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集客におけるインターネットの利便性を、今一度見直す

こんにちは、トイアンナです。「インターネットは便利だ」と広まってから十年以上がすぎ、今更インターネットの優位性について語られることは減ってきたかと思います。

しかし印刷、医療、アパレルのようなローテク産業へ従事する方にとって、まだ「どのようにインターネットを活用すれば集客や売上へつながるか」はまだ知られていない面があるように思われます。大手百貨店でも顧客情報を昔ながらのバインダーで保管しているところは少なくありませんし、地域医療を担う病院や歯科医院が数十万円も払ってわざわざ自前のウェブサイトを作ることへ疑問を抱くことも多いのではないでしょうか。

そこで今回は、ネットを集客で使う最大の利便性についてご案内いたします。

  • 従来の広告は割高にできている

日本の起業家、とくに地方にお勤めの方にとって宣伝を意識されるときに最初にとられる手段はDM(ダイレクトメール)、それも紙のDMではないかと思います。そして一度でもDMを発行された方であれば、そのコストが割高なことに辟易されたのではないでしょうか。

たとえば私の親はアーティストをしており、今月百貨店で個展をいたしました。その際に合計500部のDMと、リーフレット1,000枚を配布しました。フルカラーの印刷のため、これだけでも合計30万円ほどはかかる見込みです。

しかしこのDMを近隣のマンションへ配布したところで、何パーセントが実際にお越しいただけるでしょうか? おそらく関心を持つのが10%、実際に購入へ至るのがさらに1割程度でしょう。1,500枚もの紙を配っても、購入へ至るのはよくて15名。となれば、価格を無理にでも上げなければ広告の元が取れない計算となります。

  • ネット広告のコスト削減

一方、ネットでは最初にデザインを作ってしまえば、あとは何度でも広告を簡単に更新できます。新しい個展を開くにせよ、告知ページを無料で作ることができるのです。定期的な読者さえいれば、新しいコストをかけなくとも展示へ人が集まります。

もちろん「定期的に自社サイトへ来てくれる読者」を作るために自社のページを頻繁に更新する必要はあるのですが、社長自らがその作業を行う必然性はありません。

ブログを書くのが好きな人、普段からSNSを更新している人を社員から発掘し、活用するだけで十分に効果を発揮できるのです。

  • ネットを活用すれば、まだ差別化ができる

そして、ネットを活用すれば差別化できる業界はまだ多く残っています。猫も杓子も業者がネットで告知するようになったのは、都心部だけに限定されます。地方ではいまだにチラシやDMを主たる手段とした告知が一般的で、「ネットを使う」だけでも追加の集客を見込めます。

すでにネットでの集客が一般化した都心部においても、ツイッターやインスタグラムなどのSNSを活用した集客をなさる業者はいまだ限られています。といっても、むやみにアカウントを開設して「こんにちは!〇〇です!XX市の歯医者ならぜひうちへ!」と発信しても顧客は集まりません。SNSではより「親近感を感じる、カジュアルな」コミュニケーションが好まれるからです。

以下へ実際にSNSの活用で売上を伸ばしている企業の例を掲載します。ご覧いただければ大手企業でも驚くほどフレンドリーな対話を顧客としていることに驚かれることでしょう。これからの集客を考える上で、参考にしていただければ幸いです。

SHARP
SHARPは経営悪化が叫ばれる時期にあえて擬人化したキャラクターをSNSで打ち出すことに成功しました。その結果、「SHARPさん」と呼ばれるほどブランドへの好感度が増し、昨今のV字回復へいたる礎を作ることができました。

タニタ
SHARPに比べてマイナーな企業である体重計を主につくるメーカー「タニタ」は、他の大企業とネット上で積極的にコラボレーションを展開し、成功を収めました。具体的には上述のSHARPの担当者と温泉旅行へ行きそのようすを中継するなど、公式アカウントでは見られにくいフランクさでファンを多数獲得するにいたりました。

上馬キリスト教会
通常なら忌避されやすい宗教の集客においても成功したのが上馬キリスト教会です。「宗教=怪しい」というネガティブなイメージを払拭するかのごとく、キリスト教のネタを使ったジョークを発信することで教会への今までにない集客を実現しています。

  • ネットを活用する上での注意点

さて「ネットで集客しよう」と考えられた方にとって、まずは何から始めればいいか……というのは当然直面する課題かと思います。そして「どうせ分からないだろうから」とあなたへ群がる悪徳業者が多いのも事実です。

「ネット集客コンサルタント」「オンラインマーケティング」といった、横文字の専門家へ依頼したくなる気持ちはぐっとこらえてください。まずは腰を落ち着けて、書籍を数冊読まれることをお勧めいたします。ネットは新しい道具ではありますが、必ず成功する魔法ではありません。正しい使い方を知ってから、適切な業者を選ぶことをおすすめいたします。


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

小さなビジネスが持つ5つの大きな強み

 by アン・ミラー

お客様を引き付けるのに、大きな予算は必要ありません。以下に挙げる5つの秘訣で、あなたの会社もビッグネームのブランドとの競争に打ち勝つことができます。

小さなビジネスの
・柔軟で、
・個人的な対応が可能、
・ニッチを満たす
という強みはいずれも高い利益をもたらすことが実証されています。
 これらの3つの特質を持つことで、成功への道は開かれます。それこそが、小さいということが持つ力です。

このことは、マンハッタンのジャヴィッツ・センターで2016年1月に開催された、全米小売連盟協議会の満員ホールで確認されたことのひとつです。

中小企業経営者を集めて開催されたこの集会では、小規模ビジネスに影響を与えるトレンドや、大企業のような巨額の予算がなくても、顧客基盤育成ができる方法などについて、話し合われました。 以下に、そこで出された秘訣を上げていきましょう。

 1. 人間的なふれあいを強める

 マサチューセッツ州アガワムでペット用品の企業を経営するデイブ・ラトナーは、顧客の本当に必要としているものに重点的に取り組もうと努力しています。

レジ係には決して「メールをお送りできるように、アドレスをご記入ください」とは言わないように、と教えています。顧客が、やたらと売り込みメールやスパムが来るのではないか、と思うことが少なくないからです。

それよりも顧客に連絡先が必要な理由を説明した方が良い、とラトナーは言います。ほとんどの場合、ドッグフードが少なくなっている時期を知らせたり、人気のあるネコ用トイレがセールになっていることを伝えるためだ、と。店のためではなく、顧客にとって価値のある情報を得るチャンスなのだと伝えてください

ケンタッキー州の冷暖房業者ローガンサービスInc.のマーケティング部長であるアマンダ・キンセラは、会社のフェイスブックに、従業員のプロフィールをどのように載せるかについて、議論しました。
 「お客様には、わが社が人間によって運営されていることを、知ってもらいたいのです」

 彼女も社のスタッフも、顧客に対してオンラインで自分自身の話をしてくれるよう働きかけています。そうすることによって、ビジネスと顧客の建設的な関係が、深められていくのです。会社のSNSには、顧客が直接、話や写真を投稿できるページも用意されています。

 2. テクノロジーに投資する

 技術の進歩によって、小企業でも大量の演算処理や、節約型のオプションが可能になりました。たとえばRSRリサーチの業界アナリスト、ニッキ・ベアードは、IBMのワトソン認識コンピューティングテクノロジー、パーソナリティ・インサイツという機能に注目しています。

これはデータを収集して、人のパーソナリティを洞察(インサイト)するというもので、ベアードは、小企業にとっては年間で、およそ1,000ドルの費用がかかると見積ります。

クラウド・ストレージへデータを移行することによって、小企業がハードウェアの購入に経費をかける必要はなくなっている、とベアードは言います。現在のアプリケーションの中には、会費を提供するだけで、ライセンスを購入する必要のないものもあります。

どの企業にも当てはまる、万能の選択肢はないし、すべてのサービスが、成長を前提に設計されているわけでもない、とベアードは警告しています。

それでも、選択肢を研究するために、ある程度の努力を割くことで、それに見合う価値をえられる可能性は十分あるでしょう。
テクノロジー関連のスタートアップと提携することによって、資金を使わないで分析を利用することも可能です、と指摘するのは、プランニング・ショップの創設者であり、社長でもあるロンダ・エイブラムスです。

ロンダは、店内に設置されたビデオの追跡をテストするために、誕生して間もない会社と提携した、ある小売店の話を教えてくれました。ビデオを分析したその会社は、現実の社会でテストでき、しかも将来の売り込みに役立つ結果を得ることもできました。また、小売店側は、店内での消費者の行動について、多くを学んだのです。

「学ぶことや経験することに対して開放的な、人気店になろうと努力を続ける小さな小売店を探していく必要があります」と彼女は言っています。

 3. あなたのニッチを見つける

 エイブラムスは、ある会計士の話を教えてくれました。その会計士は、眼科医の事務専門というビジネスを切り開き、全米規模で成功したのです。

眼科の会計に、特殊な専門性が必要とされたわけではなかったのですが、ひとたび「眼科専門事務」の会社として、1人のクライアントを獲得すると、あとは自動的に成長していきました。市場の小さい領域だけに焦点を当てることによって、他には真似のできない、特定のニッチに適合するサービスを提供できる機会が与えられます。

また、標的市場をしっかりと定めてマーケティングを行うことによって、クライアントのニーズを、真に深く、詳しく理解することができる、とエイブラムスは言います。

4. 大勢の中から際立つ

 創造力があれば、たいていの困難は克服することができるし、小規模のビジネスは、異なるアプローチを試みる際には、大企業よりも柔軟に対処することができます。

ある店にあったネコの登り木が2本、ペットショップの社長であるラトナーの目を引きました。これまで見たこともないほど、巨大な木です。あまりに大きかったので、ラトナーはその価格を尋ねました。

ところが店員は誰も売物だと思っておらず、また、これまで問い合わせもなかったのです。おかげでいろんな人に聞いて回らなければなりませんでした。その登り木は大変値の張るものでした。けれどもラトナーには、予感があったのです。この立派なネコの遊び場は、ネコ好きを彼の店に引き付けるのではないか、と。そうして、実際にその通りになったのです。

シーンを作り出すことです、というのは、タイタン・インダストリーズ社CEOのアンドレア・バーンホルツです。
靴磨きセットを提供するのに、店のショーウィンドウに、椅子と靴磨きをディスプレーしました。その情景は、そこを通りかかる人の視線を引いた、と言います。

 5. 基本を忘れない

 ビジネスプランの専門家であるエイブラムスは、彼女がプランを立てたところを、チームと一緒に定期的に再訪することにしている、と言います。

かつて基本を忠実に守ってきたおかげで、彼女はビジネスを安全に保つことができたことがあります。
ある年、チームはある全国チェーン店から、非常に多くの注文を受けたことがありました。そうして基盤を拡大することに全力を尽くしたのです。ところがそのチェーン店は廃業し、チームは危機的状況に陥りました。けれども定期的な見直しを欠かさなかったために穴を発見することができ、それを修復したのです。おかげで彼女のビジネスは無事、切り抜けることができました。

 「大がかりなものは必要ありません。あなたの店を、買い物客が時間を過ごしたくなるような、居心地の良い場所にしてください」
 と語るのは、タイタン社のバーンホルツです。

服を販売しているのなら、試着室には着映えがするような、明るい照明を設置します。店の周囲に、買い物客と一緒にやってきた連れや友人のために、椅子を用意したり、子供たちが夢中で遊んでいられるように、おもちゃを用意したり。子供たちが店にとどまってくれなければ、買い物客もショッピングはできません。

 テクノロジーが進歩し、大きなものや華々しいもの、高価なものが店舗にあふれたとしても、小さなビジネスの持つ価値は、時代を超えるのです。


元記事:https://goo.gl/1Dx8pQ

翻訳:服部聡子
出産・退職後、在宅で働ける資格を身につけるために翻訳を学び始める。
約5年フィクション/ノンフィクションの下訳、ウェブ・ライターを経て、
『限界はあなたの頭の中にしかない』に巡り合い、深い共感を覚え、弊社に。

保護中: 観光立国日本で勝利を掴むために、B-to-C企業が無料で始められる施策とは

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集客を考えるときはマーケティングと「善悪」を切り離そう

こんにちは、トイアンナです。
マーケターとして仕事をしていると、たまに「天才だ」と思わされるマーケターに出会います。たとえばドナルド・トランプは天才の一人です。正確に言えば、ドナルド・トランプのバックにいて、彼の原稿や発言を管理している有能な秘書たちでしょうか。

トランプ大統領は就任直後、いきなりイスラム教徒が多い国籍保持者を入国拒否しました。数百万人単位のデモを起こし、世界中で混乱と批判を浴びているトランプの何が天才なのか?と思われることもあるでしょう。

しかしアメリカ国民に対して行われた調査では、トランプの入国拒否手続きを支持すると答えた層が反対を上回っています。

彼にとって一番重要なのは自国の支持率を維持することですから、いくら裁判所がNOを付きつけようが、目的を達成するために正しい戦略を取ったと言えるでしょう。

彼のしたことは現場の担当者へ大混乱を招きましたし、何よりビザを持つ人間すら拒否したため裁判所から合衆国憲法違反と判断されました。さらに何も悪いことをしていないのに空港で追い返された多くの人を傷つけたという意味で「正しい」「正しくない」の天秤にかけるなら「正しくない」と感じる方も多いはずです。私もリベラル寄りなので政治的信条からすると彼の行為は絶対に許せないことです。

その一方、マーケティングという目線で語るなら彼の戦略はあまりに的確で、舌を巻きます。

マーケティングでは「正しさ」を問わない

マーケティングは「正しさ」「正しくなさ」に関係なく目標を達成するための道具です。
ところが自社のマーケティングや集客を考える上で、まずは頭を柔らかくしてどんなアイデアでも自由に出してみましょう――と言われても

「これはウチのポリシーに反するから」
「いくら売上のためだからってこれはできないよ」

と、「正しい」「正しくない」でアイデアの幅を狭めてしまう方が少なくありません。特に同じ業界で長くお勤めなら慣習やしがらみもあり、なかなかこれまでのやり方を無視できないはずです。

けれど、思いもよらないマーケティング戦略は正しさやしがらみ、常識から外れたところに生まれます。たとえば機能が劣ってもいいからカッコいい動作を追求しようと、携帯電話業界の常識を無視して登場したのがiPhoneです。iPhoneにはデコレーションメール機能や着メロの音質といった「当時ガラケーの会社が当然備えるべきと考えた機能」は何一つありませんでした。

iPhoneが海外製品だったから勝てたというわけではありません。日本の例ですと、雑誌なのに「読まれなくていい。付録目当てで買ってもらう」という新しいコンセプトで爆発的に売上を伸ばした女性誌『InRed』があります。男性に身近なケースでは、ビールなのにアルコール分ゼロを売りにしようという新しい発想で生まれたのが『キリンフリー』は記憶にあるかと思います。

「正しい」「正しくない」やこれまでのしがらみを一度すべて忘れ、新しいアイデアを出すことで大ヒット商品は生まれてきました。

このように型にハマらないヒットの卵を産むためにはスティーブ・ジョブズ並の天才社員、もしくは何でも提案できる社風づくりが欠かせません。「とんでもないこと言い出しやがって」と部下を叱る前に「待てよ、もしかすると面白いかもしれない」と一度採用してみる。こんな心意気が、ヒット商品へ繋がります。

「どうすればできるか」を考える

さて、企業によっては「スティーブ・ジョブズ型の天才ばかりを雇用する」ところもあるかもしれませんが、アイデアを出しやすい仕組みづくりを行う企業の方が日本では多く見られます。そのため多くの企業がボーナス付きのアイデア公募制度を用意しています。公募制度を実施する際はボーナスだけでなく、社内で不利益を被る人が出るアイデアでも投稿者が報復人事にあったり、嫌がらせをされたりしない仕組みが必要です。

アイデアを全社員が出しやすい土壌を作ったところで、次に常識破りの面白いアイデアが出てきたとしましょう。しかしそのまま世に出してはトランプ並みの波紋が業界へ起きます。また、奇抜なだけのアイデアは話題こそ呼ぶものの実際の集客へ繋げるのは難しいものです。

そこで、まとまった時間を取ってからアイデアを並べ、「どうしたらアイデアを活用して集客を実現できるか」「どうしたらしがらみや慣習を突破できるか」を考えてみるのが、マーケティングのやり方です。

面白いアイデアの中から、目標(売上・利益)を達成できそうなものを選び、さらに業界からも「最初はびっくりしたけど、ありゃ面白いね」と言われるサービスや製品をこの世へ出せるかには、会社としてどこまでリスクを取れるか覚悟が求められます。

冒頭のトランプであれば「たとえ大反発を招いても、支持率を稼げるなら目標達成だ」と判断し、リスクを取ったと思われます。トランプほどの反発を招く行為は私が御社のマーケターならオススメしませんが、それくらいの胆力があればどんな「正しさ」も超えて優れたマーケティングアイデアを出せるはずです。まずはアイデアを出せる制度作り、御社で考えてみませんか?

トイアンナ「マーケティング深化論」目次


トイアンナ:

大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。

ブログ:http://toianna.hatenablog.com

新著に『恋愛障害 どうして「普通」に愛されないのか?』(光文社新書)

マーケティングの集客を成功させる秘訣は「季節感」

こんにちは、トイアンナです。
大変遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。日本にお住まいの方であれば、新年には家族でおせちやお餅を召し上がったかと思います。つまりおせちを作るお弁当屋さんやお餅を生産する工場にとっては12月~1月が儲けどきと言えます。

もっと市場が潤うのはクリスマスです。ギフト商品からラッピング、飲食店からヘアサロンと、恩恵を受けた方も多かったのではないでしょうか。

このように「季節感」は売上アップを考える上で欠かせない要素です。季節のイベントへ便乗することでいつもより売上や集客を確保できますから、時期を絞って広告費を集中投下するマーケターも多くいます。

この記事では2016年、季節を利用して成功したマーケティングの事例を振り返りつつ自社にも応用できる成功の秘訣をお伝えします。

「季節感」の利用例1 夏も売場を独占する空気清浄機

まずは昨年「ドヤ家電」と流行した蚊取り機能付き空気清浄機を見てみましょう。

一般的な空気清浄機の売上が上がる季節は春と夏。どちらも花粉が飛ぶ時期です。春には飛ぶように売れる空気清浄器ですが、夏には家電売り場の奥へ引っ込むさだめ。代わりに家電屋のメイン売り場には除湿機能つきのエアコンや扇風機が並びます。

その運命をひっくり返したのが、蚊取り機能つきの空気清浄機でした。虫を引きよせるUVライトで引き寄せ、空気清浄機の力で吸い込むという極めてシンプルな機能を付けました。春の花粉から夏の蚊取りまで、季節感を応用して2シーズンの売り場を確保したのです。

さらに「有害物質を使わず蚊を除去したい」ニーズに応えた製品は大ヒット。長年売上低迷に苦しんできた発売元のシャープにとって、久々のポジティブなニュースとなりました。売り場を確保する営業力と、季節感を活用したマーケティングの融合による成功例と言えるでしょう。

「季節感」の利用例2 クリスマスに売上を伸ばしたパン屋

次に海外の事例より、クリスマスを活用したマーケティング集客テクニックをご紹介します。

クリスマスは日本人がケンタッキーでお買い物して、ケーキを買うのが一般的です。同様にイギリスには七面鳥やクリスマスプディング、パイなどの定番メニューがあります。これらの店舗が爆発的に売れる一方で、普段より売れなくなってしまう飲食店もあります。たとえば普通のパン屋さんは、12月にプディング需要のせいで売上を落とすのが通例でした。

ところが同じ季節感を活用し、この運命をひっくり返したパン屋があります。グレッグズというパンのチェーン店は、普段なら閑散期になる冬を狙って「チキンの香り」「パイの香り」を付けたリップを無料配布しました。
http://metro.co.uk/2016/12/15/greggs-is-now-doing-lip-balms-that-taste-like-mince-pies-and-festive-bakes-6324801/
「クリスマスにパンを買う気は起きないけれど、クリスマス関連グッズなら興味が湧く」というインサイトを利用したのです。この無料配布で「クリスマスの香り」が欲しいとパン屋へ人が戻っただけでなく10誌以上にキャンペーンが掲載され、高いPR効果も手に入れました。

通常、サンプリングは自社製品を配るだけのことが多いのですが、季節感を取り入れるためあえて「クリスマスの香り」を集客に利用した好例です。

「季節感」を上手に使う方法

このように季節感を上手に使えば、普段は閑散期として諦めていた売上を爆増させることも夢ではありません。ただし1点だけ注意事項があります。闇雲に「季節限定」といっても売れるわけではないのです。極端な例ですが「春限定!五寸釘セット」があっても売れないのは容易に想像できるでしょう。

これらは、ベンチャーから中堅企業でも少ない予算で始められる「季節感」の条件です。

(1)  すでに盛り上がっているイベントへ便乗する
バレンタイン、ハロウィン、クリスマスなど、国民全体の財布のひもが緩むイベントへ便乗しましょう。ゼロからイベントを作って認知させるには大型投資を必要とするからです。

(2)  自社を使ってイベントを「盛り上げる」
事例でご紹介したパン屋が「クリスマスの香りのリップ」を配ることはパンと何の関係もありません。しかしクリスマスの盛り上げに貢献したことで売上に繋がりました。

新しい季節感のあるマーケティング企画を立てるなら自社製品を押し出すことより「どうすればイベントをもっと盛り上げられるか」を考えます。お客様は「イベントでもっと盛り上がるもの」を広く探していますから、自然と普段は来ない層も来客を見込めます。

(3)  他社にない試みで季節を盛り上げる
たとえば今からカフェが「桜のラテ」を考えても、スターバックスのコピーになってしまい爆発的な売上は考えられません。同業では始まっていない試みにチャレンジしてみましょう。同じカフェ×春の季節なら「お花見用ランチボックス」などいかがでしょうか?

世界中で集客に利用されている「季節感」を利用したマーケティングで、きっと御社もヒット商品を生み出せます。季節を盛り上げて、ますますのご繁栄をお祈りしております。

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toiannaトイアンナ

大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
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現在はコーチングやコラム執筆を行う。

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マーケティングはピンチを操る 英国のEU離脱を活かした集客ビジネス

こんにちは、トイアンナです。
私は今年よりイギリスに住んでいますが、ブレグジット(英国のEU離脱)が決まったときは国全体が「しばらく終わりだ」という沈痛なムードに包まれていたのを思い起こします。イギリスはブレグジットが決まってから一夜にしてポンドが暴落。実に2/3の価格となりました。つまり、国の価値の1/3が吹っ飛んだのです。

もともとブレグジットが起きた背景は「テロや犯罪を起こしそうな移民はいらない」という排外感情。EUから移住している外国人も事によっては帰国せざるを得なくなります。さらにヨーロッパ金融の中心地という立場も失うため、経済は冷え込むと予想されていました。これがポンド暴落として現れたのです。

ところが、そんな危機を乗り越えるどころか、むしろ追い風にしたビジネスがイギリス国内にありました。外食産業です。今回はその外食産業がいかにマーケティングを駆使して集客を成功させたかをご紹介します。

イギリスは「おいしい」!?

さて、「イギリスといえば」と質問されれば紅茶、クラフトビール、そしてまずいご飯……と連想ゲームで出てきてしまうほど、ご飯のマズさは有名です。私も渡航して現地のミシュランガイドを買い、まさかの見開き2ページでロンドンの星付き店が尽きたときは絶望したものでした。

ところが実際に食べ歩いてみると、「グルメの首都」と称賛される日本ほどではありませんが、以前に比べて「おいしい」店は確かに増えている印象です。おそらくはこれ、EUの賜物。イタリアやスペインなど食事が美味しいEU圏国家からの移民に、香港統治時代から移ってきた中国人などが腕を振るっています。さらに食べる側にも移民がいることから味への要求水準が上がり、かなり改善されています。

そしてブレグジットが決まったとはいえ、すぐさま「はい、もう出て行ってくださいね」と法律が一朝一夕で変わるわけでもありません。現在もEU市民はロンドンを中心にその手腕を発揮しています。むしろブレグジットで変わったのは、イギリス人の振る舞いでした。

ブレグジットに便乗した外食産業

ブレグジットから発生したポンド安を理由に、イギリス人は海外旅行へ行かなくなりました。弱くなってしまったポンドでは豪遊できないからです。ブレグジット前はわずか数千円払えばヨーロッパへの航空券を買えた彼らも、今年は控えめに

その分の娯楽費が、国内へ回ります。今年のイギリス人は休みの日や特別なお祝いを国内のパーティや外食で済ませることにしました。その結果、にわかに国内の外食産業が昨年比12%もの盛り上がりを見せています

さて、このチャンスをつかんだのがデリバリー業界でした。イギリス人はもともと料理をあまりしません。専業主婦でもピザを温めるくらい。であれば、レストランは看板に「配達も承ります」と付け加えた方が得策です。マーケティングに長けた企業はいち早く自転車でのデリバリーを開始しました。食事は温かいうちに届けなくてはいけないため、バイクや自家用車で遠征するより近隣に素早く届ける方が喜ばれます。集客に長けたレストランは「店内の回転数以外」で売上をたたき出したのです。

Uberによる代理デリバリーも

そして、さらにマーケティングの才覚ある企業が存在しました。ウーバー・テクノロジーズが運営するタクシーのブランド、Uber(ウーバー)です。Uberはデリバリーをする余裕がない飲食店のために自社スタッフによる代理デリバリーサービスを開始。日々の食卓から豪華なホームパーティまで、デリバリー文化を一気に広めました。このサービスは日本へも上陸。東京の一部地域で利用できます。

Uberのサービスは簡単に言ってしまえば、お店の料理を家まで自転車で運ぶだけ。そんな単純なニーズがこれまで世界中で満たされていなかったのです。このようにマーケティングでは「誰もが欲しかったのに気づいていなかったニーズ」を満たすと、一気に集客を獲得できます。

優れたマーケティングはピンチからチャンスを見つける

このように、一見誰もが「もうだめだ」と落ち込むような経済や政治状況であっても、巡り巡って集客、販促のチャンスをつかむことはできます。そのために必要なのは、チャンスを見つけたときにすぐ動くこと。さらに言えば、いざとなったらすぐ動けるような稟議・承認システムを用意することです。

マーケティングではよく「シンプルなものが強い」と言われます。売上に繋がるコンセプトやキャッチコピーもそうですが、社内のしくみもシンプルであれとよく言われます。これからを生き抜くため、変化へ迅速に対応すること、「誰もが欲しがっているのに気づかれていないニーズ」を発掘するのと同時に、チャンスを見つけたらすぐ投資できるよう無駄な承認システムを削ることが成功への近道です。

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トイアンナ
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優秀な経営者だけが知っている「売れない」につける処方箋

こんにちは、トイアンナです。
マーケティング講座をちらりと除くと、そこには必ず
「競合に勝つには」「差別化戦略」
といったギラギラ光る攻撃的な言葉が溢れています。
しかし実際のビジネスで伺うことが多いのは

「そもそも、ウチの商品を売れてないんだけど」
「絶対にいける!と思ったサービスが鳴かず飛ばずの閑古鳥」

といった涙ぐましい現状です。

商品やサービスが売れないと将来の投資もできませんから差別化も難しくなり、人権費にも余裕を持てず職場はピリピリ。
ますます売れ行きが落ちてしまう負のサイクル。
そこから抜け出すにはどうすればいいかをご案内します。

優秀な経営者は立ち返る勇気を持つ

今まで私が様々な商品をマーケティングしてきたうえで信じているのは、優秀な経営者ほど
「そもそも、これ根本的に間違ってないか?」
と立ち返る勇気を持っていることです。

すでに何か月も準備してきた、従業員も休みなく働いてきた……
そういった中で「やっぱりこれ、いらないんじゃない?」と思い直せば批判も浴びますし、自分も傷つきます。

しかし長期的な社員や会社の成長のために今のズレを直せる人こそ、将来ビジネスを何倍にも大きくできるのです。
ですから「売れてない!」と目の前の売上に慌ててる時期こそ実は根本的な部分へ立ち返る大きなチャンス

ここまで読んでくださったということは、あなたもまた勇気あるリーダーでしょう。
ここからはマーケティングの基礎に立ち返って、商品が売れていない理由を紐解いてみます。

同僚が相談してきたら、どうアドバイスしますか?

想像してください。
あなたへ38歳の男性の同僚が相談に来ました。
同僚は仕事もいいけど、そろそろ惚れた腫れたじゃなくって「いい恋愛」したいなあと思っているみたい。
さて、彼が今から運命の恋に落ちるには、どうすればいいでしょうか?

あなたはきっと、これから書く3つのどれかをアドバイスするはずです。

1.出会う女性の数を増やしたらどう?

2.今の女性とはうまくいってないの?そこを繋げたら?

3.出会いは多いみたいだし、気になる相手と会う回数を増やしたら?

まず「出会う女性の数」がそもそも全く無い人は、今から恋愛対象と知り合わなくては話になりません。
ただし、やみくもに出会う女性の数だけを増やしても「いい恋愛」からは遠ざかってしまいます。

今の彼女とマンネリ気味なら「あの子もいい子だと思うよ」と、再度恋の炎を燃やす演出を考えたほうがいいかもしれません。
特定の彼女はいないけど遊び人で深い関係に発展できないタイプなら、週7回合コンするのではなく、
もう気になっている相手とデートする数を増やしたほうがいいでしょう。

こんな風に、いい恋愛をするためには

「出会う数を増やす」

「今の相手を大事にする」

そして「恋人候補と長く時間を過ごす」という3つの対策がありえます。

あなたは同僚の話を根掘り葉掘り聞きながら、どのアドバイスがふさわしいかを自然と選んでいるのです。

さて、恋愛でしているアドバイスは、ビジネスでも応用できます。
恋人を顧客として考えると、「売れない商品を売れるように変える」処方箋になるのです。

あなたの商品が売れない理由は、3つしかない

さて、これをビジネスで考えてみましょう。
どんな業種であれビジネスを大きくする方法は、たった3つしかないとジェイ・エイブラハムは言っています。

お客様の数を増やす

お客様が1回あたりに使う金額を増やす

お客様がいらっしゃる頻度を増やす

いずれも、さきほどの恋愛相談で

デートする回数を増やす

今の相手を大事にして仲良くなる

デートの頻度を増やす

という候補から、あなたが選んでいるアドバイスと似ていますよね。

売れないときは「高単価の商品が売れない」「お昼の時間帯がスカスカ」といった
細かい分析を始めてしまいがちですが、ここで原則に立ち返る勇気を出しましょう。

あなたの商品やサービスが売れていないとしたら、
それはお客様の数・使う金額・いらっしゃる頻度のどれが一番足りていないのでしょうか。

原則に立ち返ってV字回復したクッキー屋さん

ここで実際に「立ち返る勇気」を発揮して売上をV字回復させた例を紹介します。
とあるアイシングクッキーを売るカフェがあります。
お砂糖でデコレーションしたかわいらしいクッキーですが、
30代以上や男性には「甘ったるそう」というイメージで敬遠されがちです。

このお店はしかも初手を誤り40代以上が多く住むエリアへ出店。
最初は完全に閑古鳥が鳴いていました。
しかし実は甘さ控えめで味が美味しく、1度通えば何度でも通いたくなるのが強み。
マーケティングの原則に立ち返って売れない理由を分析した結果、「お客様の数さえ増えれば、魅力が伝わって絶対に売れる」
と確信を得ました。

そこで店舗では隣接していたケーキ屋へコラボレーション企画を持ち込みます。
ケーキの上に、アイシングクッキーを乗せて販売したのです。
アイシングクッキーは手作業でメッセージを書いたりかわいく飾り付けできたりするのが魅力。

受け取ったケーキについてきたクッキーを「なんだこれ?」と試しにかじってみたお客様から
「このクッキー、可愛くて美味しい!」と瞬く間に評判が広がりました。

売れないときこそ割引や目の前の資金繰りに追われがちですが、
そんな時こそ一息ついて

「自分の商品の良さを伝えるためには何ができるだろう? そして今伝わっていないのはなぜだろう?」

と立ち返る勇気を出してください。
資金繰りはスタッフでもできますが、経営判断は責任者であるあなたにしかできない偉大な仕事なのですから。

 

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トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
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貧乏人の名刺、稼ぐ人の名刺

言わずもがな。

名刺に力を入れている方の多いこと。
近頃は「集客できる名刺」セミナーまであるという。
が、ちょうど、うちの娘が鋭い指摘をしていたので、名刺について、ちょっと書いてみました。
厳しいようですけども、本当にそんな風に、周囲に見られています。

  1. 貧乏人の名刺

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・わざわざスタジオで撮影したポージング写真
・聞いたことのない「斬新な」肩書きや職業
・いろいろアピールポイントがいっぱい

どう考えても、仕事に困らない人は、こんな名刺は作らないのです。
チラシじゃないの?という名刺。
キャッチコピーまで。
あれもこれも、引き受けます!とアピールしまくってます。

ポジショニングと、「言うたもん勝ち」は違います。
本来なら外から評価されるはずの立ち位置を、自ら考案!
まともなビジネスパーソンにどう映るかの他者目線が必要です。

常識的な人は、相手の名刺フォルダに、
こんな自分の「恥」が収まるのを許しません。
取材など受ける立場になってもいないのに、ポーズ付けて写真を撮られる、その自分を恥じたいところ。
「ぼくは仕事に困ってます」とアピール度抜群になってしまいます。

 


2. 稼いでいる人の名刺

シンプル、趣味のよい間がある。奇をてらわない。必要最低限の事項が書いてある。

そんなに頻繁に連絡されたら困るんです。忙しいんですから。だから、携帯電話とか載せないのは常識。
秘書が対応するオフィシャルの連絡先のみ。

なるべく顔写真なんて、外出ししたくないんです。
でも、ビジネスで必要な場合は最低限、撮影に応じている。
そういう感じです。

 

3. 本物の成功者の名刺

名刺なんて持ってない!名刺交換なんて、する必要がありません。


つまり、言いたいことは、名刺とか、プロフィールとか、肩書きとか、ホームページとか、ブログとか、
なんじゃかんじゃと工夫をしてみても、所詮は、「やってること」だけで人間は評価される、ということ。

結果を出すこと。それが全て、です。

もっといえば、なぜに「結果」を持ってない修行中の段階で、独立してしまうのだろうか?と云う事です。

 

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島藤真澄 (ShimaFuji IEM代表)

フォーブス誌選出全米5大ビジネスコーチ,ジェイ・エイブラハムの東アジアディレクター(交渉代理人)。様々な案件のプロデュースや海外とのビジネスマネジメントを行う。

ジェイの『限界はあなたの頭の中にしかない』PHP研究所を企画・翻訳。