共同創設者を見つける技術

 

世間では「孤高のイノベーター」というイメージが好まれていますが、

このイメージは正しくありません。

成功した会社の多くは、少なくともふたりの人間の貢献によってスタートを切り、

成功にいたったのです。

 

陰と陽、作り手と売り手、夢想家と現実主義者、なんと呼んでもかまいません。

事が成ってから、世間は一方の創設者だけを 「イノベーター」 と持ち上げるかもしれません。

けれども、新しいベンチャーを立ち上げるのは、チームの仕事なのです。

レコード・レーベルCDベイビーの共同創設者、デレク・シヴァーズは、

このように言っています。

 

最初のフォロワーとは、孤独な変わり者を、リーダーに変える人のことだ。

 

状況によっては、最初のフォロワーが最初の顧客であるケースもありますが、

多くの場合、最初のフォロワーとは、会社の2番目の従業員、

すなわち共同創設者のことなのです。

 

会社が成功をおさめ、楽しく大きくなっていくためには、

すばらしい共同創設者以上に重要な要因は、ないといってよいでしょう。

逆に、無能だったり、怠惰だったり、誠実さに欠ける共同創設者以上に、

会社をうまくいかず、悪化させ、情けない事態に陥らせる要因も、まずありません。

 

このコラムでは、どうやって共同創設者を選べばよいのか、

その方法を明らかにしていきましょう。

 

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 ■□ 共同創設者が分かちあわなければならないもの


 

会社を成功に導くために、共同創設者には、共通点と相違点がなければいけません。

まず、あなたと共同創設者が一致していなければならない点をあげていきましょう。

 

◆ ビジョン

ビジョンという言葉は、夢想家のおかげで濫用される傾向にありますが、

共同創設者というソウルメイトにおいては、

スタートアップと市場がどのように進化していくか、

お互いが同じような直観を共有していることを意味します。

 

たとえば、創設者のひとりは、コンピューターのことを、

今後も大きな組織のビジネスの道具であり続ける、と考えていて、

もうひとりが、これからは小さく、安価で、誰もが使うようになる、と考えていたなら、

ふたりのビジョンがマッチしているとはいえません。

 

◆ 求めるものの大きさ

誰もが帝国を築きたいと考えているわけではありません。

また、誰もがライフスタイル・ビジネスを望んでいるわけでもありません。

何かを求めることに 「正しい」 も 「間違っている」 もありません。

求めるものは、一致するか、一致しないか、しかないのです。

創設者が最初から、自分たちが何を求めているかわかっているわけではありませんが、

それでも、少なくとも大筋で合意できているならば、心強いものです。

 

◆ どこまで深く関与するか

創設者は、同じレベルで関与していなければなりません。

スタートアップか、家族か、バランスの取れた生活か、どれが最初に来るでしょうか?

創設者の優先順位が異なっていたら、スタートアップの成功は、むずかしくなります。

 

創設者のひとりが、2年間働いたあとは、

そのスタートアップをさっさと売り払おうと考えているのに、

他の創設者は何十年と持ちこたえる会社を作ろうとしている…

というのでは、問題はかならず生じます。

 

理想を言えば、創設者はともに最低でも10年間は、

そこにとどまることで合意しておいてほしいものです。

 

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 ■□ 共同創設者に必要な相違


 

逆に、スタートアップが直面する、多くの困難を思えば、望ましい「ちがい」もあります。

異なるスキルやものの見方が、必要不可欠になってくるからです。

ここであなたと共同創設者が異なっていた方がよい点を、あげていきます。

 

◆ 専門分野

スタートアップには、最低限、製品を作る人(スティーブ・ウォズニアック)と

それを売る人(スティーブ・ジョブズ)が必要です。

立派な組織を築くためには、創設者たちがお互いを補っていかなければなりません。

 

◆ 方向性

細部を詰めることを好む人もいれば(マイクロスコープ)、

細部を無視し、大きな問題に頭を悩ますことを好む人もいます(テレスコープ)。

成功するスタートアップには、両方のタイプが必要なのです(ジャイロスコープ)。

 

◆ 視点

視点が多彩であればあるほど、ものごとは楽しくなります。

若い人と老人、裕福な人と貧しい人、男性と女性、都会人と地方に住む人、

エンジニアと販売員、技術屋と感情的な人、ムスリムとクリスチャン、

ストレートとゲイ、アンドロイドとiOS、マッキントッシュとウィンドウズ、

というふうに。

 

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 ■□ 忘れてはならないこと


 

共同創設者を選ぶプロセスは、リスクに満ちたものです。

というのも、共同創設者と袂を分かつことにでもなれば、

つらく、時間のかかる筋道を経なければならないからです。

 

これは多くの面で、結婚相手を選ぶことと似ています。

離婚の危機を孕んでいる、という面でも。

以下にあげるのは、念頭に置いておいてほしいことです。

 

◆ 急がない

創設者は何十年も一緒に働くことになる相手です。

あなたも結婚相手を追加したりはしないでしょう?

もちろんあなたが離婚の常習者でなければ、の話ですが。

 

結婚と同様、一緒になるのは早すぎるよりは遅すぎる方が良いのです。

解消は、きわめてむずかしいことなので、時間をしっかりかけてください。

 

◆ 資金力を強化する目的で、創設者を増やさない

創設者を追加する理由、従業員ではなく、特に創設者を加える理由があるとすれば、

あなたのスタートアップを、よりしっかりしたものとし、成功の見込みを増やすためでしょう。

 

けれども、自問してみてください。

「もし資金が必要でなければ、ほんとうにこの人を雇うだろうか?」

もし答えがノーなら、その人を雇うのは愚かなことです。

 

◆ 最高を想定し、最悪に備えた計画を

いつの世も、創設チームは空中分解するものです。

あなたのスタートアップは例外かもしれませんが、その場合に備えて、

誰もが(あなたも含みます)自分の持ち株を、長期的に保有しておくようにしてください。

こうすれば、大量の資産を所有している人が、四年以内に離れていく事態を防ぎます。

これは起業家的な意味でいう、婚前契約に当たるものです。

 

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最後に、実践的な戦術をお教えしましょう。

私が「ショッピングセンター・テスト」と呼んでいるものです。

 

あなたがショッピングセンターにいると思ってください。

そこであなたは共同創設者となるはずの誰かと会うことになっているのですが、

その相手はいまだ現れません。

 

あなたには選択肢があります。

こちらに向かって来る人の中から、ひらめきを頼りに駈けよって、こんにちは、と声をかけるか。

それとも、別の店に行くか。

 

もしあなたが出会った誰かに対して、強い第一印象を受けたとしても、

その人を共同創設者にしてはいけません。

これは、あなたが人生で結ぶことになる、2番目に重大な絆なのです。

実際には、もっとも重要かもしれません。

ですから焦らず、誤らず、できればただ一度だけ、その決定を下してください。

 

 

 

著者:ガイ・カワサキ?

(翻訳:服部聡子)