顧客を友とするなら、従業員は友になりえない。マーケティングを志す覚悟
/カテゴリ: マーケティング深化論 by トイアンナ /作成者: Shimafujiこんにちは、トイアンナです。
私はこれまで起業を3回ほど経営しており、中小らしく資金繰りに奔走してまいりました。一度会社員を経験してから経営者と比較してみると、経営の仕事の「主」は資金調達だなとしみじみさせられます。
さて、資金調達にはVCからの投資や株式売買などさまざまな手法がありますが、その中で「顧客の方を向き、売上を上げる」のがマーケティングです。企業は資金を手に入れても最終的に売上・利益へ還元できなければ立ちゆきません。ですから企業とは「顧客を最優先にせざるをえない」組織です。
もし経営者が株主のことだけを考えるなら、粗悪な製品を高く売った方が利益率も上がり還元できる額も増えます。しかし経営者が毎回そうしないのは、長期的な利益に反すること、すなわち顧客からそっぽを向かれると分かっているからです。その代わりに経営者は「マーケティング」を使って売上と利益を上げようとするのです。
顧客を最上の友とするならば、そうでなくなる相手もいる
マーケティングの天才、ジェイ・エイブラハムは、顧客を「かけがえのない友人のように扱え」と言います。自社製品をやみくもに「売りつける」のではなく、どうすれば相手の本当の望みを果たせるか心を尽くすこと。それがどれほど重要かは、経営者ならだれもがご存知でしょう。
しかし顧客を最上の友にするということは「最上の友にしない相手」を決めることでもあります。戦略は常に優先順位を定めることであり、「みんなお友達」というわけにはいかないからです。
冒頭の例に出した株主は多額の利益を還元してもらえるにも関わらず、顧客が目にする広告宣伝費や、将来の研究開発へ利益を回すことを許さねばなりません。短期的には損失扱いになるけれど、長期的に企業の株価を上げるにはこれしかない、と株主を説得せねばならないのです。
従業員へ「お客様を最優先にさせる」難しさ
従業員も同様です。人件費へ還元できるほど稼いでいても「来年の製品をもっとよくしよう」「お客様から話を伺う調査費にしよう」と他のコストへ使ってもわらねばなりません。さらに言えば、そのことを誇りに思い、顧客へプレゼンせねばならないのです。
従業員は給与のために働いているのですから、マーケティングを重視して広告や調査、研究に予算を使うことは彼らの利益に反します。従業員は経営者ではないのですから「こんなことに金を使うなら、ボーナスをちょうだいよ」と思うのが普通でしょう。そして、もっと高い給与がある会社へ離職する方も出るでしょう。
ではそれでもなぜ、マーケティングをするのか。それはマーケティング・スキルを使いこなせば長く勝てる企業になるからです。長く勝てれば、従業員へ報いることができます。長く自社へ残ってくれた社員へ給与で見返りを渡すことができるのです。
さらに申し上げれば、従業員は自社を知る「最初の顧客」でもあります。自社を誇りに思ってもらい、自社製品・サービスを愛し、拡散してもらう。その従業員へ報いたいのであれば、最初に人件費を削ってでもマーケティングへ資金を割きましょう。投資家、株主、従業員へ報いたいなら、まずは顧客の方を向き戦略を立てること。この優先順位が崩れるならば、今は売れている製品も、数年後には暗雲立ち込めることでしょう。
それでもなぜ、マーケティングをするのか
口だけで「マーケティングを重視する」「お客様第一主義」と語ることはできます。しかし徹頭徹尾それを実現するということは、他のプレーヤーを最優先にしない、という覚悟が必要です。
「短期的に割引や短い納期で勝つよりも、200年残る会社を作る」
「真に顧客から愛され、広告宣伝費がゼロでも従業員を食べさせる会社になる」
「来期だけではなく、10年株主へ報いられる企業になる」
それが、マーケティングの存在意義です。
もちろん、10年後に勝つためには今期、そして来期も成長せねばなりません。いきなり10年後、ポンと利益が降ってくることはないのです。しかし「割引セール」「大安売り」など目先の手段を愛用するだけでは、あなたの会社は残りません。
価格とは違う観点で「ここの製品・サービスは違う」と思っていただくこと。そのためには機能で実際に差をつけるだけでなく、それを顧客に認知してもらい、愛してもらわねばなりません。良いものを作れば売れる、そう信じられるのは最初の100人へ商品を売るときだけです。それ以上の市場に打って出るには「知られる」「愛される」「購入される」「リピートされる」のすべてに戦略を立てねばなりません。
そのためにもジェイ・エイブラハムが提唱したビジネスを大きくする3つの原則「顧客を増やすか」「使用頻度を上げる」「単価を上げる」手法をマーケティングを通じ、考えていくべきなのです。言葉だけの「お客様第一」を脱却するためにも、マーケティングを学び、使いこなしてください。
トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com
起業前にやっておくべき5つのこと
/カテゴリ: ビジネス情報, 起業のコツ /作成者: Shimafuji(※この記事はhttps://www.linkedin.com/pulse/5-must-dos-before-becoming-entrepreneur-j-t-o-donnell/を翻訳したものです)
by J・T・オドネル
多くの社会人が、やりきれない思いを抱えながら、今日も仕事をしています。あなたもそのひとりではありませんか?
先のギャラップ調査によると、労働人口の87%が自分の仕事に「やりがいを持てない」と感じている(言葉を換えると、楽しんではいない)ことがわかりました。こうした人々の多くは、いつか起業する日が来るのを夢見ているのではないでしょうか。
みんな、雇い主のために働くことを、金でできた鎖につながれたように感じ、どこかでうんざりしているのでしょう。不満を抱えた社員のかなりの数の人々が、自分のために働き、コントロールしているのは自分だと実感する日を空想するのです。
けれども、仕事を辞めて、フルタイムの起業家になる前に……
私はこのことをお聞きしたいと思います。
では、どうしてスタートアップの90%が失敗しているのでしょうか?
フォーブスの記事によると、アメリカでは新規事業の90%が失敗しているということです。どうしてなのでしょうか?
それは、多くの人が、立ち上げの時期を生き延びる準備ができていないからです。そのために多くの人々が生計を支えることができなくなってしまうのです。
ものやサービスを売ることは、多くの人が考えるより、大変なことです。起業家も情熱だけでは成功できません。
先日、私は「ユー・ユニバーシティ」のポッドキャストで、創設者のマイケル・ペッグズからインタビューを受けました。その中で、私たちは起業までの道のりについてや、自分が「私の仕事」であると実感することが、のちに起業家へと成長していく上で助けになることについて、話し合いました。
「私の仕事」を成功させるために何が必要か、ということや、どうして私が起業家になろうと思うようになったかを話しながら、私は、野心的な起業家が全員、会社を立ち上げる前にやっていたことについて、考えさせられたのです。
そのときの話はさておいて…
ここでは、そこから5つのアドバイスをお送りしましょう。
1. できるだけたくさん貯金をしておくこと
すくなくとも給与1年分、できれば2年分が必要です。事業を起こすのにかかりきりになる間、収入の心配をしないですむようにしておくのです。
起業時に、金銭的に余裕があればあるほど、受けるストレスも少なくてすみますし、そうなれば肝心のビジネスでも、良い決断を下しやすくなります。
2.あなたの情熱と、人々が抱えている問題が交差する地点を見きわめる
すべては需要と供給の関係にあります。
お客様が買いたいと思うものをあなたが提供できなければ、うまくやっていくことはできません。
反面、あなたが起業家になることを選んだのは、好きなことがやりたいという情熱があったからです。
解決策は、この両方のベクトルが交わるところを探すことです。
あなたの情熱と、人々が抱える問題が交差する地点を見きわめられれば、あなたは価値のある、しっかりした提案をもって、あなたのビジネスをスタートさせることができるでしょう。
3. あなたのネットワークのために働く
ビジネスをうまくスタートさせるためには、できるだけ大きな支援の輪が必要です。専門家や同僚、友人、家族からなる、広汎なネットワークが不可欠なのです。
起業家としての船出に際して、周囲の人々に支援を要請する時のために、あなたは彼らの要求に応えることで、「信用の貯金」をしておく必要があります。それが「ネットワークのために働く」ということなのです。
あらゆる機会を通じて、周囲の人々の助けになる方法を、知っておきましょう。そうすれば、みんなもあなたのことを大切に思い、信頼してくれるはずです。たとえば…
- 周囲の人と必要な情報やリソースを分かちあう
- 空いた時間をボランティア活動にあてる
- あなたのネットワークに属する人が、互いに親しくなれるように手助けする
これらはほんの一例ですが、あなたが今日、ネットワークのために働いておけば、明日はネットワークがあなたのために働いてくれることを忘れないでください。
4.あなたの「起業までの道のり」のストーリーを作る
これは、起業家として成功するためには、不可欠の要素です。成功した会社にはかならず、すばらしいストーリーがあります。とりわけ起業家は、その物語を熱意と確信をこめて語ることができます。
紆余曲折に満ちた物語でなければなりません。感動を呼び、人々が夢中になり、行動を起こしたくなるような。何より大切なのは、誰もがあなたのビジネスが成功するよう、応援せずにはいられなくなるようなストーリーであることです。
あなたが起業家として成功したいなら、あなたの「起業までの道のり」は、細部まで明確で、うまく語られなければなりません。自分のストーリーをおもしろく語る方法を学ぶことが重要になってくるのです。
まずはストーリーの細部をはっきりさせ、確かなものにすることから始めて、感情に訴えかける山場を作ります。
5. あなたのストーリーをシェアする ― できるだけ大勢の人と!
あなたのストーリーができたら、今度はそれをみんなに知ってもらわなければなりません! 同僚や、家族や、友だちとシェアしましょう。オンラインでも、オフラインでも、できるだけ大勢の人と。あなたのストーリーを話す相手は、多ければ多いほどいいのです。
あなたがビジネスを始めるらしい、という評判を取っておくことが重要です。どうしてあなたが熱意を持って会社を設立しようとしているのか理解してもらえれば、みんなあなたを支えてくれます。けれども、そのことはあなたが語って聞かせなければ、誰にもわかってもらえないのです!
ここにあげた5つの秘訣が、あなたがいつの日か旧態依然の職場を離れ、起業という船出を果たす助けになることを、願ってやみません。
自分の会社を運営することは、苦労するだけの報いがあります。ただし、それもうまくやってのけてこそ、なのです。もちろん困難なことや紆余曲折があるでしょうが、あらかじめできる準備をしておけば、失敗のリスクを抑えることになるはずです。
上にあげた5つは、おそらくその助けになるでしょう。
幸運を祈っています。
元記事:http://linkd.in/1Cun9yB
(翻訳:服部聡子)