なぜあなたはブログを始めなければならないのか

これは ”https://www.entrepreneur.com/article/271049” の記事を翻訳したものです。

by マイク・カッペル

農場に行ったことがない人のために説明すると、たいていの農場には、「塩なめ場」と呼ばれる家畜用の大きな塩の固まりがあります。「塩なめ場」とは、まさにその言葉通りのもの。塩を置いて、動物たちが必要な塩分を補充するために、かならずなめに戻ってくるための場なのです。

さて、あなたが読者にコンピューター・スクリーンをなめてもらいたい、と思っているかどうかはわかりませんが、まちがいなくあなたのブログを「栄養源」として、読みに来る読者を望んでいるはずです。

 小企業にとって、ブログとはマーケティング・ツールではありますが、この「マーケティング」という言葉は、とりわけあなたが創業間もない起業家ならば、漠然とした言葉です。
おそらくあなたはマーケティングとセールスを、ほとんど同義語、その定義も、目的も、置き換え可能な言葉だと考えていることと思います。

実際はそうではありません。

セールスとは、購入客を獲得するプロセスです。マーケティングとは、あなたの商品をいかに正しくポジショニングし、顧客を探し、いかに彼らと連絡をとるようにするかを決定することです。

 

したがって、セールスを生み出すためだけにブログを始めるべきではありません。ブログは、あなたが顧客を見つけ、彼らに情報を発信し、デジタル世界での「塩なめ場」としてのあなたの価値を位置づける場です。

なぜ人はインターネットに向かうのか?

 ネットユーザーは、あなたの商品を購入する、というたった1つの目的をもってインターネットに向かうわけではありません。情報を求めてネットのあちこちへ進むのです。情報の提供もないまま、単に商品をクリックするためのブログであれば、広告にかけた多くのお金は無駄になります。さらに悪いことに、そんなブログは、ネットユーザーが情報を調べる上で、邪魔になっています。

このことから、私たちが提供すべきものがわかってきますね?

第1に、多くの人が知りたい、意味のある情報を提供することです。
 第2に、広告に妨げられることなく、知りたい情報が見つけられるようにしなければなりません。
 何かを得るためには、与えなければならないのです。
なぜあなたは起業家になったのでしょうか?
 それは、あなたが誰かの下で働きたくなかったからではありませんか?
 そうして、自分が他の誰よりも、何かがうまくやれると考えたからではありませんか?
 自分がある業界でのエキスパートであり、人に従うのではなく、自分でやり方を決めたかったからではありませんか?
このいずれかに、イエス、と答えるのであれば、あなたはすでにエキスパートなのです。全部にイエスと答えられなくても、少なくともその一部であっても。仮にあなたがエキスパートとまではいかなかったとしても、エキスパートとして、人前に出ているのです。起業家を夢見る人々が、あなたの後に続こうとしているのですから。あなたはうまくやることだけでなく、どのようにそれをするか、なぜそうするのかも重要なのです!

情報公開は無料で

 あなたが現在学びつつあることを、定期的にシェアし、あなたの読者がいつ、どこに行けば、自分の求める情報が手に入るか見つけられるようにしてください。あなたの商品やサービスを知り、フォローするようになった潜在顧客を、読み応えのある分量で、育てていきます。

たとえ彼らが、現在、買うつもりではないとしても、あなたのブランドは彼らの脳裏にしっかりと焼き付き、購入するつもりのほかの人に、シェアしてくれるかもしれません。

 サーチエンジンはあなたをランク付けする

 インターネット上には、膨大な量の情報があります。とてつもない量の情報があるのです。事実、18か月ごとに、世界中のデータの履歴は2倍になっており、しかもその率は加速しています。そんな拡大する一方の情報の海で、どうしたら目立つことができるのでしょうか?

サーチエンジンは非常に賢いものです。あなたがブログを始めれば、すぐにロボットがあなたの書いたコンテンツを、アルゴリズムを通して取り上げてくれます。あなたが正確な文法と表記を使用していれば、あなたのブログは高い評価を与えられるでしょう。

 さらにウェブサイトの訪問者が、気に入り、シェアし、あなたの記事にコメントを残してくれれば、いっそう高位に表示されることになります。検索する人と同様にサーチエンジンも、重要なキーワードを探しています。あなたのウェブサイトの中に、そうした言葉がどれほど使われているかによって、関連するサイトとして、あなたのサイトを押し上げたり、関連性に欠けるとして、取り除いたりします。ですからブログを始める前に、潜在顧客が知りたかる情報と関連する特定の言葉やフレーズを探し、検索でヒットするようにしておく必要があります。

あなたが提供するのは、独創的で事実に基づいており、ユニークで、質が高く、興味深く、そうして何よりも、読者が知りたがることと関連したものであるべきですし、バランスが大切です。私のアドバイスは、知恵を絞って、うまくまとめてあり、人を引き付けるような情報を提供してください、ということです。

 キーワードを散りばめることで、後々サーチエンジンの人気のあるトピックスに載ることもできますが、あなたのコンテンツがしっかりしたものでなかったら、どれほどあなたがサーチエンジンにアピールしても、意味がありません。実際のところ、せっかく人に来てもらっても、あなたの提供するものが気に入らなければ、あなたのブランドにとって、悪影響しか与えません。

 

あなたはブログをスタートさせた方が良いのか?

 ブログを書くことは、簡単なことではありませんし、サーチエンジンはあなたの制作物を監視しています。それでも小企業がブログを維持する意味はあるのでしょうか?
答えは、イエスです。
 ウェブサイトにブログがあれば、サーチエンジンの検索で、ない場合よりも上位に掲載されるからです。多くの人がインターネットを通じて情報を得て、購入を決めている今では、検索順位は重要です。
なぜ検索で「上位」に登場することが重要なのでしょうか? 簡単なことです。自分がどのように情報を得ているかを考えてみてください。あなたは検索するときは、サーチエンジンで上がってきた結果をスクロールしながら、すべて目を通しますか? それとも最初のページのトップだけに目を向け、そこから選びますか? あなたが最初のページのトップだけを見るのであれば、ネットユーザーの95%の内の1人です。

実際、こんなジョークがあるほどです。
「死体を隠すのに最適の場所は、グーグルの検索結果の2ページ目だ」

 あなたのブログは検索結果のどこに表れるでしょうか?  検索結果のトップに来ますか? 2番目? 3番目? それとも400番目ですか? これがいわゆる「ページランク」というものです。
あなたのブログに多くのアクセスがあればあるほど、あなたのコンテンツが魅力的なものであればあるほど、多くの人が好きになり、シェアすればするほど、あなたのランクは高くなります。
つまり、多くの人があなたのウェブサイトに目を留めるということなのです。ブログ、商品、サービス、何もかも、です!

どれくらいの頻度でブログ記事を書けば良いのでしょうか?

ブログを書くということは、エクササイズのようなものです。最高のエクササイズをするためには、あなたが実際にやってみるしかないのです。私のアドバイスは、自分ができると思ったとき、そうして、自分がやろうと思ったとき、ブログを始めてください。ブログにストレスを感じたりしないで、まず一歩を踏み出してください。
たとえ1か月に1度しか更新できなくても、やった方が良いです。毎週ならば、月に1度よりも良いでしょうし、毎日更新できればいっそう良いです。自分にできることから始めてください。書けば書くほど、簡単になっていくでしょう。そうやって生み出される新規顧客の増加は、言うまでもなく。
そうは言っても、あなたがブログに時間をかければかけるほど、本業のビジネスに費やす時間は、少なくなっていきます。そうなのです。マーケティングはあなたのビジネスの一部ではありますが、あなたの最後のブログのタイトルが「ブログに時間を費やすあまり、私がいかにビジネスの経営に失敗したか」であっては困ります。
時間は、えてして起業家にとっては、お金よりも貴重な通貨なのです。自分の時間を、賢く使わなければなりません。

 何を書くべきか?

ブログを始めたら、あなたのビジネスについて書いてください。
 顧客について書いてください。
 商品について書いてください。
 あなたの成功、失敗、教訓、学んだことについて書いてください。
 そうして、もしあなたに勇気があるなら、自分がいかに起業家になることを決意したかについてのおもしろい話を書いてみてください。

私の会社では、上記のことをかならず書くようにしています。私は読者に、給与ソフトを使うことの利点を、折に触れて知らせています。そうやって、読者のために、私の個人レッスンを行い、成長の機会として、教育を続けているのです(ちょうどブログを書くことと同じです)。

そうして、当然のことながら、私のチームが作っている小企業向け給与ソフトが彼らの生活を改善する、さまざまな方法を概説しています。

小企業が行う価値提案は、ほとんどが個人向けにカスタマイズしたもので、そうしたことは大企業にはできません。ブログは、そうした私たちの活動にテコ入れし、手伝ってくれるのです。
あなたのビジネスがうまくいっていたり、いかにあなたが仕事をしてきたか、などの個人的な話は、あなたのブランドに親近感を持つのを助けてくれます。ですから、それは重要なものです。今日のビジネスの世界では、ほんの少しの悪い評判が立つだけで、忘却に追いやられます。逆に言えば、ほんのいくつかの良いレビューがあれば、うまくいくのです。
私がこれまで述べてきたように、人がインターネットに向かうのは、情報を探すためです。その情報の中には、どの商品が良いかというレビューもあります。あなたがブログを通じて、顧客と関係を築いているなら、そのレビューを活用することもできます。というより、そうすべきなのです!

記事を外注できますか?

 はい。プロのブロガーに書いてもらうこともできます。お金を払って、読者が喜ぶコンテンツを書いてもらうことができるのです。こうした行為は、通常コンテンツ・マーケティングに分類されるものです。
けれども、コンテンツ・マーケティングは、うまくやらないと不誠実な印象を与えかねません。仮にあなたがブログを始めて、その記事を外注するつもりなら、優秀で、あなたが書いたものとよく似たトーンとスタイルで書ける人を探してください。また、ボイス・レコーダーに向かって、あなたが書くつもりのことを吹き込んだり、ライターにインタビューしてもらったりしてください。
どのような形式で共同作業するかはともかく、コンテンツと文章のスタイルは、あなたらしいものであることを、確認してください。

 

 記事は何本ぐらいあれば良いのでしょうか?  記事のクオリティはきわめて重要です。それだけでなく、長さもまた重要です。 理想を言うなら、あなたの競合よりも、もっと高い頻度で更新した方が良いし、 競合より多くの記事があった方が望ましいです。
そうすれば、サーチエンジンはあなたのウェブサイトの方が、競合のものよりもアクティブで、着実なサイトであると判断します。さらに、多くの人が検索するとき、ブログの記事が多ければ多いほど、あなたのサイトが目に留まりやすくなります。

こう考えれば良いでしょう。あなたが記事をブログに追加するたびに、あなたは「塩なめ場」に塩を蓄えているのです。その塩が多ければ多いほど、動物(すなわち潜在顧客)はあなたのウェブサイトを見つけやすくなります。

何よりも、あなたが今書いているブログ記事は、これから先の顧客を引きつけていくのです。だからこそ、私はこのように言いたいのです。
「ブログは与え続ける贈り物です」と。

 

― マイク・カッペル(実業家)
翻訳:服部聡子
出産・退職後、在宅で働ける資格を身につけるために翻訳を学び始める。
約5年フィクション/ノンフィクションの下訳、ウェブ・ライターを経て、
『限界はあなたの頭の中にしかない』に巡り合い、深い共感を覚え、弊社に。

英語の思いやり、日本語の思いやり

ダイレクトメールが来たと仮定してください。
ある品物が入荷した、というお知らせの後、末尾の文章が以下のようなものだったらどうでしょうか。

===

もし、お気に召さない場合は、ご返品も承ります。でも、(商品名)をご覧になれば、きっとお気に召すことを確信しております。前回に続けて今回もこのチャンスを逃せばきっと後悔なさるでしょう。もしも、(商品名)を手にできる○人のうちの一人になりたければ、すぐご連絡ください。

===

なんとなく、失礼なダイレクトメールだな、と思いませんか?
特に違和感を覚えるのが「~を手にできる○人のうちの一人になりたければ」という箇所だと思います。

実はこの文章、原文はジェイさんのとある本の一節で、先に挙げたのが先行訳なのです。

念のために申し添えておきますが、これは文法的に見ると、決して間違った訳ではありません。
原文では

If you’d like to be one of the (number) people who gets one of these ___

確かにその通りなのです。

ただ、ここには英語と日本語の間の「思いやりの表し方」の違いが、端的に表れています。

昔々の話なのですが、高校時代、私はアメリカ人の留学生の男の子と親しくなりました。親しいといっても、まあかわいらしいもので、一緒に学校帰りに、マクドナルドに寄ってマックシェイクをすするとか、日曜日に映画を見たり動物園に行ったりする、ぐらいのものですが。

その彼が何かあるたびに、
「君はぼくと~に行きたい?」
「君はぼくに~してほしい?」
と英語で聞いてくるのです。
当時、まだ英語の知識もさほどなかった私は、それを上記のように、直訳して聞いて、そのたびにイエス、イエスと答えながら、何でいちいちこんなことを聞くんだろう、「一緒に行かない?」でいいじゃないか、「このぼくと~に行きたい?」だなんて、コイツは自分をアイドルか何かだと思ってるんだろうか、と、微妙におもしろくない気持ちでいたのでした。

やがて数年が過ぎ、英語の知識も増えていく中で、この表現が英語では非常に一般的であること、同時に英語圏の人が「相手の意思を大切にする」ということを学んだのです。

日本人が「一緒に行こう!」とごく当たり前のように誘うのに対し、英語では「君は~したい?」とごく当たり前のように相手の意思を確認するのです。

これは、さまざまな局面で現れます。
何も聞かず、黙って手を差し伸べるのが日本的な思いやり。
「あなたには助けが必要ですか?」と相手の意思を問うて、必要です、という意思表示があれば、手を差し伸べるのが、英語圏の思いやり。

苦しい、つらい、困っている……そんなとき、「助けが必要ですか」と聞かれると、日本人は屈辱を感じることがあるかもしれません。でも、それは日本人的感覚。個と個が確立している英語圏にあっては、勝手に手を差し伸べるほうが、相手を尊重しないことになる。

もちろんそれが当てはまらない場面もあるのですが、基本的な表現レベルでは、間違いなくそれは言えるのです。

社会のあり方や個々人のあり方に違いはあっても、英語圏であろうと日本であろうと、人を思いやる気持ちに変わりはありません。ただ、社会や個人のあり方に規定されて、表現がちょっとちがうだけなのです。

そう考えていくと「~を手にできる○人のうちの一人になりたければ」というのも、相手の意思を確認している表現であって、決して失礼なものではないのです。

でも、私たちにとって、その表現はなじみがありません。
なじみがない、ということは、真意が伝わりにくいということでもあります。
文法的にはまちがっていなくても、真意が伝わらないという意味では、やはり一種の誤訳とは言えないでしょうか。

どうしたものか、と考えたのですが、私はその部分をこんな風に訳してみました。

「○○様には__を手にできる幸運なお客様になっていただきたいと願っておりますので、ぜひ早急にご連絡くださいませ。」

どうでしょうか。
少し、意訳しすぎ、とお考えでしょうか。


ハットリサトコ
ShimaFuji IEM 翻訳チームの一員です。

神は細部に宿る、という言葉は、まさに翻訳のためにある、と信じ、言葉ひとつひとつと格闘する毎日です。残念ながら、木を見て森を見ず、どころか、葉っぱ1枚の葉脈に目を奪われて、森の存在を忘れることもしばしば。

中年女性実業家の挑戦

by ビビアン・ザン
(これは”:http://bit.ly/1Cw0QKf”の記事を翻訳したものです)

シリコン・バレーの誤解と闘う女性たち

 
現代の起業家活動モデルの中で、40代から50代の女性が起業した会社が急成長を遂げています。「起業とは20代の男性のおこなうもの」という思い込みが未だ一般的な中、この事実は続く女性のさらなる挑戦をうながすことになるでしょう。

「今日、会社をスタートさせるのは、25歳の男性エンジニアばかりではありません」
こう語るのは、ポートフォリアのCEOであり創設者、トリシュ・コステロです。

「実際、これまでも起業するのが若い男性だけ、ということはなかったし、現在はもっと年齢の高い人が、数多く起業しています。女性にとって、子供を持つということは、人生がより複雑になるということです。やがて子供があるていど成長して、私たちは今度は、創造的なエネルギーを、真に立派な会社を創りあげることにふり向けるようになったのです」

カウフマン・ファンデーションが昨年発表したレポートによれば、年代別の起業では、45-54歳の起業が、ほかのどの年齢層よりも多いことがわかっています。新規起業者の中で、この年齢層の割合は、2003年には25.2%だったのに対し、2013年には30%まで上昇しました。
一方で20歳から34歳までの年齢層は、2003年の26.4%から、2013年には22.7%に低下しています。

反面、こうした年齢になって会社をスタートさせた女性の多くは、特有の問題、女性差別だけではなく、年齢差別という問題にも直面している、といいます。

これを受け、アビーポストの創設者であるシンシア・シェイムズ、カンガドゥーの創設者サラ・シェーアー、ルビー・リボンの創設者アナ・ゾノサらは、人生の第二幕に寄せる期待をくじこうとする、女性起業家特有の諸問題の克服に向けて、共に進んでいこうとしています。
 

競合相手は自信過剰の20代

 
シリコン・バレーの投資家のパターン認識は、きわめて現実的なものです。もし、あなたがそのパターンから外れていたなら、あなたにとっては不利に働くことでしょう。

「20代の男性は、私たちとはまったく異なるスタイルの売り込みをしていきます。彼らは質問に対して、かならずしも答えを知っている必要はなく、熱意がありさえすれば十分なのです。逆に、そのために彼らの話には説得力があるのです」

こう語るのは、カンガドゥーの創設者シェーアーです。
彼女は、忙しい両親やその友人が、もっと助け合いながら育児ができるようなアプリを40代で開発しました。

「あなたが戦っているのはこういう相手だということを、知っておく必要があります。ですからふさわしい投資家に的を絞り、中年の女性創設者であることを補うためにも、自信を持って相対することです。」
 

アウトサイダーだと感じる場面は多い

 
「ミーティングに出席して、その中の最年長者であるというのは、やりにくいものです」

こう語るのは、大きなサイズの服を販売するアビーポストを立ち上げたシェイムズです。彼女は2012年、40代前半で起業しました。

「でも、そこにすわったまま、自分が最年長であることをくよくよしているだけだと、完全に疎外されたような気分を味わうことになるでしょう。こんなところで、私はいったい何をやっているの? みたいな気持ちに。私は1994年からIT業界にいたので、周囲が若い人ばかり、というのが、どういうものか、わかっていました」と彼女は続けます。

「私はそんなことは気にしません。そういう性格なんです。私はクールなんです。サッカー・ママではないし、ママ・ジーンズなんて絶対にはきません。最年長者だからといって、物怖じする必要なんて、どこにもありません」

シェイムズは、こうした状況では意識的に年齢が有利に働くことを思い出すようにしている、と言います。自分には、どんなに頭の良い20代でも持っていない経験知がある、と。

「40代の女性には、さまざまなことをうまくやりくりする能力があります。その能力のおかげで、私たちは最高の起業家になれるはずだと思うんです」
 

たとえ不快な質問をされても

 
シェイムズもシェーアーも、若い男性なら(女性でも)決してされないような、家庭生活についての質問をこれまでにされてきた、といいます。シェイムズが初めてある投資家から、子供がいるというのに、どうやって会社を経営できるのか、と尋ねられたときは、予想もしなかった質問に驚いて、答えることができませんでした。2度目に聞かれたときは、彼女は用意していたとおりの答えをしました。投資家に、あなたはどうやって両立させていらっしゃるのですか、と聞き返したのです。

けれどもシェイムズは、これは良い返事ではなかった、とふり返ります。
「こうした状況では、自分の気持ちや、会話の雰囲気を損なわないようにしなければなりません」

シェーアーはアドバイスします。
「20代ではこんなことは話題にもなりませんでした。私も子供を持つつもりもありませんでしたから。でも、私の場合、女性であることについて、とやかく言われたことがないだけでも、幸運なのかもしれません」
 

実績で証明するしかない

 
無意識の偏見がそこらじゅうにある、とシェイムズは言います。しかも、ほとんどの男性投資家は、中年の女性が解決しようとしている問題を、自分に引きつけて考えることができません。

「私は実際に、ある投資家から『大きなサイズの服が必要な連中は、金を持っていないじゃないか』と言われたことがあります」

中年の女性起業家が、男性投資家とつながりを持つことは、簡単ではないので、資金のための売り込みをする前に、十分な数の顧客を確保しておくことが重要だ、と語るのは、ゾノサです。ゾノサは52歳の時、退職して、ルビーリボンを起ち上げました。

「20代から30代のあいだは、私には成功する会社を築くだけの信頼がありませんでした。起業を決意した段階で、あなたがすでにしっかりしたキャリアを築いていたとして十分に目を見開いておかなければなりません。起業するとは、もうひとり赤ちゃんを持つようなものなのですから」

今日、ゾノサは自社製品を店舗やサロン、またリビングルームでも売る、800人の女性スタッフを擁しています。

以前、コステロは、名の通った野心的なエンジェル投資家を紹介してもらおうと投資家窓口に問い合わせたことがあります。窓口の女性は彼女に、その投資家は「性的な機会」を探しているだけだから、会う価値はない、と教えてくれました。

「問題は、25歳の男性は、消費者の主流ではないということです。テレビゲームと大画面テレビでは、アメリカの中心的な消費者かもしれませんが」とコステロは言います。彼女は50代でポートフォリアを起ち上げました。

「アメリカの消費者の中心は女性で、消費財の85%は彼女たちが購入しています。ほとんどの企業の製品を購入しているのもまた、彼女たちなのです。」

最高の投資家とは、主流の消費者だった経験を活かして創設されたちゃんとした会社に、目を向けることができる人のことです。彼らなら、起業家としての成功は、青年期、とりわけ20代の男性に限るものではないことを証明しようとしている、人生も半ばになって起業した女性たちのことも認めることができるでしょう。

「れんがの壁に突き当たるたびに、私はそれを乗り越えるか、下をくぐるか、ぶちこわすかしてきました」と語るのはシェイムズです。

「どんな女性起業家にも当てはまる私のおすすめの方法は、力ずく、ということです。とりわけ、中年になって会社を始めようとする人にとっては、ね」

著者:ビビアン・ザン(フリーランス・ライター)


元記事:http://bit.ly/1Cw0QKf

訳:服部聡子(ShimaFuji IEM 翻訳チームリーダー)
出産・退職後、在宅で働ける資格を身につけるために翻訳を学び始める。
約5年フィクション/ノンフィクションの下訳、ウェブ・ライターを経て、
『限界はあなたの頭の中にしかない』に巡り合い、深い共感を覚え、弊社に。

「プロセス」としての仕事

 

突然ですが皆さんは、自動車保険の対応に満足しておられますか?

 

と言ってもこれは、ある特定の保険会社を売り込むような話ではありませんのでご安心を。

あくまでジェイ・エイブラハム翻訳裏話です。

 

私の夫が昨年小さな交通事故に巻き込まれたとき、私は初めて保険会社とまともにやりとりをしました。

それまで知らなかったのですが(そしてどの保険会社でも同じかどうかはわからないのですが)事故に遭うと、「怪我に関する担当者」「自動車の損傷に関する担当者」など複数の担当者が付くことになり、私も3人の担当さんと連絡を取ることになりました。

最初になんとなく「私は○○担当です」という紹介を受けたような気はするものの、気が動転しているし、保険の仕組みもよくわからないし、私はしばしばそれぞれの担当さんに、関係のないことを質問したりしたようでした。

そのたびに「いえ、それは私の担当ではありませんので…」と、やや冷淡な口調で言われちょっと腹を立てたり、恐縮したりしたものです。

 

そんなときにジェイさんの動画を訳していて、

Process

という言葉が出てきました。

過去にも色々な場面で出てきた単語で、これを私たちは適宜「プロセス、過程、工程」などと訳してきましたが、そのときはなんとなく訳に迷ってしまいました。

そのときジェイさんはコピーライティングについて話しており、

「その商品がどのように人の役に立つか考え、それを人々の心に届くようなメッセージとして構成し、その商品を実際に買ってもらい、人々の役に立つ、という『プロセス』は、とても報いが大きいものだ」

という意味のことを、伝えようとしておられたのでした。もちろんこの全てを言葉にされることなく、そう伝えようとした、という意味ですが。

それで、字幕が出る時間が短いことを考え、また前後の文脈からもなんとなくそれが伝わるだろうと判断した私は、ざっくりと「その『仕事』は報いが大きい」というように訳したのです。

が…

プロセス=仕事 という方程式が、私にはどうしても不自然に感じました。もちろん、翻訳(特に字幕訳)では、全てを字義通りに、定訳通りに、訳すことはできません。しかし、私にはここで使われた「プロセス」という言葉が、とても大きな意味を帯びているように感じたのです。

もっと個人的な感情を言ってしまうと、「果たして自分は、自分の仕事を『プロセス』として見ているだろうか?」という疑問がむくむくと沸いてきたのでした。

翻訳という仕事は、実はかなり地味です。ひたすらにコンピューターに向かい、言葉と向き合い、その前後にあるものを忘れてしまいそうになることがあります。

自分に割り当てられた仕事、特にそれが専門性に特化している場合に、それに真剣に取り組む姿勢が悪いものだとは思いません。むしろ、日本人ならではの「職人気質」というか、こだわりを持って仕事に取り組む人を私は尊敬し、自分もそうなりたいと思っています。

しかしそれが、その場だけの、独りよがりのものになってしまう傾向は避けたいところです。

ほとんどのビジネスに、ジェイさんが言ったようなプロセスが存在していることでしょう。「どんな人の、どんな問題を解決できるか」「実際に使ってもらったときにどう感じてもらえるか」といったところから始まり、商品やサービスを提供し、それに対するフィードバックをもらい、商品やサービスに反映させる、といったサイクルです。それを無視して、自分の主観だけに頼って「良いもの」を作ったところで、人に対価を支払ってもらえるかと言うと、怪しいところです。もはや「仕事」と呼ぶことすらできないように思います。

特にサービス業などの場合、Service という言葉は文字通り「人に仕える」ことを意味しています。プロセスを意識してこそ、仕事として成り立つように思います。

そういえば「仕事」という言葉にも「仕える」という漢字が使われていますね。

自動車保険の対応を受けたときに、なんとなくこんな風に思ったことを思い出しましたが、組織が大きければ大きいほど、自分の仕事を「プロセス」の一部と見ることは難しくなるのかもしれません。仕事を分担しなければ、クライアントに満足してもらえるような質の高いサービスを提供することは難しいでしょうし。

それでも、自分の仕事を「プロセス」として見ることを忘れないでいたい、と私は思います。

小さなネジが大きな飛行機を支えたり、小さな歯車が大きな時計を動かしたりするのと同じように、小さな小さな自分も、大きなプロセスの一部であることを、常に意識したいものです。

(a_washiyama)


a.washiyama

a_washiyama:
ShimaFuji IEM 翻訳チームのメンバーです。
翻訳家としてまだまだ勉強中ですが、ジェイさんのお考えを分かり易く、正確にお伝えできるよう、邁進して参ります!

5月10日メンタークラブ地域勉強会大阪が開催されました

今回も北海道や静岡など遠隔地から参加された方や、初参加の方も交えて、熱い議論が活発に交わされていきました。

今回のテーマはジョイント・ベンチャーとリレーショナル・キャピタル(信頼関係の資産)。
どちらもジェイ・エイブラハムのカギとなるコンセプトですが、とりわけリレーショナル・キャピタル(信頼関係の資産)は誤って理解され、ジョイント・ベンチャーと混同されていることの多いコンセプトです。

自分のビジネスの足りないものは何だろう?
それを持っているのは誰だろう?
そう考えて、自分のビジネスが求めているものを持っている人と提携し、ビジネスを推し進めていくのがジョイント・ベンチャーです。

一方、リレーショナル・キャピタル(信頼関係の資産)の深い意図を理解しやすいように、実際のワークにして提供しました。

今回のメンタークラブでは、自分の実際にやろうとしているビジネスを、まずジョイント・ベンチャーの観点から、自分に欠けているのは何か、自分は今何が必要か、というところから話し合っていきました。それぞれが「自分に欠けているもの」を発言したところ、即座に、それなら私のところにある、私が関係者を知っているので今度紹介できる…とメンバーからの提案があり、新しいマッチングの可能性がつぎつぎに生まれていきました。

さらにその後、リレーショナル・キャピタルの観点から自分のビジネスを改めて見直す段階になると、今度は逆に自分の持っている(これまでに気づかずにいた)資産が明らかになり、それぞれのビジネスが、いっそう具体的になったり、ほかとのつながりが見いだせたりして、深まっていきました。

ほかの人に向けて自分の考えを説明することで、自分の中で整理され、また考えの足りないところや問題点が見えてきます。また、人からの意見を聞くことで、新たな視点を自分のものにすることができます。話し合うことを通して、新たなつながりが生まれていき、そのつながりがまたビジネスの新しい展開の可能性を開いていく…。それぞれバックグラウンドも違うし、経験も違いますが、志を持つ人同士の話し合いは、非常に密度が濃く、刺激的で、同時にとても温かく楽しいものでした。

メンタークラブでは、奇数月に行われる各地勉強会のほかに、各週のオンラインセッションも実施しています。無料で体験ができるので、興味をお持ちの方はぜひご参加ください。

各地の勉強会は、それぞれの地域のリーダーが、関西は、代表島藤真澄が講師を務めています。島藤が発表したカリキュラムを、関西で参加したリーダーが各地に持ち帰り、ファシリテーションしています。

 


ハットリサトコ
ShimaFuji IEM 翻訳チームの一員です。出産・退職後、在宅で働ける資格を身につけるために翻訳を学び始めました。
約5年フィクション/ノンフィクションの下訳、ウェブ・ライターを経て、『限界はあなたの頭の中にしかない』に巡り合い、深い共感を覚え、ShimaFujiIEMのチームに加わわっています。

超富裕層に超個人主義―「超」に振り切る集客で観光大国日本を実現できる

こんにちは、トイアンナです。
政府が「観光大国」として日本を活性化する目標を定め、2015年の3倍となる6,000万人の観光客誘致を達成しようとしています

そして政府の「観光立国」に伴い、下記の動きがすでに生まれています。

・宿泊施設の増加
観光客を誘致したいなら、宿泊先なしには始まりません。日本ではホテルだけでなくAirBnBに代表される「民泊」が増加。
さらに高級ホテルグループ「星野リゾート」も庶民派エリアの新今宮に建設が始まり、再開発が進んでいます。

・多言語に配慮したサービスの普及
宿泊施設の次は「交通の便」です。都心部はすでに私鉄・JR共に公共機関が縦横無尽に走っています。一方で駅名が英語表記だと長くて暗記できなかったり、駅の出口が多すぎて道に迷ったりといった「わかりやすさ」には課題が残っていました。読者の皆様も新宿や梅田駅の「迷宮」に迷われた経験はございませんか? 初めて日本へ来た観光客が日本の複雑な交通網を理解することはまず不可能です。

2016年より都内ではJRの駅名に遠し番号が振られ、駅名が判らなくても乗降者できるようになっています。たとえばローマ字だと長い「Musashi-Koganei(武蔵小金井)」を覚えなくてもJC15という通し番号だけで乗降できるようになり、案内する側・される側も便利になりました。

・グローバルサービスの参入
さらに飲食店のデリバリーサービス「Uber Eats」を始めとした、世界的企業が日本へ次々と参入しています。慣れ親しんだサービスなら安心して観光客も使えるため、集客には欠かせません。

ところがこういった状況を尻目に、日本企業の多くは未だ「何をすればいいか」と戸惑っている段階です。

本来ヘアサロンや歯医者などは外国人来訪者が増えれば大きな売上アップのチャンスになるのですが、「うちは英語のできるスタッフもいないし」と日本人顧客にばかり目を向けてはないでしょうか?

日本は観光客を増やすチャンスをいくらでも持っている

もともと日本は観光客を増やすポテンシャルが高い国です。

・「グルメの首都」と呼ばれる最高のレストラン群
・沖縄から北海道と「冬と夏」を両方楽しめるリゾート
・京都を中心とした歴史的建造物の多さ
・家族連れでも安心の治安

ここまで集客できる要素があるのに「むしろ少なすぎる」のが日本の観光客数。その原因はサービスの「画一化」にあると、経営者デービッド・アトキンソンは指摘します。

超富裕層向けサービスがない国、日本

たとえば、日本のホテルでは年収10億円あるような超富裕層に対応できる施設がほとんどありません。ロンドンの一番高いホテルは1泊1万ポンド。なんと144万円です!(2017年5月3日現在)一体誰が使うんだ、とお思いになるでしょうがロンドンを一望できることが人気で、満室なこともしばしば。

それに対して東京で一番高いと噂の「アマン東京」でも、1泊が20万円を超えることはめったにありません

また、ロンドンを始めヨーロッパでは「追加料金を払って他の客より先に入場する」サービスがよく見られますが、日本では貧富に関係なく大行列を作って待つのがよいこととされています。例外はディズニーとUSJくらいです。

しかしその一方で、こう考えたことはないでしょうか? 「あの展示会は行ってみたいけど混んでるからいいや」と。我々と同じことを富裕層は考え、日本でお金を落とさないのです。

このように日本では「そこそこお金持ち」までしかターゲティングできておらず、マーケティング上「超富裕層」向けサービスが不足しています。

超〇〇を狙えば、市場を独占できる

そしてこの現象は「超富裕層」だけではありません。サービスが画一化してしまったせいで、個性ある観光ができていないのです。観光客に日本で思いっきりお金を落として欲しいなら「超〇〇」な方へターゲティングしてマーケティング施策を練る方が成功します。

たとえば……

①アニメファン向きのツアー:
コミックマーケットの時期に合わせてアニメファンを誘致。
アニメの「聖地巡礼」から同人誌即売会の交渉まで代行

②グルメツアー:

日本の有名レストランを巡ることを目的としたツアー:
レストランの予約時間以外はすべて自由行動にし
予約の取りづらい一流レストランを一斉手配

ここではツアーだけを例にしましたが、歯医者なら「超富裕層向けセラミック施術」を用意できます。ヘアサロンならアニメファンを見越して「キャラクター名を言ってもらえれば再現したヘアスタイルにするサービス」を準備するだけでも大きな売上アップへ繋がります。

日本ではとかくサービスの均質化を求めますが、むしろこれからは「差別化」の時代。観光立国として「超〇〇」と呼べそうな尖った顧客を獲得していきましょう。

参考文献:
デービッド・アトキンソン『新・観光立国論―イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」』


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

 

安易な無料配布で700人のリストラ!?マーケティングの失敗例に学ぶ

こんにちは、トイアンナです。
「集客のため、無料で商品サンプルを配る」施策は、わざわざ教わらなくても誰もが経験する王道のマーケティングです。

スーパーの試食品などは日常的に見かけますし、引っ越し業者がお見積りだけでくれるプレゼントはなかなかの量。お米から洗剤一式まで無料配布されると、ついその会社を選びたくなりませんか? こういった施策をマーケティングでは「サンプリング」と呼びます。

返報性の原理を利用した無料配布

サンプリング戦略がここまで広く採用されているワケは、費用対効果がいいからです。すなわちサンプルを配った分だけ、集客へ繋がる可能性が高いから。

高級車のように単価が高かったり、何度もリピート購買を狙えなかったりする商品では使えませんが、食品や消費財、美容室のトリートメントなど「何度も使ってくれる」「比較的安い」商品にはうってつけです。

ではなぜサンプリングは費用対効果がいいのでしょうか。その秘密は心理学における「返報性の原理」にあります。

多くの人は人からものをもらうと「何かお返しをしなくては」と考えます。それどころか、自分が親切をした上でお返しをしない人へは不快感すら抱くこともあります。たとえばタダで置いてあるからと飲食店のつまようじをゴッソリ持ち帰る人がいたら「この人、タダだからっていくらなんでも……」と思うでしょう。

このように「親切心に何かでお返ししたい」と感じることを返報性の原理と呼びます。

無料サンプリングはこの「タダだからって貰いっぱなしじゃ申し訳ない」という気持ちを利用して、お返しに何か購入しよう、と動機づけるのです。

今回は飲食店を例として見てみましょう。これまでの成功例に多いサンプリングは「無料のコーヒー」配布です。古くはカルディが2009年に実施し、短期間で店舗数を4.4倍へ拡大させました。

最近ではマクドナルドの100円コーヒー無料配布キャンペーンが記憶に新しい方もいらっしゃるかもしれません。

何社かが繰り返しているキャンペーンであっても、業界が違えば目新しく映ります。カルディはおしゃれな輸入食品店。ファストフード店のマクドナルドが同じ施策をすれば充分「新しい!」と興味を持っていただけるのです。

しかし、これらの成功例だけを胸に「ウチも配ろう」とは思わない方が賢明です。

無料コーヒーで700人の雇用危機を生んだWaitrose

いくつもの店舗で成功例とされてきた「無料コーヒーの配布」。ところが全く同じ施策で売上アップどころか、多数の店舗閉店へ追い込まれたスーパーマーケットの大手チェーンがあります。

イギリスの大手スーパー「Waitrose」が同様に無料コーヒーを配布した結果、「無料」に惹かれるだけで何も商品を購入しない客が殺到。結局、スーパーへ来店してもコーヒーだけもらって1品も買わない悲劇を生みました。今年だけでWaitroseは6店舗を閉鎖、それに伴い700名のスタッフが雇用継続の危機を迎えています。

では、カルディやマクドナルドは成功したコーヒーの無料配布でWaitroseはなぜ失敗したのでしょうか?

ブランドイメージにそぐわない戦略は売上を奪う

ここでWaitroseの情報を少し追加させていただきます。Waitroseはイギリスの高級スーパーで、日本で言えば紀伊国屋や成城石井のような存在です。強みは無農薬食材や世界中から集めた豊富な品揃え。日本食もお蕎麦や寿司を始め「わさび豆」まで扱う豊富さです。これらの強みと引き換えに商品の価格は高く、庶民はまず訪れません。

そして無料のコーヒーに惹かれる層はその「庶民」だったのです。

Waitroseにとって「無料配布」に惹かれるような層はターゲット顧客ではありません。
ですからいくら人を呼び込んでも、お客様になりそうな人はほとんど呼び込めていなかったのでしょう。

対してマクドナルドやカルディは、ごくごく普通の方が使う場所。「無料」に敏感な家族連れも多いため、そのまま店舗内購入が見込まれます。

Waitroseのように「高級」なブランドイメージを作ったら、たとえ世間が値下げラッシュに沸いている時期でも高級路線を貫く必要があります。ロレックスやフェラーリが「今だけ30%割引!」という施策をしても、いい顧客が集まらないのと同じです。

消費者は返報性の法則より強く「一貫したブランドイメージ」を求めます。「他社も成功しているし……」と安易にマーケティング戦略をマネすると、ブランドイメージを傷つけ、長期的な売上ダウンへとつながりかねません。

他業種の戦略から学び、自社へ適用するのは優れたマーケティングの応用方法です。他方、単にコピー&貼り付けした施策ではブランドイメージに反したやり方となり、却って売上を傷つけることがあります。社員から施策を募る際は自由にアイディア出しをしたのち、ブランドイメージを保てる施策だけ厳選する必要があるのです。

参考文献:重田修治『なぜか買ってしまうマーケティングの心理学』


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

 

女性のためのBizワークショップ大阪が行われました

4月12日、大阪で開かれた「島藤真澄・女性のためのBizワークショップ」に参加しました。

メンタークラブでの勉強会から派生した女性向けのワークショップがスタートしたのは、この4月からです。4月8日に博多で第1回が開催され、私が参加した12日の大阪は、その第2回でした。お目にかかるのも初めての方ばかりということで、少し緊張しながらの開始でした。

まず、みんなでワークをやって緊張をほぐします。
初めて言葉を交わす人でも、ひとつのワークに取り組むことで、あれこれと考える間もなく、自然と言葉を交わしています。気がつくとずいぶん前からの知り合いのように、気軽に話ができるようになっているのです

全員のワークが終わったら、今度は自己紹介。
自分がこれまでやってきたこと、現在やっていること、そうして行き詰りを感じていること。

この「自己紹介」も、単に自分を紹介するだけには留まりません。自分が感じている行き詰り、物足りなさの中に、「本当の自分」「本当に自分がやりたいこと」が隠れています。ふだんは自分自身でも気が付いていない、「本当の気持ち」に気づくきっかけになります。

そうしてこのワークのおもしろいところは、それをほかの人と共有することによって、自分が行き詰まりを感じていることが、今度は別の人の「解決策」につながり、それがこれまでにはなかった新しいビジネスへとつながっていく、というところです。

自宅で「在宅秘書」(この言葉を作ったのもその方だそうです!)をしながら、400人にも上るシングルペアレントの会を結成された方、これまで事務職をされていたけれど、結婚を機にこれまでの職を離れて、もっと自分が生き生きとできるような新しい仕事、新しい働き方を求めておられる方、離婚後、「食」のスペシャリストになるために、栄養士の資格を取ろうと、子供を育てながら短大に行き、資格を取られた方、フラワーアレンジメントの有資格者で、フラワーショップの経営の経験もお持ちの方…

それぞれの経歴、さまざまなバックグラウンドをお持ちの方が、できること、持っているものを出し合い、足りないところを、別の人の持っているものやできることで補い合う話し合いをしながら、新しいビジネスの可能性がいくつも生まれていきました。そうしてこの話し合いをもとに、実際に動きが始まっています。
かつて日本では、女性は二十代の半ばには結婚し、家庭に入り、専業主婦となることが、「当たり前」のライフコースだった時代がありました。男性が一家の「稼ぎ手」となって会社で働き、女性は家の中で家事・育児を担う、という分業体制が、社会にとっても望ましいことだったのです。

ところが現代では、社会の側が「働き手」としての女性の力を求めています。不況や労働環境の悪化によって、女性の経済力がなくては家庭が成り立たない、という厳しい背景もあります。にもかかわらず、女性の給与は依然として低いまま。女性の貧困、とりわけシングルマザーの貧困が問題になっていますが、問題なのは彼女たちが働いているのに、貧困を余儀なくされている、ということです。

その一方、従来から女性の役割とされてきた「家事・育児・介護」の役割の中心を担うのは、依然として女性が期待されています。とりわけ、女性にしかできない「出産」は、女性のキャリアを考える上で、避けては通れない大きな問題でもあります。

現代の日本で、女性が「自分らしく生きていく」ためには、何が必要なのか。そうして自分に何ができるのか。自分のできることは、誰の、どんなことに役立っていくのか。ワークショップでは、さまざまなことが話し合われましたが、その根本にあるのはそういうことなのだ、と強く感じました。

もちろん、実際の雰囲気はまったく堅苦しいものではなく、和気藹々とした中で、活発に意見や感想が出し合われていました。そのときが初対面であったにもかかわらず、私自身、皆さんとずいぶん以前からの友達のように感じられ、今後もぜひ集まりたい、と思いました。「他者紹介」のワークの効果を、みなさんもぜひ体験してみてください。

これからもこのワークショップは全国で続いていきます。
4月23日は四日市で開催です。
もう一歩先へ進みたい、つぎの扉を開けたい、という気持ちをお持ちの方の参加をお待ちしています。


ハットリサトコ
ShimaFuji IEM 翻訳チームの一員です。出産・退職後、在宅で働ける資格を身につけるために翻訳を学び始めました。
約5年フィクション/ノンフィクションの下訳、ウェブ・ライターを経て、『限界はあなたの頭の中にしかない』に巡り合い、深い共感を覚え、ShimaFujiIEMのチームに加わわっています。

「雨が多いイギリスで傘を売るな」マーケティングで欠かせないヒアリングの技術

こんにちは、トイアンナです。
私は現在イギリスに住んでいますが、日本製品は食事から雑貨まで高品質なことで知られ、愛されています。特にトレンドへ敏感なロンドンではいたるところに寿司屋やラーメン店があり、異国感が薄れてしまうほど。

雑貨ではMUJI(無印良品)、UNIQLOが名だたるブランド品と並んで出店しており、特にUNIQLOのヒートテックは大ヒット商品となりました。

このような成功例を踏まえ「同じように高品質なものをヨーロッパへ出せば売れるのではないか」と日本企業の多くが進出を試みています。しかしその多くは辛くも惨敗し、撤退せざるを得ない現状があります。なぜ日本の製品は素晴らしいのに、現地で売れないのでしょうか。

今回は「自分が知らない分野」へ進出する際にありがちなマーケティングの失敗例と回避術をお伝えします。

雨が多い国だからと傘を売ろうとする国、日本

イギリスは雨と霧の国――そう聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。昨年はドラマ『シャーロック』が流行りましたが、その中で多くの殺人事件やバトルシーンが霧の中起きていました。

そうすると、日本企業の担当者はこう考えます。「イギリスは降水量が多い? だったら日本の傘はよく売れるに違いない。ざっと調べてみたが、イギリスの傘は粗悪でデザインもシンプルすぎる。日本の傘は丈夫でコンパクト、さらにデザインが豊富。さらに手軽に買える値段でもある。これなら輸出するだけで売れるはずだ」

そう考えて傘を売ると、これがさっぱり売れません。それもそのはず、イギリス人は雨が降っても傘を差さないのです。

浅いマーケティング分析では測れない真の需要とは?

イギリスの雨は日本と違い、ぽつぽつと大人しく降り、そしてすぐ止みます。1日中雨の日は珍しく、長くて1時間で止むのが特徴。むしろ雨は降らないままどんより曇りだけが続くことも珍しくありません。

こういった雨が多いと、傘をいちいちさすのも面倒くさいからと、折り畳み傘を持ち歩く人も少ないのです。

道端で雨が降りだしたときイギリス在住者が取る反応は以下の2つ。
(1) 気にせず歩き続ける
(2) カフェにでも入って雨がやむのを待つ
これでは雨で売上が上がるのは、傘より駅近くのカフェでしょう。

イギリスでは傘が売れない代わりに、防水ジャケットとカバンがよく売れます。傘をささずに歩き続ける雨の中で、パソコンやお菓子を持ち運ぶならカバンに防水機能が欠かせません。日本のようにオシャレで口の空いたバッグなど持ち歩いてはあっという間に水で中身が濡れてしまいます。

一時日本のランドセルがイギリスで売れていると話題になったことがあります。これも売れるのは納得。防水性・軽さ・丈夫さのどれもがイギリスの気候に合っているからです。

売れる商品、集客できるサービスの裏には必ず消費者のニーズに合ったマーケティング戦略があります。そして正しいマーケティング戦略は「〇〇だからXXが売れるだろう」という机上の空論ではなく、地道なヒアリングで成り立っています。

「現場の消費者にこそ売上アップの答えがある」というマーケティングの考え方は、営業を経験された方にとっては腑に落ちるのではないでしょうか。マーケティングとは多くの日本企業が強みとする営業力を、取引先の代わりに消費者へ向ける技術です。

真実はヒアリングの中に

もしこれまでに「マーケティングは会議室で話し合うばかり。営業しか現場を知らないんだ」とお考えになっているのであれば、それはこれまでに接触したであろうマーケターが与えてしまった誤った印象です。マーケティングを生業にするものの一人として、こういう誤解が生まれたことを申し訳なく思います。

正しいマーケティング戦略の基盤は、営業と同じ現場にあります。マーケティングにとっての現場とは顧客・消費者の声です。

マーケティングでは消費者が「これなら絶対に買う」と仰っていただくことが、営業にとって「よし、うちで扱おうじゃないか」とお取引先に確約していただくことに等しくなります。

多くの企業では何も考えず飛び込み営業をするよりも、長期的に利がありそうなお取引先を選んでからご挨拶へうかがうでしょう。マーケティングでやみくもに傘を売らず、自社の製品が好まれそうな地域や消費者を探すのも同じことです。

イギリスへ傘をやみくもに輸出するような失敗を避けるためにも、すべての企画に先駆けたヒアリングは欠かせません。もしマーケティングへ割くことのできる予算が限られているのであれば、リーフレットやWebサイトを作る費用を後回しにしてでも、ヒアリングへ真っ先に予算を割いてください。

ヒアリングは明日の利益にはつながらないかもしれませんが、1年後、2年後に歴然とした差を生みます。手っ取り早い果実よりも大きな成功を目指すため、消費者の声へ耳を傾けていただければ幸いです。

 

 


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

3.10メンタークラブ関西勉強会が開催されました

3月10日 大阪中央公会堂大会議室において、ジェイエイブラハム・メンタークラブ関西勉強会が開催されました。

最初に14名の参加者が、4つのグループに分かれて着席しました。
初対面の方も多かったので、今回も前回同様、「他己紹介」のワークからのスタートです。

「他己紹介」というのは、初対面の人を文字通り「紹介」するワークです。相手のバックグラウンドなど何も知らないところで行うために、本当の「第一印象」のみの紹介なのですが、自分が初対面の人からどのように見られているかがわかり、これまで気づかなかった自分の「資産」に気づくことができるのです。

 今回初めて私も中に加わったのですが、相手の方の印象を言葉にする作業を通じて、自分が驚くほど多くの印象を受け取っていることに気づきました。それだけでなく、ふだん初対面の方と話をするというのは、緊張したり、ぎこちなくなったりするものですが、このワークを通すと、自然に打ち解けることができ、一気に距離が縮まっていくことが感じられました。

「他己紹介」の次に行われたのが、「導入ファシリテーション」として「コネクションゲーム」です。
まず、人数分用意された小さなメモ用紙に、メンバーそれぞれが、自分の頭に瞬間的に浮かんだ言葉をひとつ、書いておきます。その中から2枚をランダムに抜き出して、全員で相談しながら2つの言葉を結びつけていく、というワークです。

 ジェイさんは、さまざまな文書やセミナーの中で、繰り返し「点と点をつなぐ」ことの重要性を述べていらっしゃいます。点と点の関係性を見出すことによってビジネスが生まれる、関係のない人同士をつなげることで、新しいビジネスができてくるものだ、と。しかもそうした発想は、ある日突然生まれるのではなく、ふだんからのトレーニングが重要です。「コネクションゲーム」の目的もそこにあります。まったく異なる2つの言葉につながりを見つけるトレーニングなのです。

 それぞれのグループから「愛」や「精神」「夢」「ビジョン」といった抽象的な言葉や、「金」、あるメンバーが師事した先生の名前、眼鏡の汚れなど、具体的な言葉が結びつけられ。そこからミクストリアリティや、見ている側の視力に合わせてくれるブラウザの話、「慈悲」という言葉に含まれている「悲しみをとりのぞく」という意味がマーケティングの根本にあるのではないか、など、それぞれのグループでバラエティに富んだ話がなされていきました。

「言葉を磨く」

 いよいよ本日のテーマである、キャッチコピーやヘッドラインを作ることに進んで行きました。
 最初に確認されたのは、私たちが作るべきコピーというのは、イメージ広告ではなく、お客様のアクションにつながるもの、お客様の問題を解決してくれる場所であることがわかるとともに、ほかとは区別される「私」の特性が際立つUSPがはっきりと打ち出されていなければならない、ということでした。

 そのためにまず、自分にとってのお客様とは誰かを明らかにしていかなければなりません。自分はどんな人の問題を解決してあげたいのか、自分の理想とするお客様とはいったい誰なのか、お客様のペルソナを決定することから始めます。というのも、身近にいない、よくわからない人をペルソナにすると、たいていうまくいかないからです。

 自分がつきあっていきたいお客様のイメージを書き出し、その上で、その人の困っていることを、表向きと本音の2種類に分けて考えていきます。
というのも、「食器が多くて台所が片づかなくて困る」という問題を抱えている人は、本当は「ふだん寂しい毎日を過ごしていて、別居している子や孫にもっと来てほしくて、つい食器を買い込んでしまう」からかもしれません。その人の本当の困りごとや悩みに刺さる提案を行えば、その人は行動を起こせるからです。

 さらに、USPというのは、意外に自分が気づいていないところにある、ということに話は進んで行きました。人は、難なくできることについては、意外に無頓着なものです。むしろ、努力を重ねてやっと身につけた能力や技術の方を、高く評価してしまいます。ところが、本当のその人の強みというのは、難なくできること、なぜできるのか自分でもよくわからないことにあるのです。この指摘は、わたし自身も思い当たるものがあり、非常に腑に落ちるものでした。

 こうして自分のUSPを作っていくプロセスを全員で共有し、最後に参加メンバーひとりひとりが今日の感想を語っていきました。
なかでも車いすで参加してくださったメンバーの方が、一語一語絞り出すようにして発言してくださった
「理解の障害を取り除くことができれば、関係を築くことは難しくないと思いました」という言葉には、深く胸を打たれました。

 そのあと、ワークにもご参加くださった社労士の先生から、助成金についてのご説明があり、会場の制限時間ぎりぎりまで、実り多い話は続いていきました。

 メンタークラブの定例会は、今後も各地で開催されます。
和気藹々とした雰囲気のなか、内容の深い、共に学べる機会としての「勉強会」。
皆様のご参加を心から願っています。

◆ 今後の日程

3月13日(月) :東京:日比谷図書館会議室 18:30-21:00
3月14日(火):名古屋 :県産業労働センター特別会議室 18:30-20:30
博多, 北海道::未定

*5月は、13日の出版直前の開催となります。ふるってご参加ください
5月8日(月):東京 日比谷図書館小ホール 18:30-21:00
5月9日(火):名古屋 :県産業労働センター特別会議室 18:30-20:30
5月10日(水):大阪 中央公会堂 大会議室18:30-21:00

7月12日 (水):大阪 中央公会堂 大会議室18:30?21:00
7月20日 (木):東京(場所未定)
9月、11月もそれぞれの地域で開催します

メンタークラブとは


服部聡子(ShimaFuji IEM 翻訳チームリーダー)
出産・退職後、在宅で働ける資格を身につけるために翻訳を学び始める。
約5年フィクション/ノンフィクションの下訳、ウェブ・ライターを経て、
『限界はあなたの頭の中にしかない』に巡り合い、深い共感を覚え、弊社に。