ジョブズに学ぶ 人を動かし 欲しいものを手に入れる方法

by  デイヴ・スミス

 

 

2つの企業を世に送り出したスティーブ・ジョブズは、 現代社会のルールに、

いつもいつも従っていただけではありませんでした。

ジョブズはアップルや、ピクサーを軌道に乗せるまでに、多くの困難に直面しています。

 

けれどもジョブズには、彼だけのリアリティ、 いわゆる「現実歪曲空間」を精巧に作り上げる、

ユニークな方法を持っていました。

 

この「現実歪曲空間」では、彼の個人的な信念にすぎないものが、

あたかも確かな事実であるかのように、人々は説得されてしまうのです。

そうやって彼は会社を前進させていきました。

 

彼は操作戦術をたくみに混ぜ合わせ、自分の勝利を確かなものにしました。

世界でももっとも影響力のある重役が集まる会議の席でも、 その戦術は用いられたのです。

 

多くの人々が、ジョブズを天才だと考えています。

けれども天才だというだけでは、 私たちの誰もがかならず、彼の戦術からひとつやふたつ、

学ぶことが見つかる理由にはなりません。

 

仕事上であれ、人生全般であれ、自分が望むものを手に入れる。

そのためにはどうしたら良いのか、お話ししましょう。

 

ここに出てくるほとんどの話は、ウォルター・アイザックソンが書いた、

『スティーブ・ジョブズ』という伝記に拠っています。

 

必死で働け。そうすれば人は尊敬してくれるだろう。

尊敬は、自分が望むものを手に入れる、決定的な第一歩だ。

 

Photo:Steve Jobs by Norman Seeff

 

1996年までには、アップル社は深刻な問題を抱えるようになっていました。

望みをかけていた新しいOSは、 アップルへの要求に応えるものではなかったし、

その解決策さえ見いだせそうにはなかったのです。

 

そこで、もっと安定したOSを構築するパートナー探しが始まりました。

結局、Be社と、ジョブズが立ち上げたコンピューター会社であるNeXTが 候補に挙がりました。

アップルから二社に打診があったとき、 Be社のガセーが無関心なふりをしてみせたのに対し、

ジョブズはまったくためらいを見せませんでした。

 

当時のアップルのCEO アメリオは、ジョブズのNeXT OSの売り込みは、

このようなものだった、と語っています。

 

まばゆいばかりだった。

彼は、まるで『マクベス』を演じるローレンス・オリビエさながらに、

その美点と強さを讃えたのである。

 

結局ジョブズはアップルに戻りましたが、ピクサーのCEOも続けていました。

当時の彼は、朝7時から夜9時まで働いていたといいます。

彼は腎臓結石を患っていましたが、 一貫して、ふたつの会社に刺激を与え続けました。

毎日会社に現れ、可能な限り最高の製品を作るよう、人々を鼓舞し続けたのです。

 

人々はそんな彼を尊敬しました。

 

情熱を持ったキャッチフレーズが必要だ。

人は、感情の激しい表出に影響される。

 

Photo:Steve Jobs with iPhone at D5 By:whatcounts

 

キャッチフレーズは、ジョブズのレパートリーの中でも、 重要な部分を占めます。

そうして誰にとってもそうであるべきなのです。

 

自分であれ、製品であれ、売り込みのプロセスの中では、

他人にあなたの考えを買ってもらうことがカギとなります。

 

 

トランペット奏者のウィントン・マルサリスに対する売り込みの中で、

ジョブズはiTunesにどんなことができるか、 あらゆることをやって見せました。

 

彼は当時、ミュージシャンを引き抜こうとしていました。

レコード・レーベルを説得し、iTunes計画に引き入れようとしていたのです。

 

 

マルサリスは、ジョブズとは二時間にわたって話したといいます。

 

彼は何かに憑かれていたかのようでした。 私は、コンピューターではなく、

彼という人間に目を向けるようになりました。

というのも、彼の情熱にすっかり魅了されてしまったからです。

 

彼は、自社のマーケティングの専門家たちに対しても、

「彼らが作りだしたあらゆる広告が、 ジョブズの情熱が吹きこまれたものであることを

確かなものとするために」 同様の情熱で接しました。

 

誘惑し、甘い言葉で、人を武装解除させるんだ。

 

ジョブズにとって、人を引きつけ、魅了することなど思いのままでした。

そうして、好んでそうしていたのです。

 

アップルの前CEOであるアメリオやスカリーのような人々が 自ら進んで

ジョブズを信じようとしたのも、 ジョブズに魅了されたからです。

 

なぜか。

それは、ジョブズが彼らに好意を抱き、 尊敬していたからなのです。

 

時に、ジョブズは、お世辞に飢えているような人に、

偽りのお世辞をふるまっているような印象を与えることもありました。

 

けれどもジョブズにとっては、大嫌いな人の気を引くことなど、

好きな人を怒鳴りつけるのとおなじくらい、 たやすくできることだったのです。

 

 

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元記事:http://bit.ly/1z83wtV

(翻訳:服部聡子)