起業家が注目すべき3つの海外新興市場

by コンスタンティン・マカロフ

 

海外の新興成長市場への進出をためらう起業家は、少なくありません。

中国の景気減速、ブラジルと南アフリカの経済停滞、トルコの社会政治状況の悪化は、

将来のビジネスリーダーからしてみれば、リスクに見合うだけのチャンスがあるかどうか、

再考せずにはおれないものとなっています。

けれどもこのような市場がぐらつきを見せる一方で、

未だ注目の集まっていない市場は、比較的安定した経済状況を維持しています。

ここでは起業家を待っている、3つの有望な国を紹介しましょう。

1. フィリピン

フィリピンは、中国に代わる投資先として、自国を戦略的に位置づけています。

2014年には、フィリピンへの投資は2倍になり、

フィリピン経済は2015年の第2四半期に5.6%の成長を遂げています。

中国経済が昨年の成長率7.4%と、足踏みをしているおかげで、

フィリピン経済は、その大きな影響力から離れて、

独自のビジネスチャンスを得ることができるようになっています。

起業家は、操業資金も製造コストも安く、経営政策も良好なフィリピンの成長市場に

注目しつつあります。

2014年フィリピン-EU間で結ばれた自由貿易協定は、

約6,000品目に渡るEU関連の関税の免除するもので、

今後のフィリピンを、活気のある経済拠点としての地位に押し上げようとしています。

2. ベトナム

ベトナムは、未だ辺境地域から新興成長市場へと移行する途上にある国ですが、

将来有望な国のリストには、かならず載っている国です。

ベトナムのWTO(世界貿易機関)への加盟と、競争力のある労働コストは、

この国の経済成長を牽引していく重要な要素です。

国際的な起業家は、2015年上半期、小売業販売額の8.3%の急増に見られる

急成長するベトナムの消費者から利益を得ています。

ベトナムへの外国直接投資は2014年第4四半期だけで、60%対前年比増加しました。

インテル、フォード、サムスン、トヨタなどの企業も進出しています。

外国の起業家がこのタイミングを利用するつもりがあるのなら、

ベトナムは投資の機が熟していると言えます。

3. モロッコ

モロッコは「成長するアフリカ」に注目している人の間でも、見過ごされがちな国ですが、

フロンティア経済の活気にあふれています。

 

モロッコは、ヨーロッパと地中海市場の玄関口という戦略的な場所に位置する国です。

着実に進む改革によって、財政赤字は2012年から2014年の間に、

GDP比7.4%から4.9%まで低下しています。

こうした数字はモロッコが、少なくとも今後何年間かは安定するであろうことを物語っています。

北アフリカは、未だアラブの春の余波で揺れており、

サハラ以南のアフリカ経済も停滞状況に陥っていますが、

モロッコは他にはない可能性があります。

カサブランカはヨハネスバーグに続くアフリカ第2の金融の中心地であり、

精力的な起業家にとって、長期的に賭ける価値のある国です。

 

新興成長市場に参入するために

こうした新興国の市場に参入するための戦略は、

枠にとらわれない思考と、その地域の深い理解が必要とされます。

参入を考えたり、フロンティア市場や新興成長市場への進出を考える起業家は、

以下のアドバイスを留意しておいてください。

・ どのような選択肢があるか知っておく

そうした国の市場に参入することができるかどうかは、

その商品やサービスが、その国にとって意味を持つかどうかに100%かかっています。

デンマークの製薬会社レオファーマは、2001年、モロッコに進出する前に、

現地のパートナーを通じて、商品の販売をおこなっています。

そうした国の持つ潜在的な不安定さの影響を、最小限に抑えるためにも、

起業家は、市場にアンテナを張り、このように抜け目ない動きが必要とされます。

・ 地元の好みに適応する

起業家は、自分たちの商品が、現地の消費者の間でどのように評価されるか、

考えなければなりません。

バーガーキングはインドの人々を満足させるために、

ベジタリアン向けメニューを拡充させました。

KFCはケニヤの主食である、トウモロコシの粉で作ったウガリのナゲットを作りました。

好ましい市場環境を利用できる外国企業は、

その国の顧客が何を求めているかを知っているところだけです。

・ 長期的な計画を立てる

新興成長市場やフロンティア市場で成功を収める起業家は、

状況の変化に素早く対応する機敏さを備えています。

今後、どの産業が利益を上げていくかを予測できる、鋭い目が必要なのです。

たとえばインドのバンガロールは、世界的な技術とスタートアップのハブとして、

急速に頭角を現しています。

あるいはまたケニアのGDPの40%は、

Mペサのモバイル決済プラットホームを通過しています。

知識豊富な起業家は、そのような萌芽を見つけることができ、

数年先を見越して戦略を練ることができるのです。

 

新興成長市場やフロンティア市場の本質は、

高い成長率と、ダイナミックな進化にあります。

このような国では、暴力や政治的不安定さから、頻繁に回復を遂げているために、

経済発展も不安定で、かならずしも直線的なものではありません。

けれども初期のリスクを怖れない、勇敢な起業家は、

その国の正常が安定し、市場が活気づいた場合、飛躍的な利益を得るチャンスがあるのです。

 

 

 


元記事:http://www.entrepreneur.com/article/253547

(翻訳:服部聡子)

 

新時代のチームに求められるもの

by クリス・フッセル

 

 

高度25,000フィートで航空機の貨物ドアが開く。

闇と冷気が押し寄せ、

航空機のランプに立った特殊作戦部隊の周囲で渦を巻く。

いつでも飛び出せる構えを取っているチーム。

リーダーは暗視ゴーグル越しに闇をのぞき込む。

あそこだ! 

リーダーは片手でさっと闇の中の一点を指さす。

チームは躊躇することなく、黙ったまま闇の中に身を躍らせる……

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私たちの多くは、これまで選び抜かれた精鋭部隊について読んだり、

映画で見たりしてきました。

もしかしたらあなたもその中の1人かもしれません。

精鋭チームは大試合で勝利を収め、緊急治療室で命を救い、

世界中の紛争地帯で戦っています。

事実、状況を成功に導こうと思えば、

きわめて効率の高い少数精鋭部隊を作りだすだけで十分だった時代があったのです。

たとえば軍隊では、個々の戦闘部隊が、遭遇する敵より強ければ、確実に勝利できます。

つまり戦争に勝つかどうかは、部隊をもっとも効率的に配置できるかどうかにかかっていたのです。

 

アメリカの軍隊は、20世紀を通じて、効率性を至上とする階層構造を構築してきました。

上級幹部は、小部隊をどこに、どのように配備すべきか見定めます。

そうして若いリーダーは、戦場で少数精鋭部隊を率いて戦うことに集中するのです。

官僚機構は効率と管理を目的に、設計されました。

上意下達式の情報統制は、究極的には権力がどこにあるかを示すものにほかなりません。

このリーダーシップ・モデルは、とりわけ特殊作戦部隊で大きな効力を発揮します。

対処の困難な脅威は、世界中に存在しましたが、

そうした脅威も、それぞれが孤立したタコツボのようなものでした。

ですから、極めて効率的な少数精鋭部隊が、決定的な解決となったのです。

けれども、アルカイダによる9.11の攻撃以降、

特殊作戦部隊が理解したのは、21世紀の問題が抱える複雑さは、

20世紀型アプローチでは解決できない、ということでした。

情報が怖ろしい速さで伝播し、個々の人々が急速に相互に結びつくことによって、

まったく新しい型の戦場が出現したのです。

リアルタイムで相互に結びつき、増殖していく敵は、

強力ではあっても、対応に時間がかかる官僚的な機構の裏をかいて、

新たなネットワークを構築してきました。

携帯電話やユーチューブのアカウントさえあれば、

誰でもこうしたネットワークに参加できるのです。

少数精鋭チームの能力に頼るだけでは、解決できなくなってしまったのです。

 

あなたのチームのパフォーマンスを高めよう

 

今日における特殊部隊の重要な第一歩は、

私たちの経営モデルをシフトする必要がある、と認識することです。

トップダウン型の指揮、能率至上主義的な官僚機構の代わりに、

私たちは自分をネットワークに繋げていかなければなりません。

かつて私たちが下していた指令は、少数精鋭のチームの有効性を、

企業全体へと敷衍し、拡大していくことでした。

大勢のリーダーが、それぞれにチームを率いる代わりに、

私たちは自分自身をひとつのユニットとして、

広範なネットワークに繋げていかなければならないのです。

私たちは縦割り組織の仕切りを取り除いて、

情報の共有や、リーダーシップ、コミュニケーションについての

思い込みを変えていかなければなりません。

 

情報が、小さなグループ単位で細切れにされていたところであれば、

グループ間の境界を取り払い、可能な限りシェアするようにします。

ユニット同士が壁で仕切られ、隔てられているところであれば、

私たちのオペレーション・センターと地上部隊は、

民間の諜報員、特殊工作員、提携相手の混成になっています。

 

かつてコミュニケーションが、組織の中の2点間通信であったのなら、

私たちの時代のコミュニケーションは、世界中の数千もの人々が最新の情報を聞き、

利用できるテレビ会議システムから始めなければなりません。

数年間の変化ののち、私たちは分散型ネットワークのスピードと俊敏さを適用するようになるでしょう。

これは、今日の世界では、どんな大きな組織でも必要なモデルです。

かつて企業は垂直的なグループを効果的に作ることに専念すれば、

競争を制することができました。

けれども今日の世界で、ネットワークモデルを用いているリーダーは、

個々の戦いに目を向けたままの競合を、すばやくしのぐことができるのです。

 

重要なのは、特殊部隊は組織を少しも変更することなく、

この転換を行おうとしたことです。

そうして精神面や、コミュニケーション、リーダーシップの転換を図ったのです。

組織に真の力を与え、ネットワークとして考え、行動し、動けるかどうかは、

今日のリーダーにかかっています。

それは、トップから始まる、精神的な転換なのです。

ネットワークモデルを採用するためには、あなたの組織は、以下のステップが必要です。

 

1. 他チームとの提携を構築する

あなたのチームは、組織の戦略的なビジョンに関して、

本当の意味で意志一致ができているでしょうか。

私たちの場合、できていませんでした。

そのため私たちは戦闘地域の真ん中で、動けなくなってしまったのです。

チームが異なれば、組織に対するビジョンにも違いが生じ、競い合うことにもなります。

その結果、互いに食い違った行動を取ることにもなってしまいます。

提携することなくしては、複雑な問題を解決しようとしても意味がありません。

なぜなら、ネットワーク化された複数チームのうちのひとつとして、活動できないからです。

 

2. 一体感と透明性を推進する

複雑な世界の中で、ものごとは従来のシステムではあまりに速く、動き、変化するために、

従来の機能的チームでは、とらえることができません。

大勢の人を現実のコミュニケーションに引き込めば引き込むほど、

さまざまな観点からのリアルタイムの洞察が集まり、

問題を、より素早く、より正確に解決することができます。

 

3. 共感を持って指導する

あなたに従う人の動機と視点を理解することによって、

あなたはより有能なリーダーになることができます。

トップダウンの時代の「従うか、出て行くか」というリーダーシップの時代は終焉しました。

ボトムアップ式に浮かび上がってきた知識は、創造的なアイデアを組織に蓄積することになり、

さまざまな視点を理解することが、あなたのネットワークをより良いものとし、

情報の裏付けのある決断をさせてくれます。

 

すばらしい力をたくわえた小さなチームは、もはやあらゆる難題の解決とはなりません。

巨大な組織が、ヘルスケアから軍事装置にいたるまで、小さなチーム同様に、

すばやく効率的に動ける組織へと、移行していかなければなりません。

一連のチームを有機的に提携させたチームを導くことが、

21世紀を勝ち抜く戦法なのです。

 

 

 

ハーバード・ビジネス・レビュー


元記事:https://hbr.org/2015/07/make-your-team-less-hierarchical

(翻訳:服部聡子)

 

 

 

 

安全な職場環境の作り方:トランスジェンダー編

by ジェフリー・W・ハル

 

「ケイトリン・ジェンナー(※注: オリンピックの元陸上金メダリスト。性同一障害を公表))が、

あのように大勢が見ている場でカムアウトした勇気は賞賛します。

ですが、トランスジェンダーにとっては、ただ仕事で毎日職場に行くというだけでも、

本当に勇気が要ることなのです。

通勤というのは、ケイトリンには必要のないことだと思います。」

 

こう語ったジェレミー・ウォレスは、

私のリーダーシップ・トレーニング・プログラムのトランスジェンダーの参加者で、

Taking The Scenic Route To Manhood

『テイキング・ザ・シニック・ルート・トゥ・マンフッド

(男性として表舞台に立つまで)』

という回想録の著者でもあります。

彼の言う通りです。

統計を見ると、寂しい思いになります。

トランスジェンダーの人たちは一般に比べ、

自殺を試みる傾向が40パーセント高く、

失業中あるいはホームレスである傾向が50パーセント高いのです。

 

ケイトリン・ジェンナー、以前の名前はブルース・ジェンナーは派手に登場しましたが、

現実は厳しく、社会に生きる多くのトランスジェンダーの人たちは姿を見せないままで、

大企業などの大規模な組織の中では、リーダーシップを取る役職では言うに及ばず、

目にすることは滅多にはありません。

著名なセレブリティやスポーツ選手の「アウティング」は、今までのところは、

多くのトランスジェンダーの人たちが毎日生きている現実に対して、

ほとんど影響を与えてはいないのです。

 

▼トランスジェンダーの女優 ラバーン・コックス

320px-Laverne_Cox_at_Paley_Fest_Orange_Is_The_New_Black今回のケースは変化につながるのでしょうか?

トランスジェンダーの女優ラバーン・コックスが、

好評を博しているネットフリックスのドラマ

『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』に出演し、

タイム誌の表紙を飾り、

また、トランスジェンダーの生活を

生々しく描きだすテレビ・シリーズ

『トランスペアレント』が

ゴールデングローブ賞を受賞したことにならって、

ケイトリンの華々しいデビューは、

社会の意識の変革を加速するかもしれません。

 

アメリカでの最近の世論調査で、

70パーセントを超えるアメリカ人が、

トランスジェンダーの人々は職場での差別から守られるべきであると考えている

という結果が出ています。

このような注目を浴びやすい事例が突破口となってチャンスを生み出し、

本当の目的、つまりトランスジェンダーの人たちが安全に生き、働き、

成功を手にすることができる世界を作り出すというゴールを達成するための

きっかけとなるのかもしれません。

 

私は、大企業と大規模NPOを相手に

リーダーシップ・トレーニング・プログラムを主宰するエグゼクティブ・コーチであり、

また組織心理学者なのですが、

最近まで、自分のプログラムにトランスジェンダーの参加者を見ることは、

ほぼありませんでした。

これについてジェレミーに質問したら、すぐに返事が返ってきました。

 

トランスジェンダーの人々は、組織の中で立ち上がるとか目立つとかいうことが、

まだ非常に稀です。

実際のところはその逆で、目立たないように隠れたまま、

レーダーにかからないようにいたがるものなのです。

そして、完全な性転換のプロセスを選んだ場合は、

働くことを止めてしまうことも多いのです。

世の中の職場はほとんど、トランスジェンダーの人たちを歓迎していません。

なので、リーダーシップ・トレーニングに送り出すということは、

少なくともいまのところは、まず起こらないことなのです。

 

その通りかもしれないと、ジェレミーの返事を聞きながら、私は考えていました。

ですが、それでもジェレミーは、全国的に知られた権利擁護団体の会合で

登壇し発言できるように鍛えられています。

そして、ジェレミーは、もう1人ではないのです。

3人のトランスジェンダーの人々が、最近、私のリーダーシップ・プログラムに参加しました。

3人とも、とても印象的でした。

ボブ・ディランが歌ったように、「時代は変わる」のです。

 

ですが、私たち側の準備はできているでしょうか?

自ら進んで、広い精神と心をもって立場を改め、

ジェレミーのような新しいリーダーをただ認めるというだけでなく、

共に働き、あるいは上司として従うことはできるのでしょうか?

 

 

ジェレミーは四十代半ばで、エグゼクティブとして好調に、

ラスベガス近辺で複数のスモールビジネスのフランチャイズを経営しています。

ジェレミーをしてコミュニティに対して恩返しをしたいという思いにさせたのは、

実際のところ、ビジネスリーダーとしての成功があったからで、

それで最近、人権キャンペーンの地域リーダーに立候補してワシントンDCに送り込まれ、

私のリーダーシップ・プログタムに参加するに至ったのです。

4日間のリーダーシップ講習の間、私たちは、

ジェレミーの過去について十二分に話をすることができました。

 

ジェレミーは、少女として成長しながら、いつも

「自分は男の子だと思っていた」

と私に語りました。

男の子のすることはなんでもやっていたというのです。

木登りをし、お人形ではなくトラックや車で遊び、

アイスホッケーをやっていました。

ですが、幼少期と思春期をアメリカ中部で過ごしていた「ジェニファー」にとって、

実際に男の子のなれるなどということは、考えもしないことでした。

ジェニファーはただ孤独と憂鬱を募らせ、

「世の中に順応できず、自分のものではない体の中に囚われて、逃げ出すこともできない」

という、どうにもならない矛盾を抱えて生きていたのです。

ジェレミーが

「いままでずっと自分のものだと信じてきた、男という性別」に

実際になれてしまうと知るのは、この何年も後のことでした。

ですが、性転換の決断とその後の手術は、8ヶ月という「あっという間」におきました。

これについてジェレミーは、

「可能だと知ったとたんに、もうやろうと思ったのです!」

というふうに語りました。

 

だからと言って、それが簡単だったというわけではありません。

ジェレミーは、家族に告げるために勇気を振り絞った辛い思い出を語ってくれました。

その次は、フラインチャイズ先に少しずつ告げなければなりませんでした。

彼らは、ある意味では被雇用者という以上の、「家族のような存在」だったのです。

ですが、ジェレミーは仰天してしまいました。

一部の例外を除いて、多くが驚きはしたものの、最終的には受け入れてくれたからです。

 

私がジェレミーから学ぶことができた教訓は、

真実を伝えるそのプロセスが周囲の人たちにとって初めての経験であるのと同じように、

自分自身にとっても、初めてのことを学びながら経験していると伝えてしまうことで、

人々の理解を得やすくなり、性転換を受け入れさせやすくなるということでした。

 

ジェレミーは、その事実をどのように扱えばいいのか

周囲が理解しているとは期待していませんでしたし、

自分自身でもよく解っていなかったのです。

ジェレミーの外見は(何ヶ月もの期間を経るなかで)変化し、

男性としてのアイデンティティが真実だと常に感じていたその通りに、

最終的に、自分は男性であると言明したのでした。

ですが、真の姿は、心の奥底では変わってはいなかったのです。

と言うよりも、その反対だったのです。

ジェレミーは、ついに、本来の姿を手に入れていたのです。

 

ジェレミーは、自分は幸運だったと言わざるを得ないと言います。

家族は理解にあふれ、性転換を決意したときには、すでに自分のビジネスも好調でした。

国中の擁護団体で会う多くのトランスジェンダーの人々のように、

解雇を恐れる必要はありませんでした。

 

それでもジェレミーは、拒絶される恐怖、

気が触れている、とか、何の価値もない人間だ、などと見られる恐怖と戦っていたのです。

今日でもその戦いは終わっていません。

「私の経験上、トランスジェンダーにとっての本当の問題は、

社会から受容されること以上に、自分自身を受容することなのです」

とジェレミーは言います。

「何年もの間、自分は『何かがおかしい』という気持ちを根深く抱えて生きてきました。

今でも、ついに手に入れた自分のあるべき姿としての男性を鏡の中に見ると、

自分のその姿を受け入れて安心を感じるためには、

毎日、身構えるような思いをしているのです。」

 

 

この意味では、ジェレミーは、私たちと大きくかけ離れてはいません。

私たちは皆、自分の欠点、才能、

そしてありのままの私たち自身を受け入れなければならないからです。

また、ジェレミーの経験は、自己受容に加え、

職場での他者の受容についても多くのことを私たちに教えてくれます。

 

そこで私はジェレミーに、

チームのマネージャーが、メンバーにトランスジェンダーがいるとわかったとときに、

マネージャーとして、できるアドバイスは何かないかと尋ねました。

はじめは異質でぎこちなく感じられても、

それをチームメンバー全員の成長のチャンスに変えてしまうことができないか、

と尋ねたのです。

ジェレミーは、ポイントはとても単純ですが、簡単ではありません、と答えました。

そして、「全員が安心できるようにすることです」と言ったのです。

 

以下に掲げるのが、ジェレミーが教えてくれた、安心と受容の雰囲気を作り出すためのアドバイスです。

  1. 性同一性に関する諸問題点と使用する言葉について、

まず自分自身を教育すること(例えば、性的指向と性同一性は同じことを指してはいません)

2. オープンドアポリシーを徹底して、社員が性転換について話をしたいときに

アプローチできるようにすること。

そのために、以下のような点を実行すること:

・オープンドアポリシーについて、明文化すること

・実際にドアを開いておくこと(!)

・社員なら誰でも立ち寄って話ができるように、オープンドアの時間を定期的に定め、周知すること

3. 全てのトランスジェンダーの社員を個人として尊重すること

性転換をどのようにアナウンスしたいか、本当のジェンダーをいつどのように公表したいかを

打ち合わせること。

4. 質問することを恐れず、誠実な間違いをおかすことを恐れないこと

そして、知らないことは知らないと認めること。

5.ユーモアを忘れないこと

ジェレミーは、自らの状況を説明しようとして、その結果、社員を困惑させ、

自分もぎこちなさを感じてしまったときは、

よく潤滑剤としてユーモアの力を借りたと教えてくれました。

「あのねえ、私自身もこんなことは初めてだよ」とは何度も言ったと言います。

「脇と足なら剃っていたけど、顔を剃る方は簡単にできるようになるかな?

肌を切ったり傷つけたりしないでできるようになったら、皆で一緒に乗り切れるはず!」

6.トイレ使用に関するルールは、社員の「カムアウト」を待たずに、

あらかじめ設定しておくこと

(例えば、トランスジェンダーの社員が、身体的な性別ではなく、

自認するジェンダーに沿った方のトイレを使用できるようにしておくこと。

あるいは、全てのトイレを、性別に関わりなく使用できるようにしておく。

トイレの使用に関する推奨される慣行については、アメリカ合衆国労働省のサイトを参照。)

7.職場の多様性に関するトレーニングについては、専門家に相談すること。

社員教育の責任をトランスジェンダーの社員に課するべきではありません。

(何かの「象徴」のように扱われたり、他の社員を教育するために

引き合いに出されたりするのは、ストレスとなりえます。)

8.性転換を行う社員を気にかけておくこと。

しかし、公私の区別は明確にしておくこと。

どのような職場環境にも当てはまりますが、まずフォーカスされるべきは仕事とパフォーマンスで、

トランスジェンダーの社員の個人的状況ではありません。

マネージャーが留意しなければならないポイントは、

話は注意深く聞き、協力的であるべきですが、

性転換のプロセスそのものに関わるべきではありません。

 

これは一個人からのアドバイスであって、

全てのトランスジェンダーのリーダーの経験を代表するものではありませんが、

トランスジェンダーの社員にとって安全な職場環境を作ろうと思案しているマネージャーにとっては、

スタート地点としては適当なものではないでしょうか。

 

ジェレミーのアドバイスを思い返してみると、もっとも顕著な点は、

6番目を除いて(トイレに関するルールは、独特な難しさがあります)、

他の全てのアドバイスが、トランスジェンダーに限らず、

どのような社員にとっても安全で活力が出るような環境を作るために最適であることです。

 

人間は、自分とは異なる者に対して恐怖を感じ、偏見を持ってしまうものですが、

心の知能に関する研究が、

共感し耳を傾け、共通の人間性を見出そうとする意志があれば、

これを克服することができると示しています。

ですが、そこに至るためにマネージャーは、

トランスジェンダーの人たちも、その他の社員も同じように直面する「異質さ」に向き合って

取り組む会話を行うための場を作る必要があるのです。

 

変化に向けて、機は熟しています。

ジェンナー(トランスジェンダーの人たちに対する社会的な認知を上げたことは称賛に値します)のような

セレブリティがいるからというだけでなく、

ジェレミーのようなリーダーが様々な組織で毎日のように登場しており、

自分自身のために、彼らのチームのために、そして彼らの雇用者のために

全力で貢献するためのチャンスを必要としているからです。

 

謙虚さ、ユーモア、そして堂々たる言葉を持ったLGBTQのリーダーたちが、

オフィスの給湯室には姿を見せ始めています。

ですが、姿を見せるだけにとどまらず、これに続いて新しい職場環境が到来し、

「異なること」が許容されるだけでなく、

温かく迎え入れられるようになることを、私は望んでいます。

 

隠されていたケイトリンという真実の姿が外に飛び出した今、

世の中の職場環境もついに社会の声を聞き入れなければならなくなるかもしれません。

そして、果てしなく多様で、クリエイティブで、そして才能に溢れた人々が、

安心でき、受け入れられ、お互いに耳を傾け、

リーダーとして皆に支えられていると感じられる場になるのです。

 

トランスジェンダーのリーダーとしてジェレミーが自身の経験について語り、

授けてくれた知恵に感謝しています。

ですが、ジェレミーのアドバイスで一番大切なポイントを思い出してください。

社内での教育という重大な責任は、トランスジェンダーの社員に個人的に課されてはなりません。

職場環境における多様性の専門家の助けがあれば、

寛容なチーム作りがしやすくなり、結果として、生産性の向上が期待できるでしょう。

知っての通り、組織というものは、社員がありのままの自分自身でいられる方が、

パフォーマンスが上がるものなのです。

 

 

 

ハーバード・ビジネスレビュー(2015年8月)


元記事:http://bit.ly/1PobhWz

(翻訳:角田 健)

 

性差別は女性ばかりでなく男性にとっても不利

by クリスチャン・ジャレット

 

 

どれほどあなたが自分をしっかり持っていたとしても

あなたの年齢や性別、人種や民族による特性に基づく周囲の判断からは、

逃れることはできません。

職場で、そこにいるのが男性か女性かというだけで、

周囲の人々がどれほど態度を変えているか、

心理学は多くの人々の日常の経験を通して、

さまざまな事例を明らかにしています。

とりわけ私たちが「性差別を行わない」という視点を欠いたまま

他人を判断する際には、

相手が男性であっても女性であっても、

偏見に基づく悪影響を受けている可能性が高いのです。

こうした偏見というのは、どのようなものなのでしょうか。

あなたの職場でも起こりうる5つのパターンを見ていきましょう。

 

1. 女性は正々堂々と意見を述べたり 怒りをあらわにすると罰せられる

専門職の女性は、自己主張することによって、

男性からも、他の女性からも、厳しい目で判断されます。

一例をあげると、ある研究によれば、男性及び女性の被験者は、

女性のCEOが積極的に主張し、自説を曲げない場合は、

能力を欠いており、リーダーの役割にふさわしくないと考える割合が高く、

男性のCEOに対しては、結果はまったく逆で、

寡黙で控えめな態度は、無能のあらわれであると見なされました。

怒りに対しても、同様の結果が得られています。

怒りは、コントロールされたものである限り、交渉や、

期待する働きをしていない人を奮起させる道具として、

重要な感情です。

ところがあなたが女性であれば、怒って感情をあらわにすると、

犠牲を払うことになります。

 

2008年の研究によると、怒っている男性は、男性からも女性からも、

高い地位にあり、有能な人と見なされたのに対し、

怒っている女性は、低い地位の、有能ではない人と判断されることがわかっています。

それだけでなくこの研究は、女性が怒りの原因を明らかにし、

なぜ自分が怒っているかに焦点を当てることによって、

反発を避ける戦略が可能であることも指摘しています。

このプロセスを経ることで、女性であることが、不利に働きにくくなるのです。

男女差別がある状況は、男性にとっても決して有利ではありません。

差別によって被害を受けるのは、男性も同様です。

たとえば面接の場で、控えめな態度を取っていると

「男らしくない」と評価されたりします。

2. 女性の上司の下で働く男性は偏見にさらされる

職場の機会均等によって、不可避的に女性の上司の下に男性がくることも増えました。

ところが性差に対する旧弊な見方から、

女性上司の下の男性は、特別な目で見られる傾向にあります。

とりわけその業界が、通常「男性の領域」にあると考えられる場合、

その傾向は顕著なものになっていきます。

これを明らかにした研究もあります。

被験者は「ある男性は建設業界で働いてるが、上司は女性」

という説明書きを読みます。

 

被験者は男女とも、彼は男性上司の下で働いている他の男性より、

賃金、地位ともに低く、いくぶん女性的である、と判断したのです。

(一方、女性社員が女性中心の業界で、男性上司の下で働いている、という仮定では、

そうした偏見にさらされることはありませんでした)。

私たちは、こうした男性が「男らしくない」と見なされる偏見が、

女性リーダーにとっても不利に働くことを見ておかなければなりません。

自分が男らしくないと見なされることを怖れて、

女性上司の下で働きたがらない男性も多いからです。

認めたくないことですが、これには実際的な解決策はありません。

ただ、いくつかの調査では、男性がステレオタイプの男性性を証明するものを

強調することによって、女性上司の下にいる男性に対する偏見は、

相殺されることが明らかになっています。

たとえばスポーツや車の話題を好んで口にするような場合です。

本当の解決策は、性差に対するステレオタイプを全面的に改める点にあることを思えば、

この解決案には不満を抱かざるを得ませんが。

 

 

3. 女性は失敗が予想される組織を任される傾向にある

重役のメンバーが、女性を含めて構成されている企業ほど

業績が良いことが実証されているにもかかわらず、

上級幹部の中で、女性が過小評価されるケースは、未だ極めて多く残っています。

イギリス企業を分析した心理学者は、彼女たちがトップに昇進するのは、

うまくいかなくなりつつある組織である傾向が高いことに気がつきました。

いわゆる「ガラスの断崖(※失敗の怖れが極めて高い地位)」と呼ばれる現象です。

このことが非常に顕著に表れたケースとして、

2009年、世界的な金融危機の中、未曾有の危機に直面したアイスランドの選挙で、

ヨハンナ・シグルザルドッティルが発の女性首相に就任した出来事が上げられます。

もうひとつ、同様の事例として、2012年マリッサ・メイヤーの

ヤフーのCEO就任も上げられるでしょう。

これは、危機に直面したときに、伝統的に女性の特質、

たとえばコミュニケーション・スキルが高い点などに価値が置かれるために、

このような作用が生じると考えられます。

けれども、このようなタイミングでのみ、女性が偏愛されている現象は、

沈没しつつある組織という毒杯を、女性に押しつけることの現れでもあります。

船が最終的に沈没してしまえば、女性だから、と非難しやすくなるのです。

 

 

4. 家族のために休暇を取る男性は弱いと見られやすい

職場環境の改革によって、出産や、病気の血縁者の介護のために

男性が休暇を取ることは(無給のものであることも多いのですが)

簡単になりました。

とはいえ、人々の態度はあまり変わっていません。

研究によれば、私たちの多くは、男性が優先すべきは仕事である、

という伝統的な価値観を抱いたままで、そうでない態度を取る人には、

否定的な評価を下しがちであることが明らかになっています。

研究者たちはそれを「フレキシビリティの汚名」と呼びます。

ある研究では、女性ではなく男性が、

子供や病気の親族の面倒を見るために休暇を取った場合、

被験者たちは厳しい判断を下す傾向が見られました。

休暇を取ることは、仕事に貢献することなく、

同僚に迷惑をかけていると受けとめたのです。

ラトガーズ大学の心理学者による最近の研究では、

同様の筋書きで、この「汚名」の理由の手がかりを探りました。

被験者は男性従業員と、人事部長の面談の記録を読みました。

病気の近親者の介護をするために休暇を申し出た男性は、

そうでない社員より、能力が低いと見なされ、

低賃金でもかまわないと判断されたのです。

その理由として、被験者は、男性女性ともに、

その従業員は意気地が無く、女々しいと判断したからです。

男性が家族のために休暇を取っても良い、という方針が導入されて、

まだ十分な時間が経っていない、ということなのかもしれませんが、

私たちの態度の面でも、改革が必要なようです。

男性が家族を優先することについての偏見をなくす1つの選択肢として、

父親に対して出産・育児休暇を強制的に取らせることが考えられます。

私たちは、女性の場合も含めて、家族の問題に関することでは

偏見にさらされることが少なくありません。

妊娠の場合は特にその傾向が強いようです。

妊娠すると女性の頭の働きが鈍くなるという通説が広まっていて、

調査によると、適性試験や面接の結果が同程度であっても、

妊娠中の求職者は、そうでない求職者より、職に就きにくいことが明らかになっています。

 

5. 女性は「情け深い性差別主義」に嫌な思いをさせられる

情け深い性差別主義は、実際には出来そうもないことに対して

表面的な親切をしてみせます。

たとえば、イギリスの国民保健サービスを考えてみてください。

女性のマネージャーも男性と同じように、トレーニングコースに派遣されます。

けれども、やりがいのある仕事、

たとえば大きな事件や緊急事態の際にどのように対処するかといったことを

まかせられることはほとんどありません。

研究者は、こうしたことが起こるのは、

決定権を持つ男性が、未だに女性は男性の保護を必要とすると考えているからだと

結論づけています。

昔ながらの情け深い性差別主義的な事例です。

学生と共におこなった追跡調査では、

最も挑戦的な役割に参加したいと希望する女性は、男性とほぼ同数であったことが

明らかになっています。

ジョージ・メイソン大学のエデン・キングと同僚は、この結果をふまえ

「女性の前進を抑えつけようとするのは、

従来からある性差別主義者の敵対ばかりではなく、

一見、思いやりのある決定や行動でもあると言えるでしょう」

と結論づけています。

***

心理学の研究には、伝統的な性差別的なものの見方に逆らおうとした男性と女性が、

どのように罰せられるか、という事例であふれています。

これらの偏見を打ち砕くには、時間がかかるでしょう。

けれども、単にこうした偏見に自覚的であるだけでも、

対抗するチャンスが生まれます。

性別に関係なく、自分の本当の潜在能力を発揮できるようになることが、

私たちすべてにとってのゴールです。

昨年、カナダとシンガポールの研究者が、オリンピックのメダルの国別集計を見たときに

はっきりとしたパターンが明らかになったのです。

男女平等がより達成されている国で、

男女とも、数多くのメダルを獲得していました。

 

 

 

 


元記事:http://bit.ly/1KRR0la

(翻訳:服部聡子)

 

 

ミレニアルの高い買い物

by デレク・トンプソン

 

 

近頃まで若者たちは、自家用車には見向きもせずに公共交通機関を利用し、

カーシェアリング・アプリを使用してきました。

しかし今、若者たちが自動車ディーラーに姿を表すようになっています。

そう、親たちの世代と同じようにです。

 

物書きという職業の害は、発表した内容が誤っていることも多々あることであり、

また場合によっては、それを目にした読者の頭にまで同じ誤りを刷り込んでしまうことです。

数年前に、私はジョーダン・ワイスマンとともに、若者たちが先の大不況に恐れをなして、

郊外に一軒家を買い自家用車を持つという文化から顔を背けてしまうのではないか、

という記事を書きました。

 

この二つの高額な買い物は、これまでに起こってきた恐慌においては、

国の経済のけん引力となっていたものです。

この記事について私は何年もの間フラストレーションを感じていたのですが、

それはコメント欄の意見がどれも、

私たちが書いていない「安上がりな世代」という3語だけを読んで書いたのではないかと疑うほど、

記事の内容を把握していないことでした。

 

この3語は見出しの文言で、私たち筆者が書いたものですらなかったのです。

しかし今週、この記事について新たなフラストレーションの原因ができてしまいました。

私たち筆者にとっては大変不都合ながら、現実が私たちの予想を裏切り初めたのです。

 

2011年と2012年初頭にこの記事を執筆した時点では、

若者たちの自動車離れが進んでいるとして、メーカー各社は疑う余地のない恐怖を感じていたのです。

フォードのグローバル消費者トレンド研究のリーダー、シェリル・コネリーは、

若者たちは「所有することよりアクセスできること」に意味を見出している、と言いました。

「自動車購入について、ミレニアル世代の考え方が

ベビーブーマー世代の考え方と一致することはないと考えています」

とも言ったのです。

 

若者たちが都市中心部に住むようになり、

若い家族を乗せて走っていた自家用車は公共交通機関に取って代わられて、

また十代の若者にとっては初めて手にする自分の車というものは独立心や社会とのつながり、

責任感を体現するものでしたが、それもスマートホンによって置き換えられるだろうというものでした。

 

今週、ブルームバーグがJ.D. パワー・アンド・アソシエイツのデータをもとに、

ミレニアル世代、またの名をジェネレーションY(基本的には、1980年代から1990年代生まれを指します)が、

すでに新車販売台数の27%を占めていると報道しました。

この数字は、1961年から1981年生まれを指すジェネレーションX向けの台数をすでに追い抜いており、

その上を行くのはベビーブーマー世代のみになるというのです。

 

私はこの記事を、歯ぎしりしながら読みました。

そして、顔を真っ赤にして、

まるでスポーツカーのドライバーがドリフト走行でハンドルを握りしめる様子さながらに、

私は自分の確証バイアスにかじり付きながら、J.D. パワーにメールを送ったのです。

ミレニアル世代の自動車需要は実際は急伸などしていないと言える何がしかの証拠が欲しくて、

データの送付を依頼したのでした。

 

今、そのデータを目の前にして、私にもこう言い切ることができます。

ミレニアル世代の自動車需要は急成長しています。

若い世代への新車販売台数が、定規で引いたように一直線の右肩上がりで伸びているのです。

 

【ジェネレーションYはジェネレーションXより多く車を買っている】

 (

【新車販売台数の世代別シェアではジェネレーションYだけが伸びている】

なので、自分たちで立てたCheap Generation説に自信が持てなくなってきてしまった訳です。

とはいえ、間違いだったと完全に納得しきったわけではありません。

コネリーの主張で大切な

「ミレニアル世代の自動車購入に対する考え方が、

ベビーブーマー世代の考えと同じになることはないと考えています」

という言葉は、それでも現状を正確に表しているのです。

ミレニアル世代の半数以上は25歳を超えているにもかかわらず、

その親の世代の購入台数を下回っています。

また、ミレニアル世代の購入台数はジェネレーションX世代を上回ってはいますが、

ミレニアル世代は人口そのものもまた1,500万人から2,000万人多いのです。

 

さらに、自動車業界に吹く逆風は、ミレニアル世代の懐事情だけではないのです。

アメリカの自動車販売台数のピークは15年前の2000年に1,730万台でしたが、

さらに当時は顧客数もかなり少なかったのです。

その一方で、一人当たり走行距離はブッシュ政権中期から落ち始めています。

昨年にやっと、10年ぶりに上向きになったばかりです。

購入台数も運転距離も減少しているのであり、これは構造的な変化と思われるのです。

【一人当たりの走行距離(青)と走行距離の総計(赤)】

そして、私たちが立てた他の予想はどうでしょうか?

郊外に立つ柵で囲われた庭付き一戸建てというアメリカンドリームの象徴を、

若者たちは拒絶しているのでしょうか?

ここでも、話の筋は同じでした。

2012年当時に正しく予想できた部分もありましたが、

テキサスなどサン・ベルト地帯の今日の好況に見られるように、

アメリカの不動産景気これほどまでに素早く立ち直れるとは

予想できていなかったのも事実なのです。

 

大卒で20代から30代の裕福な層が、密集した都市部に住む傾向が

20年前に比べて非常に顕著なのは、

ベン・カッセルマンとジェド・コルコの説明する通りです。

全体で見ればごく一部でしかないこの豊かなグループを

ミレニアル世代全体と同義語のように語るメディアもありますが、

これは記事を書いた記者が、イーストコーストやウェストコーストの

大都市にあるバーに通うようなタイプの人間だったからかもしれません。

それらのバーの客層がこのような豊かな層と一致するものだから、

それがミレニアル世代の全体像であると誤解してしまっているのかもしれないのです。

ですが、ブルックリンやワシントンDC、オークランドなどから一歩足を踏み出せば、

世の中一般での話は全く変わってくるのです。

実際のところ、25歳から34歳で大卒学位を持たない層(本来はこちらが大多数です)が

都市部に住む傾向は2000年前後に比べて弱まっています。

また多くは、余裕ができ次第に郊外に移っているのです。

Craftsman House

ということで、ジョーダンと私の記事は誤りだったでしょうか?

私たちは、ミレニアル世代はその親たちの世代ほど

自動車に乗ることはないだろうと予測したのです。

そして現状がその通りであることに間違いはありません。

郊外型住宅の建設業界には長期間の悪影響が出るかもしれないと書きましたが、

これは間違いなく今日にも当てはまります。

ですが私たちは、より広い意味では、

現状を維持しようとする強烈な逆風を予測できていなかったのです。

 

若者というものはやはり自動車を買い、都市から郊外に抜け出し、

そしてカロライナからテキサスを抜け北西沿岸部にまで広がる、

陽光眩しい土地に住処を求めるものなのです。

 

若い世代が変にませているのを見るのは嫌なものです。

ですが、ジェネレーションYは、それよりさらに酷いものに変わってしまう恐れを秘めていました。

それは、退屈極まりない普通な世代になってしまうことなのです。

 

 


元記事:http://theatln.tc/1Ob8Czq

(翻訳:角田 健)

 

 

6人の女性起業家によるアドバイス

by エイミー・フェッター

 

 

男性優位の中で、会社を巧みに所有・経営する女性たち

 

アメリカの起業家の中で、女性層は急速な成長を遂げています。

しかしながら、男性が経営するビジネスに比べると、女性が経営するビジネスは、

高い割合で失敗しやすく、従業員も少なく、また収益も低いという傾向があります。

このような差が生じた理由は、さまざまであり、一概には言えませんが、

資本にアクセスすることの困難さや、根強い社会通念、

また、男性が所有するビジネスと、女性が所有するビジネスの業界の違いなどが、

このアンバランスの背景にあるとされています。

けれども、外部的な条件というよりは、

女性の内面的な状況に起因するものもあるのかもしれません。

 

私は女性や女性起業家と話すために、自分の時間の90%を、移動に費やしています。

女性が起業し、ビジネスを成長させていくための課題を探求しているのです。

その中でわかったのは、第一の理由が、自信が不足している、ということでした。

 

こう語るのは、EBW2020(2020年までに10億人の女性に力を)の創設者であり、

デル社の前客員起業家でもあるイングリット・ヴァンダーヴェルトです。

けれども、と彼女は続けます。

 

自信の不足に対する特効薬は、行動あるのみ、なのです。

メンターがいれば、私たちは行動が起こせます。

だからこそ、EBW2020は、最優先課題として、

無料の支援プログラムで、女性にメンターを紹介しているのです。

歴史的に見て、ビジネスの世界では男性が舵を取って来ました。

その姿を見て人々は、リーダーというのはかくあるものだと考えるようになったのです。

ところが女性は、自分もそのキャリア・パスや経験を分かち合えるような

女性のロールモデルを見つけるのに苦労している、とヴァンダーヴェルトは言います。

 

だからこそ女性は、なかなか昇進できないし、

まして重役に就くことは困難です。

私たちはロール・モデルが不足しているのですが、

世の中には、すばらしい女性たちが、すばらしい会社を起ち上げているのです。

Re/code掲載された、シュキンダー・シン・キャシディの記事

Tech Women Choose Possibility(技術系女性は可能性を選択する)」も、

昨今のマスコミ報道にも、女性起業家はほとんどふれられていないことに

焦点を当てながら、ヴァンダーヴェルトと同じことを言っています。

彼女の記事が取り上げるのは、技術業界についてですが、

彼女の意見は、ビジネス界全体に当てはまるものです。

女性起業家は、メディアにはほとんど登場しませんが、

現実の社会で、彼女たちは確実に進歩を遂げています。

ここで、その中から6人を紹介しましょう。

彼女たちのヒントを、あなたのビジネスを次のレベルに引き上げるために

役立ててください。

     
ミッシェル・ガルシア :エアルーム・ケータリング・オーナー
コロラド州デンバー

あらゆる答えを知っている経営者も、

あらゆるスキルを備えている経営者も、この世には存在しません

私ができる最高のアドバイスは、

ほかの人に助けやアドバイスを求めることを恐れないでほしい、ということです。

もちろん私も、独力で起業したわけではありません。

たくさんの助けがあり、私を支えてくれる多くの人の存在があったのです。

消費税について学ぶときも、ウェブサイトを開設しようとするときも、

新しいマーケティング・プランを立てるときも、障害はいたるところにあります。

いつもそんなときには、助けを求めてください。

とても単純なことだし、あまりにありふれたことを言っているように聞こえるかもしれません。

でも、それはほんとうのことなのです。

誰もが、人が成功していくところを見たいのです。

成功できるかどうかは、成功している人の助けを得られるかどうかにかかっているのです。

 

アマンダ・ルー : スタジオ・モンダインの共同経営者

Amanda Luu

何を申請するにせよ、会計士と相談してください。

自分でやろうとせず、会計士と一緒に

最大限努力すれば、収益の目標に到達できるかどうか、考えてください。

会計士との関係は、きわめて重要です。

ですから、しっかりした経験を積んだ、信頼できる人を探してください。

そのほかのアドバイスとしては、あなたの業界の内部、外部を問わず、

本物の絆を築いていくことです。

私たちの仕事が、紹介を基盤にしているということもあるのですが、

ひとつの人間関係が、あなたの日々を生かしも殺しもするのです。

周囲の人々と真剣に向き合い、その輪を拡げてください。

 

ブライディ・ピコット : シング・インダストリーズ CEO
ニューヨーク州ブルックリン

BRIDIE PICOT

スタートアップを考えている人に送る私のアドバイスは、

自分の思い通りに始めていってください、ということです。

どれほどの仕事を自分がこなさなければならないのか、どれほど勉強が必要なのか、

前もって調べておけばおくほど、あなたのスタートは遅れてしまいます。

私が最初、シングを起ち上げたときには、何もわかっていなかったので、

かえってそのことが良かったと思っています。

ひとたび始めてしまえば、新しい仕事に取り組むことは、

ずっと簡単になります。

 

アニー・リャオ・ジョーンズ 😕ロック・キャンディ・メディア 社長兼CEO
テキサス州オースティン

    
子供の頃、父は会社を経営することについて、2つのことを話してくれました。

「誰も彼もが、傷つけるようなことをしてくるだろうが、

それに対しても寛大でなければならない。

けれども、誰にも、自分を変えさせてはならないんだ」

もうひとつは「会社を経営することは、世界でもっとも孤独な努力だ」

ということです。

父は正しかったですし、父のアドバイスのおかげで、

私はそこまで孤独を感じずにすみました。

幸いなことに私のクライアントも経営者なので、

そのこともまた、孤独感を紛らわせてくれます。

起ち上げるときに知っておくべきだったことは何かというと、

仲介者を雇うべきではなかった、ということです。

あなたと中核チームの間に距離を作ることにしかならないからです。

 

キャリー・スピンドラー 😕グッディボックス・ベイク・ショップ・オーナー
ニュージャージー州 クリフサイド・パーク

あなたのビジネスとブランド、そうしてそれが約束するものを、はっきりさせることです。

あなたがすることはすべて、あなたのビジネスのアイデンティティと一貫性がなければなりません。

あらゆる人に好かれるようにふるまうことはできません。

特に、あなたが限られた先行資本でビジネスを始めるのだとしたら、

このことはとりわけ重要です。

もしかしたら、運転資金をまかなおうと、あるいは家賃を払うためだけに、

自分の範囲外のことに手を出したくなるかもしれません。

けれども、ほとんどの起業家は、最初、あまり考慮に入れていないのですが、

これはきわめて危険なことです。

結局のところ、多方面に手を出しすぎるか、

凡庸なサービスを提供するだけに終わってしまうでしょう。

それは、あなたが最善を尽くせる分野ではないからです。

私は自分の商品やサービスの提供に最善を尽くすにとどまり、

自分ができる以上のことに手を出すことを控えてきましたが、

それによって多くのことを学んだのです。

 

クリスチャン・ハバリング & ジェニファー・マレー
ペインテッド・フォックス・トレジャーズ 共同創設者
ウィスコンシン州 アレントン

クリスティン:

健康バランスに気をつけてください。

新しいビジネスを始めると、健康的ではないレベルまで、消耗してしまいます。

ですから家族や友人との時間を大切にして、健康バランスを保ってください。

    
ジェニファー:

知らないことをそのままにしないでください。

知らないことは、あなたを恐れさせますから。

自分で学べることは、たくさんあります。

学びたいという情熱がありさえすれば、驚くほど多くのことが学べるのです。

それだけでなく、あなたは仕事の準備をしておかなければなりません。

私たちは、お互いを見ているし、共同で仕事をしているし、

一緒にいて、何時間も黙ったままでいることもあります。

でも、そうしたことのひとつひとつに価値があるのです。

ふたりとも、この仕事が大好きだからです。

 

 

 


元記事:http://bit.ly/1CdwuI1

(翻訳:服部聡子)

 

 

起業家にとっての周到さと情熱

ハーバード・ビジネス・レビュー  2015年 6-8月号

 

 

起業を目指す人の多くは、情熱こそが成功のための鍵と思っていることでしょう。

たとえば、クラウドファンディング・サイトでも、

プロジェクトに対する情熱だけは誰にも負けないとばかりに、

起業家同士がお互いに張り合っているのが見られます。

そして、資金集めについて言えば、このやり方でも実際にうまくいくものです。

情熱というものは、芽の出そうな新しいアイディアを探している

ノン・プロの投資家にはアピールするものなのです。

   
ですが、長期的な成功という観点で見ると、話は違ってきます。

何百人もの起業家を対象に新しい研究が行われ、数年単位での未来の成功は、

情熱とは何の関係もないことが明らかにされたのです。問題となるのは、周到さでした。

つまり起業家が、自身の事業のアイディアを具体的に思い描けているか、

狙いをつけた市場を深く理解しているか、

また、障害を乗り越え不測の事態が起こってもそれを利用できるような計画を作成できているか、

ということがポイントだったのです。

Marketing Huddle

   
ライス大学のウトパル・M・ドラキアの研究チームは、

大学レベルを対象にした全米最大の起業コンペの研究を行いました。

参加したプロジェクトは、バイオ技術からライフサイエンス、

消費者向け製品や小売りにまでおよびます。

当初、プロジェクトの成否を判断するポイントを聞かれた参加者は、

情熱の有無をあげていました。

そして研究チームは、その3年後に、まだベンチャーが好調な一部の参加者に同じ質問をしたのです。

研究チームの分析で、プロジェクトの運命を左右する上で、

情熱は何の役割も果たしていないということが明らかになったのです。

全てではないにせよ、ビジネスが飛躍するために必要なのは、周到さだったのです。

   
研究チームはまた、全世界で資金集めに利用されているクラウドファンディング・サイトの最大手、

インディーゴーゴーに掲載されている522のプロジェクトを調査しました。

サイト上の起業家のビデオと文章の声明を、2つの要素から分析したのです。

 

1つ目は情熱の表れ方、例えば「非常に真剣です」や「全てを捧げています」のような言葉で

(「情熱」という言葉そのものはもちろん含めます)、

2つ目は周到さを証明するもの、

例えば、アイディアを実現させるために必要なものやリソースを発見したことが報告されているかなどです。

 

研究の結果、情熱的な起業家は、資金の目標金額に達する可能性が約3倍となる一方、

周到さは、目に見えていても何の影響もないことが分かったのです。

 

GearUP Sessions: LEAN & TEAM

   
さらに研究では、職業投資家は、ノン・プロの投資家とは全く別の見方をしていることが明らかになりました。

職業投資家は一般的に、起業家の情熱は割り引いて考え、周到さに最も注目するというのです。

ですが、起業家が職業投資家を通さずに一般の投資家に直接アピールするようになっていることを考えれば、

また、一般の投資家が情熱的な起業家を好むというのであれば、起業家がするべきことは自明でしょう。

   
研究チームは、起業家は情熱に頼るべきではないと言っているのではありません。

結局のところ、情熱を前面に押し出さなければ、十分な出資を得られないこともあるでしょう。

ですが、起業家本人の頭の中でも、出資者向けの広報でも、

情熱が過度に強調されるとネガティブ要素となってしまうことが、ままあるのです。

そのかわりに起業家は、情熱を表しながらも、周到さとのバランスをうまく取る必要があります。

適切な人材の確保や、その他、成功を左右する細かい課題にも気をまわしていることを、

明確に伝えていかなければならないのです。

起業家も、起業家を値踏みする投資家も、周到さを欠いた情熱だけでは、

価値は少ないということを意識する必要があるのです。

 

ハーバード・ビジネス・レビュー  2015年 6-8月号)


元記事:http://bit.ly/1Hc3vf9

(翻訳:角田 健)

働きがいのある職場を作るために

by ブライアン・ソリス

 

 

先ごろ行われたギャラップの調査によると、

アメリカ人の従業員のうち、仕事にやりがいをもって打ち込んでいる人々は

31.7%でしかないことがあきらかになりました。

この衝撃的な結果と、結果が与えたインパクトは、

すでに多くの人の知るところとなっています。

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けれども、私たちはそれが深刻な事態であるらしい、とは思っていても、

そこから先へは進んでいません。

仮に、従業員のわずか13%しか会社のことを気にかけなくなってしまったら、

その会社のビジネスは、果たして成功の見通しを立てられるのでしょうか?

おそらく私たちは、そのことを真剣にとらえようとしていないか、

間違った方向に焦点を当てようとしているのでしょう。

2015年、従業員が感じる「仕事のやりがい」は、

アメリカにとって、そうして未来の仕事にとって

もっとも重要でありながら、誤解されたままになている中心課題のひとつです。

そもそも「仕事のやりがい」とは、実際のところ、何なのでしょうか。

おそらく「エンゲージ・フォー・サクセス」の定義が、一般的なものと言えるでしょう。

 

仕事のやりがいとは、

従業員が組織の目標や価値を高めるために努力をし、

組織の成功に向けて主体的に貢献し、

そのことが同時に、自分の幸福感を強化することができるような

職場のアプローチである。

感動的? いいえ。

つまらない? そのとおり。

別にこの文章を書いた人を悪く言うつもりはないのですが、

これではまるで何かの委員会か機械、ひょっとしたらその両方が書いた文章のように

思えてしまいます。

おそらく言葉の順番、または言葉そのもののせいで、そんな印象を抱くのでしょう。

とはいえ、この定義を見ていると、私たちがインパクトを与えるために、

立ち上がらなければならないことは明らかでしょう。

…人間的なインパクトを。

この定義によれば、「仕事のやりがい」とは

・職場のアプローチ であり、

・従業員が組織の目標や価値を高めるためにする努力 であり、

・組織の成功に向けて主体的に貢献すること であり、

・同時に、自分の幸福感を強化することができる

もののようです。

こうやって文章をバラバラにしてみると、ひと目見ただけで

どうして従業員の多くがこんなにも「仕事のやりがい」を抱くことができないのか、

その根底にある理由がよくわかります。

すべては組織のためであって、人間のためではないからです!

Track Work Near Clark/Division - 2/1

仕事のやりがい、もしくはその欠如とは、もっと大きなもの、

少なくとも、もっと大きくあるべきものの一部にすぎません。

私たちが仕事のやりがいを通して、実際に問題にしなければならないのは、

文化、従業員を中心に置いた、従業員の力となっていくような文化についてなのです。

スタン・スラップは新著

『ボンネットの下で:従業員文化に点火し、ファイン・チューニングしよう』

の中で、この文化のことを、以下のように定義しています。

「文化とは、あなたの従業員が共に抱いている、

生き延びるための、そうして精神的にも幸福であるための信条のことである」

人々が同じ基本的生活状態にあるときはいつでも、

生き延びるためにはどうするのが最適か、信じるところを分かち合い、団結する、

と著者は指摘します。

確かにどの職場でも、従業員は、1日に8-12時間、少なくとも週に5日、毎週、共に働いています。

これは筋の通った話です。

と同時に、人々は、自分が何か重要なことに貢献していると、実感できることを求めています。

さらに自分たちの仕事が、そうして自分たち自身も、経営陣に評価されることをも望んでいるのです。

さまざまな意味で、職場はそこに所属する人々によって、息を吹きこまれるコミュニティです。

そうして、繁栄するコミュニティは、共通の願望や、構成員の利益をはぐくみながら、

共通の理想に力を注ぐところなのです。

ビジョン、目標、そうして目標に到達するために何をし、誰を求めるか、

こうした問題にしっかりと照準を合わせた指導部のいるコミュニティは、

強く、賢く、粘り強く、愛着を持てるところに育っていきます。

Participants in discussion at Social Mediating: Why Integrate Social Media Into Everyday Work?

私は以前、コミュニティのことをこのように定義しました。

 

コミュニティとは、人々がそこに属する、ということを超えて、

人々の所属意識を強めるような活動を、共同でおこなうところである。

職場はコミュニティです。

職場の文化は、そこに所属する人々によって決まっていきます。

人々の抱く一体感から生まれた目標を、みんなが分かち合い、

その向かっていく先に、理想が形づくられるのです。

だからこそ、仕事のやりがいは経営者の側からではなく、

従業員のリーダーシップの中から生まれるのです。

仕事のやりがいとは、私たちの職場をリーダーがどのように形づくるか、

私たちは何をするのか、なぜ私たちはそれをするのか、それにはどういう意味があるのか、

私たちひとりひとりがどのような役割を果たすのか、

今日も、明日も、どんな価値を生み出すのか、という文化なのです。

 

 


元記事:http://linkd.in/1FyGgJw

(翻訳:服部聡子)

 

 

 

 

 

仕事のやりがいに関する3つの嘘 

「やりがいのある仕事」というと、どんな仕事を思い浮かべるでしょうか。
立派な組織に所属して、立派な指導者の下で働けるような仕事?
けれども『GIVE & TAKE 与える人こそ成功する時代』の著者であるアダム・グラントは
そんな通説は嘘だ、といいます。
「仕事のやりがいに関する3つの嘘」とは、いったい何なのでしょうか?
元記事:http://linkd.in/1AHAsI4
by アダム・グラント
 

「砂糖水を売るか、世界を変えるか?」

1980年代、スティーブ・ジョブズは、当時ペプシ社にいたジョン・スカリーを

アップルへ引き抜こうとして、最後にこんな問いかけをしました。

「君は残りの人生を、砂糖水を売って過ごしたいのか、

それとも僕と一緒に世界を変えたくはないのか?」

当時、自分の仕事のやりがいを見つけられるかどうかは、

所属する組織に大きく左右されるものでした。

個人の目的意識も、所属する会社での役割から生じていました。

砂糖水を売ることに、たいした意味はなく、

一方、コンピューターの改革は、きわめてやりがいのある仕事だったのです。

けれども今日、あなたがどこで働いているかは、大きな問題ではありません。

そうして次の10年のうちに、事業主が誰であるかさえ、

誰も気に留めなくなっていくことでしょう。

 

やりがいのある仕事とは

調査によると、今日アメリカで多くの人が考える「やりがいのある仕事」とは以下のものです。

  • 聖職者及び宗教教育・活動の指導者:97%
  • 外科医:94%
  • 初等・中等教育アドミニストレーター:93%
    (※幼稚園や小中学で教育やケア活動を計画・コーディネイトする仕事)
  • カイロ・プラクター:93%

この4種類の仕事には、共通点があります。

そうしてこれらの仕事が、私たちが考える「やりがい」の嘘を、明らかにしてくれるのです。

Corps visits Godley Station Elementary School

 

その1. やりがいはどの組織で働くかで決まる、という嘘

 

やりがいを見つけるためには、アップルのような会社に就職しなければならない、

ということはありません。

上記の「やりがいのある仕事」はいずれも、

特定の組織に所属しなければならないものではなく、

さまざまな場所で働いている人が大勢いる職業です。

 

外科医は、週にいくつもの病院をかけもちしながら働くことも多い仕事です。

教育アドミニストレーターは、学校から学校へと移っていきます。

カイロプラクターも、さまざまな場所で施療します。

仕事は一定ですが、働く組織はさまざま。

つまり、組織ではなく、従事する活動によって識別される仕事です。

ダニエル・ピンクは『フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか』

の中で、「バイバイ、組織人」と言っていますが、

まさに「どこで働くか」と「やりがい」は無関係なのです。

 

その2. やりがいのある仕事は知的な職業である、という嘘

 

やりがいを見つけるためには、かならずしも知識労働者である必要はありません。

ひょっとしたら、先進工業国では、製造業を中心とする経済から、

知識集約型経済に転換した、という話を聞いたことがあるかもしれませんが、

実際には事実ではありません。

サービス産業が中心の経済なのです。

そうして、この誤解から2番目の嘘が生まれています。

アメリカでは、ほぼ10人のうち3人が、知識労働者です。

一方、サービス産業に従事する人は、アメリカの労働人口の約8割を占めています。

世界のGDPのうち、サービス部門の占める割合は、1980年代半ば以降、ほぼ3分の2を占め、

アメリカでは80%、EUでも73%を占めています。

多くの人が考える「やりがいのある仕事」は、すべてサービス業なのです。

外科医やカイロプラクターは、健康を促進する仕事。

聖職者及び宗教教育・活動の指導者は、精神の健康を。

教育者は、社会と精神の健康を。

もしこうした職業が存在しなかったとしたら、

人間はきっと今よりずっと悲惨なものになっていたでしょう。

つまり、やりがいのある仕事とは、ほかの人の生活を、よりよいものにする仕事なのです。

Frontier Sentinel 12

その3. やりがいは、理想的な上司がいるかどうかによる、という嘘

 

やりがいのある仕事をしようと思えば、スティーブ・ジョブズの下で

働かなければならない、というわけではありません。

目的は、上司が台本を書いてくれるものでも、

カリスマ的な指導者のひらめきによって与えられるものでもないのです。

そうではなく、その仕事に実際に携わっている人によって、形成されていくものです。

研究者であるエイミー・レズネスキーとジェーン・ダットンは、

このことを「ジョブ・クラフティング」と呼びます。

主体的に自分の仕事を活性化するように組み立て直していこう、というのです。

ふたりは、もっと大きなやりがいを求める医師と行動を共にしました。

彼は他の医師たちと相談する時間を削って、

多くの時間をレジデントのために講義をする時間を増やそうとしていました。

さらにふたりは病院の清掃員のグループにも出会いました。

彼らは職務範囲外であるにもかかわらず、患者の世話をするために独創的な方法を見つけ出し、

結果的に自分たちの仕事を、もっとやりがいのあるものにしていたのです。

清掃員のひとりは、昏睡患者のいる病棟で働いていました。

そうして壁の絵を並べ替えることを通じて、患者たちの覚醒をうながそうとしていました。

本来、意味づけるとは、自分を表現する行為であり、

仕事の意味とは、仕事を通して自分が何者なのかを明らかにする機会のことです。

仕事について、何百人という人とのインタビューを終えたスタッズ・ターケルは、

「仕事とは、日々の糧を探すものであるのと同様に、日々の意味を探るものである」

と言いました。

それを見つけるために、自分がどこに所属するかではなく、

自分が実際にやっていることの意味を理解することが大切なのです。

やりがいとは観念ではなく、人と人の結びつきのなかに生きているものです。

そうして、それはどこかから降ってくるものではなく、私たちの底から上がってくるものなのです。

 

 

 


元記事:http://linkd.in/1AHAsI4

(翻訳:服部聡子)

 

 

「いい人」ではなく、役立つ人になろう 

 

 

馬は人間よりもずっと多くのことを理解している。

毎日、自分の背に、違う生き物を乗せている馬が、

彼らのことを何も考えていないはずがない。

一方、毎日違う生き物の背に乗る人間が、

彼らのことを何も考えていない、というのは、

実によくある話である。

    ダグラス・アダムズ 『ダーク・ジェントリーの全人的探偵事務所』

 

会社の上司や、政治家の「先生方」、顧客の「お偉いさん」。

私たちの身の回りには、「権力」を持った人が大勢います。

――そんな人の目に、自分はどう映っているのだろう?

そんなふうに思ったことはありませんか?

自分は人間ではなく、「道具」や「歯車」としてしか扱われていないのではないか、

と感じたことは?

もしかしたら、そこには「権力のレンズ」がゆがめているのかもしれません。

「権力という度の入ったレンズは、私たちが相手を見、判断するときに、

お互いの姿をゆがめてしまうものです」

 

こう書くのは、ハイディ・グラント・ハルバーソンです。

彼女は近著『誰もわかってくれない場合にすべきこと』の中で、

私たちが気がつかないうちに、さまざまなレンズを通して、ものごとをゆがめて見ている、

と指摘します。

特に上司と部下、顧客と販売員、先生と生徒などの、いわゆる「上下関係」にある人は、

双方が「権力のレンズ」を通して相手を見ています。

このレンズのせいで、意図がうまく伝わらなかったり、誤解されたりして

双方が不満を抱く結果を引き起こしてしまうのです。

こうした事態を打開するためには、どうしたら良いのでしょうか。

World's Best Boss

権力は状況や環境に左右される

 

まず、わきまえておかなければならないのが

「ある人物Xが、あなたより権力を持っている、ということは、絶対にありません」

ということです。

つまり、あなたの上司があなたに対して権力をふるうのは、

「ある特定の状況において、限定された時間に、特定の条件においてのみ」

なのです。

たとえば、会社がなくなってしまったり、あるいはあなたが会社を辞めたりすれば、

上司は、もはやあなたに言うことを聞かせることはできません。

そのことをあなたもわかっているから、理不尽なことを言ってくる上司がいれば、

「辞めてやる!」と思うのですね。

でも、辞めるのはいつでもできること。

そうなる前に、状況を改善する方法をさぐってみましょう。

 

(相対的に)権力のある側は、あなたをどうみているか

さまざまな研究からわかっているのは、

権力を持つ人たちは、権力の無い人たちに対しては複雑で、繊細な考えをもつ必要がないと感じる

ということです。

 

「面接官や職場の上司は、権力を持つという感覚を抱くと、就職希望者や賞与を配分するときに、

固定観念に左右され、偏見を持ちやすくなる、という研究も報告されています」

自分をひとりの人間とは見ず、

「女性だから」とか「二流大学出身者だから」などという粗いくくりで

見なされた経験は、誰にもあることでしょう。

おもしろいことに、実験では、こうした固定観念を通して見る傾向が高いのは、

「リーダーが「任意に」選ばれた場合にのみ、当てはまる」ことが明らかになっています。

 

「リーダーが自身の社会的能力や仕事の適性に対して評価を受けて選ばれた場合は、

このような偏見は見られません」

無能な上司こそ、こうした固定観念を振りかざしてくる、という私たちの実感を、

実験も裏づけているのです。

けれども、こうした上司を私たちは「災難」として、堪え忍ぶしかないのでしょうか?

Watch your head

「権力のある人にあなたのことをしっかりと知ってもらうには、

あなたを知ることが必要であり、有益であるようにする必要があるのです」

とハルバーソンは言います。

あなたを固定観念でしか見ようとしない面接官や上司に対して、

あなたがどんな人であるかをしっかり知ってもらうためには、

あなたの「インストルメンタリティ(どれほど役に立つか)」が鍵になります。

ハルバーソンは以下のように述べています。

 

「権力を持つ人が目的を達成するために、あなたは何ができますか?

あなたをよく知ることで、彼らにとっては何の利益になりますか?

もし、あなたを詳しく知るために彼らが時間と労力を投資するならば、

どのような利益が生まれるでしょうか?

権力を持つ人が目的を達成するために、あなたは何ができますか?

あなたをよく知ることで、彼らにとっては何の利益になりますか?

もし、あなたを詳しく知るために彼らが時間と労力を投資するならば、

どのような利益が生まれるでしょうか?

役に立つ存在であるために、あなたがまず、すべきことは、

自分は権力を持つ人の願望や挑戦を理解しているだろうか? と自問することです。

たとえば、権力を持つ人があなたの上司であるとします。

自分の一年の目標や未来のゴールは知っていても、上司のそれは知っているでしょうか?

上司にとって、他の人からの手助けが一番必要になるのは、どこでしょうか?

どうすればその仕事を手伝うことができるのでしょうか?

上司にとっては、どこが上手く行っていないのでしょうか?

作業の時間配分をするとき、多くの人は柔軟に時間を使うことができません。

自分の上司が手伝いを必要としているときに手を貸せるように、

自分の仕事の優先順位を決めていけば、

あなたがどれほど役に立つ人間であるかは、劇的に知られることでしょう。

そして、役立つ存在であることはもちろんですが、

求められていることをやれば良いだけなのです。

しかし、あなたの存在が、何よりも知られる方法は、

上司が頼む前に、上司が必要としそうなことを準備しておくことです」

大切なのは、いい人になることではなく、役に立つ人になることです。

そうすれば、この「権力のレンズ」をあなたもうまく役立てることができるでしょう。

 

 

引用はすべて

誰もわかってくれない場合にすべきこと


参考:http://bit.ly/1F4cWuw

(翻訳:横手祐樹 責任編集:服部聡子)