マーケティングはピンチを操る 英国のEU離脱を活かした集客ビジネス

こんにちは、トイアンナです。
私は今年よりイギリスに住んでいますが、ブレグジット(英国のEU離脱)が決まったときは国全体が「しばらく終わりだ」という沈痛なムードに包まれていたのを思い起こします。イギリスはブレグジットが決まってから一夜にしてポンドが暴落。実に2/3の価格となりました。つまり、国の価値の1/3が吹っ飛んだのです。

もともとブレグジットが起きた背景は「テロや犯罪を起こしそうな移民はいらない」という排外感情。EUから移住している外国人も事によっては帰国せざるを得なくなります。さらにヨーロッパ金融の中心地という立場も失うため、経済は冷え込むと予想されていました。これがポンド暴落として現れたのです。

ところが、そんな危機を乗り越えるどころか、むしろ追い風にしたビジネスがイギリス国内にありました。外食産業です。今回はその外食産業がいかにマーケティングを駆使して集客を成功させたかをご紹介します。

イギリスは「おいしい」!?

さて、「イギリスといえば」と質問されれば紅茶、クラフトビール、そしてまずいご飯……と連想ゲームで出てきてしまうほど、ご飯のマズさは有名です。私も渡航して現地のミシュランガイドを買い、まさかの見開き2ページでロンドンの星付き店が尽きたときは絶望したものでした。

ところが実際に食べ歩いてみると、「グルメの首都」と称賛される日本ほどではありませんが、以前に比べて「おいしい」店は確かに増えている印象です。おそらくはこれ、EUの賜物。イタリアやスペインなど食事が美味しいEU圏国家からの移民に、香港統治時代から移ってきた中国人などが腕を振るっています。さらに食べる側にも移民がいることから味への要求水準が上がり、かなり改善されています。

そしてブレグジットが決まったとはいえ、すぐさま「はい、もう出て行ってくださいね」と法律が一朝一夕で変わるわけでもありません。現在もEU市民はロンドンを中心にその手腕を発揮しています。むしろブレグジットで変わったのは、イギリス人の振る舞いでした。

ブレグジットに便乗した外食産業

ブレグジットから発生したポンド安を理由に、イギリス人は海外旅行へ行かなくなりました。弱くなってしまったポンドでは豪遊できないからです。ブレグジット前はわずか数千円払えばヨーロッパへの航空券を買えた彼らも、今年は控えめに

その分の娯楽費が、国内へ回ります。今年のイギリス人は休みの日や特別なお祝いを国内のパーティや外食で済ませることにしました。その結果、にわかに国内の外食産業が昨年比12%もの盛り上がりを見せています

さて、このチャンスをつかんだのがデリバリー業界でした。イギリス人はもともと料理をあまりしません。専業主婦でもピザを温めるくらい。であれば、レストランは看板に「配達も承ります」と付け加えた方が得策です。マーケティングに長けた企業はいち早く自転車でのデリバリーを開始しました。食事は温かいうちに届けなくてはいけないため、バイクや自家用車で遠征するより近隣に素早く届ける方が喜ばれます。集客に長けたレストランは「店内の回転数以外」で売上をたたき出したのです。

Uberによる代理デリバリーも

そして、さらにマーケティングの才覚ある企業が存在しました。ウーバー・テクノロジーズが運営するタクシーのブランド、Uber(ウーバー)です。Uberはデリバリーをする余裕がない飲食店のために自社スタッフによる代理デリバリーサービスを開始。日々の食卓から豪華なホームパーティまで、デリバリー文化を一気に広めました。このサービスは日本へも上陸。東京の一部地域で利用できます。

Uberのサービスは簡単に言ってしまえば、お店の料理を家まで自転車で運ぶだけ。そんな単純なニーズがこれまで世界中で満たされていなかったのです。このようにマーケティングでは「誰もが欲しかったのに気づいていなかったニーズ」を満たすと、一気に集客を獲得できます。

優れたマーケティングはピンチからチャンスを見つける

このように、一見誰もが「もうだめだ」と落ち込むような経済や政治状況であっても、巡り巡って集客、販促のチャンスをつかむことはできます。そのために必要なのは、チャンスを見つけたときにすぐ動くこと。さらに言えば、いざとなったらすぐ動けるような稟議・承認システムを用意することです。

マーケティングではよく「シンプルなものが強い」と言われます。売上に繋がるコンセプトやキャッチコピーもそうですが、社内のしくみもシンプルであれとよく言われます。これからを生き抜くため、変化へ迅速に対応すること、「誰もが欲しがっているのに気づかれていないニーズ」を発掘するのと同時に、チャンスを見つけたらすぐ投資できるよう無駄な承認システムを削ることが成功への近道です。

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トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

会社が盲目になって道を踏み外すさないために

ここのところずっと、このことを考えてきました。
つまり、企業は一体どこで道を踏み外してしまうのだろうか、という問題です。WELQやまとめサイトのコピー記事で、企業倫理が話題になっています。チームが増え、事業部が増えていけば、経営者が目を通せる内容は限られてきます。末端まで企業倫理を浸透させ続けることができるかどうか、他人事ではなく、私自身も含めすべての経営者にとって非常に怖い問題ではないかと思うのです。

企業にとって、利益を上げることは「善」です。使命です。ROIを上げることは経営の至上命令です。出資した株主に対してリターンを戻せないことには、人間失格の刻印を押されます。自社を高額で売却することは、経営者としての手腕であり、最も評価される部分です。

と、ここまで書いてくれば、おわかりでしょう。
若い人生経験も少ない経営陣にとって、社会から求められる「善」をまっしぐらに追求した結果が、 WELQの村田マリさんであり、高額アフィリエイターであり、情報商材やマルチ商法であるわけです。彼らをもてはやしながら何かあればさっさと突き落とす。この構図はいつもよく見るパターンです。国の予算をバッサリ丸ごと持って行く広告代理店さん、そして大勢に影響のない個人を攻撃する大手メディアのお得意の構図です。

個々の方々は、才覚があり、優秀な方々だと思います。
だた、長く成功し続ける企業人と、一つだけ差があるとすれば、それは「経営者の品格」ではないでしょうか。そして、その「経営者の品格」とは何かを、深く深く追求した結果、ジェイエイブラハムは「卓越論」を著しました。多くの経営者と接してきて、一時はうまくいってもやがてどこかでつまづく。一方でそれほど急激に頭角を現さず目立たないが、やがて大きな成果を上げていく経営者がいる。その差は何かを知りたくて、非常に長い時間をかけて優秀な経営者にヒヤリングした結果、あのレポートが出来上がりました。

社員はいち早い利益化を急ぐものです。実績を上げ、成果を手にし、少しでも豊かな暮らしへと邁進する。それが本当に素晴らしいスタッフです。でも、それだけではないことを、経営者は言語ではなく「振る舞い」において示し続ける必要があるのです。結局のところどこから登っても、経営の道は「卓越論」に行き着くのです。それを深く掘り下げ、社員に徹底していく。苦しくてもぶれない姿勢が経営者には必要です。

ですので、経営のバイブルとして今でも世界各国で読み継がれるのでしょう。ぜひ手にとってお読みになっていただきたいのです。一流の経営者の方々が、膝を打ち、チーム教育に取り入れたいと思われるはずです。もし何もひっかかるところがなければ、それは逆に自らの経営理念を疑う必要があると思います。人は成長すればするほど、物事を深く読み取れるようになるものです。

さて、原題:Strategy of Preeminenceですが、過去には「卓越の戦略」と訳されていましたが、タイトルがジェイエイブラハム本人の意図するところから外れるのではないかということで、「卓越論」としました。Strategyは確かに「戦略」ですが、この頃は、ドラッカーが戦争用語の「戦略」を経済用語に取り入れたばかりで、まだ一般に浸透しておらず、現在のような使い古されたコンサル用語ではありませんでした。またジェイエイブラハムはその意図を、「理念」というような意味で逆説的に使っています。その深い意味を鑑み、あえて薄い意味に捉えられがちな「戦略」を外し、「論」としました。その経緯もきちんと新訳には解説してあります。

翻訳チームが頭を抱えながら精進した、ジェイエイブラハム翻訳の経験を全てつぎ込んで新たに訳し直し、「経営塾2016テキスト」に収録しました。その和訳の意図や悩んだ箇所も、注釈をそのまま入れました。聖書のように長く読み解いていただければ本望です。メンタークラブでは地域の勉強会でも取り上げます。

 

 

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島藤真澄 (ShimaFuji IEM代表)

フォーブス誌選出全米5大ビジネスコーチ,ジェイ・エイブラハムの
東アジアディレクター(交渉代理人)。
ジェイの『限界はあなたの頭の中にしかない』PHP研究所を企画・翻訳。

 

マーケティングでV字回復を狙うイギリス紅茶市場 集客を取り戻す差別化の鍵は?

こんにちは、トイアンナです。
「イギリスといえば?」と連想ゲームをするなら、すぐに思い浮かぶのが「紅茶」でしょう。特に女性にとって、優雅なアフタヌーンティーは憧れです。ところがその紅茶、イギリスで斜陽となっています。調査によればイギリスの紅茶市場は2013年から2015年までで14%縮小
その理由は「若者の紅茶離れ」です。
今回はイギリスの紅茶が一体どのような危機を迎えているか、そして紅茶の復活を願った各社が力を入れたマーケティング施策をご紹介します。

イギリスの若者には緑茶がトレンド

そもそも、イギリス人はどのくらい紅茶を飲むと思いますか?
およそ3割の50・60代のイギリス人は1日5杯、紅茶を飲みます。日本で同じ量の緑茶を飲む方はまずいないのではないでしょうか。
「イギリスと言えば紅茶」も納得です。

しかし20代後半から30代前半の若者ではこれが2割弱まで減少。紅茶よりコーヒーを好む若者が増えています。イギリスでは日本と同じようにスターバックスを初めとするコーヒー店が続々増えており、紅茶市場を揺るがしているのです。

さらに調べてみると、紅茶が不人気な理由のトップは「汚れが歯につくから」。
ここで「ん?」と引っかかった方は、マーケティングのセンスがある方です。若者がもし本当に歯の汚れを気にして紅茶離れを起こしたなら、コーヒーも飲めないはず。むしろ私達日本人からすると、コーヒーの方が歯も汚れるイメージも強くありませんか。

このように矛盾のあるデータが上がってきたときは、アンケートの数字に出てこない本当の理由が隠れていることが多いものです。マーケティングではこれを「インサイト」と呼びます。インサイトを知るためには、対面でのヒアリングが欠かせません。

実際にお話を20代イギリス人から伺うと「紅茶はダサい」「年寄りの飲み物だからオシャレなカフェで頼みたくない」という赤裸々なインサイトが明らかになりました。何だか、日本の「若者の日本茶離れ」「若者の和菓子離れ」に通じるものを感じます。どの国でも、伝統的な食べ物は若者から敬遠されるようです。

弱みより強みを活かした集客を

もちろん、若者の本音を見抜いたのは私だけではありません。紅茶メーカーから販売店、カフェまで紅茶は「イケてない」と思われていることに気づいていました。彼らもただ手をこまねいているわけにはいきません。そこで集客のため考案されたのが「オシャレなアフタヌーンティー」でした。

アフタヌーンティーはもともと1日2食だったイギリスで、午後の小腹が空く時間に軽食を食べるため考案されました。しかし現在、1人あたりの価格は5,000円以上。アフタヌーンティーは日常的に楽しむものというより「ハレの日」のイベントとなっています。

若者が欲しがらない紅茶も、ハレの日を演出すればお金を落としてもらえる。その証拠に高級ホテルのアフタヌーンティーでは予約率が上昇していました

ハレの日にふさわしい、若者が来たくなるアフタヌーンティーを提供できれば……。紅茶市場の復活を目指し、ホテルは差別化戦略を立てました。

若者に「ワクワク」の要素を

ここからは、実際にマーケティングの成功した事例ご紹介します。

高級ホテル「サンダーソン」では『不思議の国のアリス』に因んだ「帽子屋のお茶会」をテーマにアフタヌーンティーを提供しています
リンクをご覧いただければ一目瞭然のカラフルなお菓子。アリスをモチーフにした可愛らしいデザインは、世界中の乙女を虜にしました。従来の伝統的お菓子からは想像もできない外見が「ハレの日」を演出しています。

また、どの国でも海外へあこがれを抱くもの。日本人がイギリスに憧れるように、イギリスではフランスやアメリカ、日本のスタイルが「オシャレ」とされます。

アフタヌーンティーカフェ「sketch」では、パリの三ツ星レストランシェフ「ピエール・ガニェール」の力を借りて個性的な内装と料理を届けました。
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Photo By: トイアンナ

こちらは実際に訪問してきましたが、お昼過ぎには満席。観光客が多いエリアにも関わらず若いイギリス人客もちらほら見かけました。

さらに観光客へ舵を切りヒットしているのがB-Bakaryのアフタヌーンティー。なんと二階建てバスの中をまるごとアフタヌーンティーの場所にし、観光しながら紅茶を飲める仕様にしています

紅茶文化を復活させるため、各施設がマーケティングを駆使し差別化へ成功しています。

どんな時に使いたくなるか? が経営のヒント

「市場が斜陽産業で、これから顧客は減っていく一方」という現場でも、市場を伸ばす方法はあります。
今使っていただいている方法以外で、どんなシーンで利用してもらえそうか、どんな気分で愛されそうか。もし自社製品の市場が伸び悩んだときは、ユーザーが製品をどんな時に使いたくなるかを思いつくままリストアップして、市場全体を大きくする方向を模索してみましょう。

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トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
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「生む性」としての女性が、命を生み育み、社会復帰できる権利について

男性が発言しにくいであろう女性の問題を、同じ女性としてあえて言葉にしていく必要性を強く感じています。リブや女性解放の面々には総攻撃を受けるであろう内容ですが、「声の大きさ」が、より多くの声を代弁しているわけではありません。ずれた論争に対し毅然とペンで戦う姿勢は、子ども達に安全な国家を残すためにも大切ではないでしょうか。日本人が発言を控え、自分の意思を表に出さないことが良いとされてきた全体教育は、戦後の日本を弱体化させる近隣戦勝国の意図がなかったとは言えないからです。

女性が「生む性」なのは、単に「事実」

さて、女性が人生において子を「産む」か「産まないか」は、あくまでもその人の個人の判断です。それを他者がどうこうと言える話ではありません。ですので、私がこれから書いていく内容は、特定の女性個人を指すものでもなく、男女差をことさら強調するためでもありません。周囲の多くが経験している不妊治療の辛さも理解しているつもりですし、育児の孤独、そして育児後の社会復帰の難しさは、実際にコミュニティを運営してきた経験から、そして家族社会学を修め学会発表も行っていた経験から、かなり深く理解しているつもりです。

ところが、SNSなどで女性性のことに触れますと、「今さら、男だの女だの性差で語るのが古い」と自称リベラルの方々には指摘されます。そうでしょうか?古いも新しいもなく、子を産めるのは神代の時代(注!これは比喩ですジョークです、ここ論点じゃない)から女性だけです。進化が何万年経とうとも、未だに男性には子を生むことができません。きっとAIやIoTが発展しても何しても、これだけは決して変化しないでしょう。

そうなんです。「女性は生む性である」というのは、単なる「事実」です。事実は事実としてフラットに受け止める必要があります。外で働いて高い賃金を稼がなくとも、華やかな肩書きがなくとも、女性は女性であるだけで特別な存在であり、子どもを出産してもしなくても、本来、女性というだけで大事に扱われるべき存在であるはずです。そういう「性」なのです。

女性が「生む性」であることを前提に話をしましょう

生みたくても生めない。育てたくても育てられない

農耕民族の歴史だけでなく、猿山を見ても、狩猟民族の女たちの生活を見ても、そもそも育児というのは社会的な活動で、母親一個人に任せておける仕事ではありません。若い適齢期の母体は「産む」ことはできても、子を育むのは社会です。地域社会からも同世代のコミュニティからも断絶された狭いマンションの中で、ホルモンのバランスも崩れて精神的にも危機状態にある出産後の母親が、孤独に育児に耐えねばならない状況に押し込んでいるのは、社会の問題です。そもそも専業主婦という発想自体は世界的にもごく近年のもので、多かれ少なかれ地域のコミュニティによって、子は育まれてきました。子とは本来、社会的な存在なのです。

現在の日本では、子ども一人を育てるためにかかる費用は莫大で、上記のような耐え難きを耐え忍んで出産後を乗り切った母親は、もう二度と子どもを作って育てたいとは思わないでしょう。ましてや育児休業後はたちまちに職場復帰しない限りは、元の職場に戻れることは稀です。しかし、出産直後から無理を重ねるのは、物理的にも精神的にも母体にダメージを残します。

さらには、社会の宝である子どもを産み育てていたにもかかわらず、やがて社会から亡き者として扱われるなどということがあってはなりません。本来、子どもとゆっくり向き合い二度とない育児期間を過ごしたい母親には、長い育児期間を終えても社会に復帰できる選択肢も用意されてなければなりません。

また、一方、子どもを産み落とすだけでは単なる「母体」です。それだけで大きな顔で、公共の場で子どもを連れていれば何をやっても許されるかのような振る舞いは、母親自身も控えねばなりません。子を育てるのは母体ではなく社会なのです。「社会に育てていただく」という謙虚な姿勢もまた、女性には必要かもしれません。

新しい形の地域社会の構成

今後、単身老人家庭がますます増えて行き、その解決策として緩やかな地域コミュニティによる共同生活というものは、否応なしに増えて行くでしょう。テラスハウスの老々バージョンとでも言いましょうか。そのため、今日の頭の固い威張った老人たちは居場所をなくし、コミュニケーション能力の低い老人は「老害」として、例えば郊外の安い公団のようなところに押し込められていくしかなくなるでしょう。現代の姥捨山です。

一方、育児を終えた体力も気力も充実している女性たちは、自身の能力や才能を活かして、緩やかな新しい地域コミュニティを作り、地域での子育てに参画していくことでしょう。介護施設での学童保育も一般化していくでしょうし、空いた小学校の教室を保育所に利用すれば、待機児童の問題は速やかに解決します。児童が減って広すぎる体育館の半分は、お年寄りの体力維持の施設として第三セクターがプログラム提供することもできます。仕事帰りに保育所に子どもを迎えに来たお父さんが、パーソナルでちょっと汗を流す、ということも可能になります。

大学の保育科は座学を減らし、インターンとして学童保育での実務経験を単位換算してあげるのも良いでしょうし、企業の就職前の研修として時給ベースで必須にしても良いかもしれません。

いずれにせよ、その時に圧倒的なリーダーとして社会を牽引するのは、育児後の女性たちです。彼女たちの忍耐力、細やかな気の利かせ方、同時にいくつものプロジェクトをこなす力量、コミュニケーション能力など、あらゆることが日本の宝です。ただ、放置しているだけではただの石です。磨きあげて宝石にできるかどうか、これは私たち先陣の育児を経験した女性労働者がやるべきことではないでしょうか。

社会問題を口にするたび、「政治家になれば?」と揶揄されることがありますが、私は「お金の流れのないところに継続はない」と強く信じています。彼女たちはビジネスになる、お金になるからこそ、立ち上がり着いてきてくれるのです。人は霞を食って生きていくことはできません。お金の流れを変えることで社会は必ず変えられます。もちろんそれは良くも悪くもです。諦めず、希望を持って行えば、社会は必ず良い方向に変わっていきます。

私はそれを、一人の母親の責任として、命が尽きる日までやり続けていきたいのです。

 

(*引用される場合は必ず引用元を明記下さいませ。セミナーなどでの話でも同様です。勝手に使うのは違法です)

 

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島藤真澄 (ShimaFuji IEM代表)

フォーブス誌選出全米5大ビジネスコーチ,ジェイ・エイブラハムの東アジアディレクター(交渉代理人)。様々な案件のプロデュースや海外とのビジネスマネジメントを行う。

ジェイの『限界はあなたの頭の中にしかない』PHP研究所を企画・翻訳。

 

その他の島藤コラム:

https://shimafuji.jp/2016/08/03/小さな会社が勝つためのマーケティング主導型も/

日本で個人コンサルがエセ扱いされる理由

日清CM中止に思うこと?SNS時代の企業広告とマーケティング

 

成功する美容室の秘密は「ホワイトスペース」

ご自宅の最寄り駅に、美容室は何軒ありますか?
私が大学時代に住んでいた東京ののどかな住宅街は、駅前に美容室が4、5件もあって
「さすがに多すぎないか」と考えたものです。

当時はマーケティングの知識もなく、美容室はさぞかし利益率が高くて、
顧客の人数が少なくても経営できるんだろうなあ、なんてマヌケな予測を立てていました。

感覚だけでなく、データからもすさまじい美容室の軒数が把握できます。
平成24年のデータによれば、美容室の件数は23万。1,134550人に1軒美容室がある計算です。

そう思うと「あれ? まだ余裕がありそう?」と思うかもしれませんが、
あれだけどこにでもあるコンビニですら全国に約52,000軒しかありません。

他国と比較しても、私が住むイギリスには約1600人あたり1軒の美容室がある計算。人口当たりの競争率は3倍。
日本の美容師さんは、熾烈な競争へ巻き込まれています。

その一方で「成功できる」美容室の条件はこの数十年で大きく変わったわけではありません。
大手美容室を調べていくと、成功するキーワードは「参入障壁の高い差別化」にあることが分かります。

参入障壁とは、マネする大変さ

参入障壁とは、ある企業が市場へ加わろうとするときに払わなくてはいけないコスト。
もっと簡単な例として、あなたがレストランを開くとしましょう。
これまで1店舗もレストランを経営していない人は、塩・コショウからフライパンまで用意するだけで、準備にお金も時間もかかります。
安くて高品質な材料を手に入れる卸もわからず、最初は高値で買ってしまうかもしれません。

それと比べていくつかレストランを経営しているなら、調理器具はお下がりでもスタートできますし、
いい材料の入荷元もあらかじめ知っているので有利です。
このように新しく開業する人は、すでに業界にいる人と比べて高いコストを払います。
これを参入障壁と呼びます。

参入障壁の高さは「マネする大変さ」

さて、参入障壁には比較的マネしやすいものと、されにくいものがあります。
お金や手間がかかるもの、そのブランドでないと強みを発揮できないものは参入障壁が高く、
誰でもすぐマネできることは参入障壁が低くなります。

たとえば、美容室のポイントカードは参入障壁が低いアイディアです。
どの店舗でも今すぐ始められるからです。
逆にVIP専用のシアタールームを美容室内に用意するのは初期コストが高く誰にでもできることはありません。

競争が激しい業界で勝ち抜くには「他店がすぐにマネできない施策」を打つことが大切です。

ホワイトスペースを探し出そう!

ここで、ホワイトスペースという考え方をしてみましょう。
ホワイトスペースとは、ライバルがまだ進出していない領域のことです
たいていは参入障壁が高すぎるか、それが売れるなんて誰も思ってなかった! という理由で放置されています。

たとえば「お~いお茶」の発売当時は、日本人はお茶を家で淹れるからわざわざ金を出す人間なんかいるわけないと思われていました。
しかし現在は伊藤園の看板ブランドです。
ホワイトスペースをしっかり掴めば「日本初」の称号を得られます。

ホワイトスペースを今度は美容院業界で考えてみましょう。
ご自宅などで髪を切る訪問美容師は、これまで要介護で動けない方など一部のお客様に限られたサービスでした。
これを富裕層の忙しい方へ向けて行い成功した方がいます。
「誰も手を付けていないところ」へ最初に進出することでその場にある利益を独り占めできるのです。

上記とは真逆ですが1,000円カットも「簡単でいいから安く切ってほしい」というホワイトスペースを開拓したものでしょう。

2つを組み合わせると「長期的に成功できる」

まずは、あなたの業界でホワイトスペースを探してみましょう。
たとえばネイリストがいるヘアサロンは多いですが
「ご飯を食べながらカットできる」サービスがあればホワイトスペースかもしれません。

レストランの隣に出店してその店と協働するだけで用意できますから、難易度もそこまで高くありません。
食品営業許可申請が必要になる可能性が出てくるなど確認したいポイントはありますが、
忙しくてヘアサロンも行けない高収入ビジネスパーソンに受けそうです。

ただし、この案だと参入障壁が低い(=誰でもマネできそう)のが難点ですから付加価値をつける必要はあります。
たとえば体に優しいオーガニックフードを選べる、限定メニューがあるといったものが付加価値の例です。

まずは、ホワイトスペースと呼べそうな新しい領域を探してみましょう。

そして次に参入障壁の高い戦略を選ぶことで、長期的に勝てる場所を見つけてください。

あなたが日本初の〇〇としてメディアに引っ張りだことなるのも、近い未来かもしれません。

 

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トイアンナ
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新著に『恋愛障害 どうして「普通」に愛されないのか?』(光文社新書)

ビール会社の差別化:飽和市場で成長するための挑戦

ビール会社の差別化:飽和市場で成長するための挑戦

「あえて敵を作る」差別化で飽和市場を成長させるビール会社

こんにちは、トイアンナです。イギリスで有名な飲み物といえばビール。
日本でもパブのチェーン店がいくつもありますね。
イギリスではパブが駅ごとに1~2軒は立っており
「ちょっと一杯」にふさわしいカジュアルな社交場となっています。

ここまでの情報を踏まえ「イギリスで新しいビールブランドを作る」という企画があがったら、
マーケターとしては警戒するところです。
市場はすでに飽和している可能性が高く、今更ビールを飲みたい人口も増えない場所で、
他のシェアを奪うのは難しいでしょう。

ところが、私の至らぬ予想に反し、イギリスに1285軒存在する
小規模クラフトビール業界は、昨年比で10%も成長しています。
その背景には過熱した市場でも生き抜く、斬新なマーケティングが息づいています。
今回はその中から、「グローバルに成功している500社」へも選出され
最大の成功を収めているブリュードッグ(BrewDog)社について研究してまいります。

始まりはビールの最強の度数対決

ブリュードッグ社は2007年創業。
当時イギリスへ日本のアサヒが進出し
「ビールはアルコール度数が薄い楽な飲み物」のイメージが広がっていました。
そこでブリュードッグ社はあえてその逆を行く「世界最高度数のビール」、
タクティカル・ニュークリア・ペンギン(戦術的なペンギン核兵器)を生み出します。

商品名からしてその個性が際立っていますが、強烈なのは32%のアルコール度数。
ブリュードッグ社が「今までと違う」と印象付ける最高のマーケティング戦略でした。

とはいえ、当時ブリュードッグ社が知られていた理由は「最強の度数」に過ぎません。
ドイツのライバル企業がすぐさま「ショルシボック40」という40度のビールを出したこともあり、
このままではすぐ埋もれてしまう運命にありました。

秘密はあえて敵を作るマーケティング

そこでブリュードッグ社は単なる度数勝負を超える、次の一手を打ちます。

新製品はその名も「ザ・エンド・オブ・ヒストリー(歴史の終焉)」。
度数も55度ともはや標準的なウイスキーを超えてしまったのですが、
何より度肝を抜いたのはビールボトル。
リスのはく製でビール瓶を包んで販売したのです。

※ 実際の商品画像はこちらからご覧いただけますが、動物が好きな方はご注意ください。

元々イギリスは動物愛護団体も多く、
過激派は「インフルエンザウィルスにも生きる権利はあるから風邪薬を飲むな」と運動するほど
他の生命を大切にする国民性を持っています。

そんな中でリスのはく製を売ったものですから、動物愛護団体は激怒。
「安っぽいマーケティングだ」「死骸のビール」と散々なバッシングを受けました。

しかもこのリスのはく製ボトル、お値段は、約86,000円と超高額!
手軽な消費財であるべきビールではありえない金額設定も考えると、
小心者の私など「よく社内稟議を通ったな……」と当時を想像してはハラハラしてしまいます。

ところが、市場に出てからは大ヒット。
確かに動物愛護団体や心の優しい人は激怒しましたが
「パンク」と呼ばれるタブーを壊すことに抵抗のないファンが急増。
ブランドイメージとして「パンク」の称号を手に入れたブリュードッグ社は差別化を成功させ、
同ビールも瞬く間に世界中へ出荷される大ヒットとなりました。

ブランドイメージを守れば、ファンができる

お客様満足度100%。聞こえはいいですが、そんなブランドには敵がいません。
「なんでそんなものを買うの? 信じられない」と思う層がいないブランドは
無個性の塊として、そのうち忘れ去られてしまいます。
日本の巨大ブランド、たとえばdocomoやJALであっても
強烈な信者とアンチがいることによってブランドが保たれているのです。

ただしブリュードッグ社のように成功したいのであれば、
大切なのは斬新なアイディアが浮かんだときにブランドイメージから逸れないよう気を配ること。
ブリュードッグ社はブランドイメージを「パンク」にしていたがために、
今回取り上げたようなタブーを無視するアイディアが大成功となりました。

しかし同じ案を「伝統的・保守的」と思われたいビール会社が行っても
絶対にヒットしないでしょう。
斬新なアイディアは保守的なブランドにも存在します。
たとえばイギリスの女王陛下が美味しそうに飲み干すビールのCMが流れたら、
保守的であるにもかかわらず「ちょっと飲んでみようかな」と興味をそそられないでしょうか。

業界の革命児になって大成功を収めたいのであれば、
革新的なアイディアをブランドイメージに則って実行すること。
そして常に他社事例から学び、アイディアの幅を広げることです。

ブリュードッグ社の事例は2016年9月発売の
『ビジネス・フォー・パンクス ルールを破り熱狂を生むマーケティング』に詳しくありますし、
世界最高の広告を表彰するカンヌ国際広告祭の受賞作はYoutubeで見られるものも多くあります。
常にインプットを楽しみ、あなたの戦略に役立ててみてください。
参考文献:

『Good Beer Guide 2015』

 

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トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
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チェーンに学ぶビジネスの勝ち方:1億杯のコーヒーを1週間で売る

こんにちは、トイアンナです。

イギリスといえば紅茶のイメージがありますが、実はその国に激震が起きています。
実は現在、イギリスはコーヒー大国。コーヒー店業界の売上は17年連続で上昇しており、
昨年だけでも10%市場が拡大しなんと1兆円市場へ到達。夢のような成長ぶりです。

それをけん引したのが、日本でいうならエクセルシオール、ドトールのようなコーヒーチェーン店です。
イギリス国内でコーヒーショップの数は20,000店舗を超えており
日本のスターバックスやドトールコーヒーの1,000~1,400店舗数と比較すれば、
非常に大きな市場であることがわかります。

そこで今回は、代表的な3ブランドをご紹介することで日本のカフェ経営にも応用できる
「成功の秘訣」をお伝えいたします。

なお、実際の3ブランドの店舗写真をご覧になりたい方はこちらをご参照ください。
イギリス情報 | お気に入りのカフェはどれ?

コスタ:コーヒーの先駆けという誰にも勝てない強み

初めてイギリス人を紅茶党からコーヒー党へと動かしたのがカフェ「コスタ」です。
コスタは1971年創業の老舗で、イギリスへコーヒー文化を持ち込む先駆者となりました。

特に大きなカップで紅茶を何倍でもお代わりするイギリス人にとって、
の直径10cmはあろうかという大きなカップで
コーヒーを「ごくごく飲む」という発想がぴったりフィット。
在でも2,000店舗以上の大規模チェーンとして愛されています。

日本で応用できる点:イノベーションを起こし業界をけん引する

マーケティングで最も影響力が強いとされるのが
「この世に無かったものを消費者に提案すること」、通称イノベーションです。
まだ流行っていない製品やマニア向けサービスを一気に広げることでブームを巻き起こします。

製品を広めた最初の1社目はその後もトップシェアでいられることが多く、
「コーヒーと言えばコスタ」といったイメージを植え付けられます。
日本の例なら「コーラといえばコカ・コーラ」あるいは「航空会社と言えばJAL」といったものです。
ただし、イノベーションを巻き起こすためには認知度を急激に上げる必要があり、得てして広告費がかかります。

カフェ・ネロ:美味しいコーヒーが飲める唯一の店

さて、業界1位のコスタには大きな欠点がありました。
コーヒーがそこまで美味しくなかったのです。
決してマズいとまでは言いませんが、当時のコーヒーは「紅茶ほどは美味しくない」くらいの位置づけでした。

そこでカフェ・ネロは「どこよりもおいしいコーヒー」を純粋に追及し、
イタリア風の濃いコーヒーを展開して一気に質を向上させました。
カフェ・ネロが登場するまで、多くのコーヒー店では目の前でインスタント粉コーヒーを入れるだけ、という店も多かったイギリス。

カフェ・ネロはひき立てコーヒーを提供することで、
チェーンに限らず全国のコーヒー品質を向上させる革命を起こしたのです。

日本で応用できる点:質で勝ることで1位の座を揺るがす

イノベーションを繰り返す企業は先進的な反面で、品質に劣ることがあります。
たとえばソニーのウォークマンは1990年代まで時代の寵児でしたが、
その一方で「ソニータイマー」とも揶揄される品質の欠陥が指摘されていました。
そこで品質を求めた消費者はパナソニックなどの他ブランドを選んでいました。

このように先頭を走るブランドが逃している品質に目を向け、
そこで圧倒的な差別化をすればトップを揺るがすライバルになれるのです。
現在でも誰もが知っている製品で、質で劣るものはないでしょうか。
そこが、あなたが次に勝てる場所です。

プレタ・マンジェ:オーガニックという新しい軸で独自展開

「プレタ・マンジェ」は他ブランドに比べて創業も遅く、コーヒーチェーンでは後塵を拝していました。
ただの品質、ただのイノベーションでは勝てない。
圧倒的不利な状態から生まれたのは「大規模チェーンが決してできない戦略」を狙うことでした。

まず、「プレタ・マンジェ」は添加物を使わないオーガニック食品を使い、都心に展開しました。
特に環境や有機野菜に関心がある都会の裕福なビジネスパーソンを狙ったのです。
こういった「全国的に人数が少ない」相手へ売り込むことは、
すでに大きくなりすぎたチェーン店にとって難しくなります。

「プレタ・マンジェ」の手作りサンドイッチは味も美味しく、健康志向の富裕層へ大ヒットしました。
日本で例えるならナチュラルローソンや、成城石井の成功例がこれに近いと言えるでしょう。

現在はより激しくなった競争に打ち勝つため「筋トレ用の美味しいたんぱく質メニュー」や
「ベジタリアンが満腹になるお弁当」といった、
これまで「味に妥協してきた人」を満足させる品ぞろえとなっています。

日本で応用できる点:大規模チェーンができない「少ない人数」を狙い撃ち

日本でもダイエット中の方、筋トレに励んでいる方向けのメニューを用意できているカフェはほとんどありません。
日本でも「偏食しませう」という強烈なキャッチコピーで
筋トレしている方が食べられるお店「b-ZONE」がヒットしています。

このように「今まで誰も狙ったことのない消費者」へ目を向けることで、
コアなファンを作るのもマーケティングの手法です。
メリットは広告費が無くても口コミで広がりやすいこと、
デメリットはある程度人口がない地域で実施すると
「該当する人が10人くらいしかおらず、商売にならない」恐れがあることです。
この戦略を取られるのであれば、必ず
お住まいのエリアにどれくらいコアなファンがいるかを概算してからにしてください。

ここまで、イギリスのコーヒーチェーンを参考に
日本で勝てるマーケティングの方法をご案内してまいりました。
大規模な市場も、街中のお店も初めは同じ1店舗。
そこからあなたが成功するためにも、先人の知恵を活用していってください。

参考資料:
スターバックス 店舗数
http://www.starbucks.co.jp/company/history/
ドトールコーヒー 店舗数
https://www.doutor.co.jp/about_us/ir/report/fcinfo.html


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

新著に『恋愛障害 どうして「普通」に愛されないのか?』(光文社新書)

マーケティング深化論:目次

◆ 目次 ◆
第1回:マーケティングはビジネスの「人間ドック」

第2回:「マーケティング」の基礎知識:モテる人はお断り

第3回:美容室をヒットさせるにはイケメンを雇え!?

第4回:売上に繋がるエクイティの育て方

第5回:「差別化」の秘密

第6回:ビジネスにも多い「差別化ごっこ」

第7回:競合分析とは

第8回:売上を6割上げた奇跡の旅館に学ぶ「競合」の考え方

第9回:差別化マスターへの道

第10回:ペルソナ」で分かるマーケティング

第11回:優秀な経営者だけが知っている「売れない」につける処方箋

第12回:テストプランの重要性:彼女にあげたいプレゼントから学ぶ

第13回:全員が活躍したくなる会社とは

第14回:マーケティングで判る恋愛論

第15回:チェーンに学ぶビジネスの勝ち方:1億杯のコーヒーを1週間で売る

第16回:ビール会社の差別化:飽和市場で成長するための挑戦

第17回:成功する美容室の秘密は「ホワイトスペース」

第18回:マーケティングでV字回復を狙うイギリス紅茶市場 集客を取り戻す差別化の鍵は?

第19回:マーケティングはピンチを操る 英国のEU離脱を活かした集客ビジネス

第20回:マーケティングの集客を成功させる秘訣は「季節感」

第21回:集客を考えるときはマーケティングと「善悪」を切り離そう

第22回:「雨が多いイギリスで傘を売るな」マーケティングで欠かせないヒアリングの技術

第23回:安易な無料配布で700人のリストラ!?マーケティングの失敗例に学ぶ

マーケティングで判る恋愛論 :彼女が欲しいなら…

こんにちは、トイアンナです。
最近ナンパ教室というものが流行っているようで、受講者のお話を伺うこともあります。
その名の通り街中でナンパするテクニックを教えてくれる講座なのですが、今まで彼女がいたことのないオクテ男子がこぞって参加しているようです。オクテ男子にとっては、ナンパ師が「女性を口説くプロ」に見えるので、説き方を教えてほしくなるのでしょう。
彼らはいつか女性を口説けるようになって、彼女を作るぞと頑張っています。

ところで、あなたの友達が「彼女が欲しいけど、どうしたらいいか分からないから」ナンパ教室へ参加していたらどう思いますか?
教室では1日100人に声をかけて連絡先をゲットする方法や、偶然を装って出会いを演出するテクニックを教えてもらえます。
もしあなたが賢明なら、その友達に「もっと上手い彼女の作り方があるんじゃないか」と再考をうながすと信じています(笑)

ではなぜナンパを頑張っても、彼女を作るのは難しいのでしょうか? 実はそこに、マーケティング論がかかわってきます。

目的を意識すれば、戦略ミスがわかる

ナンパ教室に通う友達の目的が「彼女を作る」だとすればそのためにするべきことも当然、彼女作りに効果がなくては意味がありません。
しかしナンパの目的は「不特定多数の女性をものにすること」なので、2者で目的がずれてしまっています。
おそらくナンパ教室へ通えばゆくゆくは100人の女性と関係を持てるでしょう。しかし心の通い合う付き合いをして、結婚を考えられる女性に出会って……という目的とは合致していませんから、下手すると「どうせナンパに引っかかるような女しかこの世にはいないんだ」と女性不信になってしまうリスクすらあります。

目的が「彼女を作ること」なら、ナンパ教室よりも女性が多くいる習い事を始めたり、友達にお願いして共通の知人を紹介してもらったりしたほうが信頼のおける女性と出会えるはず。目的に適った戦略を立てれば、リスクも少なくなります。

そのマーケティング、目的に適っていますか?

今回はナンパ教室という変わったたとえから始めましたが、目的の考え方はビジネスの現場でも同じです。私はこれまでに様々な企業マーケティング支援をしてまいりましたが、強く感じているのは目的からズレているものへ予算を投入しても浪費になってしまうということ。

マーケティングでは少ない投資で爆発的に売上を伸ばす火薬を作れることもあれば、どんなに注いでも一向に返ってこない浪費になることもあります。その大きな差は「目的」をきちんと設定できているかどうかです。

たとえば「レストランのリピーターを増やしたい」という目的なのに、お友達を連れてきてくれたらディナー10%割引キャンペーンをしていたら、増えるのは新規顧客ばかり。目的に合わない戦略を選んでしまったがために、利益率が下がるだけとなります。

今なにが経営で問題になっているのかをまず洗い出し、その問題を解決する目的をまず設定しましょう。そして目的がかなう戦略は何かを考えましょう。問題を解決できない目的を設定してしまうと、ウェブマーケティング、マーケティング3.0といった新しそうな横文字に踊らされてお金をドブへ捨てることになります。

あなたの仕事を伸ばすうえで、一番の課題は何でしょうか。その課題を解決する「目的」はどういったものでしょうか? 思いついた戦略は、目的を達成できそうですか?

この考え方を日常的に持っていられるなら、もう新しい言葉に踊らされずに済むはずです。少ない予算で最大の成果を出すマーケターとして、一緒に歩き始めましょう。

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トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

新著に『恋愛障害 どうして「普通」に愛されないのか?』(光文社新書)

小さな会社が勝つためのマーケティング主導型もの作り

アメリカでマーケティングが進んできた理由は、人種が多種多様で様々な価値観を持つ人が集まる国であり、「阿吽の呼吸」や、そこはかとないイメージ戦略では、商品やサービスの内容が伝わらなかったためでしょう。

さらには、国土が広いので、ダイレクトマーケティングである通販が非常に早くから進んでいる点も、マーケティングが発展した大きな理由でもあります。

日本では、マーケティングと言えば、さすがに市場調査や、宣伝のことを指す人は少なくなりましたが、それでもまだまだ、中小企業では馴染みの薄い分野ではあります。オンラインで、情報弱者を釣り上げる手法を「マーケティング」と称して来た一部の人が居た事実も、そのイメージを損ねる原因になりました。

ですので、私は、人によって捉え方の幅がある「マーケティング」という語句を、なるべく使わないように執筆することにしていますが、実際は、マーケティングと経営は切っても切り離せません。ちなみに、英語ではSales=販売なので、日本語の「営業」にあたる言葉がありません。誤解を承知でかなり大雑把にくくると、本来の御用聞きの意味での「営業」は、そのまま英語的なマーケティングと言えるのではないでしょうか。ですので、私は、マーケティングと言いたいところを、ライティングの際に「営業戦略」などと書き換えることもあります。

『限界はあなたの頭の中にしかない』執筆の際に、ジェイ・エイブラハムに「ジェイにとってのマーケティングとは何か、定義してほしい」と聞いた際、しばらく考えさせてほしいと数日経ってから、

私にとってのマーケティングとは、顧客がより良い人生を歩むために導くこと。守り育てることに他ならない

との、非常に深遠な答えが返ってきました。この言葉は、単に「顧客を教育する」という辞書的な訳では誤解を招きます。彼のこの定義の前提となる、「ビジネスとは道である」という理念の上に立ち、理解を進めなければなりません。ジェイは、ビジネスという営みを通して、自らをより高みに磨き上げることという信念のもとに、マーケティングを定義しているからです。

ただ、誰しも自分のことはなかなか客観的に見えないものです。私自身も自らの戦略は、各方面のプロにアドバイスを受け、常に見直しをかけ続けています。ほんの小さな誤差が、1年後には取り返しのつかない「ズレ」になる場合もあるからです。目先の数十万円は確かに惜しいかもしれませんが、それをケチってビジネスがダメになることの方が、もっと怖いと思うからです。経営者は、従業員や取引先などチーム全員の人生を守る義務があります。

ところが、販売力や製品力があり、人脈と力技でそれなりの成功を勝ち取られて来た経営者の方々は、今はなんとか食べていけるだけに、戦略見直しを痛感している人は少ないものです。

ある地元の名士がおっしゃいました。
「もっと、とことん落ちるところまで落ちないと、気づかないんちゃうかな」と。

その言葉を裏付けるように、SONYから分離して以降赤字で、他社との統合構想が破綻に終わったVAIOは、IDCジャパン2015年国内パソコン出荷台数によると、他社が軒並み前年費マイナスになる中、前年比384.7%と躍進しました。国内シェアがわずか1.8%であるにも関わらず、です。

 

 

 

 

 

 

http://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20160218Apr.html

日経新聞の取材によると、VAIOは、

 薄型・軽量で高性能を売り物にした10万~20万円程度のノートパソコンが軸で、市場で売れ筋の数万円の機種は扱わない。

(7月26日)

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ26I6Z_W6A720C1TI1000/

と、マスマーケットを敢えて避け、技術者を営業に出向かせるなど、マーケティング主導のものづくりに戦略変更することで黒字転換。今期のさらなる増益を見込むとのことです。

つまり、経営陣こそが、マーケティングを深く理解する必要がありますし、「もの作りニッポン」にその知恵が日本式営業戦略に融合され、アレンジされていくことで、日本は、世界でまだまだ勝ち抜いていけると考えています。

具体的に小資本の企業が、ニッチ戦略を取り入れるための手順を、メンタークラブ8月号で音声教材にしました。

メンタークラブでは、全米5大ビジネスコーチのジェイ・エイブラハムを師として、その教えを学びつつ、日本人にわかりやすくアレンジしたマーケティング解説や、スタッフの経営者マインド育成に効果の上がる教材をオンラインでお届けしつつ、全国支部での勉強会を開催しています。

 

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島藤真澄 (ShimaFuji IEM代表)

フォーブス誌選出全米5大ビジネスコーチ,ジェイ・エイブラハムの東アジアディレクター(交渉代理人)。様々な案件のプロデュースや海外とのビジネスマネジメントを行う。

ジェイの『限界はあなたの頭の中にしかない』PHP研究所を企画・翻訳。

 

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