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「顧客が欲しているから」と全部与えてはいけません。マーケティングのニーズを考えるヒント

こんにちは、トイアンナです。
顧客が欲しているモノを、マーケティングでは「ニーズ」と呼びます。ニーズを満たすことは、売上の至上命題。マーケティングとは「ニーズに始まり、ニーズに終わる」といっても過言ではありません。しかし、お客様へお話を伺っただけでペラペラとニーズを教えてもらえることは、ほとんどありません。

というのも、多くのお客様は「ウソ」をつくからです。

「インサイト」を復習しよう

気分が悪くなるたとえで申し訳ございませんが……たとえば「今年、新しい夫と再婚した。前夫との子も家にいるが正直疎ましい。できるだけ家の外にいてくれれば、夫とふたりきりで過ごせるのに」と考える女性がいたとします。

果たしてこの女性は、ヒアリング調査で本音を答えてくれるでしょうか?

答えはもちろん、否、でしょう。「自分の子どもが疎ましい」「できるだけ家の外にいてくれれば夫と過ごせる」という気持ちは、社会的にとうてい認められない感情だからです。

したがって、この女性はこんな相談をあなたへしてくるでしょう。
「うちの子ももう中学生だから、そろそろ塾へ通わせたいんだけど」
「可愛い子には旅をさせよというじゃない。夏休みを利用した交換留学ってどうかしら」

そこであなたが短期間で効率的に学習できる塾や留学先を選び抜いたとしても、感謝してもらえないことでしょう。なぜならこの女性のニーズは「できるだけ長期間、子どもを外へやれるサービス」だからです。

人は本音のニーズをなかなか声には出しません。このように人が表立っては言えない、隠れたニーズのことを「インサイト」と呼びます。

「顧客が欲している」ものは、えてして表層的な嘘です。そのままのサービスを与えても、売上に変化はないでしょう。

インサイトを見つけるには、仮説を準備しよう

では本音のニーズこと、インサイトを見つけるにはどうすべきでしょうか。この記事ではインサイトへ近づく「ヒアリングのやりかた」をご案内します。

まず、ヒアリング調査を実施する前に「仮説」を用意してください。

たとえばあなたが地域の塾を運営しているとしましょう。塾のニーズとして、どんなものがあるか親の気持ちになりきって想像します。

ここでは私が仮説として3つのニーズを想定しました。
仮説1 子供を塾へやりたい親は、子どもの成績を純粋に心配している
仮説2 子どもを塾へやりたい親は、子どものいない時間を満喫したい
仮説3 子どもを塾へやりたい親は、なるべく長時間預けて高みを目指させたい

仮説が出来上がったら、それを「検証」するためにはどんな質問をすべきだろうか?と考えてみてください。実際に仮説ごとの質問例をご紹介します。

仮説1 「子供を塾へやりたい親は、子どもの成績を純粋に心配している」を検証したいときのヒアリング質問例
1日1時間の塾で、偏差値が20上がる塾があったらどう活用したいですか?
この質問では、成績と子供が早く帰宅することをセットにすることで「長時間預けたい」親の可能性を排除します。親が「だったら早く帰ってきてくれて成績も上がるしありがたい」と答えるなら、その親は子供の成績を純粋に心配しているだけだ、と言えるでしょう。

仮説2 「子どもを塾へやりたい親は、子どものいない時間を満喫したい」を検証したいときのヒアリング質問例
親をやっていると、自分の時間がなくてしんどいと感じますか?
この質問では親が子育てに抱えている苦労や不満を確認することができます。特に仮説1と併せて質問すれば、自分の時間がもっとほしい、と親がヒアリングでおっしゃるなら「子供を塾へ長時間預けること」が成績アップよりも優先したい項目なのかどうかがわかります。

仮説3 「子どもを塾へやりたい親は、なるべく長時間預けて高みを目指させたい」を検証したいときのヒアリング質問例
塾へ長時間預けたくても経済的に悩まれることはありますか?
たとえ仮説1、仮説2の質問で「子供の成績を純粋にあげたい」と結論づけたとしても、トップ校進学をさせるために長時間預けたいというニーズがあるかもしれません。その場合親御さんが考えるのはコストのお悩みです。有名塾なら月10万円単位なこともあります。この質問では「子供の学力を純粋に上げてもらうために長時間預けたくても預けられない。有名塾と同じクオリティでもっと安い塾があればいいのに」というインサイトが見つかるかもしれません。

優れたインサイトは、優れた製品につながる

このように優れた仮説を用意できれば、インサイトへ近づきやすくなります。すぐれたインサイトが見つかれば「じゃあ、弊社では○○を差別化して新しい製品・サービスを作ろう」と策が浮かぶものです。インサイトを掘り起こし、適切なサービスを提供できるかどうかは
あなたの仮説力にかかっています。ぜひ、質の高いヒアリング調査をお試しください。

 

 

 


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com