スタートアップが10年間ですべきこと(2)

by マイク・マストロヤニス

 

 

(※この記事は前回の記事の続きです)

第2章  問題を検証するために、会社からいったん離れよう

 

会社から離れるとは、ビジネスモデルを別の観点から眺めることです。

そうやって問題を見つけ出し、検証するのです。

 

当然のことながら、ここで検証することには顧客や顧客との関係、

顧客経路なども含まれます。

 

起業して間もない段階では、私たちはまだ、問題をテストしてもらえるような、

最良の顧客を見つけることにまで関心が及びません。

そこで、幅広い顧客に、製品と市場がフィットしているかどうか、

テストしてもらわなくてはなりません。

 

けれどもこの段階から、アーリーアダプター

(新製品や新しいシステム、新しいビジネスモデルを試してもらいたい、

影響力のある、革新的な顧客)を探す必要があります。

もし私たちがアーリーアダプターに売ることができないのなら、

アーリーマジョリティ(顧客の主流をなす人々)にも売ることはできないでしょう。

 

アーリーアダプターのおもな特徴は、以下のようなものです。

  • 問題を抱えていたり、必要なものがある
  • 自分が問題を抱えていることを知っている
  • その解決に向けて、積極的に動いている
  • 独力で問題を解決することができる場合もある
  • 解決のための資金をもっているか、すぐに用立てることができる

 

この段階で、私たちは3つのカギとなる問いに答えなければなりません。

 

1. 私たちは顧客の抱えている問題や、必要としているものを理解しているでしょうか?

また、顧客が未だ気づいていない問題を、私たちが見つけているでしょうか?

2. 大きなビジネスチャンスになるほど、大勢の人が抱えている問題でしょうか?

3. 彼らは友だちに相談するほど、その問題のことを気にかけているでしょうか?

 

この3つの質問に、すべてイエスと答えられれば、

製品と市場のフィットは達成できていると考えていいでしょう。

 

そこから以下の重要なステップを、踏んでいかなければなりません。

 

  •  顧客テストのための実験を計画する
  •  顧客が実際に過ごしている職場を体験する
  •  顧客と接触する準備をする
  •  顧客が問題を理解しているかどうか検証する。その問題が顧客にとってどのくらい重要かを評価する。必要な場合は面談も。ネット上では人はかならずしもほんとうのことばかりは言わないものだから。
  •  顧客についての理解を増す
  •  競争相手と市場の知識を得る
  •  競争相手をランチに誘う

 

この段階では、顧客が抱えている問題を理解し、顧客の声に耳を傾けることが必要です。

ですから、試作品はまだ必要ではありません。

基本的な見取り図や、簡単なパワーポイント、ビデオ、ウェブサイトでのシミュレーションなどで十分です。

 

◆ この段階であてはまるルール

 

1. 顧客は結論が出せるほどの人数を集めなければならない

 

2. 顧客を見つけるためにはさまざまな方法を使う

(友人・同僚からの紹介がベストだが、自分やチームのコネクション、

ソーシャルネットワークのリスト、資格者リスト、 友人のつて、家族、弁護士、投資家、会計士)

 

3. 顧客から出された情報をもとに作成した、問題に対するプレゼンテーションをおこなう

 

4. リストを作成 (紙を3分割し、「問題」「現段階での解決」「私たちの提案するソリューション」と書き出す。

これをもとに顧客と話し、相手の話に耳を傾ける)

 

5. 顧客のことをもっと知るための質問

  •  あなたは何が問題だとお考えですか?
  •  何か見過ごしている問題はないでしょうか?
  •  問題の優先順位はどのようになっていますか?
  •  何にも増して解決しておかなければならない問題というと、何になるでしょうか?
  •  仕事の中で何よりも面倒なことは何ですか?
  •  何かをひとつ変えるとしたら、何でしょうか?
  •  あなたより他に、どなたか明晰な人がいらっしゃいませんか? 私が話すことのできる人を3人ほど上げていただけませんか?
  •  このほかにうかがっておいた方が良い、重要な問題はありませんか?
  •  ご覧になっている中で、私も読んでおいた方が良いブログや雑誌を教えていただけませんか?

 

こうした顧客との会話をもとに、問題があるかどうか、顧客がその問題をどこまで気にかけているかどうか、

顧客の反応を見ながら、優先順位をつけ、結論を出していかなければなりません。

 

Clipboard and Pens

 

第3章 会社から離れ、製品・システムのソリューションをテストする

 

この段階で最初に私たちがやっておくべきことは

  • 第2章で実行した結果の詳細(現在までに明らかになったこと、意義や知見など)を、チーム全体で更新する
  • 変更すべきか、このまま推し進めるかを決定する
  • アーリーアダプターの潜在顧客情報にもとづいた必要最低限のリストを作成する
  • その他のビジネスモデルの特質を更新する

 

つぎのステップは、私たちのソリューションを、プロトタイプやデモ・ユニットとして形にし、

問題提示のプレゼンをおこなったアーリーアダプターの顧客を訪問する準備をします。

彼らに問題のソリューションを提示し、それに対する反応を見るのです。

 

ソリューションを提示している最中やあとで、以下の質問をおこないます。

それに対する反応を記録しておくことは、きわめて重要です。

 

  •  私たちの製品の何が、ソリューションとなり、何がならなかったでしょうか
  •  今日、どのように問題が解決しましたか?
  •  この製品の特徴となる点は、必要だと感じられましたか? それとも感じられませんでしたか?
  •  この製品は、従来のものとちがっている、と感じられましたか?
  •  この製品は新しい市場を作りだすことができると思いますか?
  •  現在ある製品よりも、改良されていると思いますか?
  •  理想的なソリューションとは何ですか?
  •  提案した収益モデルと価格設定について、どのように感じましたか?
  •  意志決定をするために、ほかの誰と話したら良いでしょうか?
  •  話は退屈でしたか?

 

あらかじめ、ビジネスモデルの重要な部分を網羅する質問リストを用意し、顧客に質問します。

インタビューを進める際に役に立つアドバイスをいくつかあげておきましょう。

  • 大勢を相手にするのではなく、1対1で話し合いを進めてください。
  • 主な目的は、何か新しいものを付け加えるのではなく、不要なものを削除することです。
  • 顧客全員にすべての質問をしようとしないでください。顧客によっては、ある面について詳しく知っている場合もあります。

 

顧客の熱意を評価することは、何よりも重要です!

反応には、以下のような可能性があります。

 

1. 顧客が製品を気に入ってくれ、変更の必要がない場合

 

2. 顧客は製品を気に入ってくれたが、ローンチ前に機能を追加してほしいと思っている場合

(この場合は、顧客の要望と開発時間のバランスを取る必要があります)

 

3. 顧客が製品を必要だと感じてくれなかった場合

 

※2. について。

一般人は、壊れてなければ、修理の必要はないと考えますが、

エンジニアは、壊れていないということは、十分な機能が備わっていないと考える傾向があります。

顧客を発見することは、有望な製品の基本形 (デザインばかりでなく全体的な機能まで)が、

お金を払ってくれる顧客の手に入る期間を短縮できる、ということです。

ここで起業家としての経験や直感に従って、決行か中止かの決定をおこないましょう。

 

直接には反応を確かめられないインターネットやモバイルでは、

顧客の製品に対する興味は、以下のもので測ることができます。

 

1. 顧客が進んで登録するかどうか

2. 最初に訪問してから、どのくらいの頻度で訪れるか

3. どのくらいの時間、滞在しているか

4. 何人の訪問者が友人を紹介しているか

5. 新規訪問者が常連となり、実際の利用者となる転換率はどのくらいか

 

一般的に言って、技術製品に対して反応が鈍い場合は、製品と市場がフィットしていないことを示しています。

製品に対して市場が成熟していないか、製品が、広汎な市場の需要を満たしていないか、なのです。

このような場合、問題は価値の提案のやり方と、顧客のセグメントの方法にあります。

 

いずれにせよ、事実(直感だけではなく)に基づいた結果に応じて、

ビジネスモデルを根本から変更していくか、このまま推し進めてつぎのステップへ移るか、

決めていかなければなりません。

 

Weekly Market

 

第4章 ビジネスモデルを検証し、変更するか、推し進めるかを決める

 

これは、新しいスタートアップの発展にとって、非常に重要な段階です。

変更するか、推し進めるかを決定するために、3つの重要な質問に応えなければなりません。

3つの問い(重役会議が必要かもしれません)の回答がイエスなら、

製品とシステムのソリューションに向けた顧客を確認する段階に進み、

ビジネスモデルの規模を、たとえば10倍以上にしてもよいかを調べます。

 

1. 製品とマーケットはフィットしているでしょうか?

  • 私たちは重大な問題に挑戦したり、差し迫った必要に応えようとしているでしょうか?
  • 私たちの製品は顧客の問題を解決したり、顧客の必要を満たしているでしょうか?
  • 事業を展開する場所や機会が十分あるほど、顧客が存在しているでしょうか?

 

2. 私たちの顧客とは誰のことで、どうやって彼らと接触するのか?

  • 顧客のプロフィールを書くことができますか?
  • 製品を顧客にどのように売り込んだらいいかわかるほど、顧客のことを知っていますか?
  • 市場の中で、異なるセグメントを見つけていますか(よそより大きい、よそより速い、優良な、新しい…など)。
  • 私たちのスタートアップからエンドユーザーまでの製品やシステムの流れ(経費やマーケティングも含めて)を理解していますか?

 

3. 私たちは利益を出し、会社を成長させていけるでしょうか?

顧客レポート(マーケットの大きさ、価格/収益、経費、競争相手など)をもとに、

ビジネスモデルを拡張したらどうなるか、

基本的な2-3年間の収益、費用、資金繰りなどのプランを計上し、財政的な情況を評価します。

 

すべてをふまえ、上記の3つの問いに、すべて肯定的な答えが出せるなら……

顧客を発見するための調査は、十分に大きなマーケットの存在を示しているでしょうか?

私たちの製品が待ち望まれている市場、

私たちが繰りかえし提供していけ、拡張を目指し、利潤を上げられる市場でしょうか?

 

もしそうなら、私たちは次の段階「顧客検証」の段階に進みます。

そうでなければ、私たちはビジネスモデルを変更しなければなりません。

 

 


元記事:http://linkd.in/1FgF0sP?

(翻訳:服部聡子)

 

スタートアップが10年間ですべきこと (1)

by マイク・マストロヤニス

 

 

スタートアップは数多くありますが、その中で目標を達成している会社は10%もありません。

そのおもな理由として、ほとんどのスタートアップが、

自社のビジネスモデルをテストするプロセスを有していないことがあげられます。

 

競争は世界的な規模となっているのに、従来の製造プロセスでは、

実用レベルのプロトタイプができあがるまで、実際的な評価を出すことができないのです。

 

デジタル・ネットワークやコンピューターによる3-Dシミュレーションのおかげで

イノベーションは加速し、

クラウド・コンピューティング、データ分析、3Dプリンター、スマート・センサー、

モバイル、ソーシャルネットワーキングなどのテクノロジーは、

驚異的なスピードで進化しています。

さらに、ビジネスをめぐる情報の拡散は速度を増し、競争を激化させています。

 

顧客の注文に応じて、デザインや仕様が発注される旧式の製造プロセスは、

機動性に欠け、めまぐるしく変化していく市場に、十分対応することはできません。

 

現在のプロセスのおもな問題点は、顧客やコミュニティに、すばやく対応できないことと、

利用できるツールが繰りかえしバージョンアップできないところです。

 

このコラムでは、消費財を扱うスタートアップの起業と顧客開拓プロセス、

起業後プロトタイプを作成するまでの元手となる資金調達に焦点を当てていきます。

 

Startup Live Lisbon

 

先に述べた古いパラダイムを変えるために、

どのようにスタートアップを構築し、経営し、資金繰りをしていくべきか、

これまでとは異なる考え方とマインドセットが必要となっています。

そのために、以下の原則がカギとなります。

 

1. 会社の目的を明らかにしよう

21世紀にあっては、大きな目的を掲げることは、

社会の共感を得ることと同じように、きわめて重要です。

 

2. 10年先を見据えた計画を立てよう

製品やシステム、プラットフォームが、少なくとも10年以上先には、

現状と比較してどれほど向上しているか、計画してください。

簡単に経験できる、よく使われる製品/システムとなっていること。

 

3. 顧客・コミュニティと交流できる筋道を用意しよう

小さなマーケットにターゲットをしぼり、スタート当日から、

ターゲットとなるアーリーアダプター層の顧客や、

イノベーションに不可欠の関連オンラインコミュニティと、交流するプロセスを確立します。

 

4. 開発プロセスの途上で、顧客やコミュニティと柔軟な交流をおこなおう

 

5. 失敗はプロセスの中では不可欠な要素

 

6. 柔軟な事業計画を

事業計画は柔軟でなければならず、変わっていくことの多いものです。

ビジネスモデルの焦点は、利益を上げ、拡張可能な、主力となる市場戦略をできるだけ早く見つけることにあります。

 

7. 仮説・検証のプロセスを確立しよう

ユーザー・エクスペリエンスを拡大強化するだけでなく、試作品、顧客、コミュニティを通じて、

さまざまな仮説を繰りかえし検証できるような計画を立ててください。

 

8. サード・パーティの力を活用しよう

高速プロトタイピング、ウェブ・アセット、ネットワーキングなど、外部の力は役に立ちます。

 

9. マーケットを見きわめよう

マーケットの性格(既存のものか、新しいものか、ニッチか…)をはっきりさせます。

それによって、異なるアプローチが必要となるからです。

 

10. 独自の評価基準を持とう

初期段階の成功の評価基準は、

伝統的な大企業の評価基準(収益、売上総利益、利益)とは異なります。

ヒット商品を作り上げていく節目、月々の資金回転率、

試してほしいアーリーアダプターの顧客が何人いるか、

実行に移せるような提言をしてくれるコミュニティがどのくらいあるか……

などがそれに当たるのです。

 

11. 品質への情熱、速い意志決定とスピードにかける情熱をもとう

 

12. 不確実であることや混沌した情況、変化に対して、不安を感じない人を選ぼう

 

13. チーム内で緊密なコミュニケーションをとろう

学んだことをシェアできるよう、チーム全体で頻繁なコミュニケーションが確実にとれるようにしてください。

 

14. クラウドファンディングを活用しよう

シード・キャピタルやエンジェル・キャピタルの時期を過ぎたら、

新しいクラウドファンディングベースの資金運用を検討してみてください。

 

新しいプロセスとは、顧客が製造過程で繰りかえし参加できるようなプロセス、

仮定をすばやく検証し、すばやく改めるプロセスです。

後述のようにいくつかの面からなっており、旧来の製品製造上の問題点を解決するものとなっています。

 

新しいプロセスは、さまざまな段階(仮説が誤っていたとわかったとき、根本的にそれを改め、またやり直す、というような)

を基盤とする、反復可能で、拡張でき、利益の上がるビジネスモデルです。

 

では、ここから顧客開拓のプロセスを詳しく見ていきましょう。

 

A customer discusses art and business with Lama G, at his coffee shop, goodies, Lama G's Cafe, Fremont, Seattle, Washington, USA

A. 顧客を発見する

1. ビジネスモデルをデザインしよう

 

創設者はビジョンや会社の目的を明らかにし、ビジネスモデルをデザインします。

それより先行して、もしくは並行して、潜在顧客やパートナーと非公式な話し合いをおこないます。

ビジネスモデルを描き出すためには、ビジネスモデルキャンバスを使うと、詳細まで書き出すことができます。

焦点となるのは、ビジネスモデルによって、以下の特質をはっきりさせることにあります。

 

1. 価値ある提案 (Value proposition)

2. 顧客 (Customer segments)

3. 顧客との関係 (Customer relationships)

4. 流通機構 (Distribution channels)

5. 主要パートナー (Key partners)

6. 主要リソース (Key resources)

7. 主要な活動 (Key activities)

8. 収入源 (Revenue streams)

9. コスト構造 (Cost structure)

 

Business Modeling all day

 

つぎに重要なことは、私たちのビジネスが焦点を当てるマーケットのタイプを見きわめることです。

・既存のマーケット

・リセグメンテド・マーケット

(※ニッチの参入する余地があり、そのニッチによって市場を再分割することが可能なマーケット)

・クローン・マーケット

(※ある国で成功したビジネスモデルを、外国で展開するもの)

 

それぞれについて、顧客需要、製品のパフォーマンス、競争、リスクの観点から分析し、

異なるアプローチをしていきます。

 

この段階では、第一期の最小限実行可能なプロトタイプを作成します。

(必要最小限のパワーポイント、ウェブサイト、ビデオという形になるかもしれません)

そうして、私たちが解決すべき問題点について説明し、

最初に選んだアーリーアダプターの顧客から第一次のフィードバックをしてもらいます。

 

 

次回は、このアーリーアダプターの顧客から提出された問題のテストと解決について、

考えていきたいと思います。

 

その2.につづく)

 


元記事:http://linkd.in/1EQ539X?

(翻訳:服部聡子)

 

本:『チームのチーム』

Team of Teams: New Rules of Engagement for a Complex World

『チームのチーム:複雑さをます世界に向き合うための新しいルール』

著者 スタンリー・マクリスタル将軍

 

 

小さなチームが持つ素早さ、順応性、結束力。

これと、大きな組織が持つ力とリソースを組み合わせることができたらどうでしょうか?

 

古いルールはもう通じない

2004年、スタンリー・マクリスタル将軍が

統合特殊作戦のタスクフォースの指揮を引きついだとき、

それまでの軍事戦術はすでに力を失いつつあると、すぐに気がつきました。

 

イラクのアルカイダは分散型のネットワークであり、

機動力が高く攻撃は無慈悲で、そして現地の民衆の中にすぐに姿を消してしまうのでした。

有志連合は兵力、武装、訓練の面において圧倒的な優位にありましたが、

そのどれをも無力化してしまうのでした。

 

巨大な怪獣に臨機応変は可能か

どんな分野においても、小さなチームが様々な面で優位に立てることは明らかなになっています。

反応が速く、情報伝達が活発で、意思決定が官僚主義的に束縛されていないのです。

ですが、本当に大きなミッションに立ち向かう組織は、

小さなガレージには入りきれません。

そのような組織には、メンバーが数千人に増えても

任務を遂行できるマネジメントの存在が必要なのです。

 

マクリスタル将軍が率いていたのは階層的で、

高度に訓練され機械のように運動する数千人の組織です。

ですが、イラクのアルカイダを倒すためには、

敵の持つそのスピードと柔軟性が必要だったのです。

世界最強の軍隊の力と、世界最怖のテロリスト・ネットワークが持つ素早さを組み合わせるのは、

一体、可能だったでしょうか?

もしそうなら、その方法を軍事組織以外にも適用することはできるのでしょうか?

 

新しい世界のためのアプローチ

マクリスタル将軍と同僚たちは、厳しい戦闘の最中に、

1世紀に及ぶそれまでの知恵を捨て去り、

タスクフォースを新しいかたちに組み直したのです。

コミュニケーションの透明性を極限まで高め、意思決定を分散型にしたのです。

大型組織を分断する分厚い壁は取り去られました。

リーダーたちは、小規模なユニットが行う良い習慣に注目し、

テクノロジーの力で一体感を作り出して、

それを3つの大陸の数千人の人々に広げる方法を見つけ出したのです。

 

これは、たったの10年前でも不可能だったものです。

このタスクフォースがより速く、よりフラットで、より柔軟な「チームのチーム」となり、

アルカイダを撃退したのです。

 

戦場を越えて

パワフルな本書では、マクリスタル将軍と同僚がイラクで立ち向かった事態が、

ビジネスやNPO、その他の数え切れない組織の局面でどのように適応されうるか、説明します。

世界はこれまでにない速さで変化しているのであり、

組織の責任者が行うべきは、小規模なグループに実験的な行動を行う自由を与え、

その一方で、メンバー全員が学びを組織全体に共有することを奨励することです。

本書の例の中で説明するように、チームのチーム戦略は、病院の救急救命室やNASAなど、

あらゆる場所で効力を発揮してきました。

チームのチーム戦略は、大きさを問わず、組織を変身させる力を秘めているのです。

 

 

 


 

元記事:http://amzn.to/1Q2NGK3

(翻訳:角田 健)

 

性差別は女性ばかりでなく男性にとっても不利

by クリスチャン・ジャレット

 

 

どれほどあなたが自分をしっかり持っていたとしても

あなたの年齢や性別、人種や民族による特性に基づく周囲の判断からは、

逃れることはできません。

職場で、そこにいるのが男性か女性かというだけで、

周囲の人々がどれほど態度を変えているか、

心理学は多くの人々の日常の経験を通して、

さまざまな事例を明らかにしています。

とりわけ私たちが「性差別を行わない」という視点を欠いたまま

他人を判断する際には、

相手が男性であっても女性であっても、

偏見に基づく悪影響を受けている可能性が高いのです。

こうした偏見というのは、どのようなものなのでしょうか。

あなたの職場でも起こりうる5つのパターンを見ていきましょう。

 

1. 女性は正々堂々と意見を述べたり 怒りをあらわにすると罰せられる

専門職の女性は、自己主張することによって、

男性からも、他の女性からも、厳しい目で判断されます。

一例をあげると、ある研究によれば、男性及び女性の被験者は、

女性のCEOが積極的に主張し、自説を曲げない場合は、

能力を欠いており、リーダーの役割にふさわしくないと考える割合が高く、

男性のCEOに対しては、結果はまったく逆で、

寡黙で控えめな態度は、無能のあらわれであると見なされました。

怒りに対しても、同様の結果が得られています。

怒りは、コントロールされたものである限り、交渉や、

期待する働きをしていない人を奮起させる道具として、

重要な感情です。

ところがあなたが女性であれば、怒って感情をあらわにすると、

犠牲を払うことになります。

 

2008年の研究によると、怒っている男性は、男性からも女性からも、

高い地位にあり、有能な人と見なされたのに対し、

怒っている女性は、低い地位の、有能ではない人と判断されることがわかっています。

それだけでなくこの研究は、女性が怒りの原因を明らかにし、

なぜ自分が怒っているかに焦点を当てることによって、

反発を避ける戦略が可能であることも指摘しています。

このプロセスを経ることで、女性であることが、不利に働きにくくなるのです。

男女差別がある状況は、男性にとっても決して有利ではありません。

差別によって被害を受けるのは、男性も同様です。

たとえば面接の場で、控えめな態度を取っていると

「男らしくない」と評価されたりします。

2. 女性の上司の下で働く男性は偏見にさらされる

職場の機会均等によって、不可避的に女性の上司の下に男性がくることも増えました。

ところが性差に対する旧弊な見方から、

女性上司の下の男性は、特別な目で見られる傾向にあります。

とりわけその業界が、通常「男性の領域」にあると考えられる場合、

その傾向は顕著なものになっていきます。

これを明らかにした研究もあります。

被験者は「ある男性は建設業界で働いてるが、上司は女性」

という説明書きを読みます。

 

被験者は男女とも、彼は男性上司の下で働いている他の男性より、

賃金、地位ともに低く、いくぶん女性的である、と判断したのです。

(一方、女性社員が女性中心の業界で、男性上司の下で働いている、という仮定では、

そうした偏見にさらされることはありませんでした)。

私たちは、こうした男性が「男らしくない」と見なされる偏見が、

女性リーダーにとっても不利に働くことを見ておかなければなりません。

自分が男らしくないと見なされることを怖れて、

女性上司の下で働きたがらない男性も多いからです。

認めたくないことですが、これには実際的な解決策はありません。

ただ、いくつかの調査では、男性がステレオタイプの男性性を証明するものを

強調することによって、女性上司の下にいる男性に対する偏見は、

相殺されることが明らかになっています。

たとえばスポーツや車の話題を好んで口にするような場合です。

本当の解決策は、性差に対するステレオタイプを全面的に改める点にあることを思えば、

この解決案には不満を抱かざるを得ませんが。

 

 

3. 女性は失敗が予想される組織を任される傾向にある

重役のメンバーが、女性を含めて構成されている企業ほど

業績が良いことが実証されているにもかかわらず、

上級幹部の中で、女性が過小評価されるケースは、未だ極めて多く残っています。

イギリス企業を分析した心理学者は、彼女たちがトップに昇進するのは、

うまくいかなくなりつつある組織である傾向が高いことに気がつきました。

いわゆる「ガラスの断崖(※失敗の怖れが極めて高い地位)」と呼ばれる現象です。

このことが非常に顕著に表れたケースとして、

2009年、世界的な金融危機の中、未曾有の危機に直面したアイスランドの選挙で、

ヨハンナ・シグルザルドッティルが発の女性首相に就任した出来事が上げられます。

もうひとつ、同様の事例として、2012年マリッサ・メイヤーの

ヤフーのCEO就任も上げられるでしょう。

これは、危機に直面したときに、伝統的に女性の特質、

たとえばコミュニケーション・スキルが高い点などに価値が置かれるために、

このような作用が生じると考えられます。

けれども、このようなタイミングでのみ、女性が偏愛されている現象は、

沈没しつつある組織という毒杯を、女性に押しつけることの現れでもあります。

船が最終的に沈没してしまえば、女性だから、と非難しやすくなるのです。

 

 

4. 家族のために休暇を取る男性は弱いと見られやすい

職場環境の改革によって、出産や、病気の血縁者の介護のために

男性が休暇を取ることは(無給のものであることも多いのですが)

簡単になりました。

とはいえ、人々の態度はあまり変わっていません。

研究によれば、私たちの多くは、男性が優先すべきは仕事である、

という伝統的な価値観を抱いたままで、そうでない態度を取る人には、

否定的な評価を下しがちであることが明らかになっています。

研究者たちはそれを「フレキシビリティの汚名」と呼びます。

ある研究では、女性ではなく男性が、

子供や病気の親族の面倒を見るために休暇を取った場合、

被験者たちは厳しい判断を下す傾向が見られました。

休暇を取ることは、仕事に貢献することなく、

同僚に迷惑をかけていると受けとめたのです。

ラトガーズ大学の心理学者による最近の研究では、

同様の筋書きで、この「汚名」の理由の手がかりを探りました。

被験者は男性従業員と、人事部長の面談の記録を読みました。

病気の近親者の介護をするために休暇を申し出た男性は、

そうでない社員より、能力が低いと見なされ、

低賃金でもかまわないと判断されたのです。

その理由として、被験者は、男性女性ともに、

その従業員は意気地が無く、女々しいと判断したからです。

男性が家族のために休暇を取っても良い、という方針が導入されて、

まだ十分な時間が経っていない、ということなのかもしれませんが、

私たちの態度の面でも、改革が必要なようです。

男性が家族を優先することについての偏見をなくす1つの選択肢として、

父親に対して出産・育児休暇を強制的に取らせることが考えられます。

私たちは、女性の場合も含めて、家族の問題に関することでは

偏見にさらされることが少なくありません。

妊娠の場合は特にその傾向が強いようです。

妊娠すると女性の頭の働きが鈍くなるという通説が広まっていて、

調査によると、適性試験や面接の結果が同程度であっても、

妊娠中の求職者は、そうでない求職者より、職に就きにくいことが明らかになっています。

 

5. 女性は「情け深い性差別主義」に嫌な思いをさせられる

情け深い性差別主義は、実際には出来そうもないことに対して

表面的な親切をしてみせます。

たとえば、イギリスの国民保健サービスを考えてみてください。

女性のマネージャーも男性と同じように、トレーニングコースに派遣されます。

けれども、やりがいのある仕事、

たとえば大きな事件や緊急事態の際にどのように対処するかといったことを

まかせられることはほとんどありません。

研究者は、こうしたことが起こるのは、

決定権を持つ男性が、未だに女性は男性の保護を必要とすると考えているからだと

結論づけています。

昔ながらの情け深い性差別主義的な事例です。

学生と共におこなった追跡調査では、

最も挑戦的な役割に参加したいと希望する女性は、男性とほぼ同数であったことが

明らかになっています。

ジョージ・メイソン大学のエデン・キングと同僚は、この結果をふまえ

「女性の前進を抑えつけようとするのは、

従来からある性差別主義者の敵対ばかりではなく、

一見、思いやりのある決定や行動でもあると言えるでしょう」

と結論づけています。

***

心理学の研究には、伝統的な性差別的なものの見方に逆らおうとした男性と女性が、

どのように罰せられるか、という事例であふれています。

これらの偏見を打ち砕くには、時間がかかるでしょう。

けれども、単にこうした偏見に自覚的であるだけでも、

対抗するチャンスが生まれます。

性別に関係なく、自分の本当の潜在能力を発揮できるようになることが、

私たちすべてにとってのゴールです。

昨年、カナダとシンガポールの研究者が、オリンピックのメダルの国別集計を見たときに

はっきりとしたパターンが明らかになったのです。

男女平等がより達成されている国で、

男女とも、数多くのメダルを獲得していました。

 

 

 

 


元記事:http://bit.ly/1KRR0la

(翻訳:服部聡子)

 

 

本:『前よりもっと良く』

Better Than Before: Mastering the Habits of Our Everyday Lives

『前よりもっと良く 日常生活の習慣をマスターしよう』

 著者 グレッチェン・ルービン

 

 

私たちはほんとうに変われるのでしょうか?

ニューヨークタイムズのベストセラー『人生は「幸せ計画」でうまくいく!』

“Happier at Home(家でもっと幸せに)”の作者が、重大な問題に取り組みました。

    
「私たちはどのように変わるのでしょうか?」

グレッチェン・ルービンはこう答えます。

習慣を通してです。

習慣は、日常生活における、目には見えない建造物です。

習慣づけるためには、努力が必要ですが、ひとたび習慣となれば、

私たちは習慣のエネルギーを利用して、もっと幸せで、力強い、

生産的な生活を送ることができます、と。

そのように習慣が変化のカギであるのなら、

私たちが本当に知っておかなければならないのは、このことです。

私たちはどうやって習慣を変えるのでしょうか?

『前よりもっと良く』はこの問いに答えてくれます。

?この本は、読者が自分たちの習慣について理解し、

それをこれから先ずっと変えていくための、

実際的で具体的な考え方の枠組みを提供してくれます。

魅力的な声、精密な調査、穏やかなユーモア、

いくつもの人生が織り込まれた鮮やかな物語の詰まった

『前よりもっと良く』は、時に信じられないような、

習慣の行動原理を説明してくれます。

ルービンは自分自身をモルモットとしながら、家族や友人相手に、自分の理論を実験し、

読者の疑問、ほかの研究者やライターなら無視するような、奇妙な疑問にも答えていきます。

・なぜ、習慣になると、やりたくてたまらないはずのことが楽しくなくなるのはなぜ?

・一夜で変わる習慣もあれば、どうしてもやめられない習慣もあるのはなぜ?

・どうやったらすぐに習慣が変えられるの?

・新しい習慣をどうやったら定着させられるの?

・習慣を変えようとする人を、どうやって助けることができる?

・なぜほかの人に役に立つ習慣なら維持できるのに、

 自分だけのためになることは、習慣づけられないの?

もっと長時間の睡眠を習慣にしたい人、

スマートフォンのチェックをやめたい人、

適正体重を維持したい人、

重要なプロジェクトをやり終えたい人、

読者がいったい何を望んでいたとしても、習慣は変えられます。

読者はきっと『前よりもっと良く』を読み終える前に、もしかしたら、

ほんの数章を読んだだけで、

自分の習慣を変えるためのワークが始めたくてたまらなくなることでしょう。

 

 


元記事:http://amzn.to/1INPAub

(翻訳:服部聡子)

 

 

本:『戦略の戦略』

Your Strategy Needs a Strategy: How to Choose and Execute the Right Approach?

戦略の戦略:正しいアプローチの選択と実行』

マーティン・リーブス、 クヌート・ハーネス、 ジャンメジャヤ・シンハ 共著

 

 

我が社は必勝の戦略があると思っているでしょう。

本当にそうですか?

ベストセラーになっている経営のアイディアや、

競合を出し抜くための奨励すべき習慣などなど、

エグゼクティブの元には膨大な量の戦略・戦術の類が送りつけられてきます。

しかし、それぞれを見ると矛盾しているように見えることもあるものです。

 

会社は大規模化するべきか、それとも素早いフットワークを重視するべきか?

ブルー・オーシャン戦略をとり新しいマーケットを開拓し、柔軟性を持って、

常に勝てる戦いのみに注力するべきか?

あるいは、競争優位を維持することは考えずに戦うのか?

日一日と、ビジネス環境の変化は加速し、不確かさと複雑さを増していきます。

その中で、戦略というものに対するアプローチの取り方がこれまで以上に重要で、

そして困難だったことはありません。

 

本書では、ボストン・コンサルティング・グループのマーティン・リーブス、

クヌート・ハーネス、そしてジャンメジャヤ・シンハが、

会社にとってベストな戦略的アプローチを選ぶために必要な、

実証された方法論を紹介します。

 

まずはビジネス環境の査定方法の紹介から始まります。

環境の中で予測不可能なものは何か、

環境を変えるのに必要な力を持っているか、

そして環境がどれほど過酷なものなのか

―?これらは、戦略を正しく選ぶために知らなければならない必須項目です。

 

そして、すでに世に出ている多くの戦略アプローチが、

ビジネス環境の予測可能性、柔軟性、過酷さに合わせて

「大規模であれ」、「素早くあれ」、

「先駆者であれ」、「策士であれ」、

あるいは単純に「元気であれ」という、

大きく五つのカテゴリーに分類されることを説明します。

 

これらのアプローチの詳細な説明を読めば、

環境に合わせた戦略へのアプローチを選ぶための決定的な判断力が得られるでしょう。

そして、それぞれのアプローチをいつどのようにして実行し、

また致命傷にもなりうる組み合わせのミスを避けるための知恵を与えてくれるでしょう。

 

圧倒されるような戦略的課題のポイントを明確にしながら、下記のような質問への答えが導き出せるようになるでしょう。

 

  • 年間のサイクルが時代遅れになってしまったら、どうやって計画を見直せばいいか?
  • どのようなタイミングで、自分に有利なゲームを形作れるのか、あるいは形作るべきか?
  • 複数のビジネス部課で、同時に戦略的アプローチを遂行するにはどうすればいいか?
  • 複数の地域、複数のビジネスに適用できる戦略を作成し実行するためには、つきまとう問題点をどのようにマネージすればよいか?

 

これらの問題をまとめあげ、採用すべき戦略的アプローチを理解するための

実際的なツールとなる書籍は、今までにはありませんでした。

あなたの会社でも、今日すぐにでも始めましょう。

 

 


元記事:http://amzn.to/1GizY0T

(翻訳:角田健)

ミレニアルの高い買い物

by デレク・トンプソン

 

 

近頃まで若者たちは、自家用車には見向きもせずに公共交通機関を利用し、

カーシェアリング・アプリを使用してきました。

しかし今、若者たちが自動車ディーラーに姿を表すようになっています。

そう、親たちの世代と同じようにです。

 

物書きという職業の害は、発表した内容が誤っていることも多々あることであり、

また場合によっては、それを目にした読者の頭にまで同じ誤りを刷り込んでしまうことです。

数年前に、私はジョーダン・ワイスマンとともに、若者たちが先の大不況に恐れをなして、

郊外に一軒家を買い自家用車を持つという文化から顔を背けてしまうのではないか、

という記事を書きました。

 

この二つの高額な買い物は、これまでに起こってきた恐慌においては、

国の経済のけん引力となっていたものです。

この記事について私は何年もの間フラストレーションを感じていたのですが、

それはコメント欄の意見がどれも、

私たちが書いていない「安上がりな世代」という3語だけを読んで書いたのではないかと疑うほど、

記事の内容を把握していないことでした。

 

この3語は見出しの文言で、私たち筆者が書いたものですらなかったのです。

しかし今週、この記事について新たなフラストレーションの原因ができてしまいました。

私たち筆者にとっては大変不都合ながら、現実が私たちの予想を裏切り初めたのです。

 

2011年と2012年初頭にこの記事を執筆した時点では、

若者たちの自動車離れが進んでいるとして、メーカー各社は疑う余地のない恐怖を感じていたのです。

フォードのグローバル消費者トレンド研究のリーダー、シェリル・コネリーは、

若者たちは「所有することよりアクセスできること」に意味を見出している、と言いました。

「自動車購入について、ミレニアル世代の考え方が

ベビーブーマー世代の考え方と一致することはないと考えています」

とも言ったのです。

 

若者たちが都市中心部に住むようになり、

若い家族を乗せて走っていた自家用車は公共交通機関に取って代わられて、

また十代の若者にとっては初めて手にする自分の車というものは独立心や社会とのつながり、

責任感を体現するものでしたが、それもスマートホンによって置き換えられるだろうというものでした。

 

今週、ブルームバーグがJ.D. パワー・アンド・アソシエイツのデータをもとに、

ミレニアル世代、またの名をジェネレーションY(基本的には、1980年代から1990年代生まれを指します)が、

すでに新車販売台数の27%を占めていると報道しました。

この数字は、1961年から1981年生まれを指すジェネレーションX向けの台数をすでに追い抜いており、

その上を行くのはベビーブーマー世代のみになるというのです。

 

私はこの記事を、歯ぎしりしながら読みました。

そして、顔を真っ赤にして、

まるでスポーツカーのドライバーがドリフト走行でハンドルを握りしめる様子さながらに、

私は自分の確証バイアスにかじり付きながら、J.D. パワーにメールを送ったのです。

ミレニアル世代の自動車需要は実際は急伸などしていないと言える何がしかの証拠が欲しくて、

データの送付を依頼したのでした。

 

今、そのデータを目の前にして、私にもこう言い切ることができます。

ミレニアル世代の自動車需要は急成長しています。

若い世代への新車販売台数が、定規で引いたように一直線の右肩上がりで伸びているのです。

 

【ジェネレーションYはジェネレーションXより多く車を買っている】

 (

【新車販売台数の世代別シェアではジェネレーションYだけが伸びている】

なので、自分たちで立てたCheap Generation説に自信が持てなくなってきてしまった訳です。

とはいえ、間違いだったと完全に納得しきったわけではありません。

コネリーの主張で大切な

「ミレニアル世代の自動車購入に対する考え方が、

ベビーブーマー世代の考えと同じになることはないと考えています」

という言葉は、それでも現状を正確に表しているのです。

ミレニアル世代の半数以上は25歳を超えているにもかかわらず、

その親の世代の購入台数を下回っています。

また、ミレニアル世代の購入台数はジェネレーションX世代を上回ってはいますが、

ミレニアル世代は人口そのものもまた1,500万人から2,000万人多いのです。

 

さらに、自動車業界に吹く逆風は、ミレニアル世代の懐事情だけではないのです。

アメリカの自動車販売台数のピークは15年前の2000年に1,730万台でしたが、

さらに当時は顧客数もかなり少なかったのです。

その一方で、一人当たり走行距離はブッシュ政権中期から落ち始めています。

昨年にやっと、10年ぶりに上向きになったばかりです。

購入台数も運転距離も減少しているのであり、これは構造的な変化と思われるのです。

【一人当たりの走行距離(青)と走行距離の総計(赤)】

そして、私たちが立てた他の予想はどうでしょうか?

郊外に立つ柵で囲われた庭付き一戸建てというアメリカンドリームの象徴を、

若者たちは拒絶しているのでしょうか?

ここでも、話の筋は同じでした。

2012年当時に正しく予想できた部分もありましたが、

テキサスなどサン・ベルト地帯の今日の好況に見られるように、

アメリカの不動産景気これほどまでに素早く立ち直れるとは

予想できていなかったのも事実なのです。

 

大卒で20代から30代の裕福な層が、密集した都市部に住む傾向が

20年前に比べて非常に顕著なのは、

ベン・カッセルマンとジェド・コルコの説明する通りです。

全体で見ればごく一部でしかないこの豊かなグループを

ミレニアル世代全体と同義語のように語るメディアもありますが、

これは記事を書いた記者が、イーストコーストやウェストコーストの

大都市にあるバーに通うようなタイプの人間だったからかもしれません。

それらのバーの客層がこのような豊かな層と一致するものだから、

それがミレニアル世代の全体像であると誤解してしまっているのかもしれないのです。

ですが、ブルックリンやワシントンDC、オークランドなどから一歩足を踏み出せば、

世の中一般での話は全く変わってくるのです。

実際のところ、25歳から34歳で大卒学位を持たない層(本来はこちらが大多数です)が

都市部に住む傾向は2000年前後に比べて弱まっています。

また多くは、余裕ができ次第に郊外に移っているのです。

Craftsman House

ということで、ジョーダンと私の記事は誤りだったでしょうか?

私たちは、ミレニアル世代はその親たちの世代ほど

自動車に乗ることはないだろうと予測したのです。

そして現状がその通りであることに間違いはありません。

郊外型住宅の建設業界には長期間の悪影響が出るかもしれないと書きましたが、

これは間違いなく今日にも当てはまります。

ですが私たちは、より広い意味では、

現状を維持しようとする強烈な逆風を予測できていなかったのです。

 

若者というものはやはり自動車を買い、都市から郊外に抜け出し、

そしてカロライナからテキサスを抜け北西沿岸部にまで広がる、

陽光眩しい土地に住処を求めるものなのです。

 

若い世代が変にませているのを見るのは嫌なものです。

ですが、ジェネレーションYは、それよりさらに酷いものに変わってしまう恐れを秘めていました。

それは、退屈極まりない普通な世代になってしまうことなのです。

 

 


元記事:http://theatln.tc/1Ob8Czq

(翻訳:角田 健)

 

 

6人の女性起業家によるアドバイス

by エイミー・フェッター

 

 

男性優位の中で、会社を巧みに所有・経営する女性たち

 

アメリカの起業家の中で、女性層は急速な成長を遂げています。

しかしながら、男性が経営するビジネスに比べると、女性が経営するビジネスは、

高い割合で失敗しやすく、従業員も少なく、また収益も低いという傾向があります。

このような差が生じた理由は、さまざまであり、一概には言えませんが、

資本にアクセスすることの困難さや、根強い社会通念、

また、男性が所有するビジネスと、女性が所有するビジネスの業界の違いなどが、

このアンバランスの背景にあるとされています。

けれども、外部的な条件というよりは、

女性の内面的な状況に起因するものもあるのかもしれません。

 

私は女性や女性起業家と話すために、自分の時間の90%を、移動に費やしています。

女性が起業し、ビジネスを成長させていくための課題を探求しているのです。

その中でわかったのは、第一の理由が、自信が不足している、ということでした。

 

こう語るのは、EBW2020(2020年までに10億人の女性に力を)の創設者であり、

デル社の前客員起業家でもあるイングリット・ヴァンダーヴェルトです。

けれども、と彼女は続けます。

 

自信の不足に対する特効薬は、行動あるのみ、なのです。

メンターがいれば、私たちは行動が起こせます。

だからこそ、EBW2020は、最優先課題として、

無料の支援プログラムで、女性にメンターを紹介しているのです。

歴史的に見て、ビジネスの世界では男性が舵を取って来ました。

その姿を見て人々は、リーダーというのはかくあるものだと考えるようになったのです。

ところが女性は、自分もそのキャリア・パスや経験を分かち合えるような

女性のロールモデルを見つけるのに苦労している、とヴァンダーヴェルトは言います。

 

だからこそ女性は、なかなか昇進できないし、

まして重役に就くことは困難です。

私たちはロール・モデルが不足しているのですが、

世の中には、すばらしい女性たちが、すばらしい会社を起ち上げているのです。

Re/code掲載された、シュキンダー・シン・キャシディの記事

Tech Women Choose Possibility(技術系女性は可能性を選択する)」も、

昨今のマスコミ報道にも、女性起業家はほとんどふれられていないことに

焦点を当てながら、ヴァンダーヴェルトと同じことを言っています。

彼女の記事が取り上げるのは、技術業界についてですが、

彼女の意見は、ビジネス界全体に当てはまるものです。

女性起業家は、メディアにはほとんど登場しませんが、

現実の社会で、彼女たちは確実に進歩を遂げています。

ここで、その中から6人を紹介しましょう。

彼女たちのヒントを、あなたのビジネスを次のレベルに引き上げるために

役立ててください。

     
ミッシェル・ガルシア :エアルーム・ケータリング・オーナー
コロラド州デンバー

あらゆる答えを知っている経営者も、

あらゆるスキルを備えている経営者も、この世には存在しません

私ができる最高のアドバイスは、

ほかの人に助けやアドバイスを求めることを恐れないでほしい、ということです。

もちろん私も、独力で起業したわけではありません。

たくさんの助けがあり、私を支えてくれる多くの人の存在があったのです。

消費税について学ぶときも、ウェブサイトを開設しようとするときも、

新しいマーケティング・プランを立てるときも、障害はいたるところにあります。

いつもそんなときには、助けを求めてください。

とても単純なことだし、あまりにありふれたことを言っているように聞こえるかもしれません。

でも、それはほんとうのことなのです。

誰もが、人が成功していくところを見たいのです。

成功できるかどうかは、成功している人の助けを得られるかどうかにかかっているのです。

 

アマンダ・ルー : スタジオ・モンダインの共同経営者

Amanda Luu

何を申請するにせよ、会計士と相談してください。

自分でやろうとせず、会計士と一緒に

最大限努力すれば、収益の目標に到達できるかどうか、考えてください。

会計士との関係は、きわめて重要です。

ですから、しっかりした経験を積んだ、信頼できる人を探してください。

そのほかのアドバイスとしては、あなたの業界の内部、外部を問わず、

本物の絆を築いていくことです。

私たちの仕事が、紹介を基盤にしているということもあるのですが、

ひとつの人間関係が、あなたの日々を生かしも殺しもするのです。

周囲の人々と真剣に向き合い、その輪を拡げてください。

 

ブライディ・ピコット : シング・インダストリーズ CEO
ニューヨーク州ブルックリン

BRIDIE PICOT

スタートアップを考えている人に送る私のアドバイスは、

自分の思い通りに始めていってください、ということです。

どれほどの仕事を自分がこなさなければならないのか、どれほど勉強が必要なのか、

前もって調べておけばおくほど、あなたのスタートは遅れてしまいます。

私が最初、シングを起ち上げたときには、何もわかっていなかったので、

かえってそのことが良かったと思っています。

ひとたび始めてしまえば、新しい仕事に取り組むことは、

ずっと簡単になります。

 

アニー・リャオ・ジョーンズ 😕ロック・キャンディ・メディア 社長兼CEO
テキサス州オースティン

    
子供の頃、父は会社を経営することについて、2つのことを話してくれました。

「誰も彼もが、傷つけるようなことをしてくるだろうが、

それに対しても寛大でなければならない。

けれども、誰にも、自分を変えさせてはならないんだ」

もうひとつは「会社を経営することは、世界でもっとも孤独な努力だ」

ということです。

父は正しかったですし、父のアドバイスのおかげで、

私はそこまで孤独を感じずにすみました。

幸いなことに私のクライアントも経営者なので、

そのこともまた、孤独感を紛らわせてくれます。

起ち上げるときに知っておくべきだったことは何かというと、

仲介者を雇うべきではなかった、ということです。

あなたと中核チームの間に距離を作ることにしかならないからです。

 

キャリー・スピンドラー 😕グッディボックス・ベイク・ショップ・オーナー
ニュージャージー州 クリフサイド・パーク

あなたのビジネスとブランド、そうしてそれが約束するものを、はっきりさせることです。

あなたがすることはすべて、あなたのビジネスのアイデンティティと一貫性がなければなりません。

あらゆる人に好かれるようにふるまうことはできません。

特に、あなたが限られた先行資本でビジネスを始めるのだとしたら、

このことはとりわけ重要です。

もしかしたら、運転資金をまかなおうと、あるいは家賃を払うためだけに、

自分の範囲外のことに手を出したくなるかもしれません。

けれども、ほとんどの起業家は、最初、あまり考慮に入れていないのですが、

これはきわめて危険なことです。

結局のところ、多方面に手を出しすぎるか、

凡庸なサービスを提供するだけに終わってしまうでしょう。

それは、あなたが最善を尽くせる分野ではないからです。

私は自分の商品やサービスの提供に最善を尽くすにとどまり、

自分ができる以上のことに手を出すことを控えてきましたが、

それによって多くのことを学んだのです。

 

クリスチャン・ハバリング & ジェニファー・マレー
ペインテッド・フォックス・トレジャーズ 共同創設者
ウィスコンシン州 アレントン

クリスティン:

健康バランスに気をつけてください。

新しいビジネスを始めると、健康的ではないレベルまで、消耗してしまいます。

ですから家族や友人との時間を大切にして、健康バランスを保ってください。

    
ジェニファー:

知らないことをそのままにしないでください。

知らないことは、あなたを恐れさせますから。

自分で学べることは、たくさんあります。

学びたいという情熱がありさえすれば、驚くほど多くのことが学べるのです。

それだけでなく、あなたは仕事の準備をしておかなければなりません。

私たちは、お互いを見ているし、共同で仕事をしているし、

一緒にいて、何時間も黙ったままでいることもあります。

でも、そうしたことのひとつひとつに価値があるのです。

ふたりとも、この仕事が大好きだからです。

 

 

 


元記事:http://bit.ly/1CdwuI1

(翻訳:服部聡子)

 

 

本:『断絶に普通はない』

No Ordinary Disruption: The Four Global Forces Breaking All the Trends

原題:『断絶に普通はない:あらゆるトレンドを打ち壊すグローバルな四つの力』

著者:リチャード・ドブズ、ジェームズ・マニイカ、ジョナサン・ウォーツェル

 

 

ブラックベリーのドラマティックな衰退とワッツアップの衝撃的な急成長、

中国で新しい記念日として突如として現れ、

一夜にして世界最大のオンライン・ショッピングの日となった「独身者の日(11月11日)」、

そして同じように「どこからともなくやって来た」かのように

産油国としての存在感を強大なものとしたアメリカ。

これらの重要で重大な事柄に共通するものは、一体なんなのでしょうか?

 

その通りです。

私たちの生きる時代は、不連続性の時代なのです。

今日、そして数年先の未来ではいっそうのこと、

巨大なグローバル市場のスピード、驚き、そして急激な方向転換が、

何度でも、歴史ある企業の運命を左右し、新規参入者にチャンスを与えるでしょう。

ビジネスモデルは、何ヶ月もしないうちに上下逆さまにひっくり返ってしまうかもしれません。

競合がまったく気付きもしないうちに勢いをつけ、表舞台に躍り出てくるかもしれません。

大きく深いお堀で守られていたビジネスも、いまや簡単に破られてしまうことに気づくでしょう。

新しいマーケットが、何もないようなところから魔法のように姿を表すでしょう。

テクノロジーとグローバリゼーションが、

それまでごく自然に作用していた市場競争にステロイド注射を打ってしまったのです。

 

これは、感覚的な受け取られ方というだけでなく、実際のデータにも見て取れるのです。

いろいろな長期的なトレンドの動きを表にしてみれば、

線はスムーズな上向きの傾斜にはなっていないことがわかるでしょう。

山の稜線のようにギザギザだったり、ホッケーのスティックのように上向きに急激に折れ曲がったり、

富士山のシルエットのように順調に上昇し、その後は下降を始めたりするでしょう。

私たちの生きる現代においては、傾向を読むということが徐々に困難になりつつあるのです。

 

『断絶に普通はない』では、世界を牽引するコンサルティング会社、

マッキンゼー・アンド・カンパニーの主要シンク・タンクである

マッキンゼー・グローバル・インスティテュートのディレクターたちが、

今後20年のグローバル経済を形作るキーとなる変化を読み解くために、

現代の裏側深くまで飛び込んでいきます。

なかでも、もっとも重要なのは、

ビジネスと政府のリーダーたちがこれまでの仕組みをリセットして、

未来に起こる断絶を有利に捉えるためには何が必要かを説明することです。

難解な専門用語や冗長な語句は廃して、エピソードやデータ、表を豊富に使用し、

そして経験に基づいた知識から、本書は中堅やシニアレベルのマネージャー、

投資家、政府関係者など、幅広い読者を想定して書かれています。

 


元記事:http://amzn.to/1dXm4X5

(翻訳:角田 健)

本:『トリガー 習慣をつくり なりたい自分になる』

Triggers: Creating Behavior That Lasts ?Becoming the Person You Want to Be

マーシャル・ゴールドスミス、マーク・リーター著

 

 

ベストセラー著者でありエグゼクティブ・コーチとして世界的に知られるマーシャル・ゴールドスミスが、

この最新の著書で、順調な仕事と生活から私たちを脱線させてしまう、

環境的そして心理学的なトリガー、きっかけとは何かを論じます。

    
自分自身では辛抱強く、人の気持ちが解り、問題解決のできる人間だと思っていたのに、

当てはまっていない自分に気づいたことはありませんか?

普段は動じない自分が、誰か特定の同僚がいるときだけは苛立ったり、

取り乱してしまったりすることに気づいて、驚いたことはありませんか?

また、自動車の運転中に、目の前に割り込まれてついカッとなってしまったことはありませんか?

    
マーシャル・ゴールドスミスが言うように、原因が何もないときにこういった反応が起こることはありません。

通常は、何か好ましくないトリガーが身の回りの環境のなかに現れた結果として起こるのです。

つまり、同僚として、パートナーとして、親として、あるいは友人として自分が思い描いている、

あるべき姿とは正反対の行動を引き起こさせてしまう人や状況があるのです。

    
これらのトリガーはあらゆるところに潜んでおり、現れると、いつも必ず調子が狂ってしまいます。

キッチンからベーコンの香りが漂ってくると、

医者がコレステロールを下げるように言っていたのを忘れてしまいます。

電話がなると、向かい合って座っている人の目を気にもせず、

条件反射的に光っているスクリーンに目をやってしまいます。

かくも頻繁に、周りの環境には私たちの手が及ばないものがあふれています。

しかし、たとえそうだとしても、ゴールドスミスが指摘するように、

それに対してどう反応するかは、私たち自身で選ぶことができます。

    
ゴールドスミスの著作のなかでもっとも力強く、ひらめきに満ちた本書『トリガー』では、

人生のなかでどのようにしてトリガーを克服し、

意味のある変革を起こしそれを継続さればよいのかを示します。

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変革というものは、どれだけ切迫していて、それが明らかに必要な状態であっても、難しいものです。

やらなければならないことが判っていたとしても、それを実行することとは異なります。

ゴールドスミスは、私たちは計画立案者としては優秀でも、

進むにしたがって環境が邪魔立てをするようになり、実行者としては不得手となってしまうと言います。

私たちは、当初の意思を忘れてしまうのです。

疲れ果て、穴の開いたバケツから水が漏れるように、自制心が流れ去ってしまうのです。

    
『トリガー』では、ゴールドスミスは、私たちが自身を毎日、簡単に省みることができる

「マジック・ブレット」という解決策を、

ゴールドスミスが言うところの「アクティブ・クエスチョン」と関連付けながら説明します。

これは、私たちの結果ではなく、努力を測るための質問です。

達成することと挑戦することは異なっています。

欲する結果を常に得られるとは限りませんが、挑戦であれば誰にもできるものです。

『トリガー』のなかでゴールドスミスは、

6つの「エンゲージング・クエスチョン」について詳細に説明します。

これは、私たちが、自身の至らない部分に気づくための努力を、

責任を持って行えるようになるためのものです。

    
本書は、私たちが人生における変革を起こし、

それを継続させ、なりたい自分になるために書かれた、

ゴールドスミスの個人的な経験に基づく脚本集です。

著者がこれまで仕事を共にした経営者やビジネス界の黒幕たちとの、内情が垣間見られる、

気づきの多いエピソードであふれています。

 


元記事:http://amzn.to/1HlZG5p

(翻訳:角田 健)