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あなたの成功を助けてくれる人 妨げる人

(※この記事はThe Best People to Help You Succeed (and the Worst) の記事を翻訳したものです

by ディーパック・チョプラ

仕事を続けていれば、誰でもさまざまな同僚や上司、競争相手、また顧客やアドバイザーに出会います。そうした人の中には、個人的にも、また感情面でも、好ましい人がいます。けれども、どれだけ魅力的な人であっても、あなたの成功へのプロセスを助けてくれたり損ねたりするかどうかはわかりません。キャリアを重ねるためには、計画と実行が必要ですが、それはすなわち、ほかの人があなたにどのような影響を及ぼすか、自覚的でなければならないということにほかならないのです。仕事上の関係における利益、あるいは損害を評価できるようになることは、ほかのことと同様、一種のスキルなのです。あなたを助けてくれる人が備えている5つの資質とは、以下のものです。

  1. 人を裏切らないこと
  2. 正直であること
  3. 競争心を持っていること
  4. チームを作る人であること
  5. 創造性があること

  1.人を裏切らないこと

人に対して忠実である(裏切らない)ことは、重要な資質です。おそらく何よりも重要だと言って良いでしょう。というのも忠実な人は、信頼できるからです。こうした人が成功すれば、あなたとも成功を分かち合おうとするでしょうし、また、あなたの利益を侵害しようとはしないからです。また、いつも自分のことだけを考えるような人でもないからです。

 2.正直であること

正直なことが重要であるのは、言うまでもありませんが、嘘をつく人や、空約束をする人、やると言っておきながら、やり遂げることのない人に気をつけることは、大切です。そうした行動は、あからさまな不正と同じくらい、誠実さに欠ける兆候だからです。

 3.競争心を持っていること

競争心の強い人は、チャレンジャーでもあります。彼らは人と出会うごとに、また些細な事柄であっても、勝ちたいという強い熱意を持っているからです。けれども彼らの勝ちたい、という情熱は、非常に有益です。あなたが落ち着いて、彼らに勝たせてやりさえすれば、彼らはすばらしい戦果をあげることができます。ところが反対に、あなたが彼らを負かしてしまうと、つねに「私が勝者」でなければ気が済まないタイプの人は、さっさと離れていき、別の方面でトップに立とうとします。当たり前のことですが、ライバル意識が強く、しかも人に対して忠実である人は、非常に貴重な人です。

4.チームを作る人であること

あなたが華々しい大成功を遂げて、新世代のカリスマとして脚光を浴びる…こんな場面は、現実にはあまりないでしょう。反面、チーム全体で活躍する機会はきわめて多いはずで、チーム全体の努力は不可欠のものなのです。そのため、すばらしいチームを作ることのできる人を見つけることは、決定的に重要です。チーム・ビルダーは、チーム全員に気を配り、全員の貢献に耳を傾けます。彼らのおかげで、みんなは自分に価値があり、尊重されていると感じることができるのです。彼らはチームとしてのプロジェクトを、予定通りにこなしながら、メンバー間の対立やいさかいを最小限に抑えて、目標に到達させます。

5.創造性があること

創造的な人は、あまりチームを作るのは好まないのですが、その分、好奇心や探求心にあふれており、さらに仕事をワクワクするようなものに変えるイノベーションを起こす力を備えています。生来、彼らは一匹狼で、親しみを持ちにくい人々です。彼らに関心があるのは、つねに自分が作り出すものなのです。けれども、あなたが本当に創造的な人を見つけたら、そばにいることで、あなたの新しいアイデアも刺激されるでしょう。さらに運が良ければ、この創造的な同僚が、画期的なイノベーションを世に出す手伝いをあなたがすることになるかもしれません。

一方、あなたを傷つけ、あなたの価値を損ないかねない人もいます。次に、あなたの成功への道筋を妨げる人の5つ特徴を見てみましょう。

  1. 完全主義者
  2. 自信過剰
  3. 優柔不断
  4. ルールを押しつける人
  5. 暴君

1.完全主義者

完全主義者は満足することがありません。このタイプは、つねに他人の不満を口にしたり、自分についての弁解ばかりしているので、簡単に見分けがつきます。こうした人は、表面的には分別もあり、穏やかなしゃべり方をしているかもしれませんが、悪意を持って、つねにあら捜しをし、何かにつけて反対するので、周りにいると息がつまりそうになります。あなたが彼らを満足させることは絶対にできません。ですから、距離を置くのが最善の方法です。

2.自信過剰

自信過剰の人は、自己意識が過剰な人でもあります。 彼らは自分の声を聞くのが好きで、自慢話も大好きです。自分に夢中で、他の人の話に耳を傾けようとせず、人を見る目がありません。けれども、概して彼らは扱いやすい人々です。決定的な局面にいたるまでは争いを避け、必要に応じてさえぎるか、その場を離れてください。そうしても彼らは気分を害することはありません。 というのも、彼らはかならず誰か、聞かせる相手を見つけるからです。自信過剰のせいで、彼らは他者が何を必要としているか、まるでわかっていません。そのため、あなたが必要なことがまったく無視されるようであれば、それを機に離れてください。

3.優柔不断

優柔不断な人は、ものごとを決めることができず、そのために遅れ、先の計画を立てることができません。優柔不断な人が意思決定ができないせいで、あなたの仕事にきわめて大きな影響が及ぶことになります。優柔不断な人の中には、必要なことを話して、あなたに決定を任せようとする場合があります。このような人は、決定は下したいのですが、そうする自信がないのです。また、優柔不断な人のせいで、事態が混乱したり、仕事が中断する場合があります。そんな時は、あなたは一緒にいてはいけません。

4.ルールを押しつける人 5.暴君

ルールを押しつける人と暴君は、権威主義的なタイプとして、同じグループに属します。彼らは頑固で、柔軟性がありません。彼らは人を寛大な目で見ることをせず、そうした相手を「弱者」であるとみなします。暴君にとって権力を持つことはことのほか重要です。ルールを押しつける人にとっては、そこまで重要ではないのですが、周囲の人を機械の従順な歯車として従わせるために、両者は協力しあう場合があります。
プレッシャーのかかる状況や、危機的な局面では、暴君もルールを押しつける人も役に立ちます。というのも、彼らは無秩序や混乱を彼らは寄せつけないからです。けれども、彼らが自分の思い通りにならない人に対して、ひどい扱いをし始めたら、あなたはその場を去るべきです。

あなたが仕事上で、こうした悪影響を及ぼしかねない人に遭遇しても、逃げたり、状況を改善したり、できない場合があります。あなたがそのような人々を我慢しなければならないような場合、大切なことは、あなたの感情を、現在の仕事から切り離すことです

決して相手を「良くしよう」としないようにしましょう。どれほど腹が立ったとしても、あなたの感情は自分で責任をとらなければなりません。どれほど不平を並べたり、反撃したりしても、あなたの感情をほかの人が責任を取ることはできないのです。

良いニュースもあります。
あなたには、自分の成功を助けてくれる人々との関係をより緊密なものにすることもできるのです。手始めに、こうした助けになる人々が誰なのかを知ることから始めましょう。

元記事:The Best People to Help You Succeed (and the Worst)


翻訳:服部聡子
出産・退職後、在宅で働ける資格を身につけるために翻訳を学び始める。
約5年フィクション/ノンフィクションの下訳、ウェブ・ライターを経て、
『限界はあなたの頭の中にしかない』に巡り合い、深い共感を覚え、弊社に

第一印象の秘密 私たちはどのように見られているか

第一印象についての新しい研究が
Mixed Impressions: How We Judge Others on Multiple Levels
(「入り混じった印象:私たちは他人を複数のレベルで判断している」)で明らかにされています。
 
人は、一瞬で相手のことを判断します。
この人は信頼できそうだな、とか、頭の切れそうな人だな、というふうに。
ビジネスの場面でも、私生活での交流の中でも、私たちは出会う人ごとに、第一印象で判断しながら、相手とのつきあい方を決めていきます。
交流を重ねるごとに、その第一印象には修正が加えられていきますが、
多くの場合、最初に描いたイメージが、180度変わってしまうことはさほどないように思います。
だからこそ、よく言われるように、「第一印象が大切」なのでしょう。
 
けれども、第一印象というのは、私たちに操作できることなのでしょうか?
実際、私たちにできることといったら、身だしなみを整えるぐらい…
生まれつきの顔は、どうしようもないし…
そう思っている人がほとんどではないのでしょうか。
 
ところが近年、心理学の分野では、この第一印象が、
たった2つの要素で成立していることがあきらかになっています。
 
私たちが他者をいかに判断するかを研究しているハーバード・ビジネス・スクールの教授エイミー・カディ、
プリンストン大学心理学者であるスーザン・フィスク、ローレンス大学のピーター・グリックは、このように述べています。

世界のあらゆる場所で、人は2つの要素で他者を判断しています。
すなわち、暖かさ(彼らが親しみやすく、善意を持っているか)と
能力(彼らはその意図を伝える能力があるかどうか)です。   
Mixed Impressions: How We Judge Others on Multiple Levels

私たちが初対面の人に会うと、私たちは無意識のうちに一瞬で
相手を「暖かい人かどうか」「能力がある人かどうか」の両方で評価している、というのです。
この評価は、私たちの行動にも影響を与えるといいます。

暖かく、有能な人に、私たちは夢中になり、助けようとし、
冷たく、能力のない人であると判断すれば、軽蔑を感じ、そのように行動するのに対し
ふたつの要素が入り混じった人に対しては、態度を決めかねてしまうのです。
たとえばユダヤ人や、アジア人、金持ちに対するステレオタイプに見られるような
有能ではあるけれども、冷たい印象は、妬みや危害を加えたいという欲求を誘発します。
事実、そうしたグループに対して、しばしばそうした事態が起きています。
また、暖かく、能力的に欠けているところのある人、たとえば母親や高齢者に対しては、
憐みをもよおし、見て見ぬふりをします。
                 (引用同)


 
新しい研究では、一瞬で下されるこうした判断が、
しばしば誤っていることも明らかにされています。
というのも、そうした判断は、私たちの抱くステレオタイプや、過去の経験に大きく依存しているからです。
 
近年、心理学者のニコラス・ケルビンらは人の暖かさと能力について、私たちが抱きがちなイメージについての研究を発表しました。
被験者に対して、2つのグループを示します。
一方の人々は以前の実験で、暖かい行動を示し、もう一方は冷たい行動を示します。
被験者たちは、暖かいグループの方が冷たいグループよりも
能力が低いだろう、と予想する傾向がありました。
 
同様に、一方のグループが能力が高く、他方が低いという情報を与えられれば
被験者は直観的に、前者を冷たく、後者を暖かい、と答えることがわかりました。
 
つまり、私たちには
ある性質を取り上げることによって、別の性質を切り落とす場合がある
というのです。

能力の高い人は冷たい(暖かさに欠ける)、というふうに、何かを取り上げ、別の何かを落とすという「補償効果」は
私たちが、人を個人個人で評価するより、他の人と比較することによって起こります。
 
これは有名な「ハロー効果」、優れた点がひとつあれば、他の部分も優れているだろうと考える
私たちの認知バイアスとは逆の、もうひとつの癖です。
 
補償効果もハロー効果も、人が「暖かさ」と「能力」を判断する場合に生じる、いくつかの間違いに表れていきます。
たとえば、私たちは、仮にある人の地位が、たまたまその人の生まれ合わせに過ぎない場合でも、
その人が高い地位にあれば、有能であるとみなします。
 
さらにその人が「暖かい」かどうかの判断は、あなたとの関係にも左右されるのです。
「仮にあなたが誰かに負けたとしたら、その人のことを悪い人だと思うでしょう」
とカディは言います。
 
人がどのような脳のメカニズムで第一印象を判断しているかを理解していれば
私たちには自分の「第一印象」をより良いものにすることができます。
たとえば、あなたの職業や、所属するグループに対して
多くの人がどのような印象(暖かい or 冷たい/能力がある? or 能力がない)を持っているか
さらに、多くの人があなたに対してどのような印象を持っているかを理解すれば
あなたは自分のイメージを変えるよう努力することができるのです。
 
たとえば、世間では冷たいという印象を与えがちな有能な政治家は
自分の暖かさを利用することによって有権者とのより良いつながりを維持することができるのです。
 
とはいえ、カディのこのような指摘は、心に留めておく必要があるでしょう。
「その人の暖かさや能力は、誰であっても、人生のどこかでかならず相手には伝わるのです」

(文章および翻訳:服部聡子)

 

正しい決断を下すために必要なもの

by スティーバー・ロビンス

 

正しい決定を下すためのスキルを持っているかどうかで、人生は大きく変わります。
「ゴールディロックスと3びきのクマ」の話を思い出してください。
森の中のクマの家にやってきたゴールディロックスは、
おかゆが熱いか冷めているか、ちょうど良いか、思い悩んでいたのです。
家宅侵入が罪であることにも考えが及ばないほど、
おかゆの温度に夢中だったのですから。
野生のクマの所有する家だったというのに!
MITの学生時代、数ある学生寮には、それぞれ個性がありました。
私たちのところでは、新年度最初の一週間、新入生歓迎会を開き、
新入生にロブスターを食べさせて勧誘していました。
そこで「ベイカーハウスの方が部屋がきれいだった」と新入生が言えば、
「自分が気に入ったところを選べばいいよ」と私は答えていたのです。
「もちろん君の選択は、君が1人の人間として決定すればいいよ。
そこから人生の全体が決まっていくんだからね。
でも、そのことは忘れて。今はこのロブスターを食べなよ」
決断の結果は、今から始まり、のちのちまで続いていきます。
けれども私たちが何ごとか決定する場合には、
たいていのとき、たった1つの時間枠での結果しか考慮していません。
正しい決断を下すためには、それにふさわしい時間枠が必要です。

誘惑には対象期間がある

私たちが結果について思いめぐらしたとしても、
その対象となるのは数分間、数週間、せいぜい数か月というあまりに短い期間です。
けれどもほんとうに重要な結果は、何年も先になってからでないと、出ないかもしれません。
あなたの人生を形成する時間を、今晩のロブスターを基準にして選ぶのでしょうか?
それではあまりに対象とする時間枠が短くはないでしょうか。
オレオ・アイスクリーム・ケーキが食べたいとき、
私たちが考えるのは、「おいしい!」と感じる一瞬のことだけで、
それを消化するための、3週間にわたる有酸素運動ではないのです。
不快な、遠い将来の結果を、意識的・具体的に想像することによって、
誘惑に抵抗することができます。

不快な予感は短い時間枠での決断を引き起こす

私はコーチングの実践の中で、クライアントが誤った決断を下す場合は、
誤った時間枠に基づいていることに気が付きました。
あるクライアントは、自分には合わない仕事を選びました。
「私にオファーが来たのは、これだけだったんです。
だから、この仕事をやるしかないわ!」
何という誤りでしょう。
たった今、ほんの短期間の不安を和らげるために、
自分が嫌いぬいている仕事を何年も続けるという、ストレスの道へ飛び込もうとしていたのです。
けれども、ほとんどの人は、長く働くことのできる、自分に合った職を見つけるために
求職活動を延長するより、ストレスの多い求職活動を短期間で切り上げることを選びます。
短期のものは、長期のものより魅力的に映るのです。
ほかの決定の際でも、多くの人は短い時間枠で考えます。
長期的に見て合わなくても、目先の必要を満たす選択肢を選びがちなのです。
「ほんのちょっと」「今だけ」「さしあたって」
このような言葉に目をくらまされて、起こり得る深刻な問題に目をふさごうとします。
「たった1度だけ」なら、悪いことをしてもかまわない、というように。
「たった1度だけ」が簡単に堕落へとつながっていくことにも気づかないのです。
緊急対応計画であっても、短期的な時間枠と、長期的な時間枠をペアにして、
決断を下してください。
新しくその職に就いた人のための試用期間は、
長期採用した場合にふさわしくない人に任せることのないよう、
現在の必要を満たすための緊急対応計画にほかなりません。
短い期間に周囲を汚染するような人であっても、
適切に指導し、再評価できるなら、立派な緊急対応計画になります。
あるいはまた、倫理の斜面を転げ落ちることを苦にしなければ、
タックスヘイブンの地、ケイマン諸島に別荘を持つことは、
緊急対応策にちがいありません。

遠くを見すぎる場合には

同様に、私たちは遠い将来のことを考えることもあります。
多くの起業家は、自分たちがどのように利益を上げるか考えることもなく、
会社を起ち上げます。
「10年もしたら、全部わかるだろう」というように。
けれども、今を生き延びる計画がなければ、10年も経たないうちに
資金は底を尽き、失敗してしまうでしょう。
高い目標達成をする人は、はるか将来に意識を向けていることが多いものです。
彼らは必死で働き、家族や趣味、友人や生活を軽んじがちになります。
どうしてなのでしょう。
彼らは次の昇進に、引退後の計画に、子供たちを大学に送ることに、
あるいはまた、いつの日か人工知能を持ったダチョウを発明して、
世界を征服することに、目を奪われているからです。
この場合、彼らは将来に備えるあまりに、現在を損なっています。
彼らは、今、家族と幸せに過ごすこともできるのです。
子供たちに、自分の大学資金を得る方法を教え、助けてやることもできるのです。
趣味や友だちや生活を楽しむこともできるのです。
人工知能のダチョウのことは、そこまで確かではありませんが。
長期的な観点のみに基づいた決定は、短期的なリスクを引き起こす可能性が、きわめて高いのです。
しかも、短期的なものを無視することで、
自分のほしいものや、すでに自分が持っているものを見失ってしまいます。
長期的な方向を定めつつ、その途上の短期的な毎日を楽しむ、ということが、
私の考える、すばらしい生活なのです。
もしあなたが長期的な時間枠のみに集中しているなら、
それをやめて、短期的な時間枠や「いま、このとき」に目を向けてください。
もしかしたら、あなたは自分が望むものが、すでにあるのかもしれません。
であれば、かならず長期的な目標に到達するまでの、短期的な延命策を用意してください。
さまざまな意味での「延命」、経済的にも、肉体的にも、社会的にも、精神的な意味でも。

決断を下す時には さまざまな時間枠を考える

決断を下す場合、あなたはゴールディロックスになりがちです。
きわめて短期的な時間枠のみで考えてしまうのです。
そこで、もう一度考えます。
きわめて長い時間枠で考えるのです。
そこから、情報をもとに、適切な時間枠、三番目の時間枠で、もう一度考え直すのです。
緊急対応策が必要なときも、短期間の延命策も加味され、
長期的な計画を立てることができるでしょう。
また、あなたの計画対象期間も、適切なものになるはずです。
(翻訳:服部聡子)

バックアップ計画が裏目に出るとき

 

あるプロジェクトのために、どれほど入念に計画を練ったとしても、

かならずうまくいかないことは起こります。

それゆえマーフィの法則「失敗する可能性のあるものは失敗する」

と言われるのです。

この人気のある格言は、多くのバックアップ計画を生み出す元にもなってきました。

就職の面接から、引退後の投資まで、

「うまくいかなかったときのために、予備のプランを準備しておきなさい」

と、かならずアドバイスする誰かがいるはずです。

 

けれども、もしエネルギーや資金を投入し、包括的なバックアップ計画を作ったところで、

そのせいでうまくいかなかったとしたらどうでしょう?

 

先ごろ発行されたPerspective on Psychological Science誌の記事の中で

チューリヒ大学の研究者クリストファー・ナポリターノとアレクサンドラ・フロインドは、

バックアップ計画の存在が、目標を達成する上での意思決定やモチベーションに

大きな影響を与える、という説を発表しました。

 

仮にバックアップ計画を1度も使わなかったとしても、

バックアップ計画は、用意するだけで、

人の目標の追求の仕方だけでなく、達成の可能性までもが変わっていく。

バックアップ計画は、目標を追求する過程でのセーフティネットとなる場合もあるが、

最初の計画をやり遂げようとするモチベーションを下げる要因ともなりかねない。

 

確かに最初に目標がうまく達成できなかった場合、

バックアップ計画があれば、何かと重宝するものです。

また、目標を達成する上で、バックアップ計画があることが、

助けになってくれる場合もあります。

けれども、ナポリターノとフロインドは、

ある状況下では、バックアップ計画を作成すること自体が、

目標を追求しようとする意思を弱めてしまうのではないか、というのです。

彼らによれば、バックアップ計画を用意することは、

「ケーキを食べてしまっても、なおかつ持っていようとする」ようなもので、

複数の手段を持つことで成果を得ようとするものだけれども、

一方、その人の限られたリソースを、すべて傾注するのではなく、

えり好みしながら投資することでもあるといいます。

 

現在も進行中の実験の中で、ナポリターノとフロインドは、

本来の目標に取り組む上で、予備プランがあることで人が自信を持つような状況、

また逆に、予備プランのせいで人が散漫になる場合について、研究しています。

 

予備プランと散漫さの実験では、被験者は一定の距離から、

ボールをごみ箱に投げ入れるよう求められます。

対照条件では、被験者が求められるのは、ピンポン玉です。

コツをつかむために、5回練習してから、「本番」の10投を行います。

対照実験では、被験者は5回の練習の間は、テニスボールとピンポン玉を、

自分の好きなように変えてかまわない、と言われます。

その結果は未だ公開されてはいませんが、研究者たちは「予備プラン」があり、

ボールを変えて良いといわれた人の方が、点数が悪くなると予想しています。

予備プランが目標達成の助けになるか、逆に、妨げになるかは、

ナポリターノとフロインドが「複雑性の価値」と呼ぶ何ものか、

つまりは予備プランを用意するためにかかる追加コストや利点が

たった1つの戦略で目標を達成しようとする場合と比較して、

どれほどになるかによって、決まってくるのです。

基本的に、人は予備プランを持つことに対する本当のコストを、

必ずしも正確に見積もったりはしていません。

 

つまり、もっとも信頼できる推測に基づいて、

予備プランを用意した方が良い、と考えたときに、人は予備のプランを作るのです。

たとえばバックアップ計画を立てる決定をした場合、

利点と欠点を並べて、概要を述べる人がいるかと思えば、

もっと直観的に、おそらく特別な意図もなく、

感情のおもむくままに立てようとする人もいるのです。

 

たとえその意図が間違ってはいなくても、

予備プランのための追加コスト(立案にかかる時間や、実行のコスト)が

失敗の原因になることもあります。

研究者によれば、バックアップ計画がある状況下で役に立つかどうかを

すばやく確実に決定するような戦略はありません。

その代わりに、その状況で、バックアップ計画を用意する上での

真のコストと利点を考えなければならないのです。

研究者たちはこのように書いています。

 

世界は確率論的なものである。

というのも、人が取る手段が、望むような結果に

かならずつながっていく保証は、どこにもないからである。

自主管理の特質の1つは、この不確実性を管理し、

妨害や失敗に立ち向かいながら、自分の目標に到達することにある。

 

 

 

 


元記事:http://goo.gl/fXkJbF

(翻訳:服部聡子)

 

 

 

 

 

 

 

セールスに影響を及ぼす12の心理的バイアス

by マイク・ラナハン
あなたはこれまでにバスケットボールの選手たちが、試合中、
冷え切った表情をしているのを見たことがありませんか?
立て続けに13ポイントもシュートを決められ、20ポイントも差がついてしまった。
マイボールにもかかわらず、チーム全員がうなだれ、目を落としているのを見て、
あなたは「今度はこっちの番だ。次はシュートが決まるぞ」と心の中で思います。
現実は、13ポイントも立て続けに失点するようなチームは、
次のシュートを決められそうにもありません。
あなたはギャンブラーの誤謬に陥ったのです。
つまり、人生で起こることは最終的に平均値に落ち着く、ということです。
私たちの考えには、このようなバイアスがかかりやすいものです。
そうして、あなたのいる場所に応じて、
あるバイアスが、全体の成功に大きな役割を果たすのです。
セールスにおいては、バイアスは販売員にとって悪夢そのものです。
バイアスのせいで、販売員は見込み客や自分自身について、
まちがった結論に飛躍することにもなりかねず、
結果的に取引に失敗してしまいます。
誰もに独特のバイアスがかかっていることを認識することは、
そこからくるマイナスの影響を克服するための第一歩です。
以下に挙げた12の心理学的バイアスは、
いずれも私たち誰もが影響されやすい、
同時に販売員に大きな影響を与えるものです。

セールスに影響を及ぼす12の心理的なバイアス

1. アンカリング・バイアス

アンカリング・バイアスとは、私たちが意思決定の基準として、
最初に与えられた情報を過大に評価するという傾向を指します
販売員が見込み客の言葉から、最初の痛点をとらえて、
その後に聞いた話よりもそちらを重視するならば、
その販売員はアンカリング・バイアスの犠牲になったといえます。
見込み客が話題にした最初の痛点は、もしかしたら最も重要なものではないかもしれません。
販売員はどんな時にでも顧客の問題を解決しなければならないのに、
顧客にとって優先順位の低い問題を解決したとしても、成約には決して十分ではありません。
販売員は時間をかけて、調査や観察を通じて
見込み客のことをできるだけしっかりと知らなければなりません。
販売員は見込み客の目標や痛点を正確に理解しないうちは、
価値あるアドバイスを提供することはできません。

2) 双曲割引

人は、よく似た報酬が得られるなら、すぐにもらえるものに価値を置く傾向があります。
たとえば、もしあなたが今20ドルがもらえるのと、2か月後に30ドルもらえるのであれば
どちらを選ぶ? と聞かれたら、おそらく今20ドルもらえる方を選ぶでしょう。
販売員は、双曲割引というバイアスを利用することがよくあります。
長期的な計画を立て、見込み客の将来設計に関わろうとするのではなく、
自分のノルマをてっとりばやく達成するために、価格を引き下げるのです。
成約を早く完了したいがために、値引きした価格を提案したい誘惑にかられたとしても、
販売員は顧客との関係に基づく長期的な利益を優先すべきです。
長年にわたってひいきにしてくれる顧客の存在は、
数か月後に入れ替わる見込み客よりも、はるかに価値あるものです。

3. 確証バイアス

確証バイアスとは、情報を、あなたが信じているものを裏付ける方向で解釈する傾向のことです。
販売員が見込み客から特定の答えを引き出そうと誘導的な質問をしていくと、
この確証バイアスの犠牲となるかもしれません。
たとえば販売員が、見込み客には新発売のソフトウェアが役に立つ、と考えていた場合、
このように聞くでしょう。
「短時間で成果を上げる従業員がお望みですか?」
もちろんその答えはイエスでしょうが、だからといってその見込み客に
新発売のソフトウェアが必要だと裏付けられたことにはなりません。
見込み客に実際に話しかける前に、調査に基づいた仮説を立てることは役に立ちますが、
販売員は新しい情報に耳を傾け、自分の推測が間違っているかもしれないと
進んで認める必要があります。

4. クラスター幻想

まったくランダムな出来事が連続して起こる中から
あなたがひとつのパターンを見出したとしたら、
クラスター幻想を抱いている、ということです。
販売員がある販売戦略を用いて、2,3の見込み客に対して取引を成立させた場合、
このようなバイアスに陥ることがあります。
そうしてそれ以降、あらゆる販売でその手法を用いるようになるのです。
このバイアスは、セールスが台本どおりに実現するように思えるものです。
もし見込み客がたった1人なら、それも通用するかもしれませんが、
あらゆる見込み客にそれを当てはめようとするのです。
ひとつのパターンで数人の見込み客相手にうまくいくのは、すばらしいことですが、
あなたのそのアプローチの方法が、今後もあらゆる見込み客に効果的だということではありません。
ワンパターンの考え方では、契約を勝ち取るよりも、見込み客を失うことになるでしょう。
見込み客それぞれに合わせた特別な働きかけを続けることで、
販売員は見込み客と心からつながることができ、
目覚ましい価値を提供できるのです。

5. 計画錯誤

計画錯誤は、ある仕事を完了するまでにかかる時間を
大幅に過小に見積もるようなときに起こっています。
販売員が、ついでに残った仕事を片付けてから電話を取ったとしても問題はなかった、
そこで、どんな時もこうして大丈夫だと考えたとしたら、それは計画錯誤の罠に陥っています。
計画錯誤というバイアスによって、販売員は最小の努力であっても、良い結果が出る、
という期待を抱くようになります。
仕事に十分な時間を割くことが、成功のカギであることに変わりはありません。
最小の努力で最大の結果を期待するのではなく、
あらゆる面において最高の仕事が確実にできるように、
十分な時間を確保しておかなければなりません。

6. 知識の呪い

知識の呪いとは、あなたはすでに適切な情報を持っているために、
その情報を持っていない人の抱える問題に共感することができない、ということです。
専門知識を持ち、見込み客にとってその商品が有益であることを知っている販売員が、
見込み客の反論をはねつけるような場合は、
このバイアスにとらわれていると言えるでしょう。
見込み客の反論に耳を傾け、混乱している点について時間をかけて説明する代わりに、
このバイアスにとらわれた販売員は、このように言います。
「これは効果があるんです! 私の言うことを信じてください!」
商品が見込み客の問題に応えるものだと言い張る代わりに、
販売員は信頼のおけるアドバイザーとしてふるまう必要があります。
販売員は確かな論法やカスタマー・レビューや推薦によって、
見込み客の反論に対処しなければなりませんが、
大切なことは教育にあります。
あなたの見込み客の反論は、実はあなたの商品の価値が理解できなくて、
質問しているだけなのかもしれません。
見込み客は、その商品がどのような働きがあるかに興味があるのではなく、
自分のために役に立ってくれるかどうかが知りたいのです。

7. ガラテア効果

ガラテア効果とは、もしあなたが最高のパフォーマーだと自分のことを信じているなら、
そのマインドセットゆえに、あなたは実際にそうなる、というものです。
ガラテア効果は、販売員が自分こそがこの契約を獲得する(もしくは失う)にちがいない、
と確信したときに、頭をもたげます。
結局、契約がうまくいかなければ、販売員は自分のスキルに疑いを抱くようになり、
その結果、その販売員の行動は、ますますうまくいかなくなってしまいます。
反対に、契約がうまくいけば、自信が生まれ、
以降の連勝の土台となっていくかもしれません。
このバイアスを克服するためには、販売員は報告書のあらゆる要素を検証し、
客観的な立場にある管理者からのコーチングに耳を傾ける必要があります。
販売員が意思決定に重要な役割を果たす反面、
見込み客の購入するかしないかの選択は、さまざまな要因に影響を受けているからです。

8. 選択支持バイアス

選択支持バイアスとは、過去、私たちが選んだ選択肢を肯定的にとらえ、
選ばなかった選択肢を否定的にとらえる、という態度です。
セールスの場面では、選択支持バイアスは失敗をしたことに対するあなたの反応に
影響を及ぼします。
もし見込み客にある商品がふさわしくなかったことがはっきりしても、
このバイアスにとらわれていると、その失敗がなかなか認められません。
自分に対してあまりに厳しい現実から目を背けるために、
過去の否定的な面を忘れ、肯定的なことを思い出そうとするのです。
成功を重ねていくためには、関連する情報にすべて注意を払うようにしてください。
そうして、あなたの決定がかならずどれもすばらしいものだと考えるのではなく、
期待はずれに終わることもあるのだと、認めるようにしてください。
失敗から学んだことは、強力なツールになっていくのです。

9. 新近性バイアス

新近性バイアスとは、最近表れてきたパターンがあると、
それと矛盾する長期にわたるデータがあっても、
新しいパターンが今後も続いていく、と思いがちなバイアスのことです。
販売員が、直近の5つの取引に共通性があることに気がつき、
長い時間をかけて有効性が証明された戦略を捨ててしまったとしたら、
その販売員は、このバイアスにとらわれているといえます。
新しいデータはワクワクするものですが、それは例外かもしれません。
より大きなサンプル、たとえば数か月間にも及ぶ販売の履歴の方が、
正確さの度合いは高いでしょう。
けれども、その共通パターンが継続していくのなら、販売員は新しい洞察を
セールス時の会話に生かしていく必要があります。
直観的な決定は、現代のセールスにふさわしくありません。
データは目に見えてくるはずです。

10. ギャンブラーの誤謬

ギャンブラーの誤謬とは、たとえひとつの出来事の結果が、
統計的に見て、将来に何の影響も及ぼさないとしても、
現在、何度も起こったから、将来は起こりそうもない、と考える誤りです。
販売員が4、5回続けて取引がうまくいかなかったとすると、
次こそは、平均から考えて、きっとうまくいく、と思うかもしれません。
けれども、過去の取引は、これからのものに何の影響も及ぼさないことを考えれば、
誤った認識だといえそうです。
このバイアスは、販売員が自分の側の行動を、何ら改めることなく、
幸運を期待しているとすれば、危険なことになります。
販売員は、なぜ取引がうまくいかなかったのか、深く掘り下げて理解し、
自分の戦略を手直しすることで、このバイアスに陥るのを避けることができます。
同じことを何度も繰り返す代わりに、やり方を変えることで、
悪い流れに終止符を打つことができるのです。

11. 熱い手の誤謬

ギャンブラーの誤謬の逆が、
熱い手(※カードゲームでよい手札のことを、ホットハンドと呼ぶことから)の誤謬です。
あなたが1回限りの出来事でうまくいけば(あるいは失敗すれば)、
次もきっとうまくいくだろう(あるいは失敗するだろう)と考えることがそれにあたります。
販売員がいくつかの取引を続けて成約させ、
自分が関われば今後も簡単にうまくいく、と思い込むとき、
その販売員は、熱い手の誤謬に陥っています。
こうした契約が成立したのは、数週間にわたって、一生懸命取り組んだからで、
販売員にツキがあるからではありません。
結局のところ、販売員の成功に影響するのは、セールスの基盤にほかなりません。
見込み客は、販売員が一生懸命に努めること、調査すること、
深い関係性を築くことによって顧客となるのであって、
販売員がツキに恵まれているからではないのです。

12. 共感ギャップ

共感ギャップとは、自分と同じ身体的・感情的状態にない人に対して、
共感することがむずかしい、という現象を指します。
たとえば、自分が怒っているときは、ほかの人が幸せであることが
なかなか理解できません。
販売員と見込み客が、まったく異なった心情にあるとき、
販売員は、見込み客の感情を無視したり、極力避けたりするのではなく、
できるだけ彼らの立場に身を置いて、気にかけなければなりません。
共感ギャップがあると、共通の基盤に立つことがむずかしくなり、
販売員と見込み客の間に信頼関係が生まれることを損ね、
軽蔑感が生じかねません。
最終的に言えるのは、私たちはその場その場で自分にどのようなバイアスがかかっているか、
どのバイアスが私たちの行動に影響を及ぼしているか、気が付くことはできない、ということです。
けれども自分にも固有のバイアスがかかっていることを意識し、
行動を調節することを学ぶことはできます。
セールスとは、感情に密接に関わる仕事です。
できるだけ偏りのない気持ちでいられるなら、半ば成功を手にしていると言えるでしょう。

(翻訳:服部聡子)

本:『信用詐欺:どうして人は(いつも)騙されるのか』

The Confidence Game: Why We Fall for It . . . Every Time

著者 マリア・コニコヴァ

 

ニューヨークタイムズベストセラー『シャーロック・ホームズの思考術』の著者が、

詐欺師の思考や動機、その手口と、詐欺に何度もひっかかる人々について、

きわめて興味深い研究を明らかにします。

詐欺や詐欺まがいの行為が氾濫している現代にあって、

史上最大級の巨額詐欺事件の犯人として知られるバーナード・メイドフ、

有名なテレビ宣教師でありながら、会計不正事件を起こしたジム・ベイカー、

癌から奇跡的に復帰し、ツール・ド・フランス7連覇を成し遂げながらも

詐欺行為で訴えられているランス・アームストロングらは

エレガントで際立った個性と、芸術的とすら言える説得術、信用を巧みに勝ちとる

真の詐欺師と言えるでしょう。

どうして彼らは成功したのか?

また、どうして私たちは、何度も何度も騙されるのか?

こうした問いに、心理学者でありジャーナリストでもあるマリア・コニコヴァは取り組み、

この新作で、私たちをとりこにしていきます。

コニコヴァは、数百万ドルにも及ぶネズミ講から寸借詐欺まで

あらゆる詐欺に共通して見られる、魅力的なストーリーを引き出し、

それを科学的、ドラマ的、心理学的な観点から迫っていきます。

豊かな洞察に満ちたおもしろさを持った本書は、芸術家と犠牲者の関係を分析しながら、

読者を詐欺の世界に引き込んでいきます。

それに加えて本書は、私たちがなぜ詐欺の芸術家を信じてしまうのかにとどまらず、

信じるという行為や、「これは本当だ」という私たちの感覚が、

いかに周囲の人々によって操作されるものであるかを、明らかにしています。

 

 

 


元記事:amzn.to/1SDDxoc

(翻訳:服部聡子)

 

本:『心の勝利』

Triumph of the Heart:

 Forgiveness in an Unforgiving World

『心の勝利 許されざる世界で許すということ』

著者:ミーガン・フェルドマン・ベタンクール

 

ミーガン・フェルドマン・ベタンクールは、

私生活で別離を経験し、職業上でも挫折を余儀なくされて苦しんでいるとき、

アジムという人物に出会いました。

アジムは最愛の一人息子を殺した男を許し、

なおかつ彼の家族に援助の手をさしのべることまでしたのです。

彼は真の意味で安らかな気持ちでいるようでした。

 

ベテランのジャーナリストであるミーガンにとって、それは信じがたい話です。

自分が強い怨みを抱いていることを自覚していた彼女は、とまどいました。

彼はどこかおかしいのではないか。

それともおかしいのは彼女の方なのか。

人間の「許す」という能力について、彼女は考えます。

なぜそんな能力を持っているのだろう。

どうして私たちは許すのだろう。

果たして許すことが私たちの助けになるのだろうか?

 

『心の勝利』は、ミーガンが科学的見地と人間的見地から、

この複雑な概念を理解するまでの、探求の足跡が記されています。

ミーガンが援用するのは、最新の研究です。

それによると、許しを与えることによって、抑鬱感が和らぎ、高血圧が緩和されるという

健康面で良い影響がもたらされるといいます。

 

彼女は交通渋滞時のイライラや、配偶者の浮気などの日常の出来事や、

戦争犯罪などの想像を絶するような、さまざなな状況を検討します。

人々や共同体が、非常に厳しい状況においてさえ、許しをあたえてきた物語を通して、

ミーガンは、どうしてかれらにそれが可能だったのか、

そうして許しを与えた後に味わった深い解放感を明らかにし、

世界平和に向けての示唆を、私たちに与えてくれます。

許すことを通して、依存症から自分の人生を取り戻そうとする人々

学校での暴力行為を根絶するために、許しを与える技術を利用したボルチモアの校長、

ルワンダでの虐殺を生き延び、家族を殺害した加害者を許した人々、

自分の罪をあがなおうとする加害者たち、

ミーガンは、探求の過程で、さまざまな人に出会います。

その途中で、彼女は自分の、人を許す力が強まっていくのを感じます。

そうして、自分でも思ってもみなかった方向へと、彼女の人生は変化していくのです。

寛大さや共感をもって人を許すという人間の能力は、

その人を健康にし、幸福にするだけではありません。

癒され、成長し、より善く生きていくことのカギでもあることを、

ミーガンは明らかにしています。

 

 


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(翻訳:服部聡子)

 

 

 

 

性差別は女性ばかりでなく男性にとっても不利

by クリスチャン・ジャレット

 

 

どれほどあなたが自分をしっかり持っていたとしても

あなたの年齢や性別、人種や民族による特性に基づく周囲の判断からは、

逃れることはできません。

職場で、そこにいるのが男性か女性かというだけで、

周囲の人々がどれほど態度を変えているか、

心理学は多くの人々の日常の経験を通して、

さまざまな事例を明らかにしています。

とりわけ私たちが「性差別を行わない」という視点を欠いたまま

他人を判断する際には、

相手が男性であっても女性であっても、

偏見に基づく悪影響を受けている可能性が高いのです。

こうした偏見というのは、どのようなものなのでしょうか。

あなたの職場でも起こりうる5つのパターンを見ていきましょう。

 

1. 女性は正々堂々と意見を述べたり 怒りをあらわにすると罰せられる

専門職の女性は、自己主張することによって、

男性からも、他の女性からも、厳しい目で判断されます。

一例をあげると、ある研究によれば、男性及び女性の被験者は、

女性のCEOが積極的に主張し、自説を曲げない場合は、

能力を欠いており、リーダーの役割にふさわしくないと考える割合が高く、

男性のCEOに対しては、結果はまったく逆で、

寡黙で控えめな態度は、無能のあらわれであると見なされました。

怒りに対しても、同様の結果が得られています。

怒りは、コントロールされたものである限り、交渉や、

期待する働きをしていない人を奮起させる道具として、

重要な感情です。

ところがあなたが女性であれば、怒って感情をあらわにすると、

犠牲を払うことになります。

 

2008年の研究によると、怒っている男性は、男性からも女性からも、

高い地位にあり、有能な人と見なされたのに対し、

怒っている女性は、低い地位の、有能ではない人と判断されることがわかっています。

それだけでなくこの研究は、女性が怒りの原因を明らかにし、

なぜ自分が怒っているかに焦点を当てることによって、

反発を避ける戦略が可能であることも指摘しています。

このプロセスを経ることで、女性であることが、不利に働きにくくなるのです。

男女差別がある状況は、男性にとっても決して有利ではありません。

差別によって被害を受けるのは、男性も同様です。

たとえば面接の場で、控えめな態度を取っていると

「男らしくない」と評価されたりします。

2. 女性の上司の下で働く男性は偏見にさらされる

職場の機会均等によって、不可避的に女性の上司の下に男性がくることも増えました。

ところが性差に対する旧弊な見方から、

女性上司の下の男性は、特別な目で見られる傾向にあります。

とりわけその業界が、通常「男性の領域」にあると考えられる場合、

その傾向は顕著なものになっていきます。

これを明らかにした研究もあります。

被験者は「ある男性は建設業界で働いてるが、上司は女性」

という説明書きを読みます。

 

被験者は男女とも、彼は男性上司の下で働いている他の男性より、

賃金、地位ともに低く、いくぶん女性的である、と判断したのです。

(一方、女性社員が女性中心の業界で、男性上司の下で働いている、という仮定では、

そうした偏見にさらされることはありませんでした)。

私たちは、こうした男性が「男らしくない」と見なされる偏見が、

女性リーダーにとっても不利に働くことを見ておかなければなりません。

自分が男らしくないと見なされることを怖れて、

女性上司の下で働きたがらない男性も多いからです。

認めたくないことですが、これには実際的な解決策はありません。

ただ、いくつかの調査では、男性がステレオタイプの男性性を証明するものを

強調することによって、女性上司の下にいる男性に対する偏見は、

相殺されることが明らかになっています。

たとえばスポーツや車の話題を好んで口にするような場合です。

本当の解決策は、性差に対するステレオタイプを全面的に改める点にあることを思えば、

この解決案には不満を抱かざるを得ませんが。

 

 

3. 女性は失敗が予想される組織を任される傾向にある

重役のメンバーが、女性を含めて構成されている企業ほど

業績が良いことが実証されているにもかかわらず、

上級幹部の中で、女性が過小評価されるケースは、未だ極めて多く残っています。

イギリス企業を分析した心理学者は、彼女たちがトップに昇進するのは、

うまくいかなくなりつつある組織である傾向が高いことに気がつきました。

いわゆる「ガラスの断崖(※失敗の怖れが極めて高い地位)」と呼ばれる現象です。

このことが非常に顕著に表れたケースとして、

2009年、世界的な金融危機の中、未曾有の危機に直面したアイスランドの選挙で、

ヨハンナ・シグルザルドッティルが発の女性首相に就任した出来事が上げられます。

もうひとつ、同様の事例として、2012年マリッサ・メイヤーの

ヤフーのCEO就任も上げられるでしょう。

これは、危機に直面したときに、伝統的に女性の特質、

たとえばコミュニケーション・スキルが高い点などに価値が置かれるために、

このような作用が生じると考えられます。

けれども、このようなタイミングでのみ、女性が偏愛されている現象は、

沈没しつつある組織という毒杯を、女性に押しつけることの現れでもあります。

船が最終的に沈没してしまえば、女性だから、と非難しやすくなるのです。

 

 

4. 家族のために休暇を取る男性は弱いと見られやすい

職場環境の改革によって、出産や、病気の血縁者の介護のために

男性が休暇を取ることは(無給のものであることも多いのですが)

簡単になりました。

とはいえ、人々の態度はあまり変わっていません。

研究によれば、私たちの多くは、男性が優先すべきは仕事である、

という伝統的な価値観を抱いたままで、そうでない態度を取る人には、

否定的な評価を下しがちであることが明らかになっています。

研究者たちはそれを「フレキシビリティの汚名」と呼びます。

ある研究では、女性ではなく男性が、

子供や病気の親族の面倒を見るために休暇を取った場合、

被験者たちは厳しい判断を下す傾向が見られました。

休暇を取ることは、仕事に貢献することなく、

同僚に迷惑をかけていると受けとめたのです。

ラトガーズ大学の心理学者による最近の研究では、

同様の筋書きで、この「汚名」の理由の手がかりを探りました。

被験者は男性従業員と、人事部長の面談の記録を読みました。

病気の近親者の介護をするために休暇を申し出た男性は、

そうでない社員より、能力が低いと見なされ、

低賃金でもかまわないと判断されたのです。

その理由として、被験者は、男性女性ともに、

その従業員は意気地が無く、女々しいと判断したからです。

男性が家族のために休暇を取っても良い、という方針が導入されて、

まだ十分な時間が経っていない、ということなのかもしれませんが、

私たちの態度の面でも、改革が必要なようです。

男性が家族を優先することについての偏見をなくす1つの選択肢として、

父親に対して出産・育児休暇を強制的に取らせることが考えられます。

私たちは、女性の場合も含めて、家族の問題に関することでは

偏見にさらされることが少なくありません。

妊娠の場合は特にその傾向が強いようです。

妊娠すると女性の頭の働きが鈍くなるという通説が広まっていて、

調査によると、適性試験や面接の結果が同程度であっても、

妊娠中の求職者は、そうでない求職者より、職に就きにくいことが明らかになっています。

 

5. 女性は「情け深い性差別主義」に嫌な思いをさせられる

情け深い性差別主義は、実際には出来そうもないことに対して

表面的な親切をしてみせます。

たとえば、イギリスの国民保健サービスを考えてみてください。

女性のマネージャーも男性と同じように、トレーニングコースに派遣されます。

けれども、やりがいのある仕事、

たとえば大きな事件や緊急事態の際にどのように対処するかといったことを

まかせられることはほとんどありません。

研究者は、こうしたことが起こるのは、

決定権を持つ男性が、未だに女性は男性の保護を必要とすると考えているからだと

結論づけています。

昔ながらの情け深い性差別主義的な事例です。

学生と共におこなった追跡調査では、

最も挑戦的な役割に参加したいと希望する女性は、男性とほぼ同数であったことが

明らかになっています。

ジョージ・メイソン大学のエデン・キングと同僚は、この結果をふまえ

「女性の前進を抑えつけようとするのは、

従来からある性差別主義者の敵対ばかりではなく、

一見、思いやりのある決定や行動でもあると言えるでしょう」

と結論づけています。

***

心理学の研究には、伝統的な性差別的なものの見方に逆らおうとした男性と女性が、

どのように罰せられるか、という事例であふれています。

これらの偏見を打ち砕くには、時間がかかるでしょう。

けれども、単にこうした偏見に自覚的であるだけでも、

対抗するチャンスが生まれます。

性別に関係なく、自分の本当の潜在能力を発揮できるようになることが、

私たちすべてにとってのゴールです。

昨年、カナダとシンガポールの研究者が、オリンピックのメダルの国別集計を見たときに

はっきりとしたパターンが明らかになったのです。

男女平等がより達成されている国で、

男女とも、数多くのメダルを獲得していました。

 

 

 

 


元記事:http://bit.ly/1KRR0la

(翻訳:服部聡子)

 

 

本:『トリガー 習慣をつくり なりたい自分になる』

Triggers: Creating Behavior That Lasts ?Becoming the Person You Want to Be

マーシャル・ゴールドスミス、マーク・リーター著

 

 

ベストセラー著者でありエグゼクティブ・コーチとして世界的に知られるマーシャル・ゴールドスミスが、

この最新の著書で、順調な仕事と生活から私たちを脱線させてしまう、

環境的そして心理学的なトリガー、きっかけとは何かを論じます。

    
自分自身では辛抱強く、人の気持ちが解り、問題解決のできる人間だと思っていたのに、

当てはまっていない自分に気づいたことはありませんか?

普段は動じない自分が、誰か特定の同僚がいるときだけは苛立ったり、

取り乱してしまったりすることに気づいて、驚いたことはありませんか?

また、自動車の運転中に、目の前に割り込まれてついカッとなってしまったことはありませんか?

    
マーシャル・ゴールドスミスが言うように、原因が何もないときにこういった反応が起こることはありません。

通常は、何か好ましくないトリガーが身の回りの環境のなかに現れた結果として起こるのです。

つまり、同僚として、パートナーとして、親として、あるいは友人として自分が思い描いている、

あるべき姿とは正反対の行動を引き起こさせてしまう人や状況があるのです。

    
これらのトリガーはあらゆるところに潜んでおり、現れると、いつも必ず調子が狂ってしまいます。

キッチンからベーコンの香りが漂ってくると、

医者がコレステロールを下げるように言っていたのを忘れてしまいます。

電話がなると、向かい合って座っている人の目を気にもせず、

条件反射的に光っているスクリーンに目をやってしまいます。

かくも頻繁に、周りの環境には私たちの手が及ばないものがあふれています。

しかし、たとえそうだとしても、ゴールドスミスが指摘するように、

それに対してどう反応するかは、私たち自身で選ぶことができます。

    
ゴールドスミスの著作のなかでもっとも力強く、ひらめきに満ちた本書『トリガー』では、

人生のなかでどのようにしてトリガーを克服し、

意味のある変革を起こしそれを継続さればよいのかを示します。

Angry sketch

    
変革というものは、どれだけ切迫していて、それが明らかに必要な状態であっても、難しいものです。

やらなければならないことが判っていたとしても、それを実行することとは異なります。

ゴールドスミスは、私たちは計画立案者としては優秀でも、

進むにしたがって環境が邪魔立てをするようになり、実行者としては不得手となってしまうと言います。

私たちは、当初の意思を忘れてしまうのです。

疲れ果て、穴の開いたバケツから水が漏れるように、自制心が流れ去ってしまうのです。

    
『トリガー』では、ゴールドスミスは、私たちが自身を毎日、簡単に省みることができる

「マジック・ブレット」という解決策を、

ゴールドスミスが言うところの「アクティブ・クエスチョン」と関連付けながら説明します。

これは、私たちの結果ではなく、努力を測るための質問です。

達成することと挑戦することは異なっています。

欲する結果を常に得られるとは限りませんが、挑戦であれば誰にもできるものです。

『トリガー』のなかでゴールドスミスは、

6つの「エンゲージング・クエスチョン」について詳細に説明します。

これは、私たちが、自身の至らない部分に気づくための努力を、

責任を持って行えるようになるためのものです。

    
本書は、私たちが人生における変革を起こし、

それを継続させ、なりたい自分になるために書かれた、

ゴールドスミスの個人的な経験に基づく脚本集です。

著者がこれまで仕事を共にした経営者やビジネス界の黒幕たちとの、内情が垣間見られる、

気づきの多いエピソードであふれています。

 


元記事:http://amzn.to/1HlZG5p

(翻訳:角田 健)

本:『シンプル・ルール』

Simple Rules: How to Thrive in a Complex World

『 シンプル・ルール:複雑な世界で成功する方法』

著者 ドナルド・サル、 キャサリン・M・アイゼンハート

 

 

自然界でもビジネスでも人生でも、単純さは複雑さを凌駕する

 

私たちは複雑さに取り囲まれています。

メールはひっきりなしに届き、いくつものリモコンを操作し、

スマートフォンの契約書から医療保険まで、

絡み合う規則のジャングルを、切り開きながら進まなければなりません。

    
けれども、複雑さは甘んじて受け入れなければならない運命ではないのです。

サルとアイゼンハートは、もっと良い方法がある、と主張します。

いくつかのシンプルな、けれども効果的なルールを身につけることで、

誰でも、どんなに複雑な問題にも、対処できる、と。

『シンプル・ルール』の中で、サルとアイゼンハートは、

私たちの複雑さに対するとらえ方に対して、疑問を投げかけ、

もっとうまく対処できるように新しいレンズを提供してくれます。

そうして私たちに、シンプルなルールとは何なのか、

シンプルなルールはどこからきたのか、なぜ効果を上げるのか、

驚くような世界へ案内してくれるのです。

著者は、重要な6種類のルールを明らかにします。

芸術家が創造性を得るためのルール。

連邦準備制度理事会が金利を決めるためのルール。

渡り鳥が移動ルートを覚えておくためのルール。

カーシェアリング・サービスをうまく運営するためのルール。

不眠症の人が眠りにつくためのルール。

登山者が安全に登山するためのルール。

Control 2E

    
緻密な研究と、興味深いストーリーを活かしながら、

ティナ・フェイが番組「30ロック」を制作するために、

サタデー・ナイト・ライブでの経験を体系化したルール

(ルール5:バカな人にバカと言ってはいけない)や、

空き巣が作りだした盗みのためのルール(「外に車が留めてある家はやめておく」)、

日本のエンジニアが、東京の鉄道網を最適化するために、粘菌のルールを模倣していることなど、

著者は思いがけないところに独創的な「ルール」を見出していきます。

さらに、新しい情報と、古いルールを改良し、

新しいルールを学ぶ実践的なヒントを披露してくれるのです。

情報の洪水と日々戦っている人、

限られたリソースを活かしながら、なんとかチャンスをものにしようとしている人、

悪習を何とかして改めたい人……

『シンプルなルール』は、単純さが複雑さを、どのように、そうしてなぜ、

手なずけていくのか、見事に解明されています。

 

 


元記事:http://amzn.to/1zMrcqW

(翻訳:服部聡子)