女性が権威を持って話すには
「女性は人口の面から見れば多数派ですが、発言力という面では、未だ少数派です」
こう語るのは、スピーチ・コーチであり『雄弁な女性たち(The Well-Spoken Woman)』
の著者でもあるクリスティーン・ヤンキーです。
彼女はアメリカでもっとも力のある女性と、一緒に仕事をしてきました。
ヒラリー・クリントンの大統領選挙戦や、
ミシェル・オバマの初の国際的なスピーチのアドバイザーを務めながら、
彼女たちがどのような舞台であっても、威厳に満ちた話し方ができるよう、
助けてきたのです。
ヤンキーのアドバイスは、基本的に、女性-男性の一方に偏ったものではありませんが、
専門職に就いている女性は、心に留めておいた方が良いものです。
女性の自然な高い声は、子供っぽい印象を与える傾向があります。
「ですから女性の場合、2、3歩、後ろに下がって話し始めると良いでしょう」
とヤンキーは言います。
会議での発言力を高めたい、
プレゼンテーションのスキルを上げたい、
仕事関係者と話すときに、もっと影響力と権威を発揮したい、
など、あなたの望みがどのようなものであっても、ヤンキーのアドバイスは役に立つでしょう。
部屋を支配する
ヤンキーによると、力と権威を背景に話すということは、
ほとんど精神的な駆け引きで決まる、とのことです。
「ひとたび部屋に入ったなら、そこが自分の場所だ、と意識することです」
多くの女性が会議やプレゼンテーションを、
まるで自分がテストされる場であるかのようにとらえている、と言います。
あなたが自信を持ち、リラックスして臨めば、それは周囲にも伝わるのです。
さらに、後ろの方にすわり、人の陰に隠れようとしたり、
頭を低くしたりするような態度を取らないように、とも、注意うながしています。
チャンピオンのように立とう
「プレゼンテーションやスピーチは、きわめて身体的な行為です」
舞台に上がったり、人々の前に立ったりするときは、
チャンピオンの姿勢を取ること、と彼女はアドバイスします。
つまり、一方の脚を前に出し、体重は後方の脚にかけます。
頭を高く上げ、肩を後ろに引き、上体を心持ち前に傾け、
にっこりとほほ笑みを浮かべましょう。
▲ヒラリー・クリントン
すわるときは、テーブルに肘を
腰を下ろしたら、お母さんのアドバイスは忘れて、両肘をテーブルに載せてください。
「両手だけをテーブルに載せないでください。それだとあまりにお上品になってしまいます」
その代わりに、背を伸ばし、前腕部をテーブルの上に載せます。
直接であれ、カメラ越しであれ、視線はほかのスピーカーやカメラレンズから外さないでください。
メッセージは聴衆に合わせて調整する
プレゼンテーションが近づいた頃、よくある間違いは、こう自問することです。
「私は何を話したらいいの?」
そうする代わりに、しっかりと考えてください。
「聴衆は、どんな話を聞きたいのだろう。
私のテーマについて、どれほど知っているのだろう」
ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の共同議長であるメリンダ・ゲイツは、
聴衆のことを理解するのが、とりわけ巧みです。
彼女の話によって聴衆は、遠く隔たった世界に運ばれていき、
そこで慈善活動が与えた影響を、みずからも経験し、目の当たりにすることができるのです。
▲メリンダ・ゲイツ(ビル&メリンダゲイツ財団共同会長)
ポイントを突く
「あなたの敵は、注意持続時間です」とヤンキーは言います。
とりとめのない、散漫なスピーチでは、誰も聞いてくれません。
効果的なプレゼンテーションは、「伝えたいこと」から離れることなく、
短い文章で構成します。
余談は必要なく、すぐに要点に入ってください。
ゆっくりとしたテンポで、呼吸を意識する
ペプシ社の会長インドラ・ヌーイは、イェール大学の経営管理大学院に進むために
最初にインドからアメリカにやってきた頃は、
ほとんど息を継ぐ暇もないほど、早口にまくしたてていました。
ヌーイはゆっくり話すこと、自分の意見に権威を持たせるような、
もっと効果的なペースで話をすることを学ばなければなりませんでした。
ヤンキーによると、アナウンサーのしゃべる速さは、1分間に150ワード
(※日本語の場合は約300-350語)ほどであるということです。
▲インドラ・ヌーイ(ペプシコCEO)
あなたの声を道具として活用しよう
「何よりもしてはいけないのが、抑揚もなく、単調で平板にしゃべることです」
ヤンキーは、声はもっとも活用されていない道具だと考えています。
本来なら、声をうまく使うことによって、力を誇示し、興味を引き出すことができるのです。
声を最適化しましょう。
中音域を使い、声の抑揚をつけることによって、強調や変化を表します。
声の大きさは、注意を喚起しますが、大きすぎないように。
重要なセンテンスの後は、間をおきましょう。
はっきりと発音することによって、聞き取れない言葉が出てくるのを防ぎます。
言葉と言葉の間に、意味のない語を差し挟まない
「ええ…」「あのう…」「なんというか…」「まあ…」「…みたいな」など、
このような言葉は、あなたの伝えたいことを弱め、あなたの持つ力をむしばんでいきます。
このような無機能語を差し挟むことによって、あなたは緊張しているように見えるし、
あまり準備できていないようにも、また上の空のようにも見えます。
このような語を差し挟んでしまうのは、間(ま)があくのを怖れるからです。
けれども実際は、「間」というものは、きわめて効果的なものだとヤンキーは指摘します。
ユーモアと暖かみが感じられるように
IMF専務理事であるクリスティーヌ・ラガルドや、
フェイスブックCOOであるシェリル・サンドバーグなどのような女性リーダーは、
言葉が明瞭で雄弁なだけでなく、聴衆と気持ちを通じ合わせるために、
ユーモアをうまく使っています。
彼女たちは聴き手を安心させ、晴れやかな気持ちに誘うとともに、
自分に寄せる信頼を確立していくのです。
▲クリスティーヌ・ラガルド(IMF専務理事)
自己不信を取り除こう
「リズ・レモンではなく、ティナ・フェイであってください」
(※コメディ・ドラマ「30ロック」は、ティナ・フェイが脚本・制作総指揮を担当し、
主人公のリズ・レモンを演じている)
自分を信頼し、自分が言わなければならないことの重要性を信頼することによって、
ほかの人からの信頼も得ることができる、とヤンキーは言います。
「30ロック」でフェイが演じるリズ・レモンは、いつも自分に自信がなく、
自意識過剰に苦しめられて、結果的に自分の権威を損なうようなことをしているのです。
そうならないためにも、機会を見つけてスピーチの練習をしてスキルを向上させたり、
進んでパネルディスカッションの司会を務めたり、
公的・私的を問わず、さまざまな集まりの場でスピーチをしたりすることを通じて、
自信をつけていくことを、ヤンキーは勧めています。
「細かいところに気を配っていけば、どんどんよくなるはずです」
著者:ジェンナ・ゴードロー
(翻訳:服部聡子)
著者:Jenna Goudreau エディター、スピーカー