美容室をヒットさせるにはイケメンを雇え!?
成功する企業が持つ「ブランド・エクイティ」の秘密
こんにちは、トイアンナです。
今回はブランド・エクイティという技術を、美容院業界の例を使ってお伝えしたいと思いますが、
まずはヒットする美容院の秘密をご存知でしょうか?
バラの花をイメージしたゴージャスな内装が特徴の美容院チェーンAは、1990年代後半に創業。
10年間で200店舗を展開する大企業へと成長しました。
その魅力はたとえば下記のようなものです。
・ 化粧品売り場をイメージし、足を踏み入れるだけで美しくなれる気がする内装
・ 個室でヘアカットを受けられるプレミアムブースの設置
・美容師をランク分けし、料金設定を変えることで経歴が長い美容師を「ブランド」に
実はA社が伸びた時期、美容室市場は成長しないと言われていました。
髪を切る人口は減っていく中で、割引キャンペーンで利益を削ってでも他店からお客さんを引き剥がすビジネスが一般的。
そんな中で、どうやってA社は爆発的に伸びたのでしょうか?
その答えがマーケティングの秘密こと「ブランド・エクイティ」です。
ブランド・エクイティとは?
ブランド・エクイティとは簡単に言えば「商品に対して感じる価値」のことです。
さらに簡単に言えば「ぶっちゃけ、この商品なにしてくれるの?」とお客様がスタッフに質問したときに、スタッフがお答えする内容のこと。
たとえばヤマト運輸のエクイティは「商品を安全に、明日届けてくれる」ことですし、
iPhoneのエクイティは「持っているとオシャレな人に思われる」ことです。
ここで大切なのは「ブランド・エクイティ」が機能的価値ではなく、感情的な価値であることです。
iPhoneは確かにハイテクな携帯電話で、テレビ電話からインターネット接続、写真撮影もできます。
しかしiPhoneの根源的な価値はそこではありません。
なんとなくオシャレで、最先端な「感じがする」ので持っているだけで自分がカッコ良くなれる気がする。
これがiPhoneのブランド・エクイティです。
iPhoneはインターネットに携帯から接続できるからではなく「持っているとオシャレな人に思われる」から売れたのです。
ブランド・エクイティがある、つまり商品にお客さんが「心で感じる価値」があると商品は売れます。
逆にどんなに素晴らしい機能があっても、
お客さんが「心で価値を感じられない」なら商品は売れません。
冒頭で挙げた美容室A社は「豪華な場所で髪を切ると、自分もゴージャスになった気持ちになれる」
という強いブランド・エクイティを用意しました。
そして「豪華な場所で髪を切ると、自分もゴージャスになった気持ちになれる」というブランド・エクイティを強めるために個室のプレミアムブースや、ランク分けしたトップ美容師を作ったのです。
ブランド・エクイティを設計し、その設計に沿った施策ができる商品やサービスには必ずファンができるのです。
ブランド・エクイティの例
もっと分かりやすくするために、美容室のブランド・エクイティの例をいくつかご提案してみます。
ブランド・エクイティの例1)
「イケメンに愛されてお姫様みたいな気持ちになれる美容室」
ブランド・エクイティを活かす戦略
・イケメン度でネット投票をしてもらい、イケメン順で価格を変える
・お客様のことを「姫様」と呼ぶ
・オプション料金で壁ドンをしながらブローするサービスを導入
ブランド・エクイティの例2)
「肌トラブルがある人が安心して通うことができる美容室」
ブランド・エクイティを活かす戦略
・トラブル別のヘアシャンプーを選べる診断チャートを用意
・肌が痛まないカラーやパーマ剤のみ採用
・肌に優しい化粧品ブランドと提携してサンプル配布
ここで大切なのは他社と差別化できる「ブランド・エクイティ」が作れたら、必ずエクイティに沿った戦略を練ることです。
たとえば「肌トラブルがある人が安心して通うことができる美容室」で、グラデーションがキレイに出るけれども髪が痛む液剤を売りにすると、お客様は「肌に優しいのに、肌に優しくないの……?」とちぐはぐな印象を抱いてしまいます。
ブランド・エクイティは「その商品が何をするか」と「その商品が何をしないか」を決めるものです。
やらないと決めたことは、手を出さない勇気をもつからこそお客様はあなたのサービスに違いを見出せるのです。
■ ブランド・エクイティの例
最後にブランド・エクイティとして正しい例と、正しくない例をいくつかご紹介します。
正しいブランド・エクイティ
○ 過払い請求でお客様が借金について「考える時間を減らせます」
○ 寝不足にならない、夜も「安心して」飲めるカフェイン無しのコーヒー
誤ったブランド・エクイティ
× 新機能で目覚まし時計の音色を365日変えられます
× パソコンが前よりふた回り、小さくなりました
正しいブランド・エクイティはお客様の「心で感じる価値」があることが伝わりましたでしょうか。
さあ、あなたの会社の製品のブランド・エクイティは何でしょう?
そしてあなたのお客様は、どんな感情をあなたの商品やサービスへ抱いていますか?
1度考えてみてください。
←「マーケティング深化論」目次
トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com