ビジョンを具体的な数字へ落とし込むマーケティング思考術

こんにちは、トイアンナです。一般公開の記事では、最初にマーケティングする相手として、共に働くスタッフの例を挙げさせていただきました。

そこで会員様限定の記事では、具体的にビジョンを数字へ落とし込む思考術をご案内します。

 数字に落とし込めない夢はない

まず、どんなにあいまいな夢も数字に落とし込むことはできます。何なら「世界平和」ですら可能です。ですから自分の夢が漠然としているからといって、現実的な目標へ落とし込むのを諦めないでください。

ここでは難しそうな「世界平和」を例にとって、数字目標を立ててみましょう。たとえば、私が世界平和をビジョンとする仕事をするならこう考えます。

「世界平和とは2つのアプローチがありそう」

ひとつは単純に、戦争がない世界。戦争がないだけなら「年間紛争発生数ゼロ」が数値目標になりそうです。年間で紛争、戦争が起きる数をゼロにする。

こうして目標の数字を決めたら、そのためのアプローチを具体的に考えます。たとえば、武器の供給量をゼロにするのはいかがでしょうか。武器の供給を絶つためにはどんな仕事がありうるでしょう? こうして考えていけば、いずれは世界平和を作る仕事へたどり着けます。

さて、戦争がないだけで平和と言えるでしょうか。たとえ戦争がなくとも、貧困にあえぐ苦しみがない世界こそ平和ではないでしょうか。

しかし後者の社会の安定まで考えるなら世界の「貧困率」が目標数値に使えそうです。貧困ゼロは、「1日1ドル以下で暮らす人をゼロにする」とかでどうでしょうか。ここまで落とし込むと、「1日1ドル以下で暮らす人をゼロにする仕事は何があるだろう?」と、目標を達成するためのビジネスを考えられるようになります。


 社是から各施策まで、一貫性を持たせる

なぜここまでビジョンの数値目標化にこだわるかというと、きちんと夢を数字にできなければ、各マーケティング施策がバラバラに走ってしまうからです。

たとえばマクドナルドのビジョンは、「おいしさと笑顔と 快適なひとときを すべてのお客様に」です。 *参照:https://www.mcdonalds.co.jp/recruit/fresh/mcdonalds/index.php5

こういったスローガンはどこの会社でも壁に貼られたり、研修で教わったりします。しかし目の前の売上・利益率に追い立てられている従業員はいつしかビジョンを忘れてしまいます。

「ビジネスパーソンをないがしろにしてでも、家族向けの製品を売ろう」

「味はまずくなってもいいから、とにかく安くしてバーガーキングに勝つぞ」

「客の回転を加速させるために座り心地の悪い椅子にしよう」

などなど、ビジョンからかけ離れた施策を作ってしまいます。

しかしもしも、マクドナルドのビジョンが

・ 無作為アンケートで味の満足率95%以上

・ 顧客の店内滞在時間、平均20分以上

・ 男女比、年齢比率の偏りが上下10%未満

といった数字でしっかり規定されていたらどうでしょうか? 従業員にとって数字目標は、スローガンよりも重要だと思われやすい特徴があります。数字さえ守っていればとりあえず怒られないからです。ですから従業員はたとえ数値が設定された目的がわかっていなくとも、この数字を無視しないよう気を配るはずです。

マクドナルドでは実際に「品質、サービス、清潔さ、価値」の5軸で数値目標を立て、

幹部社員から店舗スタッフまでこれを徹底させられます。だからこそ一度は危機に陥った日本マクドナルドにおいても、莫大な数のスタッフがビジョンをひとつにして動けたのです。

■ そのマーケティング、ちゃんと数字になっていますか

今回、一番わかりやすい社是(ビジョン)をテーマにお伝えしていますが、これはマーケティングの企画を立てるときも同じです。

たとえばあなたがヨドバシカメラの家電売り場トップだったとして、「ワンランク上質な家電の喜びをお客様に知っていただく」というビジョンを掲げたとしましょう。これだけでも素敵なマーケティング企画に見えますが、おそらく掛け声だけは立派なものの、売上にはつながらないはずです。

ここから一度「ワンランク上質な家電を持つ喜びをお客様に知っていただくって、数字で何?」と考えてください。そしてひとつひとつの単語を丁寧に数字で考えていきます。

たとえば、

ワンランク上質な家電 …… 平均単価+20%(円)の家電を100個売る

喜びをお客様に知っていただく …… 顧客満足度90%以上

というふうに、2つの数値目標へ落としこめました。普段から夢をこうして数字に落とし込む癖をつけておくと、幹部社員からスタッフまで、ブレずにビジョンへ近付けます。

さらに従業員ごとに100個の家電を割り振ってノルマ化すれば、全員が何をすればいいか明確になることでしょう。(ただしあまりに個人単位でノルマを作ると偶然達成できないだけで責められたり、助け合わない環境へつながったりするため注意が必要です)

ここでおさらいしましょう。まずは夢をぶちあげてください。そしてそれを細かく区切って、数字にしてみましょう。どんなマーケティング施策も、実現して初めて意味があります。トップから末端まで足並みをそろえるためにも、ぜひ夢を数値目標へ、そして従業員単位の数字へ落とし込んでください。