集客の「見込み客」は少なければ少ないほどよい。適切な売上の作り方

こんにちは、トイアンナです。
エステ、歯科、印刷会社など、集客では必ず「見込み客」へアプローチします。しかしこの「見込み客」が一体誰なのかを突き詰めている企業は恐ろしく少ないのが現状です。

大手企業ですら「見込み客」の判定が甘い

私がこれまでヒアリングしてきた企業では、見込み客を「1度会社へ問い合わせてきた顧客」と定義していました。確かに、自社へすでに興味を持ってきてくれた時点でサービスを検討してすらいない顧客と比べれば「見込み」はあるでしょう。

しかし全体の何パーセントが「本当の顧客」になってくれているでしょうか?

問い合わせをしてくれた顧客でも属性によって集客できる確率が高いターゲットと、ほぼ諦めた方がよい相手がいたはずです。さらには、集客・購買へつながるタイミングもそれぞれの顧客で大きく異なったでしょう。

お問い合わせくださった人を「見込み客」という一言でくくり、同じようなフォローアップをしても相手の心は動きません。見込み客から本当の顧客、ひいては御社の大ファンを作るには最初のフォローが差を作るのです。

ケーススタディ 靴の購買

ここからは実際の例をもとに、見込み客への対応をご紹介します。自分の例で恐縮ですが、私は以前、靴のオーダーメイドを検討したことがあります。その際、下記のような流れで購入先を検討しました。

  1.  オシャレなオーダーメイド靴が欲しいけれど、どのブランドがいいか分からない
  2.  まずは「オーダーメイド 靴」で検索して何社か問い合わせよう
  3.  問い合わせ後のカタログを見ても「足に優しい」「歩きやすい」靴ばかりだな
  4.  オシャレな靴の事例がどこにもないからオーダーは1度諦めよう

もしこの段階で「オシャレなオーダーメイド靴、あります」というアプローチが1件でもあれば、私はそこで靴を購入したはずです。

しかし、ここで「オシャレな靴が欲しい」というニーズに対するフォローアップは一切行われませんでした。問い合わせた企業からのメールはありましたが、すべて「今ならお安くできます」「何かお悩みでしたらご相談ください」と言った見当違いなメッセージばかりだったからです。

「お悩みでしたらご相談ください」というメッセージに対して「オシャレな靴が御社のウェブサイトに見当たらないんですが、何かもう少しマシなデザインはありますか」なんて不遜なメッセージを送る顧客は少数派でしょう。

そこで私は、別ルートから情報を集めます。

5. 友達から聞いて、ハイブランドの事例を知ったから調べてみよう
6. オシャレな靴が見つかったから、ハイブランドのオーダーメイド靴にしよう

こうして、私は最終的に大手のシューズブランドで靴を購買してしまいました。

どうすれば「見込み客」を取れるのか?

オーダーメイド靴はもともと購入意欲の高い顧客が多いため、大手ブランドに対して、中小企業も戦えるフィールドです。

もし私がオーダーメイド靴のマーケティングを担当するのであれば、まずは一度オーダーメイド靴の購入を諦めるタイミングを探します。おそらく諦める理由は「価格」と「オシャレな靴がない」ことですから、それぞれに刺さるアプローチを取ったでしょう。

たとえば相場からかなり低い価格でのお見積りを検討していた顧客へは、「弊社なら20年使える靴が、〇万円で手に入ります。 毎年履き捨てている靴と比べて、どちらがあなたにふさわしいと思いますか?」といったコミュニケーションで、一見高く見えるオーダーメイド靴の「長く使える安さ」をアピールします。

そして予算は相場と同じくらいで考えている顧客ながらも、「トレンド」「ファッション」といった項目を重視していた顧客に対しては、流行を押さえたオーダーメイド靴を提案するでしょう。

もし自社の強みがデザイン性ならば、思い切って前者の「価格が安い靴」を探す顧客は切り捨てても構いません。自社の強みで心を動かしてくれる顧客の方が、長くお付き合いできる可能性も高いからです。見込み客は絞り込みすぎて、少なすぎるくらいがちょうどよいのです。

このように単なる「お問い合わせ客」を見込み客としてカウントするのではなく属性やニーズによって分類し、より自社で購入してくれそうな客を狙うことで「お問い合わせ客」は「見込み客」へ進化します。

見込み客の分析を始めよう

ではどうやって単なる「お問い合わせ客」を「見込み客」として絞り込めばよいでしょうか。まずは、自社へ届いたお問い合わせ客の一覧を下記3点で整理しましょう。

  1. その客はなぜ問い合わせてきたのか
  2. どのような思考の流れをたどって購入へたどり着くか
  3. 他社も含めて検討し「一度購入を諦める」のはいつか

これらを整理してフォローアップ施策を取れば、効率的に集客へつなげられるはずです。何万通もメールを送り、配送システムにお金をかけるのはやめましょう。お問い合わせ客を絞り込み、最低限のメール数で見込み客を拾い上げてください。

 

 

 


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

「顧客が欲しているから」と全部与えてはいけません。マーケティングのニーズを考えるヒント

こんにちは、トイアンナです。
顧客が欲しているモノを、マーケティングでは「ニーズ」と呼びます。ニーズを満たすことは、売上の至上命題。マーケティングとは「ニーズに始まり、ニーズに終わる」といっても過言ではありません。しかし、お客様へお話を伺っただけでペラペラとニーズを教えてもらえることは、ほとんどありません。

というのも、多くのお客様は「ウソ」をつくからです。

「インサイト」を復習しよう

気分が悪くなるたとえで申し訳ございませんが……たとえば「今年、新しい夫と再婚した。前夫との子も家にいるが正直疎ましい。できるだけ家の外にいてくれれば、夫とふたりきりで過ごせるのに」と考える女性がいたとします。

果たしてこの女性は、ヒアリング調査で本音を答えてくれるでしょうか?

答えはもちろん、否、でしょう。「自分の子どもが疎ましい」「できるだけ家の外にいてくれれば夫と過ごせる」という気持ちは、社会的にとうてい認められない感情だからです。

したがって、この女性はこんな相談をあなたへしてくるでしょう。
「うちの子ももう中学生だから、そろそろ塾へ通わせたいんだけど」
「可愛い子には旅をさせよというじゃない。夏休みを利用した交換留学ってどうかしら」

そこであなたが短期間で効率的に学習できる塾や留学先を選び抜いたとしても、感謝してもらえないことでしょう。なぜならこの女性のニーズは「できるだけ長期間、子どもを外へやれるサービス」だからです。

人は本音のニーズをなかなか声には出しません。このように人が表立っては言えない、隠れたニーズのことを「インサイト」と呼びます。

「顧客が欲している」ものは、えてして表層的な嘘です。そのままのサービスを与えても、売上に変化はないでしょう。

インサイトを見つけるには、仮説を準備しよう

では本音のニーズこと、インサイトを見つけるにはどうすべきでしょうか。この記事ではインサイトへ近づく「ヒアリングのやりかた」をご案内します。

まず、ヒアリング調査を実施する前に「仮説」を用意してください。

たとえばあなたが地域の塾を運営しているとしましょう。塾のニーズとして、どんなものがあるか親の気持ちになりきって想像します。

ここでは私が仮説として3つのニーズを想定しました。
仮説1 子供を塾へやりたい親は、子どもの成績を純粋に心配している
仮説2 子どもを塾へやりたい親は、子どものいない時間を満喫したい
仮説3 子どもを塾へやりたい親は、なるべく長時間預けて高みを目指させたい

仮説が出来上がったら、それを「検証」するためにはどんな質問をすべきだろうか?と考えてみてください。実際に仮説ごとの質問例をご紹介します。

仮説1 「子供を塾へやりたい親は、子どもの成績を純粋に心配している」を検証したいときのヒアリング質問例
1日1時間の塾で、偏差値が20上がる塾があったらどう活用したいですか?
この質問では、成績と子供が早く帰宅することをセットにすることで「長時間預けたい」親の可能性を排除します。親が「だったら早く帰ってきてくれて成績も上がるしありがたい」と答えるなら、その親は子供の成績を純粋に心配しているだけだ、と言えるでしょう。

仮説2 「子どもを塾へやりたい親は、子どものいない時間を満喫したい」を検証したいときのヒアリング質問例
親をやっていると、自分の時間がなくてしんどいと感じますか?
この質問では親が子育てに抱えている苦労や不満を確認することができます。特に仮説1と併せて質問すれば、自分の時間がもっとほしい、と親がヒアリングでおっしゃるなら「子供を塾へ長時間預けること」が成績アップよりも優先したい項目なのかどうかがわかります。

仮説3 「子どもを塾へやりたい親は、なるべく長時間預けて高みを目指させたい」を検証したいときのヒアリング質問例
塾へ長時間預けたくても経済的に悩まれることはありますか?
たとえ仮説1、仮説2の質問で「子供の成績を純粋にあげたい」と結論づけたとしても、トップ校進学をさせるために長時間預けたいというニーズがあるかもしれません。その場合親御さんが考えるのはコストのお悩みです。有名塾なら月10万円単位なこともあります。この質問では「子供の学力を純粋に上げてもらうために長時間預けたくても預けられない。有名塾と同じクオリティでもっと安い塾があればいいのに」というインサイトが見つかるかもしれません。

優れたインサイトは、優れた製品につながる

このように優れた仮説を用意できれば、インサイトへ近づきやすくなります。すぐれたインサイトが見つかれば「じゃあ、弊社では○○を差別化して新しい製品・サービスを作ろう」と策が浮かぶものです。インサイトを掘り起こし、適切なサービスを提供できるかどうかは
あなたの仮説力にかかっています。ぜひ、質の高いヒアリング調査をお試しください。

 

 

 


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

顧客を友とするなら、従業員は友になりえない。マーケティングを志す覚悟

こんにちは、トイアンナです。
私はこれまで起業を3回ほど経営しており、中小らしく資金繰りに奔走してまいりました。一度会社員を経験してから経営者と比較してみると、経営の仕事の「主」は資金調達だなとしみじみさせられます。

さて、資金調達にはVCからの投資や株式売買などさまざまな手法がありますが、その中で「顧客の方を向き、売上を上げる」のがマーケティングです。企業は資金を手に入れても最終的に売上・利益へ還元できなければ立ちゆきません。ですから企業とは「顧客を最優先にせざるをえない」組織です。

もし経営者が株主のことだけを考えるなら、粗悪な製品を高く売った方が利益率も上がり還元できる額も増えます。しかし経営者が毎回そうしないのは、長期的な利益に反すること、すなわち顧客からそっぽを向かれると分かっているからです。その代わりに経営者は「マーケティング」を使って売上と利益を上げようとするのです。

 顧客を最上の友とするならば、そうでなくなる相手もいる

マーケティングの天才、ジェイ・エイブラハムは、顧客を「かけがえのない友人のように扱え」と言います。自社製品をやみくもに「売りつける」のではなく、どうすれば相手の本当の望みを果たせるか心を尽くすこと。それがどれほど重要かは、経営者ならだれもがご存知でしょう。

しかし顧客を最上の友にするということは「最上の友にしない相手」を決めることでもあります。戦略は常に優先順位を定めることであり、「みんなお友達」というわけにはいかないからです。

冒頭の例に出した株主は多額の利益を還元してもらえるにも関わらず、顧客が目にする広告宣伝費や、将来の研究開発へ利益を回すことを許さねばなりません。短期的には損失扱いになるけれど、長期的に企業の株価を上げるにはこれしかない、と株主を説得せねばならないのです。

 従業員へ「お客様を最優先にさせる」難しさ

従業員も同様です。人件費へ還元できるほど稼いでいても「来年の製品をもっとよくしよう」「お客様から話を伺う調査費にしよう」と他のコストへ使ってもわらねばなりません。さらに言えば、そのことを誇りに思い、顧客へプレゼンせねばならないのです。

従業員は給与のために働いているのですから、マーケティングを重視して広告や調査、研究に予算を使うことは彼らの利益に反します。従業員は経営者ではないのですから「こんなことに金を使うなら、ボーナスをちょうだいよ」と思うのが普通でしょう。そして、もっと高い給与がある会社へ離職する方も出るでしょう。

ではそれでもなぜ、マーケティングをするのか。それはマーケティング・スキルを使いこなせば長く勝てる企業になるからです。長く勝てれば、従業員へ報いることができます。長く自社へ残ってくれた社員へ給与で見返りを渡すことができるのです。

さらに申し上げれば、従業員は自社を知る「最初の顧客」でもあります。自社を誇りに思ってもらい、自社製品・サービスを愛し、拡散してもらう。その従業員へ報いたいのであれば、最初に人件費を削ってでもマーケティングへ資金を割きましょう。投資家、株主、従業員へ報いたいなら、まずは顧客の方を向き戦略を立てること。この優先順位が崩れるならば、今は売れている製品も、数年後には暗雲立ち込めることでしょう。

 それでもなぜ、マーケティングをするのか

口だけで「マーケティングを重視する」「お客様第一主義」と語ることはできます。しかし徹頭徹尾それを実現するということは、他のプレーヤーを最優先にしない、という覚悟が必要です。

「短期的に割引や短い納期で勝つよりも、200年残る会社を作る」
「真に顧客から愛され、広告宣伝費がゼロでも従業員を食べさせる会社になる」
「来期だけではなく、10年株主へ報いられる企業になる」

それが、マーケティングの存在意義です。

もちろん、10年後に勝つためには今期、そして来期も成長せねばなりません。いきなり10年後、ポンと利益が降ってくることはないのです。しかし「割引セール」「大安売り」など目先の手段を愛用するだけでは、あなたの会社は残りません。

価格とは違う観点で「ここの製品・サービスは違う」と思っていただくこと。そのためには機能で実際に差をつけるだけでなく、それを顧客に認知してもらい、愛してもらわねばなりません。良いものを作れば売れる、そう信じられるのは最初の100人へ商品を売るときだけです。それ以上の市場に打って出るには「知られる」「愛される」「購入される」「リピートされる」のすべてに戦略を立てねばなりません。

そのためにもジェイ・エイブラハムが提唱したビジネスを大きくする3つの原則「顧客を増やすか」「使用頻度を上げる」「単価を上げる」手法をマーケティングを通じ、考えていくべきなのです。言葉だけの「お客様第一」を脱却するためにも、マーケティングを学び、使いこなしてください。
 


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

起業前にやっておくべき5つのこと

(※この記事はhttps://www.linkedin.com/pulse/5-must-dos-before-becoming-entrepreneur-j-t-o-donnell/を翻訳したものです)

by J・T・オドネル

多くの社会人が、やりきれない思いを抱えながら、今日も仕事をしています。あなたもそのひとりではありませんか?

先のギャラップ調査によると、労働人口の87%が自分の仕事に「やりがいを持てない」と感じている(言葉を換えると、楽しんではいない)ことがわかりました。こうした人々の多くは、いつか起業する日が来るのを夢見ているのではないでしょうか。
みんな、雇い主のために働くことを、金でできた鎖につながれたように感じ、どこかでうんざりしているのでしょう。不満を抱えた社員のかなりの数の人々が、自分のために働き、コントロールしているのは自分だと実感する日を空想するのです。

けれども、仕事を辞めて、フルタイムの起業家になる前に……
私はこのことをお聞きしたいと思います。

では、どうしてスタートアップの90%が失敗しているのでしょうか?
フォーブスの記事によると、アメリカでは新規事業の90%が失敗しているということです。どうしてなのでしょうか?

それは、多くの人が、立ち上げの時期を生き延びる準備ができていないからです。そのために多くの人々が生計を支えることができなくなってしまうのです。

ものやサービスを売ることは、多くの人が考えるより、大変なことです。起業家も情熱だけでは成功できません。

先日、私は「ユー・ユニバーシティ」のポッドキャストで、創設者のマイケル・ペッグズからインタビューを受けました。その中で、私たちは起業までの道のりについてや、自分が「私の仕事」であると実感することが、のちに起業家へと成長していく上で助けになることについて、話し合いました。

「私の仕事」を成功させるために何が必要か、ということや、どうして私が起業家になろうと思うようになったかを話しながら、私は、野心的な起業家が全員、会社を立ち上げる前にやっていたことについて、考えさせられたのです。

そのときの話はさておいて…

ここでは、そこから5つのアドバイスをお送りしましょう。

1. できるだけたくさん貯金をしておくこと

すくなくとも給与1年分、できれば2年分が必要です。事業を起こすのにかかりきりになる間、収入の心配をしないですむようにしておくのです。
起業時に、金銭的に余裕があればあるほど、受けるストレスも少なくてすみますし、そうなれば肝心のビジネスでも、良い決断を下しやすくなります。

2.あなたの情熱と、人々が抱えている問題が交差する地点を見きわめる

すべては需要と供給の関係にあります。
お客様が買いたいと思うものをあなたが提供できなければ、うまくやっていくことはできません。
反面、あなたが起業家になることを選んだのは、好きなことがやりたいという情熱があったからです。

解決策は、この両方のベクトルが交わるところを探すことです。
あなたの情熱と、人々が抱える問題が交差する地点を見きわめられれば、あなたは価値のある、しっかりした提案をもって、あなたのビジネスをスタートさせることができるでしょう。

3. あなたのネットワークのために働く

ビジネスをうまくスタートさせるためには、できるだけ大きな支援の輪が必要です。専門家や同僚、友人、家族からなる、広汎なネットワークが不可欠なのです。

起業家としての船出に際して、周囲の人々に支援を要請する時のために、あなたは彼らの要求に応えることで、「信用の貯金」をしておく必要があります。それが「ネットワークのために働く」ということなのです。

あらゆる機会を通じて、周囲の人々の助けになる方法を、知っておきましょう。そうすれば、みんなもあなたのことを大切に思い、信頼してくれるはずです。たとえば…

  • 周囲の人と必要な情報やリソースを分かちあう
  • 空いた時間をボランティア活動にあてる
  • あなたのネットワークに属する人が、互いに親しくなれるように手助けする

これらはほんの一例ですが、あなたが今日、ネットワークのために働いておけば、明日はネットワークがあなたのために働いてくれることを忘れないでください。

4.あなたの「起業までの道のり」のストーリーを作る

これは、起業家として成功するためには、不可欠の要素です。成功した会社にはかならず、すばらしいストーリーがあります。とりわけ起業家は、その物語を熱意と確信をこめて語ることができます。

紆余曲折に満ちた物語でなければなりません。感動を呼び、人々が夢中になり、行動を起こしたくなるような。何より大切なのは、誰もがあなたのビジネスが成功するよう、応援せずにはいられなくなるようなストーリーであることです。

あなたが起業家として成功したいなら、あなたの「起業までの道のり」は、細部まで明確で、うまく語られなければなりません。自分のストーリーをおもしろく語る方法を学ぶことが重要になってくるのです。
まずはストーリーの細部をはっきりさせ、確かなものにすることから始めて、感情に訴えかける山場を作ります。

5. あなたのストーリーをシェアする ― できるだけ大勢の人と!

あなたのストーリーができたら、今度はそれをみんなに知ってもらわなければなりません! 同僚や、家族や、友だちとシェアしましょう。オンラインでも、オフラインでも、できるだけ大勢の人と。あなたのストーリーを話す相手は、多ければ多いほどいいのです。

あなたがビジネスを始めるらしい、という評判を取っておくことが重要です。どうしてあなたが熱意を持って会社を設立しようとしているのか理解してもらえれば、みんなあなたを支えてくれます。けれども、そのことはあなたが語って聞かせなければ、誰にもわかってもらえないのです!

ここにあげた5つの秘訣が、あなたがいつの日か旧態依然の職場を離れ、起業という船出を果たす助けになることを、願ってやみません。

自分の会社を運営することは、苦労するだけの報いがあります。ただし、それもうまくやってのけてこそ、なのです。もちろん困難なことや紆余曲折があるでしょうが、あらかじめできる準備をしておけば、失敗のリスクを抑えることになるはずです。

上にあげた5つは、おそらくその助けになるでしょう。

幸運を祈っています。


元記事:http://linkd.in/1Cun9yB
(翻訳:服部聡子)

米国ベストセラー:『Hit Refresh』

(※この記事はhttps://www.amazon.com/Hit-Refresh-Rediscover-Microsofts-Everyone-ebook/dp/B01HOT5SQAを翻訳したものです)

Hit Refresh: The Quest to Rediscover Microsoft’s Soul and Imagine a Better Future for Everyone

『ヒット・リフレッシュ:マイクロソフトの魂を再発見し、よりよい未来を想像するための探求』
著者:サティア・ナデラ

――『ヒット・リフレッシュ』の根底にあるテーマは、私たち人間と、私たちが共感と呼ぶ独自の性質についてである。テクノロジーの急流が現状をかつてないほど激変させるであろう世界において、共感はこれまで以上に重要になる。」-本書より

――サティアは、テクノロジーによってもたらされた難題に正面から立ち向かいながらも、同時にチャンスを最大限に活用する方向へ導いてくれる。-ビル・ゲイツ(本書序文より)

『ヒット・リフレッシュ』のテーマは、私たち個々人の変化についてです。
そして、マイクロソフト社内において起こっている変革や、すぐに私たちの生活にも影響を及ぼすであろうテクノロジー、つまり人工知能、複合現実感、量子計算といった人類が経験してきた中で最も刺激的で破壊的なテクノロジーの波の到来についてでもあります。同時に、人々や組織、社会が、新しいエネルギー、新しいアイディア、そして絶え間ない変化とそれへの対応のあくなき探求において、どのように変革し「更新する」ことができるか、またするべきであるか、についてでもあります。

マイクロソフト社のCEOが、インドで過ごした自らの子ども時代から始まり、このデジタル時代において、いくつもの重要なテクノロジーの変化を導くに至った道のりをたどりながら、マイクロソフト社の絶え間ない変革にまつわる知られざるエピソードについて語ります。

サティア・ナデラは、アメリカへ移住する前の興味深い子ども時代からこれまでに、どのようにリーダーシップを学んできたのかを振り返ります。さらに、聡明なビル・ゲイツやエネルギッシュなスティーブ・バルマーといった前任者と比べるとほとんど知られていない存在である彼が、マイクロソフト社の現職のCEOの座にあることについての深い思索を語ります。そして、マイクロソフト社がどのようにその魂を再認識し、文化から熾烈な競争環境、産業パートナーシップまでの全てを変革したのかという知られざるエピソードを語るのです。人道主義者であると同時にエンジニアであり経営者でもあるナデラは、次に来るテクノロジーの波についての自身の展望と、それによる社会への潜在的な影響を探り、世界的なリーダーたちへ行動を呼びかけて締めくくります。

「アイディアは私をわくわくさせる」と、ナデラは言います。「共感は私の土台であり、軸でもある」とも。
改善を探求し、信念を持って考え抜くリーダーは、振り返りや内省、助言をもとに、彼自身や著名な企業、そして社会に向けた一つの道筋を示しています。


元記事:https://www.amazon.com/Hit-Refresh-Rediscover-Microsofts-Everyone-ebook/dp/B01HOT5SQA
(翻訳:高橋裕子)

ラリー・ペイジやイーロン・マスクが恐れたもの

(※この記事はhttps://www.linkedin.com/pulse/overcome-fear-failure-instead-adam-grant/?trk=prof-postを翻訳したものです)

by アダム・グラント

仮にあなたが計算をしてみるならば、起業家になるなど正気の沙汰ではないと思えるでしょう。
 成功する確率たるや、微々たるもの。失敗が約束されている、と言ってもいいかもしれません。
そんな世界へ踏み出そうとするのは、よほど恐れを知らない人なのだろう…。
 以前の私はそう思っていました。

過去3年間、私は『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』の執筆に取り組んでいました。この本は、創造性を推し進め、世界を変えようとする、斬新なアイデアを生み出す人々を取り上げています。その過程で私は、現代のきわめて独創的な起業家の足跡を追っていきました。ラリー・ペイジ、イーロン・マスク、ジャック・ドーシー、マーク・キューバンという、テクノロジーの分野で偶像視される人々と、ひざを交えて話し合ったのです。

彼らに起業間もない時期のことを振り返ってもらったのですが、彼らの返答は、私にとって、まったく思いがけないものでした。彼ら全員が、私たちの誰もが感じている失敗への恐怖を抱いていたのです。単にそれに対する反応が、異なっていただけだったのです。
私たちの多くは、失敗の恐怖にとらわれたとき、大胆なアイデアは避けようとします。独創的であるよりは、安全策を選んで、従来と同様の商品、慣れ親しんだサービスを販売しようとします。
ところが偉大な起業家は、失敗の恐怖に対して、異なった反応を示すのです。確かに彼らも失敗は恐れます。けれども、失敗を恐れて挑戦しないことの方を、もっと恐れるのです。
仕事でも、人生でも、恐れには2種類のものがあります。行動することの恐れと、行動しないことの恐れです。起業して失敗するかもしれません。けれども、起業せず、失敗するかもしれないのです。土壇場で結婚相手に逃げられるかもしれませんが、かといってプロポーズせずに後悔するかもしれません。
ほとんどの人は、アクションを起こして後悔することの方が多いと考えます。破産宣告や、生涯の愛を拒否されることからくる耐え難い苦しみを思うと、ひるんでしまうのです。
 けれども、それはとんでもない間違いです。
人が人生を振り返って後悔するのは、やらなかったこと、行動しなかったことに対してです。
心理学者のトム・ギロビッチとビッキー・メドベックはこのようにまとめています。
長い目で見れば、どのような年代であれ、どのような分野であれ、人間はやったことを後悔するより、やらなかったことを後悔するようです。だからこそ、なぜ大学へ行かなかったのか、とか、ビジネスチャンスをつかまなかったのか、家族や友人ともっと時間を過ごさなかったのか、といった後悔を、多くの人が抱いているのでしょう。
 結局のところ、私たちが何よりも後悔するのは、失敗することではなく、行動する機会を逸することなのです。
それを踏まえれば、どうして人は独創的になるのかわかってきます。レオナルド・ダ・ビンチは繰り返し、ノートにこう書きました。
 「まだ手を付けたことがないものが、どこかにないだろうか」
 おそらく彼も失敗することを恐れていたでしょうが、それよりも、重要なことを成し遂げられないことの方を恐れたにちがいありません。その恐れに駆り立てられて、ダ・ビンチは絵を描き続け、発明し、設計し、究極のルネサンス的教養人となっていったのです。
ダ・ビンチは私にインタビューをさせてはくれませんでした。けれども私が会った起業家たちは、みんな、失敗することは怖くない、重要なことをしないことが怖いのだ、と繰り返し言いました。
そのために彼らは努力を続け、新しいアイデアの実現にトライし続けるのです。
独創的な人々は、失敗を、自分のアイデアが失敗する証拠だととらえる代わりに、成功へ向かうための必要な段階だととらえます。
私たちは、成功よりも失敗から学ぶのです
 たとえば、スペースシャトルは失敗に終わった打ち上げを経験してから、周回軌道に乗る可能性が高くなるのです。失敗することによって、知識の欠けている点や、戦略が正しくないことが明らかになり、私たちは計画段階に戻って、その点を修正しようという気持ちになるのです。
失敗がないと、自己満足が忍び寄ってきます。NASAの場合は、24回の宇宙飛行の成功が過信につながり、チャレンジャーの事故が起こりました。
物理学者のリチャード・ファインマンは、このように考えています。
 「彼らの頭の中では、悪いことなど起こるはずがなかったのだ」
独創的なアイデアというものは、失敗は不可避です。というのも、テクノロジーがどのように進化するか、好みがどう変わっていくか、と予想することは不可能だからです。
マーク・キューバンはUberへの出資を見送りました。
初期のグーグルでは、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンは、検索エンジンを200万ドル以下で売り出そうとしたものの、買い手は現れませんでした。
『ハリー・ポッター』を持ち込まれた出版社は、児童書にしては長すぎるという理由で出版を拒否しました。
 TV局の重役は「となりのサインフェルド」はプロット・ラインが不十分で、登場人物が好ましくない、という結論を出しました。主役のジェリー・サインフェルドのバスルームに行けば、「となりのサインフェルド」のパイロット版のエピソードが、「弱い」「どのような観客層も、また観たいとは思わないだろう」というメモが
壁にかけてあるのを目にすることができるはずです。
歴史を通して、きわめて独創的な人々は、きわめて多く失敗を重ねた人でもあります。
 トーマス・エジソンの1093件の特許のほとんどは、海のものとも山のものともつかないものでした。
 ピカソはほんのいくつかの傑作のために、20,000点以上の作品を制作しました。
 Uberを創設する前のトラビス・カラニックが最初に起ち上げたスタートアップは、 破産宣告することになりました。
 オプラ・ウィンフリーは、最初の仕事であるレポーターをクビになっています。
 スティーブ・ジョブズは、アップルが製造・販売したLisaが大失敗に終わり、会社を追われることになりました。
のちに凱旋し、iPodを成功させたあとでも、セグウェイを個人の移動手段として、分の悪い賭けをすることになりました。
 航空会社や鉄道経営、音楽、モバイルで大きな成功を収めたリチャード・ブランソンも、ヴァージン・コーラや自動車、ウェディング・ドレスなどの分野では、失敗の責任を負うことになりました。
ですから、これらの選り抜きの人々の失敗を、あなたも信じてください。
 たとえ最初、うまくいかなかったとしても、あなたは自分が高い目標を掲げていることを知っているのですから。

元記事:https://www.linkedin.com/pulse/overcome-fear-failure-instead-adam-grant/?trk=prof-post
(翻訳:服部聡子)

あなたの成功を助けてくれる人 妨げる人

(※この記事はThe Best People to Help You Succeed (and the Worst) の記事を翻訳したものです

by ディーパック・チョプラ

仕事を続けていれば、誰でもさまざまな同僚や上司、競争相手、また顧客やアドバイザーに出会います。そうした人の中には、個人的にも、また感情面でも、好ましい人がいます。けれども、どれだけ魅力的な人であっても、あなたの成功へのプロセスを助けてくれたり損ねたりするかどうかはわかりません。キャリアを重ねるためには、計画と実行が必要ですが、それはすなわち、ほかの人があなたにどのような影響を及ぼすか、自覚的でなければならないということにほかならないのです。仕事上の関係における利益、あるいは損害を評価できるようになることは、ほかのことと同様、一種のスキルなのです。あなたを助けてくれる人が備えている5つの資質とは、以下のものです。

  1. 人を裏切らないこと
  2. 正直であること
  3. 競争心を持っていること
  4. チームを作る人であること
  5. 創造性があること

  1.人を裏切らないこと

人に対して忠実である(裏切らない)ことは、重要な資質です。おそらく何よりも重要だと言って良いでしょう。というのも忠実な人は、信頼できるからです。こうした人が成功すれば、あなたとも成功を分かち合おうとするでしょうし、また、あなたの利益を侵害しようとはしないからです。また、いつも自分のことだけを考えるような人でもないからです。

 2.正直であること

正直なことが重要であるのは、言うまでもありませんが、嘘をつく人や、空約束をする人、やると言っておきながら、やり遂げることのない人に気をつけることは、大切です。そうした行動は、あからさまな不正と同じくらい、誠実さに欠ける兆候だからです。

 3.競争心を持っていること

競争心の強い人は、チャレンジャーでもあります。彼らは人と出会うごとに、また些細な事柄であっても、勝ちたいという強い熱意を持っているからです。けれども彼らの勝ちたい、という情熱は、非常に有益です。あなたが落ち着いて、彼らに勝たせてやりさえすれば、彼らはすばらしい戦果をあげることができます。ところが反対に、あなたが彼らを負かしてしまうと、つねに「私が勝者」でなければ気が済まないタイプの人は、さっさと離れていき、別の方面でトップに立とうとします。当たり前のことですが、ライバル意識が強く、しかも人に対して忠実である人は、非常に貴重な人です。

4.チームを作る人であること

あなたが華々しい大成功を遂げて、新世代のカリスマとして脚光を浴びる…こんな場面は、現実にはあまりないでしょう。反面、チーム全体で活躍する機会はきわめて多いはずで、チーム全体の努力は不可欠のものなのです。そのため、すばらしいチームを作ることのできる人を見つけることは、決定的に重要です。チーム・ビルダーは、チーム全員に気を配り、全員の貢献に耳を傾けます。彼らのおかげで、みんなは自分に価値があり、尊重されていると感じることができるのです。彼らはチームとしてのプロジェクトを、予定通りにこなしながら、メンバー間の対立やいさかいを最小限に抑えて、目標に到達させます。

5.創造性があること

創造的な人は、あまりチームを作るのは好まないのですが、その分、好奇心や探求心にあふれており、さらに仕事をワクワクするようなものに変えるイノベーションを起こす力を備えています。生来、彼らは一匹狼で、親しみを持ちにくい人々です。彼らに関心があるのは、つねに自分が作り出すものなのです。けれども、あなたが本当に創造的な人を見つけたら、そばにいることで、あなたの新しいアイデアも刺激されるでしょう。さらに運が良ければ、この創造的な同僚が、画期的なイノベーションを世に出す手伝いをあなたがすることになるかもしれません。

一方、あなたを傷つけ、あなたの価値を損ないかねない人もいます。次に、あなたの成功への道筋を妨げる人の5つ特徴を見てみましょう。

  1. 完全主義者
  2. 自信過剰
  3. 優柔不断
  4. ルールを押しつける人
  5. 暴君

1.完全主義者

完全主義者は満足することがありません。このタイプは、つねに他人の不満を口にしたり、自分についての弁解ばかりしているので、簡単に見分けがつきます。こうした人は、表面的には分別もあり、穏やかなしゃべり方をしているかもしれませんが、悪意を持って、つねにあら捜しをし、何かにつけて反対するので、周りにいると息がつまりそうになります。あなたが彼らを満足させることは絶対にできません。ですから、距離を置くのが最善の方法です。

2.自信過剰

自信過剰の人は、自己意識が過剰な人でもあります。 彼らは自分の声を聞くのが好きで、自慢話も大好きです。自分に夢中で、他の人の話に耳を傾けようとせず、人を見る目がありません。けれども、概して彼らは扱いやすい人々です。決定的な局面にいたるまでは争いを避け、必要に応じてさえぎるか、その場を離れてください。そうしても彼らは気分を害することはありません。 というのも、彼らはかならず誰か、聞かせる相手を見つけるからです。自信過剰のせいで、彼らは他者が何を必要としているか、まるでわかっていません。そのため、あなたが必要なことがまったく無視されるようであれば、それを機に離れてください。

3.優柔不断

優柔不断な人は、ものごとを決めることができず、そのために遅れ、先の計画を立てることができません。優柔不断な人が意思決定ができないせいで、あなたの仕事にきわめて大きな影響が及ぶことになります。優柔不断な人の中には、必要なことを話して、あなたに決定を任せようとする場合があります。このような人は、決定は下したいのですが、そうする自信がないのです。また、優柔不断な人のせいで、事態が混乱したり、仕事が中断する場合があります。そんな時は、あなたは一緒にいてはいけません。

4.ルールを押しつける人 5.暴君

ルールを押しつける人と暴君は、権威主義的なタイプとして、同じグループに属します。彼らは頑固で、柔軟性がありません。彼らは人を寛大な目で見ることをせず、そうした相手を「弱者」であるとみなします。暴君にとって権力を持つことはことのほか重要です。ルールを押しつける人にとっては、そこまで重要ではないのですが、周囲の人を機械の従順な歯車として従わせるために、両者は協力しあう場合があります。
プレッシャーのかかる状況や、危機的な局面では、暴君もルールを押しつける人も役に立ちます。というのも、彼らは無秩序や混乱を彼らは寄せつけないからです。けれども、彼らが自分の思い通りにならない人に対して、ひどい扱いをし始めたら、あなたはその場を去るべきです。

あなたが仕事上で、こうした悪影響を及ぼしかねない人に遭遇しても、逃げたり、状況を改善したり、できない場合があります。あなたがそのような人々を我慢しなければならないような場合、大切なことは、あなたの感情を、現在の仕事から切り離すことです

決して相手を「良くしよう」としないようにしましょう。どれほど腹が立ったとしても、あなたの感情は自分で責任をとらなければなりません。どれほど不平を並べたり、反撃したりしても、あなたの感情をほかの人が責任を取ることはできないのです。

良いニュースもあります。
あなたには、自分の成功を助けてくれる人々との関係をより緊密なものにすることもできるのです。手始めに、こうした助けになる人々が誰なのかを知ることから始めましょう。

元記事:The Best People to Help You Succeed (and the Worst)


翻訳:服部聡子
出産・退職後、在宅で働ける資格を身につけるために翻訳を学び始める。
約5年フィクション/ノンフィクションの下訳、ウェブ・ライターを経て、
『限界はあなたの頭の中にしかない』に巡り合い、深い共感を覚え、弊社に

なぜ枝豆? 世界で注目される酒の肴に隠されたマーケティングのヒント

「海外で有名な日本食といえば?」と質問されたら、誰もが想像するのはSushi(寿司)でしょう。確かに数字を見ると、この10年でずいぶんと寿司は有名になりました。

イギリスでは銀座出身の寿司屋 The Araki(あら輝)がミシュランガイドで三ツ星を獲得。イギリス初の日本料理屋・三ツ星獲得の快挙を達成しました。

といっても、最高峰だけのブームではありません。ロンドンには、回転寿司からパック売りの店舗まで、バラエティ溢れるお店の多さに驚かされるでしょう。これは私の体感値に過ぎませんが、ロンドンを歩いていると日本の回転寿司屋に出くわすよりも高い頻度でお寿司屋さんにぶつかります。あまりに寿司屋が多いので、現地でも「イギリスで日本人が労働ビザを得る一番簡単な方法は、スシ・シェフになることだ」と笑い話になるほど。

都会と地方のコントラストが、伸びしろを決める

いっぽう、都心部と地方ではかなりのコントラストが見られます。もともとイギリスでは魚を生食する文化がなく、「フィッシュ&チップス」にして食べるのが一般的。寿司や刺身なんて耐えられないという方が、いまだに多く住んでいます。ですから私がマーケターとして寿司の店舗を出すご提案をするなら、ある程度移民も多く、食に多様性がある中核都市を選出するでしょう。

日本人に置き換えて考えてみると、もっとわかりやすいかと思います。たとえば今年、東京ではパクチー(コリアンダー)が大ブームになりました。パクチー大盛りメニューが流行した時期もありましたが、地方で「パクチー専門店」を作っても、すぐに潰れるだろうことは想像に難くないでしょう。

このようにニュースだけを見て「ヨーロッパでは寿司が流行っている! ガンガン進出しよう!」と、思い込むと痛い目を見るのです。

ではなぜ、枝豆は流行できたのか

一方、同じイギリスでも都心・地方を問わず購入されている日本食があります。それはなんと、枝豆です。枝豆ブームは2007年ごろに到来。それから飽きられることもなく、イギリスのスーパーで必ずといっていいほど見かける製品になりました。

そこでざっとイギリスの記事を漁ってみました。記事を読むに、「枝豆を食べると二日酔い防止、筋肉増強、コレステロール値は減少、さらには精がつく」とまで書かれています。おそらく、日本人でもにわかに信じがたい効能でしょう。本稿では効能の検証は行いませんので、ご判断は読者様にお任せしますが、キーワードはイギリス人の「健康志向」です。

イギリスはもともと健康志向が高く、健康に良いとされるものならヒマワリの種から虫まで食べるブームが訪れます。しかしそれでも味による選別はあるのか、安定して10年以上も愛される製品は限られるもの。枝豆はその例外として、ロングセラー商品になったのです。ではなぜ、枝豆は10年もの間、イギリスで生き延びたのでしょうか?

枝豆ブームが始まる数年前から、大豆はすでに「スーパーフード」としてもてはやされていました。アメリカ発のコーヒーチェーン、スターバックスでは2003年に豆乳がオプションに追加されており、今なお人気です。

しかし2003年ごろは、大豆の遺伝子組み換え製品が多くなった時期でもありました。そこで健康志向のターゲット層に「安全な大豆を食べたい」というニーズが生まれたのです。枝豆はそのニーズを、完璧に満たす「大豆」として愛されたのでした。

すでに有名なものより、現地のニーズに合うものを

さて、今回のケースから、どのような知見が得られるでしょうか。マーケティングを学ぶ上で押さえておきたいのが「すでに流行しつくしたものより、ニーズに即したものを売る」ことです。

もし、海外で日本食を広めたいならば、寿司を売るのが一番手っ取り早いでしょう。しかしすでに都心へは大量の店舗が出ており、これから出店するには新たな切り口での差別化が必要です。地方では魚を生食する文化がないことを考えると、市場の伸びしろは限られています。それよりは、現在知られていない製品でもニーズに即したものを意識すると、枝豆のようなブレイクスルーが生まれるのです。

たとえばイギリスのブランド「itsu(イツ)」は、枝豆をチョコでコーティングしたお菓子を販売しています。普段、居酒屋か食卓でしか枝豆を見ない我々にとっては「はぁ?」と驚かされる製品でしょう。今回執筆にあたり試食してみましたが、日本人には奇妙な味わいでした。

けれどイギリスのメーカーは、枝豆の食べ方に固定観念を持っていませんでした。その結果「空き時間にヘルシーな大豆をおいしく食べたい」とうニーズを満たす、枝豆チョコレートを販売できたのです。もしあなたが日本生まれ、日本在住でありながら偏見を取っ払い、現地のニーズに即したマーケティング戦略を「枝豆チョコレート」のように立てられたなら……次のヒット商品を作るのはあなたです。

 

 

 


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

 

ブログ・アクセスを増やす見出し13タイプ

(※この記事は https://blog.hubspot.com/marketing/types-of-blog-headlines を翻訳したものです)

by ライアン・スコット

あなたのブログ投稿を読んでいる人は、あなたが思うほど多くはありません。反対に、あなたのブログの見出しに目を留める人は、あなたが考えるよりずっと多いのです。平均すると、記事の見出しをクリックしてから、最後まで読む人は、そのうちのわずか20%に過ぎません。つまり、見出しは良くても、途中で読者の80%は、脱落しているのです。

けれども、逆に考えると、すばらしい見出しは、多くの人に対して、劇的なインパクトを与えている、ということもわかります。見出しを変えるだけで、あなたの記事のアクセス数を500%も増やすことができるのです。

理想的な見出しを作るために

見出しはクリック率に影響があるだけでなく、ブログのトーンを決め、記事のテーマを確立するものです。たったひとつの見出しが、記事の価値を落とすまでに、大きなインパクトを読者に与えるのです。

マリア・コニコバは、自分の記事「遺伝子が短時間睡眠を可能にする?」について語る中で、「もし私が記事のタイトルを『どうして私たちに8時間睡眠が必要なのか』であれば、誰もこの記事のことを記憶に留めてはくれなかったでしょう」と言っています。

すばらしい見出しを作る要因とは何なのでしょうか?

それはあなたが誰に向かって書いているのか、そうして彼らがどこでそれを読んでいるかによります。

私はマーケティング・コンサルタントとして、企業の成長を助ける仕事に携わっています。その会社のコンテンツ作成をお手伝いしながら、以下の2つのことを達成するよう、つねに心がけています。

  • ターゲットとする人にアピールしなければならない
  • ターゲットに価値を提供するものでなければならない

この記事の中で私は「最高の見出し」という言葉の中に、「きわめて独創的なタイトル」という意味をも含めています。けれども独創性のあるタイトルというだけなら、

なぜわが家のネコは預金口座を持つようになったか」や

〈文字どおり〉という言葉を文字どおりにではなく比喩的に使用することについての擁護

であってもかまいません。どちらもとても魅力的なタイトルです。

けれどもこのようなタイトルは、SEOに効果はありません。それでは、私のクライアントが直面する問題に、応えることはできないのです。ですが、あまりに多くのマーケターが、効果的とは言いがたい、凝ったタイトルをつけています。

すばらしい見出しとは、あなたのターゲットとなる人々の、痛点をとらえたもの、そうして、彼らの人生をよりよくするような話題を紹介するものです。されにプラスして、人を引きつけるものでなければなりません。あなたが誰の興味も引かないブログの見出しをつけていれば、オーディエンスの80%が去ってしまいます。

 

13種類の実例に見る アクセス数を増やす見出し

1) 「最高の」見出し

この見出しは、SEO対策に大きな力を発揮します。このタイプの見出しは、一般的な検索をしている顧客に、直接訴えかけるものです。

考えてみてください。あなたが倹約する方法を検索しているとします。そこに「最高の倹約法」があれば、興味を引かれませんか? それとも、ありきたりの方法でいいですか?

このタイプは「最高の~法」というワードで検索した場合の、完全一致検索の典型です。

実例:

2) 「私の人生をもっと簡単に」する見出し

これは「最高の」見出しの妹分です。あなたの顧客は、今、まさに問題に直面していて、何かの最高の方法など知りたくはないかもしれません。人は時に、最高ではなく、もっとも簡単な方法を求めるものだからです。

個人的な話

かつて私は車の販売代理店で、インターネット・セールス部門のマネジャーをしていたことがあります。そこで知ったのは、多くの顧客が車を買う最高の方法、つまり現金で払うことで倹約するということには関心がない、ということでした。

その代わりに関心があったのは、一番簡単な方法です。当時、私たちのコンテンツでもっとも人気が高かったのは、顧客が簡単に事を運べるよう、手助けしていくページでした。

実例:

3) 「一番速い」見出し

人は、最高でもなければ、簡単でもない方法を求めることもあります―― 求めるのは速さです。ある業界ではどんなときでも、パニック状態にある人の相手をしなければなりません。彼らは今すぐ、何かをしなければならないのです。もうひとつ、「最速」コンテンツによって、あなたが提供する製品やサービスに価値があることが証明できれば、即座に買い手が飛びついてくれるでしょう。

実例:

4) 「もし私があなたなら」見出し

私たちの多くは、向上したい、という願いを持っています。もっと充実した人生を送りたい、成功したい……というように。誰もがもっと多くのことを、少ない時間で、成し遂げたいと願っているのです。とりわけ、私たちの誰もが、いまやっていることをもっと上達したいと願っています。このような願いがあるために、「もし私があなたなら」見出しは、大きな効果を発揮します。

もし誰かが私たちに向かって、「あなたはこうすべきだ」と言ったなら、私たちは反発するでしょう。けれども、どうしてそうしなければならないかを示してくれれば、私たちは共感するはずです。それは、新しい考え方を受け入れよう、今のやり方を変えようとする、私たちの理性やモチベーションに訴えかけるからです。

実例:

2つの理由から、このタイトルは、とりわけ私には強烈なインパクトがありました。第1に、この記事の背景です。大変有名なマーケターが、この記事をリンクトインに発表した、ということに衝撃を受けたのです。

第2の理由は、認知的不協和を引き起こしたからです。マーケターにとって、フェイスブックは最大のプラットフォームのひとつです。それをこのタイトルは、もう止めて、忘れてしまえ、と言っているのですから。このブログ・ポストは、のべ30万回のページ・ビューとなりました。

5) 「私たちは ~ している」見出し

「透明性」は、新しいマーケティングのパラダイムです。長い間、企業は「秘密のソース」を、大衆の目の届かないところに隠してきました。ところが、企業もようやく、本当の「秘密のソース」は信用だということに気がつき始めたのです。そこで企業の側は、求める人は誰でも情報にアクセスできるようになりつつあります。

透明性は信用を構築するための、すばらしい方法のひとつです。たとえばバッファは、透明性の第一人者ともいえるべき企業でしょう。その結果、彼らは熱烈なファンである顧客を獲得したばかりか、すばらしい企業文化をも確立したのです。

多くのCEOが、もっと多くの部分をシェアしようとする試みを一笑に付す中で、バッファはすべてを明らかにしました。売り上げや利益、社員の給料に至るまで、彼らはあらゆることをシェアしているのです。そうしてそれが実を結んでいます。

実例:

6) 「科学的に裏付けられた」見出し

人間には、いわゆる「学習バイアス」というものがあります。どれほどもっともな話でも、信頼できる情報筋からの別の話があれば、私たちはそちらを真実として受け入れるでしょう。それだけでなく、私たちを行動に突き動かす究極の真実に、私たちは魅了されます。

たとえば、あながた毎朝モーツァルトで目覚めると活力が湧いてくることを、研究によって実証できたならば、iTunesはモーツァルトを探す人で溢れかえることでしょう。

同じことをあなたの製品やサービスでやりましょう。どうすれば誰かの人生を、より良いものにできるでしょうか? それをシェアしてください。ただし、調査をふまえた上で。

実例:

7) 「どうして A の人々は B をしたのか」見出し

このタイトルは、私たちの最高でありたい、という願望に訴えるものです。ブライアン・トレイシーは彼の著書『お金持ちになる人、ならない人の仕事術』の中で、

「あなたが憧れ、尊敬する人々は、あなたの考え方、情報の選び方、決定の下し方など、さまざまな面で、あなたに対して並外れた影響を及ぼしています」

と言っています。

あなたのタイトルが、オーディエンスが尊敬している人にまでアピールすれば、多くの人に対する強力なインセンティブとなることでしょう。

実例:

8) 「経験が教えてくれた」見出し

経験は最高の教師です。けれども時に、その授業料がひどく高くついてしまうこともあります。だからこそ、賢い人々は他人の失敗から学ぶのです。もちろん成功からも。

こうしたタイトルは、あなたのターゲットとする人々が直面する問題に、どのように対処すべきか、という洞察を与えてくれることを約束しています。

実例:

9) 「あなたのためにリストを作りました」見出し

どういうわけか、私たちはリストアップされた記事を読むのが好きです。そうした記事は、幅広いオーディエンスに訴えるし、他の形式の記事に比べると、クリック数も多くなっています。

だからこそ、バズフィードのようなブログがつねに人を集めているのでしょう。

実例:

10) 「バカなことをしないで」見出し

何よりも私たちを引きつける見出しは、私たちの「受け入れられたい」という願望に訴えるものです。私たちは、バカだと思われたくないのです。その願望に応える見出しには、どうしても目がいってしまいます。

誰かが失敗した、と聞くと、私たちはみんな、自分はそんなことはしていないだろうか、と確かめるでしょう。とりわけ失敗した人が、みんなに知られた人ならば、なおさらです。

実例:

11) 「無知にならないで」見出し

私たちは「自分だけ知らない」という状態に陥りたくはありません。ひとりだけ暗闇の中に取りのこされたくはないし、同僚が知っていることなら、話の輪の中に入りたいと思うものです。

同じことが私たちの顧客にも言えます。彼らが知っておくべきことがあれば、私たちが書いて知らせてあげましょう。

実例:

12) 「勝つのはどちら」見出し

これはタイトルで選択肢を強く打ち出すものです。そうすることで、あなたを第三者的な立場に置き、主観に流れがちな自社製品やサービスを、客観的に評価することができます。それだけでなく、あなたの競合相手からのアクセスも稼ぐことができるのです。競争の激しい場所では、このタイプの見出しは、非常に効果があります。

実例:

13) 「クリックしてみよう」見出し

心の奥底では、人間の好奇心の強さは、ネコと変わるところはありません。私たちの心の中のネコに訴えかける見出しは、非常に強力なものです。

アップワーシーに見られるように、私たちの興味を喚起する技術に長けた人々がいます。彼らは私たちの目の前に、ニンジンをぶら下げるようなタイトルを考え出します。そうやって、否応なくクリックさせるのです。

もしあなたがこの戦術を利用するつもりなら、タイトルだけでなく内容も、読者をワクワクさせるようなものでなくてはなりません。そうでなければ、オーディエンスはすぐにうんざりしてしまうでしょう。

私はこの種の見出しを嫌悪するようになっています。というのも、徐々に大勢の人々がこの手法を使うようになり、期待はずれに終わっているからです。腹立たしいものです。

なのに、どうしてこれをやる人が多いのか? クリックしてもらえるからです。

こうした種類の見出しは効果的です。以上。

実例:

見出しをどう作るか

これらの見出しのうちで、もっとも効果的なものはどれでしょうか?

それは、作り手が何をしたいかによります。SEOに有利なタイトルもあれば、ソーシャルネットワークのシェアを通して、大勢の人の興味を引きつけるタイトルもあります。

どのタイプの見出しを使えば良いのか、選び方を紹介しましょう。

  • 「私がこの記事で読者に与えたい、最も重要な、たったひとつのポイントは何か?」と自問する。
  • その与えたいたったひとつのことを伝える最適な方法を決める。
  • ひとつの記事につき、見出しを25本書いてみて、その中から最高のものを選ぶ。
  • ほかの人に聞く。あなたのアイデアを話し、どれが一番気に入ったか聞く。その理由についてもかならず聞く。
  • どのタイプの見出しがあなたのターゲットとするペルソナに最も効果があるか、記録をつける。彼らを利用させてもらうことを恥ずかしがらない。

 


元記事:http://blog.hubspot.com/marketing/types-of-blog-headlines

(翻訳:服部聡子)

あなたは賭けに勝てるか? 縮小市場で生き延びるマーケティング術

こんにちは。トイアンナです。

突然ですが、読者のみなさまへ問題です。あなたは会社のオーナーとして、2つの商品を売ろうとしています。ひとつは安定的に売り上げを出す商品。もうひとつは縮小市場を相手にしており、しかも売上は低迷しています。

来年度への投資を考えるとき、あなたはどうすべきでしょうか?

縮小するからといって、撤退だけがセオリーではない

模範解答はこうでしょう。「縮小市場から撤退して、その分の投資を別の商品へ投下すべし」
合理的な判断です。マーケティングに優れているとされる企業も、多くはこの戦略へ従います。その一例として、スピーディに進出や撤退を決断する外資系企業では日本からの撤退・縮小が相次いでいます。

世界中に支社を持つ外資系企業にとっては、市場が伸びる国へ資本を集中投資し人口が減る・競合が強く勝ち目がない市場からは手を引くのが合理的です。何よりもまず、日本は人口が減少しています。人口が減ればいくら単価を上げても売上はどこかで伸び悩むでしょう。

さらに日本は世界有数の「消費者がうるさい」国として知られています。安価で高品質な商品を求める日本では、新製品を1つ出すにしても他国と同じシェアを獲得するのは至難のわざです。縮小市場の上に、コストもかかる――。もし私が外資系企業のトップなら、「さっさと日本から撤退して、人口増だけで売上が確保できる中国やインドへ投資しろ」と指示したことでしょう。

実際、日本支社で働く外資系企業のマネージャーからお話をうかがうと、
「前年比から2けた成長しても、予算を減らされる。一方、中国やインドは新製品すらなくても人口ボーナスで売上が増える。これでは何のために頑張っているかわからない」
「たとえ日本でこれまでの倍売っても、中国の1%増に負ける」
「売上に応じて社員の国籍も調整されるから、どんどん日本人が減っていく。日本の戦略立案に日本人が一切関われなくなる日も近い」
と、世知辛い実情を聞かされることが増えています。

ところが、合理的に見える「縮小市場からの撤退」は必ずしも正しい戦略とは言えません。

撤退を中止した日本マクドナルド

ここでは、日本マクドナルドの例を見てみましょう。さかのぼること2014年、マクドナルドは消費期限切れ鶏肉使用問題を抱えました。ところが、この問題に直面したのはマクドナルドだけではありません。日本ではファミリーマートも同じ工場の肉を利用しておりファストフード業界全体が沈没してもおかしくない状態でした。

しかし日本ではマクドナルドへの衝撃が際立ちます。一説にはマクドナルドの社長が「日本へは期限切れの鶏肉を輸入していない」と突っぱねた対応の悪さにあるとも言われますが、2014年8月の既存店売上高は前年同月比25.1%減。

これを受けて本社は、日本マクドナルドの売却を検討します。しかし2017年には、日本マクドナルドの売上が劇的に改善。手のひらを返した本社は「日本が最大の貢献者だ」と礼賛するに至りました。

日本単体でもマクドナルドは巨大資本ですから、買収できる企業との交渉は時間がかかると見られていました。その間に日本支社の社員による劇的な経営再建が行われ、売却をまぬがれたのです。

特にマーケティングチームの活躍はめざましく、数百店舗の改装後は、わくわくする体験型キャンペーンを連発。「名前募集バーガー」「裏メニュー」など、客離れを起こしていた店舗へ再訪したくなる仕組みを作りました。さらに一方的な情報発信ツールだったTwitterとSNSを見直し、お客様の発言をシェアすることで双方向のコミュニケーションを実現しました。

マーケティングにおける「賭け」

さて、ここからは想像してみてください。あなたの目の前に売上の減っているブランドがあります。その市場は人口も減っていくことがわかっており、競合もどんどん撤退・縮小しています。

あなたはそこで王道の戦略を選び、撤退することもできます。しかし「賭け」を選ぶこともできます。誰もが撤退した市場で、唯一残った王者を目指す賭けです。ジリ貧と言われようが「チキンレースのチャンピオン」になることで、寡占市場を手にする機会も生まれます。

もちろん、たやすく手に入る王者ではありません。しばらくは赤字が続くでしょう。しかしそこで事業売却に踏み切らなかった企業だけが、未来の利益を手に入れられるのです。

マクドナルドは日本支社の売却交渉に難航している期間、運よく縮小市場に踏みとどまる「賭け」をすることができました。その結果、今年の8月には営業利益が前年比200倍へ躍進したのです。奇しくもその年、マクドナルドは世界的に売り上げが不調となりました。そして本社は最終的に、日本支社を礼賛する結末を迎えたのです。

 

 

 


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com