになります。
販売員は、なぜ取引がうまくいかなかったのか、深く掘り下げて理解し、
自分の戦略を手直しすることで、このバイアスに陥るのを避けることができます。
同じことを何度も繰り返す代わりに、やり方を変えることで、
悪い流れに終止符を打つことができるのです。

11. 熱い手の誤謬

ギャンブラーの誤謬の逆が、
熱い手(※カードゲームでよい手札のことを、ホットハンドと呼ぶことから)の誤謬です。
あなたが1回限りの出来事でうまくいけば(あるいは失敗すれば)、
次もきっとうまくいくだろう(あるいは失敗するだろう)と考えることがそれにあたります。
販売員がいくつかの取引を続けて成約させ、
自分が関われば今後も簡単にうまくいく、と思い込むとき、
その販売員は、熱い手の誤謬に陥っています。
こうした契約が成立したのは、数週間にわたって、一生懸命取り組んだからで、
販売員にツキがあるからではありません。
結局のところ、販売員の成功に影響するのは、セールスの基盤にほかなりません。
見込み客は、販売員が一生懸命に努めること、調査すること、
深い関係性を築くことによって顧客となるのであって、
販売員がツキに恵まれているからではないのです。

12. 共感ギャップ

共感ギャップとは、自分と同じ身体的・感情的状態にない人に対して、
共感することがむずかしい、という現象を指します。
たとえば、自分が怒っているときは、ほかの人が幸せであることが
なかなか理解できません。
販売員と見込み客が、まったく異なった心情にあるとき、
販売員は、見込み客の感情を無視したり、極力避けたりするのではなく、
できるだけ彼らの立場に身を置いて、気にかけなければなりません。
共感ギャップがあると、共通の基盤に立つことがむずかしくなり、
販売員と見込み客の間に信頼関係が生まれることを損ね、
軽蔑感が生じかねません。
最終的に言えるのは、私たちはその場その場で自分にどのようなバイアスがかかっているか、
どのバイアスが私たちの行動に影響を及ぼしているか、気が付くことはできない、ということです。
けれども自分にも固有のバイアスがかかっていることを意識し、
行動を調節することを学ぶことはできます。
セールスとは、感情に密接に関わる仕事です。
できるだけ偏りのない気持ちでいられるなら、半ば成功を手にしていると言えるでしょう。

(翻訳:服部聡子)

本:『X ビジネスがデザインと出会う経験』

X: The Experience When Business Meets Design

著者 ブライアン・ソリス

 

 

ブランドが 体験者によって定義される 新時代にようこそ

今日、あなたのブランドは、顧客にどのように経験されているか、知っていますか?

顧客がそのブランドのことを、実際はどのように感じているか、知っていますか?

あなたの聞こえないところで、顧客が何と言っているか、知っていますか?

常時接続の世界では、誰もが情報にコネクトでき、人々は相互に繋がっています。

ですからあなたのブランドも、そんな世界に生きる顧客の経験によって創りあげられていくのです。

ですから、消費者の体験を、ブランドの側がはっきりと言葉にできないでいると、

ブランドイメージは、人が経験したりシェアしたりするものによって、かんたんに覆されていきます。

 

『X ビジネスがデザインと出会う経験』は、ベストセラー作家であるブライアン・ソリスが、

なぜ優れた商品であっても、もはや消費者を満足させられなくなっているのか、

なぜクリエイティブ・マーケティングや、特別な顧客サービスが、

かならずしもうまくいかなくなっているのか、その理由を明らかにしていきます。

『X』では、なぜビジネスの将来が、経験に基づくものにあるのか、

また顧客に意味のある経験をさせるとは、どのようなことなのか、についても

明らかにされていきます。

 

これは、一般的なビジネス書とは異なるものです。

本書は、デジタルとアナログが出会う世界で、人が、現実と結びついた、

感覚を揺さぶられるような体験をすることを、改めて考えさせるものです。

本書で描かれる美的見地は、新しい視点と洞察をもたらすような感情を呼び起こし、

あなたの顧客の心をつかむ助けになってくれるはずです。

さらに、各ページごとに満載された本書のデザインは、

本書で主張されている原理に沿って、展開されています。

 

著者のブライアン・ソリスは、経験の重要性を教えてくれるだけではありません。

あなたは本書を通して、望まれるデザイン、

有意義で調和した経験となっていくデザインの方法、

さらには以下のことを楽しく学ぶでしょう。

 

・私たちの経験だけに基づいたデザインは、私たち以外の人にとって、どのような障害となるか

・どうして共感や新しい視点は、創造性やイノベーションを解き放つのか

・現実世界での、また実行過程での思考におけるUX(ユーザーの経験)の重要性

・あらゆる行動の中にある、人間中心設計の人間性

・マーケティングから商品デザイン、包装に至るまでの、ハリウッド的ストーリーテリングの技術

・経験型設計を目指す、アップルの全体的アプローチ

・異なる経験をすることと経験的マッピング・アプローチの価値

 

ビジネスの未来は、経験をいかに設計していくかにあり、

あなたはビジネスがデザインと出会う世界の建築家なのです。

 

 

 


元記事:http://amzn.to/1OgdraX

(翻訳:服部聡子)