実店舗からオンラインへ そしてその先は
現在は企業規模の大小にかかわらず テクノロジーの助けを借りて
新しい方法で顧客をターゲットにすることができるようになりました
でも顧客カスタマイズは十分なされているでしょうか
手紙や個人向けのメッセージ、顧客チェックなどは小企業の方がうまくやれます。購入するときに、良い経験をした、と顧客に感じてもらえれば、小企業である方が顧客の心に強く印象付けられ、今後の愛着心を育むことになるのです。
by ジェフ・ウィリアムズ
顧客というのは、ひとひらの雪のようなものです。
ひとりとして同じ顧客はいませんが、
雪の結晶にいくつかのタイプがあるように、
いくつかのタイプに分類することができます。
ここでは一般的な顧客の6つのタイプに向けたマーケティング・プランを
作成するお手伝いをしていきましょう。
かならず安売りになってから買う人もいれば、
倹約を選ぶ人もいます。
けれども、そうした人をひきつけようと、
商品やサービスがどれだけ安いか、吹聴することは
あなたの商品やサービスの価値を貶めることになりかねません。
より良いアプローチ:
競合の商品やサービスが、どれほど高くつくものか、説明してみてください。
「消費者が比較できるように、より高価な代替物を利用します」
そう助言するのは、ニューヨークに拠点を置く
マデリーン・ジョンソン・マーケティング&P.R.社のCEO、マデリーン・ジョンソンです。
「私は全国のホールフーズマーケットで、家庭用ヘアカラーの中での1番の売れ筋商品を
市場に出す手伝いをしています。
高所得者向け食料品店で、高価なオーガニック食品を買うような女性や男性が、
価格のことを気にするとは、思わないでしょう。
けれども自分の身の回りのことになると、一変して彼らは気にするようになるのです。
私たちが値上げしたとき、その反動は大きなものでした。
私たちの販促資料やソーシャルメディアを通じて、
私たちは自社商品と、美容院でのヘアカラーの比較を行いました。
この商品を使えば、15ドル99セントで白髪を染めることができる、
しかもひと目にさらされることなく、自宅で染髪ができる、と訴えたのです」
二番目の、自宅で染めることができる、という点は重要です。
自宅で利用できるシステム、家を出ることなく、
ひと目にふれない、という、顧客にこの商品を買う大きな理由を提案しています。
「けちな人」の対極にあるのが、価格を一切気にかけない顧客です。
彼らは高品質な商品やサービスを求めています。
こうした人に対しても、品質を強調することが重要であると、ジョンソンは言います。
というのも、彼らが喜んで高いお金を支払うのは、
お金に価値を置いていないからではありません。
先ほどのヘアカラーの例でいくと、こうしたクライアントに対しては、
「グレイヘアーを100%カバーする」「色が長持ちする」「髪を健やかに保つ高い品質」
「時間をかけて髪質を改善する」といった、価値を高めるようなフレーズが効果がある、
とジョンソンは言います。
品質に注目する顧客が、他のタイプと大きく異なるのは、
マーケティングのなかで、直接、価格に言及しない方が良い、という点です。
もしあなたのマーケティングが、ビジネス・オーナーに向けてのものであるなら、
費用対効果を明示することが役立つこともあります。
それを指摘するのは、ペンシルバニア州ランカスターのマーケティング・エージェンシー、
EZSolutionのコンテンツ・マーケティング戦略家であるマイケル・ジュバです。
ビジネス・オーナーは頑固な人が多いんです。
そうして、自分のビジネスは、全部自分でやりたがる傾向があります。
こういう人にアウトソーシングを提案するときは、投資利益率を見せ、
アウトソーシングを行うことが、適切であると説得することが大切です。
もしあなたが、競合の顧客を引きつけようと考えていて、
その競合が、熱心な支持者を抱えている場合こそ、まさにあなたの出番です。
アリゾナ州グレンデールに拠点を置く、Your Marketing Universityの共同創設者、
イーライ・ディレーニーは、試しにやってみる価値のある簡単な方法を教えてくれます。
「自分に聞いてみるのです。ブランド愛好家は、どこに熱狂しているのだろう、と」
そうして、彼らを狙ったマーケティング・キャンペーンを作ってみます。
「私は長いこと、マイクロソフト・ユーザーでした。
ですが、マックにも気持ちを引かれていたのです」
ディレーニーが何年もためらった原因は、アップルの広告でした。
「アップルが広告のターゲットとしていた商品購買層に、私はぴったりはまっていました。
2006年から2009年にかけてのマーケティング・キャンペーンです。
彼らはそうした購買層の性格を、見事に言い当てていました。
流行に敏感で、若く、元気がありあまっていて、
ただのマック・コンピューターが与えてくれるもの以上のものを求めている人々です」
そのキャンペーンの結果、ディレーニーはマック・ユーザーになりました。
こうした顧客は、あなたのキャッチ・コピーや広告のグラフィックに、
心を動かされることはありません。
とはいえ幸いにも、彼らを説得する方法はあるのです。
もし、その商品が訴えていることを裏づける研究を、あなたが知っているなら、
その情報を、マーケティング・コピーに盛り込むことを、ジョンソンは提案しています。
もちろんそれを裏づける研究が実際にはないのに、
「研究で明らかになった」などという言葉を、文章の中に放り込んではいけません。
たとえば、あなたがアンチ・エイジング用のスキンケア商品を
市場に出そうとしているのなら、
ジョンソンは、あなたが臨床研究を行った研究者と、主要成分の一覧を表示することで、
疑い深い消費者に、あなたの商品が実際の裏付けを持つことを、説得できる、と言います。
写真を販促資料に載せる場合は、
「その写真が加工されていないこと、
直接、研究をしているところを撮影したものであることを明らかにする1文を、
加えることが必要です」とジョンソンは提案しています。
彼らは、自分が本当は何を望んでいるか、はっきりとわかっていない人々です。
彼らには説得する前に、少し手助けが必要かもしれません。
彼らはあなたの商品やサービスについて、あまり知らない可能性があります。
あなたの商品やサービスを知ってもらう、良いチャンスかもしれませんが、
このタイプの見込み客を、教育できるかどうかは、あなた次第です。
ディレーニーは、いくつかの質問から始めてみるのが良い、とアドバイスしています。
彼らのことをもっと知るのです。
そうすることで、あなたが適切な方向で、彼らとの会話をリードできるような
情報が得られるでしょう。
こうした人々は、あなたを専門家とみなします。
そこへ、彼らが本当は何を望んでいるかを教え、それを与えることができるなら、
彼らはあなたのことを魔術師と思うようになるでしょう。
優柔不断な人々が、あなたを敬遠するのは、彼らが内気だからかもしれません。
それを指摘するのは、The Introvert Entrepreneur(内向的な起業家)の創設者であり、
『洞察力 与えられた能力についての覚え書き』の著者でもあるベス・ビューローです。
「内向的な人は、研究家であり、買おうとする店に関して、詳細な評価をする傾向があります。
あなたのサイトを訪問したり、店に行くかもしれませんが、
それは販売してもらうための基本的な説明より、
もっと多くのものを手に入れるためかもしれません。
あなたの質問やサービスについて、きわめて特殊な質問がある可能性が少なくないのです。
私たち、内向的な人間は、書いたものに重要な情報が含まれていることの方を
好むことが多いのです。
書いたものは、話されることより、その情報を処理する時間が
私たちがの側にゆだねられるからです。
もうひとつ、直接、あまり個人的なことを聞いてほしくありません。
また、あまりやかましく話しかけられたくもないのです。
関係を作るためには、来訪に対して、ありがとう、と言ってくれるだけで良いのです。
そうして、何かお役に立てますか、とだけ、聞いてください。
そうして、パーソナル・スペースを十分に取ってあげてください。
もし、あなたに何か探してほしい、と頼むようなことがあれば、
それは親しくなった、という、とても良いサインです。
フレンドリーに、あまり強引になることなく、誘ってみてください。
押しつけがましく、売り込みされている、と感じたら、
内向的な人は、出て行ってしまうでしょう」
大多数の顧客は、いくつかの性格タイプの組み合わせです。
それぞれのタイプに近づく方法を理解することで、
あなたはさまざまなタイプの顧客を引きつけ、
より多くの売上につなげていくことができるでしょう。
(翻訳:服部聡子)
by ルイス・リー
マーケターは、消費者が購買を決めるまで、どのようなプロセスをたどるか
豊富な知識を持っています。
けれども学術研究の側は、インターネットやモバイル機器が
買い物という行為をどのように変貌させていったかについては、
すっかり遅れを取ってしまっています。
消費者がどのように製品を選ぶかについて、研究者の知識には、
大きな穴が空いたままになっているのです。
消費者行動とマーケティングについて、今日の教科書は
もはや時代遅れになってしまっています。
そう語るのは、スタンフォード大学経営大学院のマーケティング学部
イタマー・サイモンソン教授です。
消費者の購買決定プロセスの研究には、新しい指針が必要であることを、
同教授は指摘しています。
ネット上のレビューは、従来の情報ソースより役に立っているのか?
ブランド・ネームは、品質を保証する面で、重要ではなくなってきているのか?
こうした問いは、サイモンソンが『マーケティング・ビヘイビアー・ジャーナル』最新刊に発表した論文で、
さらに掘り下げながら、考察を進めているものです。
判断や意志決定を調査する研究者たちは、
人が時として不合理なふるまいをすることを、実証的に明らかにし、
大きな成果を達成したと考えていました。
「今日では、合理性の基本原理と
相容れない証拠があまりに多くあがっています」
とサイモンソンは語ります。
「このことは、実にさまざまな方法で、おもしろおかしく主張されてきました。
本も、学術分野にとどまらない、幅広い人々の手によって、書かれるようになっています」
同時に、最近の研究では、人が既に知っている情報を、実際の消費行動に
どのように適用しながら意志決定をおこなっているかについての研究も、進んでいます。
たとえば、人がデフォルト・オプションを優先する傾向を用いて、
健康に良いものを選ぶようにする方法、というものなどです。
けれども意志決定が、新しいインターネット環境によってどのように変化したかについては、
これまでのところほとんどなされていない、とサイモンソンは語っています。
今日では、かつてよりはるかに多くの情報に、すばやく、しかも簡単に
アクセスできるようになりました。
これは、人々の意志決定が、根本的に変わったことを意味します。
そこには、様々な種類の新しい研究課題や、理論の可能性があります。
膨大な量の情報に囲まれた ―― 圧倒されたとさえいえる ―― 消費者がどのように考え、
意志決定をおこなうのか、
マーケティング・エグゼクティブもブランドマネージャーや販売者も、
もっと多くの情報を渇望しています。
ブランドについて考えてみましょう。
ブランドのおもなはたらきのひとつは、品質の保証です。
けれども、製品の品質について、もっと確かな情報にアクセスできるなら、
おそらくブランドネームや、価格、どこで作られたか、などという不明瞭な保証より、
消費者はそちらを信頼することでしょう。
さらにオンラインレビューや、品質に関するその他の情報をふまえた消費者が、
ブランドネームを考慮するかどうかについても、研究の対象となるでしょう。
さらに考察されるであろう領域として、
革新的な製品を、見たり試したりするのが簡単になっている時代に、
製品を選択する上で、ブランドネームや価格などの旧式な要因が、
どこまで影響力を持つかということもあります。
今日の消費者は、ユーチューブで製品のデモンストレーションを視聴できるし、
ソーシャルメディアでコメントを読むこともできる、
PDFをダウンロードして、製品の仕様書やマニュアルも見ることができます。
私たちは製品について、通知される前に、詳細に知っているのです。
動画投稿サイトなどのオンライン情報が、消費者の新製品の受容に、
どれほどの影響を及ぼしているか、今後、研究されていくでしょう。
これまで研究者は一般の人々に向けて、人間は時として不合理である、と説いてきました。
ところが皮肉なことに、新しい情報ソースが示すのは、
人間が不合理なものに影響されにくいことであると、サイモンソンは指摘します。
たとえば、今日ではマーケターが消費者に、製品Aを買わせようと、製品Bを見せて、
BがAにくらべてどれほど劣っているか示すような誘導が、むずかしくなっています。
今日の消費者は、製品CやD、Eまでも簡単にチェックすることができるので、
Aがほんとうに望ましいものなのか、単にBほどひどくはないというだけのことなのか、
すぐにわかってしまうからです。
消費者が、サーバースペースにある膨大な量の情報の中から、
どのように情報を引き出し、どのように選択する方法を決定しているかは、
マーケターにもいまだほとんどわかっていない領域です。
消費者が選択するのは、どのような要因が影響を及ぼした、どのような情報なのか?
そうして消費者はそれをどのように整理し、分類しているのか?
こうした問いが、決定的に重要になってきます。
というのも、消費者が何を調べようと選び、どのように閲覧するかが、
実際に何を買うかを決定する主な要因となってきているからです。
たとえば、オンラインレビューはいたるところにありますが、
意志決定に関しては、レビューを読むことが、他の要因、
たとえばブランドネームや価格などの影響力を弱めることにつながっているか
など、さらに突っこんだ研究が必要になっています。
消費者が無視するのはどのようなレビューか、
相反するレビューが、購入パターンにどのような影響を及ぼしているかなど、
いまだほとんどわかっていません。
伝統的に、買い物客が目を通す一連の商品、いわゆる「考慮集合」は、
かつては予測しやすく、2、3 の有名なブランド、
もしくはそれより安価なモデルに限られていた、とサイモンソンは言います。
けれども、今日の消費者は、購買決定をしようとする際に、
よく知っているものも、検索結果に表示されて知ったなじみのないものも、考慮に入れています。
明らかに「考慮集合」の枠が、拡大しているのです。
サイモンソンによると、こうした問いは
「消費者行動の中心に関わるものであり、
広く意志決定やマーケティングの研究にとっても重要なものである」ということです。
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元記事: http://stanford.io/1BwbhaN
(翻訳:服部聡子)