シンプルなストーリーがビジネスを変える
by ティム・ベリー
小企業のオーナーであるあなたは、ひょっとしたら戦略などというものは、
学者やビジネスライターに任せておけば良い、と考えているかもしれませんが、
そのように単純なものではありません。
ビジネスに戦略がないために、誰にでも喜んでもらおうとしてノーが言えなくなり、
優先順位を見失ったあげく、悪戦苦闘に陥ってしまう。
これは失敗へと続く、ありがちなシナリオです。
近年、私はストーリーとしてのビジネス戦略ということを考えるようになりました。
それが結局のところ、直観的で戦略的な、素早く力強い方法であることがわかったのです。
ストーリーとしてのビジネス戦略
問題を抱えていたり、何か必要なものがあって、
あなたのビジネスを見つけ、何かを買おうとしている人のことを想像してみてください。
しばらくそんな人に向けてあなたのビジネスのことを伝える、と仮定してみましょう。
あなたのビジネスをストーリーとして書いたり、話していると想像するのです。
何も神経質になったり、書き直したりする必要はありません。
ただ、ありのままをシンプルに書けばよいのです。
たとえば、ラルフが自然食品を扱う食料品店の棚から、有機ケチャップを購入した、
こんなストーリーでかまわないのです。
あるいは、レストランであれば、
メアリーとラルフが、夜のデートにレストランを選ぶストーリー。
アプリを制作する会社であれば、メアリーが営業支出を追跡するために、
アプリをダウンロードするストーリーを想像するかもしれません。
これらのストーリーはそれぞれに、ビジネス戦略の基盤となるものが含まれています。
1. 標的市場
あなたのビジネスが解決するのは、誰の問題ですか?
誰があなたの販売しているものを欲しがっていますか?
あなたは彼らのことをどれほどよく知っていますか?
メアリーやラルフのどこが理想的な顧客なのでしょうか?
2. 商品・市場の一致
あなたのビジネスが提供しているものが、ターゲットとする市場の求めるものと
一致していれば、うまくいく可能性は高くなります。
特殊な要素に焦点を当て、ほかのものから際立たせれば、
マッチした市場に提供する際に、さらに効果を上げます。
有機ケチャップの会社のストーリーでは、
顧客のラルフはありきたりのケチャップを求めていませんでした。
夜にデートするメアリーとラルフは、食事の場所に、
ファストフードや安っぽい店を避けていました。
アプリ制作会社では、メアリーに必要だったのは、支出が簡単に把握でき、
情報を管理し、支出報告書に書き出すことのできるアプリでした。
3. ストーリーを公開しよう
上記のようなストーリーには、顧客を購入へと進ませる道は、含まれていません。
ラルフが自然食品の店で有機ケチャップを見つけるためには、
適切な場所で販売されていなければならず、
そのためにはキャッチフレーズと流通経路を確保される必要があり、
さらにそのためにビンの包装デザインに頼らざるをえないかもしれません。
レストランは、口コミやレビューサイト、
またメアリーとラルフ利用しているモバイル・アプリにかかっています。
支出追跡アプリは、おそらくアプリストアの配置や、レビュー、
経費報告ソフトウェアとのリンクによって変わってきます。
レストランとアプリは両方とも、ソーシャルメディアで口コミによって
重要性が拡散すれば、着実に顧客増につながっていくでしょう。
たとえばツイッターやフェイスブックのシェアはきわめて大切ですし、
いくつかのカギとなるブログ、そこでもコメントも大勢の目に触れるものです。
あなたのビジネスは、複数のストーリーがあるかもしれませんが、
2つ、3つのストーリーは、焦点をぼかしかねず、収益減少に結果する可能性もあります。
あなたのストーリーをビジネスの強みに転換しよう
あなたの戦略的なストーリーをつかって、価格設定や製品構成、
マーケティングメッセージ、メディアに関するビジネス上の意思決定を牽引してください。
たとえば…
・ケチャップ会社は、ヘルシーな自然食品であることをアピールし、
陳列棚で目立つために、包装デザインを変更するかもしれません。
高めの価格設定は、品質に関してのポジショニングを強化することになるでしょう。
高所得者層にアピールしたければ、最新の低温圧搾技術を強調することも良いでしょう。
・レストランのオーナーは、そのデートの夜のストーリーを
口コミサイトやグーグル向けに手直しして、
料理の品質や、静かで落ち着いた雰囲気、サービスを強調しながら使います。
ラルフとメアリーがレストランを検索できるように、
いかにウェブサイトを強化しているか
モバイル機器からも応答可能で、メニューを知ることもできる、
スマホにも最適化されている、というストーリーを利用することもできます。
こうすれば価格引き下げや、「お薦め料理1品の価格で2品提供」などという誘惑に
打ち勝つこともできるはずです。
・アプリ制作会社の場合、スプレッドシートへの書き込みの簡略化や会計アプリなど、
焦点を絞った開発の方が、うまくいくかもしれません。
そうすれば、アプリストアで具体的なプロモーションを行うことができるし、
簿記や会計など関連ソフト事業者と、共同プロモーションを行うこともできます。
ストーリーはなぜ、どのように、効果を上げるか
戦略とは、焦点化にほかなりません。
戦略は、誰があなたの標的市場ではないかを明らかにするものでもあり、
また、あなたのビジネスが提供しないものを明確化するものでもあります。
つまり、彫刻のようなものなのです。
大理石の原石は、誰が、何をしても良いものです。
けれどもそれを彫刻に仕上げるためには、焦点化と効果的な戦略が必要なのです。
多くのビジネスオーナーは、この焦点化をいやがります。
というのも、ノーを言いたくないからです。
私たちはみんなに喜んでほしいために、あらゆることをしてあげたい、という気持ちを持っています。
けれども、誰もかれもを喜ばそうとすることは、成功ではなく、失敗の原因なのです。
(翻訳:服部聡子)