情報の高速化はマーケティングをどう変える?

 

 

『絶対的価値:(ほぼ)完全情報の時代に顧客に本当に影響を及ぼすもの(原題)』の中で、

著者のエマニュエル・ローゼンとイタマール・サイモンソンは、

新製品や新しいサービスの認知を確立するための、新しいアプローチを説明しています。

absolute value

 

 旧約聖書で、モーゼはたったひとり、神に会いに行き、

 与えられた神の言葉を、今度は各部族の長老に伝えます。

 ところがこうした徐々に伝播する、トリクルダウンアプローチは、

 今ではしだいに当てはまらなくなっている、というのです。

 というのも、インターネットを通じて、情報はどんどん速く、

 安価に、しかも完全なかたちで伝わるようになってきたからです。

 

 たとえば、新製品が出荷されて、わずか数時間の後には、

 大勢の人が、シーネットやアマゾンのようなサイトで、

 レビューを読むことができます。

 

イノベーター、アーリーアダプター、そうしてアーリー・マジョリティのユーザーは、

発売直後の数分以内に、自分の意見を表明します。

リークがあれば、出荷以前に。

 

情報は、もはやトリクルダウン方式で届くものではありません。

それは速やかに、無料で、遠くまで拡散するものなのです。

新刊が出る。

誰がニューヨーク・タイムズに書評が載るまで待って、それからアマゾンで買うでしょうか?

 

この 〈 速く、無料で、完全 〉 ?という新しい情報の本質が、マーケティングを根本的に転換させるのです。

 

1. 有名人は重要でなくなる

 

製品を評価し、自分の意見をすぐに拡散させることは、多くの人に可能になっています。

有名人の発売後のレポートは、今でも重要視されてはいますが、

購入やトライアルのきっかけ作りという意味では、さほど必要はなくなっています。

「どこにでもいる人」が、新しい「重要人物」なのです!

 

2. ブランドは重要ではなくなる

 

情報が不完全で時間のかかるものであった時代、品質を保証するものとして、

人々はブランドのお墨付きに依存していました。

ところが書籍販売ビジネスを見てみると、

アマゾンの星の数の平均や、一般人が投稿した最初のいくつかのコメントの方が、

出版社の名前よりも、重要視され、目立つようになっています。

 

3. ブランドに対する愛着心は一時的なものに

 

理想社会では、あなたが過去に製品を買ったメーカーは、将来に渡ってもすばらしい製品を作りだすはずです。

現実社会では、かならずしもそうではありません。

たとえば、フェイスブックで記事をシェアするのが好きでも、

フェイスブックのメール・サービスを使ったことがない人もいるでしょう。

こうしたことを総合すると、メリットとは新しいマーケティング戦略なのです。

 

以下は、この新しい世界で勝ち残る方法です。

 

4. コントロールするという幻想を捨てる

 

全知全能は、幻想でしかありません。

誰が可能で、誰が助けてくれるか、あなたにはわからないのです。

また、あなたのマーケティングや広告で、誰かをコントロールすることもできません。

ですから、あなたの製品をとにかく送り出し、流れに身をまかせましょう。

 

5. 多くの種をまく

 

プランターではなく、野原に種をまくのです。

これは数の戦略です。種が多ければ多いほど、たくさんの花が咲くのです。

あなたにはどの種がヒマワリを咲かせるか、わからないのですから。

 

Sunflower

 

ピラミッド方式で、頂点にいる有名人を通して接触できる人もいれば、

何千という種をまくことによって接触できる人もいます。

起業に関する多くの問題と同じく、

どちらが正しく、どちらがまちがっているというものではありません。

何が効果があって、何が効果がないかということでしかないし、

何が効果があるかは、実験によって初めて明らかになるのです。

 

 

このコラムはガイ・カワサキの最新刊『スタートの技術 2.0』(原題)の一部分を元にしたものです。

一読後、飛躍されんことを。

The_Art_of_the_Start_2.0

 

著者:ガイ・カワサキ


元記事:http://linkd.in/1G2MdQl

(翻訳:服部聡子)