「差別化」の秘密:男友達止まりの俺と 女を落とすアイツの違いは?

こんにちは、トイアンナです。
今までに500人以上から人生相談を承ってきましたが、過去にこういったご相談がありました。

「仙台でしがない中小企業を経営している者です。たまに友達とパーティへ行くと「いい人だね」とは言ってもらえますが、いつも男友達止まりです。それに対してルックスも年収も俺より下で、ただの会社員をしている弟は女の子の手をいきなり握ったり、セクハラまがいのことをしたりするのにモテます。こういうのって、何でなんでしょうか?」

答えは、弟さんが他の人と「差別化」できているからです。

「違う」とモテる? 差別化戦略

合コンのように「自分のよさ」を見せたい場面では、みんな無難な「いい人」になりたがります。
「好みのタイプは、優しい人」
「あ、お肉取り分けるね」
「グラスが空になってるけど、もう1杯飲む?」
こういった言葉は「いい人」になりたがる男性がよく言ってしまうフレーズ。こういう発言であなたを悪い人だと思う人はいないでしょうが、誰もがこういう振る舞いをすることで、「たくさんいる男性の1人」に埋もれてしまいます。

ですが、堂々と振舞う男性は別です。モテる男性は「下の名前を呼ぶ」「軽いボディタッチ」など、下手をすると嫌われるかもしれない行動をさらりとやってのけます。もちろん拒否反応を示す女性もいますが「この人、ステキかも」とドキドキする女性も生まれるわけです。
この時点で「合コンに参加してきた5人の”いい人”たちと、1人の気になる彼」という差別化が生まれるのです。

ビジネスでも「差別化」が命

この事例は、仕事にたとえても同じです。身近な例で、コンビニの棚に並んでいる菓子パンを想像してください。
ずらりと一列に100個以上の菓子パンが並んでいる店内で、各企業のパンが自社製品を選んでもらおうとひしめき合っています。
季節限定の桜メロンパン、大食漢の男性も食べたいチキンカツサンド、女性の小腹に入るミニあんぱん……といった涙ぐましい企業努力の中で、誰よりもヒットした企画があります。

それはY社の商品にシールを貼り付け、数十枚溜めると必ずお皿と交換するというものでした。美味しさ、安さ、量と「パンと直接関係した」宣伝が並ぶ中で、なぜかお皿との交換を提案したY社のキャンペーンは、たちまち人気沸騰。今では毎年春になると必ず実施される風物詩となっています。

このように「他社とはちょっと違う」ことをアピールするだけで、商品そのものはたとえ優れていなくても、飛ぶように売れる仕組みを作ることができるのです。

「いい差別化」と「悪い差別化」を知ろう

とはいっても、何でもかんでも差別化すればいいわけではありません。ここで、合コンの事例に戻って考えてみましょう。
合コンで女性から「私、スピリチュアルが趣味で。好みのタイプは前世が武士だった人」と言われたら95%の男性はドン引きしませんか? 
これが悪い差別化の例です。
同じように合コンで男性が「俺、数学の勉強にはまってて。知ってる? xの36乗ってさ……」と2時間語ったとしましょう。
確かに他の男性と彼は差別化されるでしょうが、合コンの二次会も吹っ飛ぶに違いありません。
対していい差別化は「狙った相手の心へ響く」ものです。
合コンで、もし「ほんわかした、優しそうな女性」へ差別化したいのであれば「でも優しくしてるのって、くたびれない?」と相手の愚痴を引き出すといいでしょう。逆にサバサバした、キツめの女性が好きならば友達の口から「コイツ、本当にいい奴なんだけどいい人過ぎて癒し系にしかならないって女に振られたことがあってさ~」と語ってもらえば「私も癒されたいかも……」と心を動かせるかもしれません。

「いい差別化」のために相手を知る

いい差別化をしたいならば、相手のことを深く知らねばなりません。
相手が「この人、今までに会った人と違う!」と思わせるものを提供するためには、今までに出会ってきた商品や人を知る必要があるからです。合コンであれば元彼の話を聞いたり、恋愛観について質問してみたりすると、
「意外とグイグイ引っ張ってくれる男性が好きなんだな」
「前に趣味が同じ相手と付き合って大喧嘩した挙句に別れてるから、全然違う趣味の男性を選びたいんだ」
といった情報を得ることで「いい差別化」を図ることができます。

同様にビジネスであれば、今までにどんな商品を使ってきたかを顧客へ質問します。
過去にどんな商品が好きだったか、あなたの製品・サービスを選ぶ前の「元彼」を聞きだすことで、顧客の「心が動く」ポイントを調べてゆくのです。

次回は「差別化できているつもりで、できていない? 差別化ごっこのリスク」についてご案内いたします。

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トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com