ビジュアルシンキング 10と1/2の戒律

by ダン・ローム

 

ビジネスにおける問題解決の未来は、ビジュアルシンキングにあります。

 

ビジュアルシンキングとは、 私たちが生まれながらにして持っている、

目と心の眼を通してものを見るという能力を活用して、

表面には現れてこないアイデアに光を当てるものです。

 

? さらに、そのアイデアを直観的に引き出し、ほかの人にも

簡単に理解してもらえるような方法でシェアするものなのです。

 

誰もが知っているように、 実はビジュアルシンキングは少しも「新しい」ものではありません。

人間が大昔、進化の過程で言葉を介したコミュニケーションを おこなうようになる以前から、

問題解決のために使っていた道具です。

 

さらに、私たちが読み書きできるようになる前、 幼稚園児のころから培われてきた、

自分の考えをたどり、説明する能力です。

 

グローバル化した流通ネットワークと、新興市場の登場によって 世界はフラット化し、

情報過剰が通常の状態となり、 コミュニケーションチャンネルは増殖を重ねる・・・。

 

そんな中にあっては、問題解決は複雑さを増していくばかり。

 

言葉を換えれば、かつてないほどに多くのデータが、 さまざまな形と言語で存在し、

ビジネスパーソンが正しく決定し、 自分の考えを伝えなければならない必要性は

これまでにないほど高まっているといえます。

 

ビジネスパーソンとして、ふたたび視覚的な技能に親しむこと、

すなわち、 複雑な情報を見て、現れてくる重要なパターンを見抜き、

新しい可能性を描き出し、 そうした発見を他者に見せる能力を養っていくことは、

もっとも価値あるスキルとなりつつあります。

 

WHAT TO DO WHEN WORDS DON’T WORK

 

 ”BLAH BLAH BLAH:

 WHAT TO DO WHEN WORDS DON’T WORK”

(『言葉が役に立たないときはどうしたらいいか』)

 

の中で私は、

ビジネスパーソンが自分の目を使って考えることで、

 どのように複雑な問題を解決したか

という例をいくつもあげていきました。

 

 

もっと大切なのは、この中で紹介した4つの基本的なビジュアルシンキングのツールです。

これを使えばいつでも誰でもどんな問題にでも対処できるのです。

 

私は本をできるだけ「ハウツー」に絞りたかったので、

一番好きな章を削除することに決めました。

 

その章を、あらためて 『ビジュアルシンキング 10と1/2の戒律』とタイトルをつけて公開できることを、

私はうれしく思っています。

 

みなさんにとって役に立つもの、 そうして目覚めをうながすものであってほしいと願っています。

 

 

1. 図にすればどんな問題も解くことができる

 

 

 

戦略上の問題、財政上の問題、営業上、個人的、感情的な問題…。

直面する問題の性質がどんなものであろうと、

私たちがそれをイメージし、図に描けさえすれば、 問題はたいしたものとはなりません。

 

図にしてみれば、それまで気がつかずにいた側面や、 解決できるかもしれない方策が浮かび上がってきます。

 

図解は、どんなときでもやってみる価値があります。

たとえ情況が最悪で、はっきりとした解決策が見えてくることはないようなときでも、

自分たちを取り巻く情はが、それまでよりもずっと鮮明になっていることでしょう。

 

2. 誰もが「図なんて描けないよ、でも…」と言いながら始めている

 

 

図なんて描けないよ、と思うのは、あなた一人ではありません。

今日では、自分に図が描けると考えている集団は、

唯一、幼稚園に存在するだけです。

 

ちょっと待って…。でも、あなたもかつては幼稚園児ではありませんでしたか?

実は、私たちはみな、 生まれながらにしてすぐれたビジュアルシンキングの資質を備えているのです。

 

つまずいたりしないで部屋に入ってこれるくらいの視力があるなら、

図解しながら問題を解決していくには十分の視覚的センスはあります。

 

 

3. テーブルリネンには描かない(笑)

 

「ナプキンに描く」ことの本質は、 いつ思っていることを視覚的に明らかにしたくなるか、

決して予想がつかない、という点にあります。

ペーパーナプキンならどんな問題でも描きつけることができます。

だからこそ、カフェやバーは、人とアイデアを共有できるすばらしい場所なのです。

 

けれども、リネンのナプキンが出てくるしかるべき場所にいるのなら、

JKM(J=自分の、K=紙を、M=持ってくる)が必要となるでしょう。

 

ベストな教訓:メモ帳とペンをいつも持っておく。

(*ヒント:立派なレストランならウェイターはいつも喜んでペンを貸してくれるでしょう。

ちゃんと返すことをお忘れなく)

 

4. 最初にマルを描いて名前をつける

 

最初のひと筆が何よりむずかしい…なんてことは、夢にも思わないで。

紙の真ん中にマルを描いて、心に浮かんだ最初のものの名を書けばいいのです。

「自分」「あなた」「彼ら」

「今日」「昨日」「明日」

「利益」「損失」「自社製品」

「我が社」「競争相手」

「地球」「天気」……

何でもかまいません。

 

この段階では何から始めようがたいしたことではありません。

大切なのはあなたが始める、ということです。

 

 

5.「基本6タイプ」から最適なものを選ぶ

 

ひとたび最初のマルを描いたなら、 あとはもうそのマルが、私たちが解決すべき問題を

もっともよくサポートしてくれる「基本6タイプ」のどれに当てはまるのか、

選んでいくだけでいいのです。

 

A. 問題が「誰が」もしくは「何が」ということに関するときのイラスト

B. 問題が「どれほどの」ということに関するときのグラフ

C. 問題が「どこの」ということに関するときの地図

D. 問題が「いつの」ということに関するときのタイムライン

E. 問題が「どうするか」ということに関するときのフローチャート

F. 問題が「なぜ」ということに関するときの多変数(※注)グラフ

 

これらの6つのタイプは、どんな問題も解決できる図の基本的な枠組みです。

 

(※訳注) 多変数グラフとは、ダン・ロームの編み出した パワーポイント用のグラフである。

縦軸に平均寿命、横軸に一人当たりの収入、 グラフに示される折れ線の代わりに丸いバブルが人口を表し、

アニメーションによって時間の推移が示される。

 

6. あらゆるものを擬人化する

 

人間は人間に反応します

 

ラフスケッチであっても、棒人間に顔がついたようなものでも、

あっという間に注意や理解や反応を引き出すことができます。

 

因果関係と量を示すものであろうが、 あるポイントを強調するためものであろうが、

単にどのくらいの規模かを示すためだけであっても、 人を描くことによって人を引きつけるのです

(同様に、手描きのスケッチがセールスと コミュニケーションの面できわめて強い力を発揮するのも、

目の前の棒人間が、完璧とは程遠いからです。

「完成途上」に見えるからこそ、見る側に、参加して手伝ってください、

と呼びかけられているような気持ちを起こさせるのです)。

 

7. 脳のあらゆるトリガーを活用する(別名「認知以前」の属性を利用する)

 

7

▲どちらが上か(左)、この上を歩いてはいけないのがどこか(中央)、どちらが食べられる生き物か(右)

人間は瞬間的に認知できる

 

人間の精神は、たとえ「見た」と意識されていなくても、

目に入るさまざまなシグナルを 即座に処理するための進化を重ねてきました。

だからこそ「認知以前」という言葉があるのです。

 

人間はものごとについて、考え始めるよりずっと前に、

大きさ、形、向き、位置、形状の意味を認識し、判断し、

さらにそれらの特色を結びつけたり、ちがいを識別したりしています。

 

私たちは、ものごとの基本的な性質を処理する 「高レベル」認知サイクルをまったくムダにしていません。

ですから、情報が多ければ多いほど、私たちの 「もっと深い意味を知りたい」という意識が

いきいきと動き出すのです。

 

8. しゃべりながら描き、消すときはもっと大きな声で消す

 

 

昔の人は 「一枚の絵は千語に匹敵する(百聞は一見にしかず)」と 言いましたが、

それを言った誰かのおかげで、 私たちの絵に対する理解はすっかりねじ曲げられてしまっています。

 

良い絵のポイントは、言葉を排除するところにあるのではなく、

私たちがおびただしい言葉で言いあらわそうとすることがらを、

たった一枚の絵で置き換えることができるということなのです

(組み合わせや位置、比率、性質や量を言葉で説明するよりも、

図にすれば、意味するところをはるかに短時間で示すことができます)。

 

ですから、図を描くときはかならず説明を心がけてください。

たとえ自分の頭を整理するためであっても。

 

この箇所は何を意味しているのか、どうして自分はこれらを描いているのか、

どこに自分はいるのか、などなど。

 

たとえそれが意識の流れに浮かぶ泡でも、 図の中に現れ、位置づけられれば、そこで意味を成します。

何かがおかしいと思ったら、それも言葉にしながら消してしまうのです。

創造することと語ることを同時に進めていくことで、魔法が生まれるのです。

 

 

9. 別世界にあるものを描かず、いま、ここにあるものを描く

(別名 空はわざわざ「青くない」と言わない限りは青いもの)

 

私たちの誰もが、ものごとの「本当の姿」について 独自の考えをもっていますが、

誰もほんとうのことは知りません。

問題解決のために図解することの本質は、偉大な芸術に寄与することではありません。

 

私たちは「向こう側の世界」(真の世界)ではものごとがどう見えるかを、

明らかにしようとしているのではなく、

「いまここ」でものごとがどう見えているのか

(私たちがそれを自分の頭の中でどう見ているか)を描き出すのです。

 

人間の脳は、問題解決のためのすばらしい装置です。

たいていのとき、私たちはすでに問題の解決法を知っています

 

多くの場合、以前どこかで経験したからなのですが、 それが何かを理解する前に、

どこかにしまいこんでしまったのです。

自分の問題が、目の前で図となって展開されるうち、 解決がページの外に飛び出すこともよくあることです。

 

その図がどんなふうに見えるか気にするのはやめて、 図が示すものに意識を集中させてください。

 

 

10. 結論を描いて引き出す

 

図を描くという単純な行為は、 視覚を用いた問題解決の中で、最も重要な部分です。

描き出すことによって、私たちはものごとをじっくりと見るようになり、

全体を眺めるようになり、想像できるようになり、

ペンを取る前はどこかに潜んでいたアイデアを、 明らかにできるようになります。

 

つまり、何か新しいものが出現しようとしているところに、 私たちの図を連れて行くことは、

十分に価値あることなのです。

 

もうおしまいだ、と思ったら、 もう一度、 タイトルを、結論を、考えを、

コメントを書くために ペンを取り上げてください。

あなたのビジュアルシンキング・マッスルを 最後の一滴まで絞り出せば、

かならずや「ユウレカ!(わかった)」の声が出て来ることでしょう。

 

 

10.5 ウソはつかない(自分に、相手に、何よりも自分の絵に)

 

絵というのは強力なものです。

というのも、イメージを処理する脳の活動は、

言葉だけのときよりはるかに脳の奥深くに関わっていくので、

私たちは自分の見たものを信じる傾向があるからです。

 

しかも目で見た映像は、耳で聞くだけより、はるかに脳内に定着します。

どんな問題も図で描くことで解決ができる反面、

まちがった図は、事態をいっそう悪くもします。

 

ですから、図を描き終わったら、 最初に戻ってもういちど見直してみてください。

自分が誤解したまま描いたせいで、

図解の持つ素晴らしい働きを引き出していないのではないか、

と確かめるためだけでも。

 

 

著者:ダン・ローム (著述家、Napkin Academy主催)


元記事:http://www.theartof.com/articles/the-ten-and-a-half-commandments-of-visual-thinking

(翻訳:服部聡子)

最新の研究が教える「良い」顧客サービスとは

by レン・マーキダン

 

 

理論上は、顧客に喜んでもらえるサービスを提供する「秘訣」など、きわめて単純なものです。

  • 感情移入
  • 感謝
  • 有益であること

どれもたやすいことのように思えます。

 

この3つのスキルを向上させれば、準備完了、なのですから。

 

確かに「ありがとうございます」の言い方をマスターし、

語調や言葉の選び方による相手の受け取り方の変化を理解することによって

上記の3つを組み込むことはできるでしょう。

 

けれども現実には、顧客に満足してもらうことは、それほど単純ではありません。

実際に効果を上げた方法が、予想もしなかったことだった、というのも、よくある話です。

 

顧客が提供されたサービスの、どんなところに喜び、どんなところに腹を立てるかは、

私たちの直観に反していることがきわめて多いのです。

 

1. あなたは良いニュースと悪いニュース、どちらから話し始めますか?

  ――状況によります

 

あなたはこれまでどれほど、良いニュースと悪いニュースのどちらから初めてほしいか、

と、 誰かにたずねたことがあるでしょう。

 

昔からのお定まりの言い方ですが、実はちがいがあることがわかってきました。

あなたが口にする順番で、顧客の気持ちと行動を、実際に変えることができるのです。

 

カリフォルニア大学リバーサイド校で研究者たちは、被験者にニュースを配信する順序のテストをおこない、

反応や行動を測定しました。

 

そこで興味深いことがわかったのです。

 

悪いニュースを聞かされた人は、つぎの話で気分が良くなる傾向が見られたのに対し、

あとで悪いニュースを聞かされた人は、そのニュースをもとに、行動しなくては、という気持にかられたのです。

 

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通常の顧客サービスでは、顧客に満足してもらいたいので、

悪いニュースを先にもってくるのは良い考えです。

けれども、顧客を説得し、行動に移してもらいたいようなときは、 良いニュースから始めましょう。

 

2. 優れた顧客サービスには、速さより大切なものがある…

 

世間一般の通念では、顧客からの「ヘルプ」への対応は、速ければ早いほど満足度が高まる、とされています。

おそらく一般的には、その通りでしょう。

 

ところが、そのほかにも速さよりもっと重要な要素があることは、しばしば見過ごされています。

 

ギャラップは、銀行でサービスを受けた後、契約にいたった顧客がどのように感じたか、調査をおこなっています。

 

迅速なサービスを提供してくれる銀行に対しては、 6倍の人が、さまざまな面で取引をおこないたい、

と答えたのに対し、

「人的要因」での支持率が高い銀行(窓口のスタッフが礼儀正しく、親身な応対をしてくれる)では、

9倍もの人が全面的な取引をおこないたい、と答えたのです。

 

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ウィリアム・J・マキュアンは、『ブランドとの結婚』のなかで、このように言っています。

 

速さはひとつの要素ではあるが、

親身で的確なサービスを提供してくれる銀行窓口にくらべると、

重要さでははるかに劣る。

 

速さに焦点を当てるより、むしろ徹底した気配りや、親身な顧客サービスを重視してみましょう。

 

 3.  … ただし、ソーシャルメディアでは何よりスピードがものをいう

 

顧客の期待――顧客の満足感は、「期待」にかかっています――は、

あなたとのコミュニケーション手段によって変わってきます。

 

メールや電話、また対面のサポートでは、速さはさほど重要ではないかもしれませんが、

ソーシャルメディアでは、即応性が何にもまさる切り札となります。

 

ソーシャルメディアのリサーチをおこなっている「ソーシャルハビット」の調査によると、

ソーシャルメディアのユーザーの32%が、ブランドに連絡したときは30分以内の返信を期待しており、

42%のユーザーが、60分以内の返信を期待しています。

 

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また、そうした顧客は、夜間や週末だからという理由で、待たされることをいやがります。

57%の顧客が夜間や週末でも、通常の営業時間と同様に、すばやく返信がもらえることを望んでいるのです。

これはかならずしもフェアとはいえないかもしれませんが、事実です。

顧客はソーシャルメディアでは、スピーディな対応を期待しているのです。

 

 4. 末永く続く顧客を獲得したい? では「喜び」を超えるものを

 

顧客を喜ばせるやり方については、多くの人がさまざまに語っています。

そうした習慣を身につけることはすばらしいことですし、ビジネスの成長にもつながるでしょう。

 

けれども、顧客を喜ばせたからといって、 あなたが顧客の「特別な相手」になれるとは限りません。

愛着を持ってくれる顧客を作りだすためには、もっと有効な方法があります。

 

それは、顧客の手間を省く、ということです。

 

カスタマー・コンタクト協議会の2007年の調査によると、7万5千人を超える顧客が、

カスタマー・サービスの窓口と、電話、チャット、メールなどでコンタクトを取ったということです。

 

その結果から明らかになったのは、顧客がその企業に愛着を抱くようになった最大の要因は、

問題解決のために、顧客がやらなければならない作業を、企業が軽減してくれたことでした。

 

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この結果を、どうやって取り入れたら良いでしょうか?

答えはとても簡単。

顧客が問題解決のために何かをする必要があった場合には、それを代行してあげればよいのです。

 

あなたの顧客は、自分のアカウントを更新するために、リンクをたどり、

フォームに記入する必要があるのでしょうか?

彼らのために、アップデートをしてあげましょう。

 

あなたの顧客は、自分が抱える問題のせいで、トラブルシューティングのステップを、

ひとつひとつ踏んで、実行していかなければならないのでしょうか?

 

スカイプやグーグル・ハングアウトのスクリーンを用意して、ていねいにわかりやすく説明してあげましょう。

顧客はしばしば、問題解決のために、多くの作業をしなければなりません。

 

  • 別の番号に電話してください。
  • 郵送してください。
  • フォームに必要事項を記入してください。

 

こうした顧客の手間を取り除くことによって、双方の労力を減らすことができますし、

さらにはあなたの予想外の(予想外、ではない方が良いのですか)アプローチに、

たいそう驚いてもらえるでしょう。

 

 5.  企業と取引を停止する最大の理由は何ですか?

 

答えを聞くと、驚くことでしょう。 以下にヒントがあります。答えはこれ以外です。

  • 価格
  • 製品に欠陥がある
  • 競合他社の広告

確かに、これらはすべて、顧客の流出を引き起こしかねないものではあります。

 

けれども、2010年のライトナウ社による顧客体験レポートによると、

人が企業と取引をストップする最大の理由は、 顧客サービスの面で、いやな思いをしたことによります。

実際に、82%の人が、劣悪な顧客サービスを受けたことで、企業と関係を絶っています。

 

一方、満足のいく顧客サービスを提供し、顧客に喜んでもらえれば、予想にたがわず、

かならず大きな見返りがあります。

満足した顧客は、平均で9人の人々に、自分の経験を伝えるのです。

 

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満足した顧客はコスト削減にもつながります。

さらには既存の満足した顧客ひとりあたりに対する販売の可能性は、

新規顧客への販売の可能性の14倍にも相当するというのです。

 

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結局、劣悪な顧客サービスは、あなたの企業をつぶしかねないものであるのに対し、

優れた顧客サービスは、顧客との強い絆を築き、解約率を削減し、顧客の維持率や照会を増やし、

あなたのビジネスを急成長させることができるのです。

 

 

著者:?レン・マーキダン(マーケター、コピーライター)


元記事:http://blog.hubspot.com/marketing/surprising-customer-service-data

人はお金で動くのか?心理学から見たお金のチカラ

by クリスチャン・ジャレット

 
大金が手にはいるとわかれば、誰でも必死になる。

そんなことはあたりまえのように思えます。

だとすると、あなたが誰かにもっとがんばってほしいと思ったら、

お金をあげるから、と働きかければいいことになります。

ところが、現実はそんな簡単な話ではないようです。

 

お金にはすべてを変える力がある

 

お金がからんでくると、私たちのとらえかたはまるで変わってしまいます。

お金には、私たちを利己的に、また、競争心を駆り立てるちからがあるのです。

 

また、情熱を傾けてチャレンジしていたことが、

多額の報酬が得られるとわかったとたん、目的が金銭にすりかわってしまうこともあります。
こんな例を考えてみましょう。

余暇を利用して、あなたは本を書いているとします。

執筆は楽しく、寸暇を惜しんであなたは原稿に向かっています。
すると、その原稿を読んだ人が、まだ途中にもかかわらず、

それを書き終えたらお金をあげよう、と申し出てくれました。

 

今や執筆は、あなたにとってのフルタイムの仕事となたのです。

確かにこれは表面的には良いことのようにも思えます。

 

けれども、執筆に向けた心の持ちようは、申し出を受けた瞬間から変わってしまっていることでしょう。

あなたは書くことで、お金という報酬を得る。

原稿は、書き上げなければならない仕事となり、

完成を待つ人に対して、あなたは責任を負うようになったのです。

仕事のかたわら、趣味として、何かを作りだそうとしている人にとっては、

こうした出来事はよくあることでしょう。
さて、あなたはこれからどうなるのででしょうか?

 

お金という誘因(インセンティブ)が、人々の行動にもたらすものは、

なかなか予測がむずかしく、逆効果である場合も少なくありません。

心理学は、個人や集団にお金がからむと、

予測できない結果が生まれることを明らかにしています。

 

Work Chicago Daycare

お金は私たちの道徳意識をむしばむ

 

2000年にユーリ・ニージーとアルド・ルスティチーニは、こんな論文を発表しました。

 

保育園の子供を迎えに行くのに遅刻した人に対する罰金の事例です。

保育園は、子供のお迎えに遅刻した保護者に対して、罰金を科す、という規則を設けました。

ところが罰金にもかかわらず、遅れてくる保護者は徐々に増えていき、

結局、その数は倍にまでふくれあがったのです。
どうしてこんなことが起こったのでしょうか?

保護者は、罰金が、遅刻した場合に起こりうる最悪の事態であることを

知ってしまったのです。

 

罰金が科せられる以前は、保護者は子供と保育園のスタッフを待たせることの罪悪感から、

なんとか時間通りに保育園に着こうとしていました。

ところが今や保護者は、実際上、延長サービスの料金を支払っているも同然になったのです。

お金を導入することによって、暗黙のうちに築かれていた保育園と保護者の、

社会的な信頼関係と道徳観は、お金を導入したことによって損なわれてしまったのでした。
同様の転換が、あなたの仕事と人間関係の上で起こっていないか、考えてみてください。

 

あなたが仕事外の時間に、情熱を傾けて取り組んでいるプロジェクトでは、

自分の創造力を満足させることが、原動力になっています。

そのために、あなたは誰にも言われなくても、熱中してやっているのです。

あなたにとって、自分の創造性を充たすことは、何よりも大切なことなのです。

 

一方、仕事の合間にお金が支払われるプロジェクトをやるとなると、

お金以外の動機づけはなくなってしまい、道徳観も、人間関係も関係ありません。

それは、仕事の余暇、息抜きをする代わりにお金を稼ぐ、出口の見えない仕事になってしまったのです。

 

 

お金は私たちの時間感覚を歪める

 

1970年代に、エドワード・デシは、ボランティアの被験者にパズル・ゲームをやらせ、

その中の数人にだけ、お金を支払いました。

 

数日後、お金を支払った人々に、もうお金は出ないことを伝えた上で、

被験者全員を、ゲームと一緒にその部屋で待機させたのです。
最初にお金をもらった人々は、ゲームに触れようともしませんでした。

一方、お金をもらっていない被験者は、その間、楽しくゲームで遊んでいました。

 

いったい何が起こったのでしょうか?

 

お金をもらった被験者にとって、ゲームをすることは、

余暇の有効活用ではなく、「ただ働き」にほかなりませんでした。

 

それに対して、お金をもらっていない被験者にとって、

ゲームは一貫して、楽しむものだったのです。
また、時間給で働く人にとって、時間の感じ方がどのように変わっていくかを

調べた研究もあります。

 

サンフォード・デボーとジュリアン・ハウスは、

自分の時給を意識するように指示された人は、休憩時間、

音楽を聴くなどしても、あまり楽しむことができないことを明らかにしています。

 

つまり、時給10ドルの人にとって、2時間音楽を聴くことは

その音楽を聴くために、20ドルかかったように意識される、というのです。

 

Sarasota Design Conference

お金は私たちを怠惰にする

 

共同作業の場にお金がからんでくると、事態はいっそう複雑になります。

ある状況下では、高い報酬が、徐々にチーム全体の活動をむしばんでいくことさえあるのです。
どうしてそのようなことが起こるのでしょうか?

新しい雑誌の刊行に取り組んでいる、3人のデザイナーを想像してみてください。

それぞれがリサーチをおこなった上で、表紙のデザインを出し合っています。
仮にあなたがクライアントで、

良い結果が出れば、デザイナーに多額の報酬を支払おう、と言ったとします。

ここで、いわゆる「インセンティブ・リバーサル」として知られる現象が作用し始めるのです。
多額の報酬が支払われるという約束を聞いて、第1のデザイナーは気持ちが少しゆるみ、

自分が少しぐらい手を抜いても、ほかのメンバーが穴埋めをしてくれるにちがいない、と

思うようになるのです。

多額の報酬を得るために、おそらくほかの2人は一生懸命働くに決まっている、

だから自分はラクをしてもかまわない、と思うのです。
ところが実際はそうなりません。

ほかの2人も、同じようにさぼることを考えてしまうからです。

こうして、多額の約束は、裏目に出てしまいます。
報酬額が少ければ、このようなことは起こりません。

こんな報酬では、ほかの人たちはそんなに頑張って働かないだろうから、

自分がしっかりしなければ、と第1のデザイナーは考えます。

ところがそう考えるのは、第1のデザイナーばかりではないため、

結局、さぼる者は現れません。

こうやって、少額の料金で、チーム全体が一生懸命働くということになります。
とはいえ、多額の報酬の約束という仮定は、

補ってくれる人がいるからさぼる、という考え方が、経済的に理にかなっている、ということであって、

かならずしも実際に人がそうふるまうというわけではないのですが。
***
以上のことは、お金が実際に、動機づけには何の効果もない、といっているわけではなく、

予想が一筋縄ではいかない、と言っているにすぎません。

 

結局のところ、「情熱」には値段のつけようがないのです。

私たちがしっかりと認識しておかなければならないのは、

お金は決して万能薬ではない、ということです。

 

お金次第で、万事解決するわけではないのです。

もしあなたに情熱を傾けている、大切なプロジェクトがあったとしたら、

それを商品化するときには、よく考えてください。

ひとたびお金がからんでくると、もう後戻りはできなくなってしまうのですから。

 

 

著者:Christian Jarrett 心理学者 近著に『Great Myths of The Brain(脳の神話)


元記事:http://99u.com/articles/26185/how-money-makes-us-lazy

(翻訳:服部聡子)

 

 

クライアントが離れてしまったらどうするか?

by ジェフ・ウィリアムズ

 

 

大口のクライアントが去ってしまったら、

あなたの会社は二度と立ち直れないと思っているかもしれません。

けれども正しく行動すれば、損失を成功に変えることもできます。
誰もクライアントに切られたことなど、話したくはありません。

けれどもこれは、ビジネスをやっていれば誰にでも起こることなのです。
これまで大口のクライアントから切られた経験がないのだとしたら、

おそらくあなたは一般大衆を相手にしているのにちがいありません。

けれどもそこでも顧客は毎日、あなたの商品やサービスを、

選んだり、やめたりしながら、

あなたと取引するかどうか、ひそかに意志決定を行っているのです。
ある時点で、あなたの取引相手は、もはやあなたのサービスは必要ない、と結論を出しました。

そうして彼らはあなたと関係を断つことにします。

ぶっきらぼうに、怒ったように、あるいは申し訳なさそうに。

 

では、クライアントがもはやあなたと取引をしない、と言ってきたら、

あなたはどうしたら良いのでしょうか。

 

起業家として、あなたは悪いことは時に起こるものだということを

知っていなければなりません。

そんなとき、あなたにできることは、それに対応し、

あなたに言えることを伝えるだけなのです。

1.  推薦を頼む

 

一見、これはとんでもないことのように思えるかもしれません。

けれどもコンサルタントであり、スピーカーでもあるマーク・ファウストは

以下の点を指摘します。

 

解雇されたからといって、かならずしもあなたが失敗していたり、

相手があなたの仕事に悪印象を抱いたりしているとは限りません。

できれば、推薦状を書いてもらったり、

派生的な仕事をまかせてもらったりするのです。

 

ただ、これを頼む前に、何がうまくいかなかったか、

何らかの方法で、もう一度クライアントの仕事をやらせてもらえないか、

聞いてみる必要があります。

もちろん、クライアントが明らかにあなたの仕事、もしくはあなた自身に

不満を持っていることが分かっていれば、

推薦を頼むことはできません。

その代わりに…

2.  クライアントの競合のところへ行く

 

競合のところへ行き、あなたが過去にした仕事を参考にして仕事をすることは、

倫理的に見て、何も問題はありません。

 

とファウストは言います。

 

もちろん、たとえば機密情報を公開するような、

倫理に反することを行っても良いという意味ではありません。

また、あなたをお払い箱にした重役が、

あなたのことを喜んで保証してくれる、と偽ったりしてもいけません。

言葉を換えれば、あなたの誠実さを疑わせるようなことは、一切してはならないのです。
けれども、あなたを解雇した会社のために、あなたがしてきたことは、

あなたの職歴と経験の一部です。

 

そうして以前のクライアントの競合と一緒に仕事をする能力があなたに十分あるのなら、

自分を縛るようなまねをせず、そのチャンスをつかんでください。

とはいえ、ファウストはこのように指摘します。

 

おそらく多くの会社やコンサルタントは、

元のクライアントが最大の競合であるような人とは、距離を置きたがるでしょう。

 

3.  試合後の分析を

 

もし推薦状が手に入りそうもなく、

競合もあなたを雇ってくれそうになくても、

少なくとも、今は、何が間違っていたか、はっきりさせることができます。

どうしてあなたが切られたかわからなければ、ふたたび同じ過ちを繰りかえすでしょう。
ダイレクト・マーケティング・スタートアップのコネクト・ホーム・ソリューションズLLCの社長ニック・ニーハウスは、

私と話をする数か月前に、2人の大手クライアントから、契約を切られたばかりでした。

 

どちらの時もニーハウスは、8人の従業員に向かって、

収益の30%を失ったことを告げました。

 

「完全歩合制で働いている従業員にとっては、労働時間が少なくなることは大問題です。

私の収入にとっても、大きな打撃でした」とニーハウスは言います。

 

中小企業にとって、どんなクライアントを失うことでも、たいていの場合、一大事です。

けれども、起ち上げて間もない会社にとっては、一大事どころではない、死活問題です。
それでもニーハウスは、

「自分は頑固なので、あきらめて、先へ進むのはいやだった」と言います。

その代わりに、二度とも事後分析をして、何が起こったのか、明らかにしようとしました。

最初の時は、彼の会社の価格体系がうまくいってなかったことがわかりました。

 

私たちは新規顧客を重視し過ぎていたのです。

クライアントには2種類の料金が設定されていました。

配布したパンフレットで購入する人向けと、新規顧客向けです。

そうして新規顧客の方を、ずっと低く設定していたのです。

彼がまた別の大口顧客を失った二番目の時は、

自分のビジネスモデルがどのように効果を上げるか、

クライアントを十分に教育していなかったことがわかりました。

 

これまで最初はクライアントの相談を受けるという形で行っていましたが、

新規顧客に対してうまくいっていなかったので、

それをむしろ顧客のためのコーチング・セッションに変更していきました。

マイケル・パヴォーネも、2007年に彼の所有する広告会社の収益の30%を占めていたクライアントを失ってから、

こうした事後分析を行いました。

 

けれども、ニーハウスとは異なり、その広告会社はスタートアップではありませんでした。

パヴォーネ社は1992年に創業し、60人以上の従業員がいて、

年間収益が3,000万ドルにもなる企業です。

 

同社が最大のクライアントを失ったのは、むりやり外部からの統制が入ったことからでした。

パヴォーネ社のPRディレクターであるマイケル・ダッフィールドは、

「守りを固めることで、変革を成し遂げたのです」と言います。
同社のCOOであり、パヴォーネのパートナーでもあるエイミー・ビーマー・マレーは、

クライアントから切られたことで、非常に多くの貴重な教訓を得た、と言います。

「ある意味で、失った収益に相当するほどの価値ある教訓でした」
けれども、もし事後分析の結果、クライアントが離れていったのは、避けられないことで、

あなたやあなたの会社に何の落ち度もなかったことがわかったら、どうしますか?

ここからあなたは最終的な一歩を踏み出す時です。

4.  損失を受け入れる

 

「顧客を失うことは、いつも私の仕事や私自身に対して、不信任投票がなされたように感じます。

責任者として、受け入れるのは、簡単なことではありません」

とニーハウスは言います。

 

起業家として、あなたは悪いことは時に起こるものだということを

知っていなければなりません。

そんなとき、あなたにできることは、それに対応し、

あなたに言えることを伝えるだけなのです。

「人間は、ともすれば、世界は変化のないまま続いていく、と思いがちなものですが、

あなたの最良のクライアントが、10年後も最良のクライアントであることは、

おそらくないでしょう」とファウストも言います。

 

そうして彼は、限られた数のクライアントに売上を頼る中小企業のオーナーは、

そのクライアントがもっとも収益率が高いか、

どのクライアントがもっとも成長の余地があるか、

どのクライアントがもっとも失うリスクが高いか、

チャートも含めたマーケティング・プランを用意しておくことを勧めています。

 

その上で、あなたはそれぞれのクライアントに対して、

マーケティング・プランだけでなく、

つなぎ止めることと、離れていった場合の2種類の戦略を考えておかなければならない、と言います。

そうすることで、つねに新しいクライアントと収益源獲得に動き出せるからです。
あなたが損失を受け入れ、積極的に新しいクライアントを獲得しようとするのが速ければ速いほど、

あなたのビジネスもうまくいきます。

 

何よりも、その原因が資金不足であろうと、

顧客が望むものを提供できなかったことであろうと、

単にクライアントがあなたのことを好きではなくなったからであろうと、

クライアントを失うことは、不可避であるといえます。

 

それが弱肉強食の世界の本質です。

けれども、あなたが前もって計画にそのことも含めていれば、

新しいクライアントを獲得することもできるのです。

また、そうなることで事態が好転することもあり得るのです。

パヴォーネは言っています。

 

「進化か、さもなくば、死です」

 

 

著者:ジェフ・ウィリアムズ(著述家・編集者)


元記事:http://amex.co/1MzRpg1

(翻訳:服部聡子)

 

 

新しい「購入」ボタンでモバイル市場は変わるか

by コナー・ドウアティ、ヒロコ・タブチ

 
サンディエゴで広告代理店取締役を務めるデニス・チャップマンは、

毎日自分が何時間、服やプレゼントを検索しながらスマートフォンの画面を見ているかと思うと

ゾッとする、と言います。

そのくせ、実際に買い物をするのは、アイフォンではなく、

長年キッチンの机に置いてある、長年使っているデルのパソコンを起動させるのです。
「最近ではスマホで買い物をしようとさえ思いません」

とオンライン・ショッピングの経験を語るのは、ミズ・チャップマンです。

「ほとんどの場合、個人情報の入力は親指で、やり直しばかりなんです。

デスクトップで作業をしたほうがずっと楽に感じます」

Lynx - WordPress Theme - productshot

現在、グーグル、フェイスブック、ツイッター、ピンタレストなどのいくつかの企業は

「購入」ボタンをシンプルにすることで、

スマートフォンのブラウザでの買い物と、PCでの買い物の間のギャップを埋めようとしています。
購入ボタンはインターネットの初期段階からありました。

アマゾンの「ワンクリック注文」などに代表されるように、ボタンに

クレジットカード情報や、希望する配達先を、あらかじめ入力しておくのです。
けれども新しい購入ボタンは、テクノロジー企業が消費者と小売業者との仲介役となります。

ワンクリック注文の対象を、何千という小規模の小売業者に拡げて、

スマートフォンのタッチスクリーン上での、わずらわしいクリックをなくすのです。
膨大な量の情報が指1本で扱える世界からみれば、

購入がわずらわしいことなど、ささいな問題かもしれません。

けれども、テクノロジー企業にとっては重大事です。

なにしろ、数十億ドル単位の広告報酬が、スマホ利用者によってさらに拡大しつつある中、

オンラインショッピングの成否がかかっているのですから。
毎日、スマホの画面に目をこらしながら3時間近くを費やしながら、

アメリカ人のほとんどは、オンライン・ショッピングをパソコンで行っています。

大きなスクリーンとキーボードのあるパソコンは、

画面を見るのも、クレジットカード情報の入力をするのも、扱いやすいからです。

今年、アメリカ人がインターネットを見る時間の約半分は、

スマートフォンを通してであることが分かりました。

ところが電子商取引の売り上げは、そのうちの約1/5にすぎなかったことを

イーマーケターは報告しています。

iPhone 6 "one-handed mode"

「消費行動は、モバイルへと根本的に移っています。

ところが、費やされる時間と金額の間には、大きな隔たりがあるのです」

とヴァージニア州レストンにあるリサーチ企業コムスコアにて

マーケティング・インサイト副社長を務めるアンドリュー・リプスマンは言います。
新しい購入ボタンに取り組む企業は次のような理論を持っています。

成長しているスマホ業界では、多くの人は文字入力よりも画面タップを利用しています。

そのため決済のプロセスをもっとわかりやすくすることによって、

買い手の抵抗感が減れば、売上が増大する、と。
モバイルアプリは、この面で、良いモデルとなっています。

というのも、モバイル・アプリでは、人はウェブサイトへログインしたまま、

さらにクレジットカード情報を登録したままにしていられる、クローズド・システムを構築し、

その中でのタクシーの呼び出しから食料の買い物など

いろいろな注文を画面タップでおこなっているからです。

しかし、アプリをダウンロードする前提であればよいのですが、

オンライン上でランダムに商品を探し、買い物をするにはあまり適したものではありません。
コムスコアはスマートフォンからでは商品の画面が小さい、

配送や支払いのオプションを確認するボタンが小さくて使いづらい、

といったクレームがユーザーから出ていると報告しています。
「スマートフォンが広範に普及し始めた当初、

必要性に駆られて、画面の小さいバージョンのウェブサイトが作られましたが、

うまくいった企業はどこにもありませんでした」

とサンフランシスコにある、ピンタレストなどのモバイル決算システム会社

ストライプの共同設立者であるジョン・コリソンは言います。
ピンタレストの「購入可能ピン」は次のようなものです。

ピンタレストのアプリに、配送先情報とクレジットカード情報を入力します。

買いたいものを見つけたときは、「購入する」をクリックします。

この時点で小売業者には、配送先情報とクレジットカード、

もしくはアップル・ペイによる支払いという情報が伝えられます。
テクノロジー企業側としては、画面にある広告をクリックしても、

クレジットカードを利用して、「コンバージョン」してくれなれければ儲けになりません。

モバイルサイトで小売業者の出す広告をクリックすることにより生まれる売り上げは、

デスクトップを利用した際のものより84%低いと

インターネット検索広告会社アドマーケットプレイスは報告しています。
アドマーケットプレイス社長アダム・J・エプスタインによれば、

このコンバージョン率の著しい低さは

なぜモバイル検索広告料が、デスクトップ広告の値段の半額かということの

説明になっている、とのことです。

Shopping trolley with lower tray.

もちろん、パソコンの決済ページが快適であるということではありません。

けれどもモバイル端末が普及する以前に、

オンラインで購入することと、実際に店舗に出向くことの手間を比較すると、

決済ページで少々手こずったとしても、

実際に車を運転し、店に行き、商品を買い、家に戻るといった面倒にくらべれば、

どうということもなかったのです。
「モバイルに関して言えば、モバイルとパソコンとの比較になります。

取引をもっと増やそうとするなら、パソコンのものよりシンプルでなければいけません」

とエプスタイン氏は述べています。
グーグルほどモバイル広告に力を入れている企業はありません。

グーグルはデスクトップ、ラップトップパソコン上の広告スペースを一大支配下に置き

世界で最も価値ある企業になりましたが、

その企業もモバイル機器へのシフトチェンジを加速しています。
グーグルはアメリカを含む10か国において、

今年初めてモバイル検索が、パソコンでの検索を上回ったことを発表しました。

アメリカ広告企業はパソコンよりも、モバイル検索広告に投資することが見込まれています。

イーマーケターによればモバイル検索への投資は128億5千万ドルに対し、

パソコン検索に対しては128億3千万ドルとされています。
ここ数年、グーグルは重要な収入源であるコスト・パー・クリック(1クリックあたりのコスト)が

低下しており、ユーザーのクリック毎に支払われる広告収益の平均も低下しています。
「パソコンで行われていたのは、いわゆるeコマース、電子商取引でした。

検索し、商品を買うか予約を入れたりするなど、一連のプロセスが、

閉じた環の中で行われていたのです。

そのため、私たちにも追跡調査が可能でした」

と、グーグル・パフォーマンスメディア部門副部長であるジェイソン・スペロは言います。

Top Shop Girl

スマートフォンは、オンラインと店頭ショッピングの境界線を曖昧なものにします。

店内で買い物をしているときでも携帯電話を利用したり、

注文する電話番号を探すのに利用するためです。
しかし広告が購入に直接繋がるのであれば、消費者にとっても便利ですし、

おそらく広告料金も上がります。
近年グーグルはホテルの広告など、

掲載されている広告を通じて直接予約ができるような形式を公開しています。

スペロ氏によれば、新しい購入ボタンの公開は、今年の後半になり、

グーグル・プロダクト・アド内で利用できるようになるとのことです。
このことが小売業者にとってどうなるか、現時点で判断することはできません。

購入ボタンがオンライン公開されるようになれば、

買い物客にとっては、ショッピングサイトを探して買い物をする必要性が減り、

特定の店に行って買い物をするような習慣は、さらに減ることでしょう。
コムスコアのリプスマン氏はこの件に関し楽観的で、

購入ボタンは携帯機器ショッピングによる売り上げは向上すると考えています。
ピンタレストの「購入可能ピン」に共同で取り組んでいる

メイシーズのデジタルメディア部門副部長セレナ・ポッターは

店の収入がどこから入るかにはこだわらない、と述べています。
「お客様には買い物をしてもらいたいだけです。

どこで情報を得て、どのように決算するかは当社に問題はありません」

と彼女はコメントをしています。

 

 

ニューヨーク・タイムズ 2015年 7月15日)


元記事:http://nyti.ms/1ClPI3L

(翻訳:横手祐樹)

3つではなく2つ:少ない選択肢が売上を増大させる

 

1950年代に、靴のセールスマンからキャリアをスタートさせたベン・プロバーは、

やがて女性用シューズのチェーン店を経営するまでになり、大きな成功を収めました。

 

彼の店の価格は、どこよりも安いというわけではありませんでした。

品揃えも、街にある他の店とさほど違いはありません。

また、店舗自体も、ごく普通の店構えでした。

確かに良い店ではありましたが、

現代のデザインと感覚を極度に重んじる時代の目から見ると

競合に勝る点はありませんでした。

とりわけ巧みな売り込みがあるわけでもなく、付加価値があるわけでもなかったのに、

どうしてプロバー・シューズは毎年毎年、競合を上回る販売を成し遂げたのでしょうか?

成功の秘密を聞かれて、ベンは短くこう答えました。

 

「2つだからです。3つではなく」

 

ベンは、現代のビジネスが長らく忘れている、人間の本質を理解していたのです。

すなわち、選択肢が多いことは、決して良いことではない、ということです。

彼の店にやってきた女性が、1足以上の靴の試着を希望した場合、

彼女が靴を買う確率はかなり高いものです。

 

仮に、その女性がすでに2つの型の靴を選んでいて、

さらに他の種類のものも試そうしたら、ベンはこう答えます。

 

「かしこまりました。お客様がお好きな型のものをお持ちいたします。

このふたつのどちらの型がお好みでしょうか?」

West  Vancouver Archives

2つの選択肢を前にした顧客は、自分がどちらが気に入っているか、簡単に決めることができる、

ということを、ベンは知っていたのです。

 

ところが3つ、あるいはそれ以上の中から選ばなければならなくなると、

決めることはとたんにむずかしくなります。

そうして多くの場合、何も買わずに店から出て行ってしまうのです。

たとえ顧客がもっと多くの選択肢を求めたとしても、

実際にはその中から選ばれることはありません。

 

私たちは、多くの選択肢の中から選ぶことを強いられる場合よりも、

少ない選択肢から購入する場合が多いだけでなく、

自分の選択に自信を持ち、選択の結果に満足するのです。

 

これを別の言葉で言うと、「多」は「少」に及ばない、ということになります。

売り手が、買い手が決定を下すのを助けていた時代をふり返ってみるのは、

役に立つものです。

 

市場にこれほど多くの商品を出せるまでに、私たちは進歩したにもかかわらず、

人間の意志決定の方法は、少しも変わっていないことがわかるのです。

 

 


元記事:http://bit.ly/1GnnqDR

(翻訳:服部聡子)

著者:Simon Sinek 文筆家、スピーカー

Simon Sinek