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本:『不可能との交渉』 

Negotiating the Impossible: How to Break Deadlocks and Resolve Ugly Conflicts (Without Money or Muscle)

『不可能との交渉 行き詰まりを打破し醜い争いを(お金も力も使わずに)解決する方法』

著者 ディーパック・マルホラ

 

交渉には、簡単なものもあれば、むずかしいものもあります。

さらには、まったく絶望的な状況もあります。

争いはエスカレートし、人々は攻撃的になり、

誰も引き返そうとしなくなります。

あげくのはてに、力も、効果を上げる手段や方法も、使い果たしてしまいます。

 

ハーバード大学の教授である、交渉アドバイザーでもあるディーパック・マルホラは、

どれほど危機的な状況でも、それを鎮め、

一見、不可能に思えても、うまくやり遂げる方法を明らかにしました。

 

マルホラは、行き詰まりを解消し、争いを解決するための3つの大胆なアプローチを確立しました。

そうして、アメリカ憲法の草案作成や、キューバミサイル危機の回避、

NFLやNHLでの激しい論争に終止符を打ったことや、

複雑なビジネス状況で逆境に打ち勝った話など、

現実の交渉の舞台裏での魅力的なストーリーを通してそれを明らかにします。

 

けれどもマルホラが明らかにするのはそれだけではありません。

あなたが企業間取引を行っているにせよ、仕事の提案について交渉しているにせよ、

ビジネスでの争いを回避しようとしているにせよ、

あるいはまた個人的な関係における障害を取り除こうとしているにせよ、

子供との交渉であるにせよ、こうした日常の出来事にも

さまざまな交渉と同じ原則と方針が応用できる、というのです。

 

そこに至った経緯や、何が問題になっているかにかかわらず、

交渉というのは、かならず根本的には、人と人との相互行為であることを、

マルホラは思い出させてくれます。

 

どれほどリスクが高く、争いが長引ていたとしても、

交渉の目的は、相手側の人間と、深く理解し合い、同意することにあります。

本書の原則と戦略は、あらゆる状況において、

あなたがもっと効果的に行動することを助けてくれるでしょう。

 

 


元記事:http://goo.gl/iUtqbP

(翻訳:服部聡子)

 

 

 

 

本:『自分にイエスと言わせる』

“Getting to Yes with Yourself:(and Other Worthy Opponents) “

by William Ury

『自分にイエスと言わせる:(そして価値ある敵にも)』

 著者: ウィリアム・ユーリー

 

『ハーバード流交渉術―イエスを言わせる方法』で日本でもベストセラーとなった、

ウィリアム・ユーリーの本の新作です。

 

これまで「イエスを言わせる」「ノーと言わせない」と続いてきたこのシリーズ、

今回のテーマは「自分自身にイエスを言う」というもの。

 

  合意の障害になるものとは

 

高名なネゴシエーターであるウィリアム・ユーリーは、

これまでに経営者や弁護士、工場労働者、炭鉱夫、学校教師、外交官、官僚など、

あらゆる分野にわたって、数多くの人々を指導してきました。

 

その過程でユーリーは、お互いが合意し、新たな関係を築くうえで、

最大の障害となるのは、

相手側ではなく、〈自分自身〉であることを発見したのです。

 

私たちは生まれつきの傾向として、

「すぐに反撃してしまう」という性質を持っています。

この反撃してしまう性質のせいで、

私たちの真の利益になるような道を閉ざしてしまうのです。

 

 自分に対してイエスと言おう

 

けれども、ユーリーによれば、この障害は、

同時に、きわめて大きなチャンスともなる、といいます。

 

私たちがあらかじめ自分の傾向を知り、自分を変えていれば、

相手もそれに反応していきます。

自分の変化が、相手を理解し、変えていく土台となっていくのです。

 

本書では、相手からの「イエス」を引き出す前提として、

まず自分自身と合意するために、ユーリーは7つのステップを示します。

 

それによって、他者と交渉していくための能力が、劇的に向上する、と。

他者と健全な関係を築くために、またビジネスの生産性をあげていくために、

満足できる人生を歩んでいくために、

本書は実践的で効果的な方法を伝授してくれます。

 

 


元記事:http://amzn.to/15r843d

(翻訳:服部聡子)

 

ジョブズに学ぶ 人を動かし 欲しいものを手に入れる方法

by  デイヴ・スミス

 

 

2つの企業を世に送り出したスティーブ・ジョブズは、 現代社会のルールに、

いつもいつも従っていただけではありませんでした。

ジョブズはアップルや、ピクサーを軌道に乗せるまでに、多くの困難に直面しています。

 

けれどもジョブズには、彼だけのリアリティ、 いわゆる「現実歪曲空間」を精巧に作り上げる、

ユニークな方法を持っていました。

 

この「現実歪曲空間」では、彼の個人的な信念にすぎないものが、

あたかも確かな事実であるかのように、人々は説得されてしまうのです。

そうやって彼は会社を前進させていきました。

 

彼は操作戦術をたくみに混ぜ合わせ、自分の勝利を確かなものにしました。

世界でももっとも影響力のある重役が集まる会議の席でも、 その戦術は用いられたのです。

 

多くの人々が、ジョブズを天才だと考えています。

けれども天才だというだけでは、 私たちの誰もがかならず、彼の戦術からひとつやふたつ、

学ぶことが見つかる理由にはなりません。

 

仕事上であれ、人生全般であれ、自分が望むものを手に入れる。

そのためにはどうしたら良いのか、お話ししましょう。

 

ここに出てくるほとんどの話は、ウォルター・アイザックソンが書いた、

『スティーブ・ジョブズ』という伝記に拠っています。

 

必死で働け。そうすれば人は尊敬してくれるだろう。

尊敬は、自分が望むものを手に入れる、決定的な第一歩だ。

 

Photo:Steve Jobs by Norman Seeff

 

1996年までには、アップル社は深刻な問題を抱えるようになっていました。

望みをかけていた新しいOSは、 アップルへの要求に応えるものではなかったし、

その解決策さえ見いだせそうにはなかったのです。

 

そこで、もっと安定したOSを構築するパートナー探しが始まりました。

結局、Be社と、ジョブズが立ち上げたコンピューター会社であるNeXTが 候補に挙がりました。

アップルから二社に打診があったとき、 Be社のガセーが無関心なふりをしてみせたのに対し、

ジョブズはまったくためらいを見せませんでした。

 

当時のアップルのCEO アメリオは、ジョブズのNeXT OSの売り込みは、

このようなものだった、と語っています。

 

まばゆいばかりだった。

彼は、まるで『マクベス』を演じるローレンス・オリビエさながらに、

その美点と強さを讃えたのである。

 

結局ジョブズはアップルに戻りましたが、ピクサーのCEOも続けていました。

当時の彼は、朝7時から夜9時まで働いていたといいます。

彼は腎臓結石を患っていましたが、 一貫して、ふたつの会社に刺激を与え続けました。

毎日会社に現れ、可能な限り最高の製品を作るよう、人々を鼓舞し続けたのです。

 

人々はそんな彼を尊敬しました。

 

情熱を持ったキャッチフレーズが必要だ。

人は、感情の激しい表出に影響される。

 

Photo:Steve Jobs with iPhone at D5 By:whatcounts

 

キャッチフレーズは、ジョブズのレパートリーの中でも、 重要な部分を占めます。

そうして誰にとってもそうであるべきなのです。

 

自分であれ、製品であれ、売り込みのプロセスの中では、

他人にあなたの考えを買ってもらうことがカギとなります。

 

 

トランペット奏者のウィントン・マルサリスに対する売り込みの中で、

ジョブズはiTunesにどんなことができるか、 あらゆることをやって見せました。

 

彼は当時、ミュージシャンを引き抜こうとしていました。

レコード・レーベルを説得し、iTunes計画に引き入れようとしていたのです。

 

 

マルサリスは、ジョブズとは二時間にわたって話したといいます。

 

彼は何かに憑かれていたかのようでした。 私は、コンピューターではなく、

彼という人間に目を向けるようになりました。

というのも、彼の情熱にすっかり魅了されてしまったからです。

 

彼は、自社のマーケティングの専門家たちに対しても、

「彼らが作りだしたあらゆる広告が、 ジョブズの情熱が吹きこまれたものであることを

確かなものとするために」 同様の情熱で接しました。

 

誘惑し、甘い言葉で、人を武装解除させるんだ。

 

ジョブズにとって、人を引きつけ、魅了することなど思いのままでした。

そうして、好んでそうしていたのです。

 

アップルの前CEOであるアメリオやスカリーのような人々が 自ら進んで

ジョブズを信じようとしたのも、 ジョブズに魅了されたからです。

 

なぜか。

それは、ジョブズが彼らに好意を抱き、 尊敬していたからなのです。

 

時に、ジョブズは、お世辞に飢えているような人に、

偽りのお世辞をふるまっているような印象を与えることもありました。

 

けれどもジョブズにとっては、大嫌いな人の気を引くことなど、

好きな人を怒鳴りつけるのとおなじくらい、 たやすくできることだったのです。

 

 

ビジネス・インサイダー


元記事:http://bit.ly/1z83wtV

(翻訳:服部聡子)

 

スティーブ・ジョブズから学んだ交渉のヒント

by ピーター・コーハン

 

 

2007年、アップルの最初のiPhoneが販売された当時、携帯電話はすでに大きな市場でした。

ところが2009年までには、アップルは携帯電話市場の30%を占めるまでになっていました。

ジョブズはどうやってAT&Tを説得し、 アメリカでのiPhoneを提供する排他的販売契約と引き替えに、

画期的な契約を結んだのでしょうか?

 

ラジ・アガーワルがコンサルティング会社アドベンティスの電気通信部門に在籍した当時、

ジョブズと数ヶ月間、週に2度の割合で会っていた、といいます。

8月におこなった私とのインタビューで、アガーワル氏は、

スティーブ・ジョブズがどのようにAT&Tを説得し、iPhoneを提供するために、

先例のないレベニュー・シェア契約を結んだかを説明してくれました。

 

ハーバード・ビジネス・スクールの事実記載書によると、

アップル社は2010年、アメリカ国内での独占オペレーターであるAT&T社と、

先例のないレベニュー・シェア、 すなわち、iPhone契約者1人当たり10ドルを受け取ること、

配布、価格、商標はアップルが管理する、という内容で合意した、 とあります。

 

「2005年初め」に、アドベンティス社のコンサルタントとして

ジョブズと仕事をおこなったアガーワル氏は、 このように語っています。

 

「ジョブズはAT&Tと、契約をうまく結ぶことができました。

 

というのも、彼が iPhone 細部にいたるまで関与していたことと、

通信キャリアとの関係を築こうとする努力、 他人には法外とも思えるような要求を貫こうという意志、

自分のビジョンに、大きなリソースを賭ける度胸があったからです」と。

ここに、スタートアップを考えている人が応用できる、 ジョブズの3つの戦略を見てとることができます。

 

 1. カギとなるものを細部まで掘り下げる

 

 

優れた起業家は、 スタートアップが確実に軌道に乗ることができるよう、

細部に至るまで、あらゆることを把握しておきたい、という衝動と、

社員に仕事を任せる必要との間で、 うまくバランスを取っていかなければなりません。

 

とはいえ、細部を徹底的に掘り下げる必要に迫られる場合もあります。

とりわけスタートアップの将来がかかっているような場合には。

アガーワル氏は、ジョブズと、戦略の実行をほかの人に任せていた 多くのCEOとが

異なっていたのを指摘しています。

 

「ジョブズはすべての通信キャリアのCEOと、個別に会っていました。

私は彼の、直接実務に参加しようという気概と、

会社のやることを、あらゆる面において成功させよう、という激しい情熱に打たれました。

彼は自分が従事して来たことに、細部まで徹底的に関わっていました。 彼がなしとげたのです」

とアガーワル氏は言います。

 

 

 

2. 自分のビジョンに大胆に賭ける

 

あなたが自分のスタートアップの将来を、ビジョンとして思い描くタイプの起業家ならば、

自分のビジョンをシェアしてくれるよう、他者を説得できない限り、 先は見えていることでしょう。

これまで部下やビジネスパートナーに対して、できる限り説明したけれども、わかってもらえなかった、

というのであれば、そのビジョンがこのスタートアップの未来にどれだけ重要であるか 納得させるための、

大胆な一手が必要となるはずです。

 

アガーワル氏は、ジョブズが自分のビジョンを理解してもらうために、

リスクを進んで引き受けようとする態度に、感銘を受けたといいます。

 

「会議室でのあるミーティングで、ジョブズはAT&Tが契約のリスクを心配して、

あまりに時間をかけるのにいらだっていました。

そこでジョブズはこう言ったのです。

 

連中の不平を止めさせるために、どうしたらいいかわかるだろうか?

AT&Tに10億ドルの小切手を切ればいいんだよ。

もし契約がうまくいかなければ、相手はそれを取っておけばいい。

AT&Tに10億ドルを渡そうじゃないか。

(※当時アップルは現金で50億ドルの所有がありました)

そうすれば不平も止むだろうし。

 

アガーワル氏は当時をこのように回想しています。

 

ジョブズが実際に、AT&Tに現金を渡すことはありませんでしたが、

そうしてもかまわない、という彼の確固とした意志は、アガーワル氏に強い印象を残しました。

 

 

 3. 途方もない要求を出し、そのために戦う

 

もしあなたに、業種を転換しようとしている、といううわさがあるなら、

途方もない要求を出したとしても、 その要求に応じてくれる人が現れるかもしれません。

 

ジョブズがAT&Tとの契約からそんなにも多くのものを引き出すことができたのも、

そのせいだったからかもしれません。

 

けれども、見方を変えれば、ジョブズが結果的に成功できたのも、

ジョブズの法外な要求と、そのために戦おうとした彼の意志があったからこそ、とも言えるのです。

 

アガーワル氏は、途方もない要求をぶつけてくるところに、

ジョブズのユニークな点を見ています。

 

その説明によればジョブズはこのように言ったといいます。

 

月額50ドルで、無制限通話、データ通信、

ショートメッセージサービスプランの一切を含む。

これが私たちのミッションです。

私たちはこれまで誰もすすんでやろうとしなかったこと、

現状を度外視する、ということを、

望み、求めていかなければなりません。

 

彼はこうした法外な要求を思いつくと、 そのために戦い、戦ったことで初めて得られるような、

多くのものを手に入れてきたのです。

 

あなたは第二のスティーブ・ジョブズにはなれないかもしれません。

けれども、この3つの戦略を学ぶことで、よりよい起業家になることができるはずです。

 

 

 

著者:Peter Cohan (著作家・投資家)


 

元記事:http://bit.ly/1LE1qcp

(翻訳:服部聡子)

 

 

内向的な人のための交渉術

by ジニー・ソスキー

 

 

これまでの人生の大半、私は自分のことを外向的だと思ってきました。

子供の頃、友だちとあまりにも大きな声でおしゃべりしていたせいで、よく叱られたりしたものです。

いろんな集団スポーツもやってきましたし、そのなかで大勢の人と交流を重ねました。

夜、家に帰ってリラックスする、というのは、私にとっては

ふだん一緒に遊んでいる友人たちを家に招くことでした。

 

けれども、同時に私は本を読むのも大好きでした。

図書館で借りてきた、出たばかりのスリラーを、丸くなって読むひとときは、

私にとって何にも代えがたい喜びでした。

 

マラソン中、たったひとりで走っているときは、私の中に活力がよみがえるのを感じました。

それに、夜、カウチに丸まって、「バチェラー」という番組を見るのも大好きでした。

 

多くの人と同じように、私も 「内向的」 と 「外向的」 の中間にいます。

そうしてこのことは私のキャリアに大きな影響を及ぼしてきたのです。

 

自分が何にも増して 「内向的だ」 と感じてしまうのは、交渉している時です。

私の交渉はたいてい、  

黙りこくったまま、頭を曖昧に動かし、相手が何か申し出てくれたなら、

内容にかかわらずそれに飛びつく、

で終わってしまいます。

 

きっとそれは私だけではないでしょう。

交渉というのは、多くの人にとって怖ろしいことですから。

 

でも、もし自分のキャリアを (そうして自分の給料の額も) 豊かなものにしたければ、

なんとかしなければなりません。

 

交渉となると、急にぎこちなくなってしまう内向的な人は、どのような対処をしていけばよいのでしょうか。

もちろんその答えは、外向的な友だちに交渉してもらう、ではありません。

内向的な人も、交渉のプロセスのなかではカギになっていく

「強み」 を持っているのです。

 

  内向的な人は自分の強みを交渉で発揮しよう

 

内向的な人が恥ずかしがり屋だと一般にいわれますが、かならずしも事実ではありません。

研究者はいまだに人を「外向的/内向的」と厳密に分類しようとしていますが、

スーザン・ケインの『内向型人間の時代 ――社会を変える静かな人の力』によると、

内向的か、外向的かというのは、

心地よく活動できる、外界からの刺激の強度の差 でしかない、というのです。

内向型人間の時代

 

外向的な人は、外部から多くの刺激を必要とします。

たとえば、大勢の人と、社交的な環境で、

活発に交流する、といったことです。

 

それに対して、内向的な人は、

夜、自宅で心許せる友だちと、好きな映画を観るような、

低いレベルの刺激を好ましいと感じるのです。

 

 

交渉に際しては、外部からの低い刺激を好ましいとする傾向が、有利に働く場合もあります。

ハーバード大学の研究によると、 孤独な状態でいると、

人は他者へ感情移入する能力がより高まる のだそうです。

 

内向的な人はたいてい、黙って人の話に耳を傾ける能力に長けているはずです。

このスキルは、同時に、交渉相手をどうしたらその気にさせるのかを見抜く技術でもあるのです。

 

ブログの中でケインは、内向的な人は「調停者」の役割を果たすことが多い、と指摘します。

交渉の中で、調和ばかりを求めていては、相手につけこまれるかもしれませんが、

その傾向をうまく活かせれば、とてつもない強みとなります。

 

それはどうしてでしょう?

「調停者は細かいことにいらだちにくい傾向があります」 とケインは言います。

「些細なことがらをめぐって議論が続いていたとしても、気持をそらされたりしません。

内向的な人は、生まれながらに調和を求める人なのです」

 

ふたつのグループ間で、共通の解決策をさぐるという交渉のシナリオにおいて、

ごく自然に調和を模索する内向的な人は、天賦の才をもっているといえます。

 

となると、こうしたスキルを交渉時、どのように活かしたらよいのでしょうか。

おそらくあなたは几帳面な人でしょう ?(これもまた内向的な人の特徴です)。

ですから、ここにそのプロセスを紹介します。

 

  内向的な人は、どうしたらもっとうまく交渉できるか

 

本当のことをいうと、以下にあげるステップは、

内向的な人、外向的な人の両方に効果があるものです。

この中のいくつかは、私の同僚であるロブ・マサブニーのアドバイスに基づいており、

それを内向的な人向けに手直ししています。

 

これからあげることを念頭に置いておけば、自分本来の強みを活かして、交渉に当たることができるでしょう。?

 

準備

 

交渉のプロセスの中で、内向的な人が一番時間をかけるところです。

交渉中にあわてたりするのを避けるためには、念には念を入れて準備をしておきたいもの。

以下、用意する必要のあることをあげていきます。

 

1) 関係を明確にしておく

これは一度限りの交渉ですか?

それともこれから先、何ヶ月間かは一緒に働くことになりますか?

前者なら、交渉は少々押しが強くてもかまいません。

後者であるならば、配慮が必要ですが、自分が求めるものについては、はっきりと態度で示しましょう。

何よりもまず、自分がどちらで行くか、決めておくこと。

それが交渉のプロセス全体を決めてしまうのですから。

 

2) 最高のシナリオを立てておく

しばらくのあいだ、楽観的になってみましょう。

交渉の結果、すべてがうまくいくとすれば、どうなるのが一番いいと思いますか?

求めるものは何ですか?

相手は何を望んでいるのでしょうか?

そのシナリオは、双方にとってwin-win ですか?

 

3) 最悪のシナリオも決めておく

楽観タイムはおしまいです。

今度は起こりうる最悪の事態、それでもなんとか納得できる、という条件を、思い描いてみてください

これがいわゆる「底」です。

 

もうこれで、どの時点で交渉を打ち切るべきかがわかりました。

交渉がその線に達したら (もしくはその線を越えたら)、

自分はその場を離れた方がいい、というラインが明らかになったのです。

最低ラインを引いておくことは、つけこまれないために何よりも大切なことです。

さらに、線を引くことで、交渉戦略をリセットしやすくなるのです。

 

4) 達成するべきシナリオ、避けるべきシナリオに沿った戦略を立てる

何が理想的な状況かわかったので、そこに到達するまでの計画を立てます。

当然、話し合いが台本通りに進むはずはありません。

けれども、どうやってそこに行くかのシナリオをいくつか用意し、

綿密に計画を立てることに持ち前の整理整頓能力を発揮するのです。

交渉中は、感情移入スキルを発揮して、相手の立場に身を置いて、気持を想像します。

 

もし「X」と言ったら、相手はどう感じるでしょうか?

どのように反応するでしょうか?

自分の望ましい目標に近づくためには、どのように反応したら良いでしょうか?

このプロセスが終わった時点で、おそらくいくつかのシナリオの概略はできているでしょう。

つぎは、そのシナリオを実現するために、武装する番です。

 

 

5) 戦略実現のための戦術を選ぶ

まずは自分がどの戦術を使うか、明らかにしておく必要があります。

そうして、それを実行に移すために、模擬交渉で練習しておくのです。

親しい友人や協力してくれる人を見つけて、一緒に交渉をやってみましょう。

では、つぎにうまく交渉するためにやっておいた方が良いことをあげておきます。

 

◆ 「イエス/ノー」ではない、オープン・エンド・クエスチョンを

ある点について真正面から議論するのではなく、 相手の意欲や優先順位を知るために、

質問をなるべくたくさんするようにします。

たとえば、新しい仕事に就くのを、もう少し先に延ばしたいと交渉しているとします。

担当者が「8月10日から仕事を始めてください」 と言ったとしたら、こう尋ねましょう。

「その日程は動かせませんか? その仕事はその日に始めなければならない理由があるのですか?」

続く質問にも自由に答えられるようにしておくことで (イエス/ノーで答えるような質問ではなく)、

相手の意図がどこにあるかわかり、会話をどこの方向へ引っ張っていったら

いいのかを理解することができます。

 

この戦術は、弁護士時代のケインの役に立ちました。

『マクリーンズ』誌のインタビューによれば、ある交渉の席で、

ケインは以下のようにして勝利を収めたといいます。

 

交渉が始まるとすぐ、ケインは質問を始めた。

「多くの質問をしました」 とケインは当時をふりかえる。

そうして、相手の答えに耳を傾けた。

「その人の性格によらず、実りある交渉には、質問が決定的に重要です」

結果的に彼女のシンプルな質問は、部屋の雰囲気を変えていった。

「銀行家たちは長口舌をふるったり、自分の優位を誇示したりするのをやめました」

そうして両者の間に実質的な話し合いが始まったのだという。

最終的に協定が交わされ、翌朝、銀行サイドの首席弁護士がケインに電話してきた。

「うちの事務所で仕事をしないか」

と申し出があったのである。

「感じが良いのに、ここまで手強い相手には、今まで会ったことがない」 と言って。

 

◆ わかりやすく言いかえる

話し合いの間、交渉相手と大筋では合意していることを確認しておきましょう。

それに加えて、相手の言ったことをまとめる時間も必要です。

内向的な人は、聞き上手なので、このようなことは、ごく自然にできるでしょう。

 

◆ アンカーの使い方(時には避け方)を知る

アンカーは、話し合いの際の基準値となるものです。

たとえば賃金交渉の場合、アンカーは最初に提示される数字のことです。

以降の交渉は、この準拠枠にもとづいてなされます。

こちら側が6万ドルをアンカーとして提示したなら、 4万5千ドルではなく、

6万ドル前後の数字で話を詰めていかなければなりません。

 

もし自分でアンカーを定めるつもりなら、ケインの言葉は良いヒントとなるでしょう。

 

これは事前にやっておかなければならない宿題です。

まず、数字を決めます。

自分にとって望ましい数字、けれども、相手から見ても違和感を抱かせないような数字です。

やりすぎてしまえば、無知(相場を知らないやつだな)と思われるか、

鼻持ちならないやつ(いったい誰が身の程をわきまえない人間とつきあいたいでしょうか?)

と思われるか、です。

賃金交渉や、関係を良好に保っておく必要のあるような場面では、

とりわけ気をつけてください。

アンカーは、むしろ一度限りの交渉、

たとえば車を買うときのような場合にふさわしいのです。

 

もし投げかけられたアンカーをかわしたいとき、つまりは「しりごみ」の気持を示したいときには、

そのアンカーがどれほど非常識なものか、ボディランゲージを使って相手に知らせればよい、

とケインは言っています。

実際に、たじろいでみせたり、眉を上げたり、

「本当ですか? 少し変ではないですか? もう一度、やりなおしましょうか。

今度はもうちょっと妥当な範囲で」 と言ってみるのも効果的です。

 

◆ 間をおく

直観的に、間なんておかない方がいいんじゃない? と思うかもしれません。

でも、沈黙は静かな武器です。

とりわけ、相手がありえないようなアンカーを持ち出してきたような時には。

それに、黙ったままでいるというのは、こちら側にとっても普通ではない申し出をするときにも、

うまいやり方です。 どうしてこうしたいか、と、あまりに説明し過ぎるよりも、

自信にあふれているように見えるからです。

 

◆ いくつかのキーワードを避ける

友人のマサブニーは、以下に挙げる言葉を避けるように言っています。

「ちょっと」 : 

「ちょっとやっているところです」などというと、

自分がやっていることがいかにもたいしたことではなさそうに聞こえます。

「たぶん」 : 

交渉に当たるときには、信頼のおける物腰で臨みましょう。

「たぶん…、おそらく…」の代わりに「間違いなく」を使います。あるいは、何もつけない。

「しなければならない」 :

ほかの人が主語の「しなければならない」という言葉は、

その人を自分の思い通りにしようとしている印象を与えます。

「~みたいな」 :

 これもまた毅然とした印象を損ねる言葉です。絶対に避けましょう。

「残念ながら」 : 

このあとに続くのは良くない話だとわかるので、誰もそこから先は聞いてくれません。

「えー、あー、あのー、まあ……」 :

つなぎ言葉は聞き苦しいものです。

 

 

交渉開始、ディスカッションの幕を開けましょう

 

さあ、実際に交渉をやり抜く時がやってきました。

これまで多くの準備をしてきたので(おめでとう!)、

つつがなく進んでいくはずですよね?

 

話し合いはレシピ通りには進まないものなので、この領域での万能チェックリストは存在しません。

けれども、以下にこれ以降のおおまかな流れを示しておきます。

1) 相手側が何を望んでいるかはっきりさせるために、話してもらう

最初は相手に話を始めてもらいましょう。

オープン・エンド・クエスチョンを投げかけ、相手側が実際に求めているものを明らかにします。

このとき、聞く能力を十分に発揮します。

相手側の求めているものや必要なものを予測するために、これまで多くのことをやってきましたが、

その予測が正しかったかどうか、理解しておく必要があります。

そうしなければ、議論のスタート地点に立てないからです。

交渉そのものよりも、この部分を 「共同作業」 としてとらえ、しっかりやっておけば、

以降の交渉の舵取りが簡単になるでしょう。

 

2) 話し合いをこちら側のシナリオにできるだけ近づける

内向的な人は、計画通りの成果を得るために、押しつけがましくなったり、

強気に出たりするのを好みません。 けれども、相手側と話し合っているときには、

その目標を常に頭の中に入れておかなければなりません。

話し合いのゴールに焦点を定めておけば、その場その場で使う戦術についても、頭がよく回るはずです。

 

 結論が出たら

 

おめでとう! 結論が出ました――これで誰もがハッピーになるはずです。

でも、話し合いを終えるまえに、以下に述べるふたつのことをやっておく必要があります。

もちろん、相手に常識があることはわかっていますが、交渉というもやの中では、

簡単に忘れ去られることもあるのです。

 

1) 合意したことを、もう一度、言葉にする

内向的な人の得意な、積極的に耳を傾ける能力を発揮します。

両者が最終的に合意したことを正確に言葉にし、はっきりと記録を残して交渉を終わりましょう。

そのまとめを聞いて、相手側が交渉を続行したがるかもしれません。

けれども両者はその件に関してはすでに合意したのだから、こちら側はつぎのステップに進めるはずなのです。

2) つぎのステップを告げる

話し合いの結果をふまえ、誰が、何をするかを明らかにする必要があります。

交渉の最後にこのプロセスを経ることによって、内向的な人は、

いっそう安心してつぎのステップに進むことができるでしょう。

ということで、これでおしまいです。

 

事前に詳細なプランのアウトラインを立てておき、そのプランを予行演習することによって、

交渉で望むものを得るための備えは十分できているはずです

たとえ内向的であろうとなかろうと。

この他に、内向的な人が交渉時、役に立つヒントはありますか?

 

著者:ジーン・ソスキー


元記事:http://blog.hubspot.com/marketing/introverts-successful-negotiating

(翻訳:服部聡子)