こんにちは、トイアンナです。Shimafuji IEM. Incさんの連載をいただけているおかげで、起業志望者からマーケティングのご相談をいただける機会が増えてまいりました。

実際にご相談をいただくと、みなさまのマーケティング技能の高さに、私こそ教えていただく気持ちです。しかし逆に痛感するのが「夢を具体的な数字に落とし込む」スキル不足

そこで今回は「大きな夢を現実的な目標数値へ落とし込む技術」について、お伝えさせていただきます。

■ 夢はビッグでいいけれど、それだけでは実現しない

誰しも、起業時は夢を持っているものです。

たとえば私は自分がライターとして独立した際、「日本で男女平等を実現してみせる」と誓いました。とげとげしいですね(笑)そしてこの夢を叶える一歩として、恋愛コラムを100万人に届けるという数字を作りました。

恋愛コラムで目標数値を設定した理由は、普通の人は真面目なジェンダーの論文は読んではくれないけれど、恋愛コラムなら身近な接点があるからでした。

「男女平等を実現する」と同じくらい起業の夢はビッグで、ふわっとしているものが大半です。

・ 幸せにシニアが最期を迎えられる社会にしたい

・ 未来の子どもたちが笑顔で暮らせる国にしたい

・ 地方がもっと盛り上がってほしい

といった大義名分もあるでしょうし、何ならもっと俗物的に

・ モテたい

・ 金がほしい

といった目標だってありうるでしょう。下手な大義名分よりも、俗っぽい夢のほうがやる気が起きやすいので隠していただく必要はありません。「六本木でブイブイ言わせたる」だって、立派な夢です。

けれど夢を掲げるだけでは、会社は回りません。そこで必要になるのが「この目標を達成するために、現実的な数字目標を立てるならどういうこと?」と、一度冷静に数値目標を考えるフェーズです。

■ それってどういう数字でわかるの? と自問自答する

あなたの夢ができたら、

「幸せにシニアが最期を迎えられる社会って、どんな社会?」

「いったいどんな統計データが変われば、達成できたと言える?」

と、数字に落とし込んで考えてみましょう。ここで重要なのは、数字を作ってから夢を描かないことです。たとえば「今季100億円稼ぎたいから、こういうビジョンにしよう」と社是を後から考えても、人がついてきません。あなたが誰から非難されようが愚直に信じられる夢でなければ、人はついてこないのです。

もし夢が「モテたい」なら、自分だけでなく「社員全員がモテまくる企業にしてやろう」というビジョンはいかがでしょうか。もし社長が真面目な顔で語っていたら、99人はバカにするでしょうが1人は共鳴してくれるはずです。会社のビジョンを語るうえで、誰からも支持してもらう必要なんてありません。あなたの絶大なファンとなってくれる1名を獲得できるかどうかが、創業期の鍵を握るのです。

■ ビジョンなく数字だけ追いかけても、会社はつぶれる

創業にあたり「でも夢なんている?」というご指摘をいただくことがあります。私は、そのご指摘も正しいと思います。ビジョンなき創業でも、業界自体の成長率が高ければ業績は伸びるからです。たとえば現在VR(バーチャルリアリティ=仮想現実)を家庭で視聴できるソフトを制作すれば、どんなジャンルでも儲かると言われています。そこにビジョンも何もありません。

しかしその会社があなたの孫へ引き継げるトップ企業になれるかどうかは、ビジョンの有無にかかっています

「とにかくもうかればよい」という起業では社長に共鳴できません。ついていくことはできますが、長年あなたに尽くす理由がないのです。そうなればいくら業界の成長率に便乗して儲かっても離職率の高さと、採用コスト増大がネックとなります。

以前、ある会社さんの取材をしたことがあります。その会社はいまをときめくIT業界の先端を走っており、本来ならもうかって仕方がないはずでした。しかし財務諸表を拝見すると赤字ギリギリ。その理由は離職率の高さでした。いくら高給を出してエンジニアを雇っても社長のフラフラ定まらない方針へついていけず、離職してしまう率が高かったのです。

  • あなた自身が、従業員から選ばれるブランドになろう

マーケティングは本来、商品を買う消費者の求めに応じる仕事です。しかし会社の創業期、プロジェクトの黎明期においてはじめに説得しなくてはならない顧客は、一緒に働く従業員です。従業員が「買って」くれない会社は、いずれ消費者の関心も失います。

まずは自分がビジョンをしっかりと描きましょう。そのビジョンに共鳴できる従業員がどこにいるか考え、人材募集をし、そして自分の売り文句で働くよう説得できるかどうか。それがマーケティング、最初の試練です。

あなたという人材を買ってもらえるか。たとえ最初は給与が安くてもついてきてもらえるか。黎明期こそあなた自身のブランディングをしていく必要があります。あなたを売りこむなら、買い手は従業員です。従業員にあなたという人となりを買ってもらうためにも、マーケティング戦略を活用していきましょう