スタートアップが10年間ですべきこと(2)

by マイク・マストロヤニス

 

 

(※この記事は前回の記事の続きです)

第2章  問題を検証するために、会社からいったん離れよう

 

会社から離れるとは、ビジネスモデルを別の観点から眺めることです。

そうやって問題を見つけ出し、検証するのです。

 

当然のことながら、ここで検証することには顧客や顧客との関係、

顧客経路なども含まれます。

 

起業して間もない段階では、私たちはまだ、問題をテストしてもらえるような、

最良の顧客を見つけることにまで関心が及びません。

そこで、幅広い顧客に、製品と市場がフィットしているかどうか、

テストしてもらわなくてはなりません。

 

けれどもこの段階から、アーリーアダプター

(新製品や新しいシステム、新しいビジネスモデルを試してもらいたい、

影響力のある、革新的な顧客)を探す必要があります。

もし私たちがアーリーアダプターに売ることができないのなら、

アーリーマジョリティ(顧客の主流をなす人々)にも売ることはできないでしょう。

 

アーリーアダプターのおもな特徴は、以下のようなものです。

  • 問題を抱えていたり、必要なものがある
  • 自分が問題を抱えていることを知っている
  • その解決に向けて、積極的に動いている
  • 独力で問題を解決することができる場合もある
  • 解決のための資金をもっているか、すぐに用立てることができる

 

この段階で、私たちは3つのカギとなる問いに答えなければなりません。

 

1. 私たちは顧客の抱えている問題や、必要としているものを理解しているでしょうか?

また、顧客が未だ気づいていない問題を、私たちが見つけているでしょうか?

2. 大きなビジネスチャンスになるほど、大勢の人が抱えている問題でしょうか?

3. 彼らは友だちに相談するほど、その問題のことを気にかけているでしょうか?

 

この3つの質問に、すべてイエスと答えられれば、

製品と市場のフィットは達成できていると考えていいでしょう。

 

そこから以下の重要なステップを、踏んでいかなければなりません。

 

  •  顧客テストのための実験を計画する
  •  顧客が実際に過ごしている職場を体験する
  •  顧客と接触する準備をする
  •  顧客が問題を理解しているかどうか検証する。その問題が顧客にとってどのくらい重要かを評価する。必要な場合は面談も。ネット上では人はかならずしもほんとうのことばかりは言わないものだから。
  •  顧客についての理解を増す
  •  競争相手と市場の知識を得る
  •  競争相手をランチに誘う

 

この段階では、顧客が抱えている問題を理解し、顧客の声に耳を傾けることが必要です。

ですから、試作品はまだ必要ではありません。

基本的な見取り図や、簡単なパワーポイント、ビデオ、ウェブサイトでのシミュレーションなどで十分です。

 

◆ この段階であてはまるルール

 

1. 顧客は結論が出せるほどの人数を集めなければならない

 

2. 顧客を見つけるためにはさまざまな方法を使う

(友人・同僚からの紹介がベストだが、自分やチームのコネクション、

ソーシャルネットワークのリスト、資格者リスト、 友人のつて、家族、弁護士、投資家、会計士)

 

3. 顧客から出された情報をもとに作成した、問題に対するプレゼンテーションをおこなう

 

4. リストを作成 (紙を3分割し、「問題」「現段階での解決」「私たちの提案するソリューション」と書き出す。

これをもとに顧客と話し、相手の話に耳を傾ける)

 

5. 顧客のことをもっと知るための質問

  •  あなたは何が問題だとお考えですか?
  •  何か見過ごしている問題はないでしょうか?
  •  問題の優先順位はどのようになっていますか?
  •  何にも増して解決しておかなければならない問題というと、何になるでしょうか?
  •  仕事の中で何よりも面倒なことは何ですか?
  •  何かをひとつ変えるとしたら、何でしょうか?
  •  あなたより他に、どなたか明晰な人がいらっしゃいませんか? 私が話すことのできる人を3人ほど上げていただけませんか?
  •  このほかにうかがっておいた方が良い、重要な問題はありませんか?
  •  ご覧になっている中で、私も読んでおいた方が良いブログや雑誌を教えていただけませんか?

 

こうした顧客との会話をもとに、問題があるかどうか、顧客がその問題をどこまで気にかけているかどうか、

顧客の反応を見ながら、優先順位をつけ、結論を出していかなければなりません。

 

Clipboard and Pens

 

第3章 会社から離れ、製品・システムのソリューションをテストする

 

この段階で最初に私たちがやっておくべきことは

  • 第2章で実行した結果の詳細(現在までに明らかになったこと、意義や知見など)を、チーム全体で更新する
  • 変更すべきか、このまま推し進めるかを決定する
  • アーリーアダプターの潜在顧客情報にもとづいた必要最低限のリストを作成する
  • その他のビジネスモデルの特質を更新する

 

つぎのステップは、私たちのソリューションを、プロトタイプやデモ・ユニットとして形にし、

問題提示のプレゼンをおこなったアーリーアダプターの顧客を訪問する準備をします。

彼らに問題のソリューションを提示し、それに対する反応を見るのです。

 

ソリューションを提示している最中やあとで、以下の質問をおこないます。

それに対する反応を記録しておくことは、きわめて重要です。

 

  •  私たちの製品の何が、ソリューションとなり、何がならなかったでしょうか
  •  今日、どのように問題が解決しましたか?
  •  この製品の特徴となる点は、必要だと感じられましたか? それとも感じられませんでしたか?
  •  この製品は、従来のものとちがっている、と感じられましたか?
  •  この製品は新しい市場を作りだすことができると思いますか?
  •  現在ある製品よりも、改良されていると思いますか?
  •  理想的なソリューションとは何ですか?
  •  提案した収益モデルと価格設定について、どのように感じましたか?
  •  意志決定をするために、ほかの誰と話したら良いでしょうか?
  •  話は退屈でしたか?

 

あらかじめ、ビジネスモデルの重要な部分を網羅する質問リストを用意し、顧客に質問します。

インタビューを進める際に役に立つアドバイスをいくつかあげておきましょう。

  • 大勢を相手にするのではなく、1対1で話し合いを進めてください。
  • 主な目的は、何か新しいものを付け加えるのではなく、不要なものを削除することです。
  • 顧客全員にすべての質問をしようとしないでください。顧客によっては、ある面について詳しく知っている場合もあります。

 

顧客の熱意を評価することは、何よりも重要です!

反応には、以下のような可能性があります。

 

1. 顧客が製品を気に入ってくれ、変更の必要がない場合

 

2. 顧客は製品を気に入ってくれたが、ローンチ前に機能を追加してほしいと思っている場合

(この場合は、顧客の要望と開発時間のバランスを取る必要があります)

 

3. 顧客が製品を必要だと感じてくれなかった場合

 

※2. について。

一般人は、壊れてなければ、修理の必要はないと考えますが、

エンジニアは、壊れていないということは、十分な機能が備わっていないと考える傾向があります。

顧客を発見することは、有望な製品の基本形 (デザインばかりでなく全体的な機能まで)が、

お金を払ってくれる顧客の手に入る期間を短縮できる、ということです。

ここで起業家としての経験や直感に従って、決行か中止かの決定をおこないましょう。

 

直接には反応を確かめられないインターネットやモバイルでは、

顧客の製品に対する興味は、以下のもので測ることができます。

 

1. 顧客が進んで登録するかどうか

2. 最初に訪問してから、どのくらいの頻度で訪れるか

3. どのくらいの時間、滞在しているか

4. 何人の訪問者が友人を紹介しているか

5. 新規訪問者が常連となり、実際の利用者となる転換率はどのくらいか

 

一般的に言って、技術製品に対して反応が鈍い場合は、製品と市場がフィットしていないことを示しています。

製品に対して市場が成熟していないか、製品が、広汎な市場の需要を満たしていないか、なのです。

このような場合、問題は価値の提案のやり方と、顧客のセグメントの方法にあります。

 

いずれにせよ、事実(直感だけではなく)に基づいた結果に応じて、

ビジネスモデルを根本から変更していくか、このまま推し進めてつぎのステップへ移るか、

決めていかなければなりません。

 

Weekly Market

 

第4章 ビジネスモデルを検証し、変更するか、推し進めるかを決める

 

これは、新しいスタートアップの発展にとって、非常に重要な段階です。

変更するか、推し進めるかを決定するために、3つの重要な質問に応えなければなりません。

3つの問い(重役会議が必要かもしれません)の回答がイエスなら、

製品とシステムのソリューションに向けた顧客を確認する段階に進み、

ビジネスモデルの規模を、たとえば10倍以上にしてもよいかを調べます。

 

1. 製品とマーケットはフィットしているでしょうか?

  • 私たちは重大な問題に挑戦したり、差し迫った必要に応えようとしているでしょうか?
  • 私たちの製品は顧客の問題を解決したり、顧客の必要を満たしているでしょうか?
  • 事業を展開する場所や機会が十分あるほど、顧客が存在しているでしょうか?

 

2. 私たちの顧客とは誰のことで、どうやって彼らと接触するのか?

  • 顧客のプロフィールを書くことができますか?
  • 製品を顧客にどのように売り込んだらいいかわかるほど、顧客のことを知っていますか?
  • 市場の中で、異なるセグメントを見つけていますか(よそより大きい、よそより速い、優良な、新しい…など)。
  • 私たちのスタートアップからエンドユーザーまでの製品やシステムの流れ(経費やマーケティングも含めて)を理解していますか?

 

3. 私たちは利益を出し、会社を成長させていけるでしょうか?

顧客レポート(マーケットの大きさ、価格/収益、経費、競争相手など)をもとに、

ビジネスモデルを拡張したらどうなるか、

基本的な2-3年間の収益、費用、資金繰りなどのプランを計上し、財政的な情況を評価します。

 

すべてをふまえ、上記の3つの問いに、すべて肯定的な答えが出せるなら……

顧客を発見するための調査は、十分に大きなマーケットの存在を示しているでしょうか?

私たちの製品が待ち望まれている市場、

私たちが繰りかえし提供していけ、拡張を目指し、利潤を上げられる市場でしょうか?

 

もしそうなら、私たちは次の段階「顧客検証」の段階に進みます。

そうでなければ、私たちはビジネスモデルを変更しなければなりません。

 

 


元記事:http://linkd.in/1FgF0sP?

(翻訳:服部聡子)