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ジェイ・エイブラハムが考える顧客とのコミュニケーション

Q:顧客とのコミュニケーションについて、ジェイ・エイブラハムさんはどのようにお考えですか。

A:大切なことは、「私は顧客の問題をどう解決できるだろうか」という視点を持つこと、そして「顧客に信頼してもらえるアドバイザーになること」です。

この考え方は、たとえば、自社の商品やサービスをただ販売するだけの販売員とは大きく異なります。「売上を伸ばしたいから、ノルマを達成したいからこの商品を売りたいんです。だから買ってください。」このように直接的に言わなかったとしても、態度や言葉からそれとなく伝わってくることはありませんか。あるいは、競合の商品を選ぶデメリットをことさら強調して、「だからうちの商品を選ばないと損しますよ」とやんわり脅されているような気分になったことはありませんか。

また、一般的にコミュニケーションというと、自分のことを伝えたり、相手の話を聞いたり、話し合ったりする、という場面を思い描くのではないでしょうか。顧客とのコミュニケーションではさらに一歩踏み込んで、顧客の立場になって考えたり、その人の抱えている問題を解決するために自分は何ができるだろうかと考えたりすることが大切なのです。ジェイ・エイブラハム氏は、次のようにも述べています。

自分のアイデアや起業家精神、数字、目標、あるいは自分自身に夢中になります。(中略)けれどもあなたが恋に落ちるべき相手はクライアントです。あなたはクライアントに「売る」のではなく、ビジネスをする以上の関係を築き、クライアントにとって、人生における信頼できるアドバイザーになるのです。
(2016年ビジネスサミット・経営塾テキストより抜粋)

このようにすれば、その信頼に基づいて長期的な関係を築くことができます。そのような関係を築いた顧客(エイブラハム氏は「クライアント」という言葉をつかいます)は、新たな顧客を継続的に紹介してくれることでしょう。つまり、初期投資をすることなく、質の良い新規顧客を得ることができるのです。顧客はあなたの商品やサービスに満足し、顧客の輪がさらに広がり、あなたのビジネスもそれに伴って成長していくことができるでしょう。

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(渡部真紀子)
ShimaFuji IEM 翻訳チームの一員。
アメリカの大学でビジネスを学んだ後、帰国して小売り業界で働くが、国際的な仕事への想いが募り、翻訳の道へ。マーケティング関連の翻訳を経て、弊社翻訳チームに加わる。

好感の持てる人になるために

by ガイ・カワサキ
元記事:http://bit.ly/1LLllX7
(※著者の承諾を得て翻訳しています)

そこにいれば、誰もが幸せになるような人がいる。
そこからいなくなれば、誰もが幸せになるような人もいる。
―― オスカー・ワイルド

人を引きつける魅力は、ジャングルだろうと、市場だろうと、インターネット上だろうと、かならず表面に現れます。
そんな魅力は、自然に人に作用し、人の気持のありようを変化させるのです。
しかも、持続性があります。
(少なくとも気持ちを変えたテロリストが、小屋を出て行く間ぐらいは)。
 
こうして気持に生じた変化ゆえに、人の行動までもが変わっていきます。
 
人を引きつける魅力は、人を操るためのものでもなければ、ものごとを自分の思い通りにするためのものでもありません。
 
それでも、私たちは人を魅了することを通して、結果的に状況と関係を変えることになります。
少々性格に難があろうと、正当な理由があれば、それを不問にしてもらうことはできます。
けれども、もし周囲の人が好意を持ってくれたなら、人は自分の能力を、いっそう高いレベルで発揮できるでしょう。
 
ですから人は、能力を持つだけでなく、みんなに好意を持ってもらえるようになることもまた、大切なのです。
たいていの人は、気楽に、ありのままで、自由につきあえる人が相手なら、気持ちの良い人間でいられるのですから。

 他者を受け入れるということ

まずは心がまえから始めましょう。
もしあなたがある人を好きでないなら、相手も決してあなたのことを好きになってはくれません。
単純なことです。
人を好きになるためには、まず相手を認め、受け入れること。
あなたが受け入れさえすれば、相手の側も受け入れてくれるでしょう。
他者を受け入れるために理解しておかなければならないのは、その点です。

人は二進法で生きているわけではありません

人は、1 か 0 か、賢いかバカか、価値があるか無価値か、ではありません。
誰もが強さと弱さを持ち、ポジティブであると同時にネガティブでもあり、
有能なところと無能なところをあわせもっています。

誰もがあなたよりすぐれた何かを持っています

もし誰かを受け入れたことで、がまんを強いられるとき、
おそらくあなたは相手が自分より劣っているからこんな目に遭わされるのだ、と考えることでしょう。
けれども、すべての点において、あなたの方が優れているわけではないのです。

人は相違点より共通点の方を多く持っている

基本的に、ほとんど誰もが家族をもち、意味のある何かをし、人生を楽しみたいと考えています。
これは人種や宗教、肌の色や国籍を超えて、変わらないことです。
あなたがきらいな人とも多くの共通点を持っていることでしょう。

チャンスをあげましょう

ストレスにさらされ、しかも組織に属していない人が、あなたが持っているような有利な点もないまま、
自閉症の子供や、暴力的な配偶者、老いていく両親、ガンなどと向き合っているのかもしれません。
その人と同じ状況に身を置いてはいないのなら、簡単に相手に対して判断を下してはいけません。
その代わり、彼らにチャンスをあげるのです。

死は平等に訪れる

やがてあなたも骨になり、あらゆる人と同じように、塵に帰ります。
ですから、尊大な気持は捨てましょう。
死の前では、あらゆるものが平等です。
Photo:Stained glass By:Broo_am (Andy B)
Photo By:Broo_am (Andy B)

 目尻に皺を刻みましょう

良い印象を与えるには、人に笑いかけることです。
笑顔になるのに、お金がかかりますか?
とんでもない。 もし笑顔を見せないでいると、何かを犠牲にしますか?
あらゆること、とは言わないまでも、少なくとも笑わないままの人には、誰も魅力を感じません。
もし笑顔が役に立たないと思うのなら、以下の質問に答えてください。

  •  あなたは不機嫌な人と仕事をするのが好きですか?
  •  誰か不機嫌な人が好きな人を知っていますか?
  •  怒っている人が、望むものを手に入れると思いますか?

 
ジョージ・クルーニー風の笑顔になる秘訣は、頭の中に気持の良い考えを抱くことです。
心の中で腹を立てていては、部屋がパッと明るくなるような笑顔を見せることはむずかしいでしょうし、
せいぜい「愛想笑い」になるのが関の山でしょう。
 
解剖学的にいうと、愛想笑いは頬筋、つまりは顎関節から口角まで伸びている筋肉だけを使っています。
これはコントロールするのが簡単なので、愛想笑いや、いわゆる「パン・アメリカン・スマイル」
(というのも、パン・アメリカンのフライト・アテンダントは、乗客を見ても心からハッピーにはなれなかったからです)
になってしまうのです。
Photo:Smile please... By:J Kaps
Photo By:J Kaps
 
本物の笑顔は、眼輪筋も一緒に動きます。
この筋肉は、目を囲む筋肉です。
この筋肉を使うと、目は細くなり、目尻に皺が刻まれます。
本物の笑顔には、特別な名前があります。
「デュシェンヌ・スマイル」
フランスの神経科医であるギヨーム・デュシェンヌにちなんでこの名前がついているのです。
ですからあなたが人に会うときは、何か感じの良いことを考え、眼輪筋を働かせ、
水がたまるくらいに深い皺を刻んでください。
あなたの感じの良さを増すためには、ボトックスや美容整形などは無視してかまいません。
 
 

元記事:http://bit.ly/1LLllX7


(翻訳:服部聡子)

 

TEDのように話すには

 

 

TED(テクノロジー/デザイン/エンターテインメント)は、2014年3月、30周年を迎えました。

TEDの登場以来、基調講演のあり方は、大きく様変わりしつつあります。

TEDの「講演」は、オンラインで1日200万回以上のペースで視聴されており、

さらにそれより規模の小さい、独立したTEDxのイベントが145ヵ国で開催されていることもあって、

 

TEDの講演を見たことがある人は、現在、非常に多くなっています。

そのため、今後、私たちがプレゼンテーションするときは否応なくTEDと比べられることになるでしょう。

 

500回分にも及ぶTEDの講演(150時間)を分析し、

再生数2千万回を数える人気スピーカーへのインタビュー、

さらにはコミュニケーション分野の神経科学者との対話をふまえ、

カーミン・ギャロは、TEDのすばらしい講演には、共通してあるものが備わっていることを見つけたのです。

 

もし、あなたが聞き手に影響力を与え、あなたの考えで人を動かしたいのなら、

つぎのプレゼンテーションでは、その「共通して備わっているもの」を、ぜひ取り入れてください。

 

ここではカーミンの

『TEDのように話す:世界のトップの頭脳が編み出した人前で話すときの秘訣』

からのアドバイスを紹介しましょう。

 

 

Photo:DSC06245 By:hahatango

1. あなたの情熱を伝えよう

 

あなた自身が情熱を持っていなければ、人の情熱をかきたてることもできません。

自分自身を掘り下げて、話題と自分の深く、有意義なつながりを確かめてください。

自分の熱い思いを観客に表明することに、躊躇しないでください。

 

 

Photo:Sheryl Sandberg By:www.geteverwise.com

2. 少なくとも3つのストーリーを話す

 

フェイスブック最高責任者(COO)シェリル・サンドバーグは、このように言っています。

彼女はTEDの講演の準備をしていました。

事実やデータを満載して、個人的な話題はすべて排除したのです。

すると、ある友人が強く言いました。

 

「もっとあなた自身の話、 ワーキング・マザーとしてのチャレンジみたいな、

あなただけにしかできない話を聞かせて」と。

 

サンドバーグはそのアドバイスを聞き入れ、講演を変更し、まったくちがったものにしたのです。

 

そうしてその話は、講演と同じタイトルの『リーン・イン 女性、仕事、リーダーへの意欲』

という本となって、 一躍ベストセラーになり、世界中で話題となりました。

 

 3. ツイッターの投稿にぴたりとはまるタイトルをつけよう

 

TED.comで視聴できる1600の講演をあらためて見てから気がついたのは、

タイトルがすべて――ひとつの例外もなく――、140文字以内に収まっている、

ということです。

 

つまり、ツイッターの制限字数に当てはまるのです。

 

視聴回数の多い講演を見てみましょう。

 

ケン・ロビンソン『学校教育は創造性を殺してしまっている』

 

ブレネー・ブラウン『傷つく心の力』

 

サイモン・シネック『優れたリーダーはどうやって行動をうながすか』

 

もしあなたのタイトルが140文字以内に収まっていなければ、もういちどよく考えてください。

 

 

4. ユーモアを、ただし控えめに

Photo:Sir Ken Robinson By:eschipul

 

教育専門家ケン・ロビンソンのTEDの講演は、これまででもっとも人気の高いもので、

2千万回を超える視聴回数があります。

同時に、大変ユーモラスな講演でもあります。

 

ところがケンは、一度も 「ジョーク」 は言っていません。

かわりに、個々の出来事にもとづいた見解を、ユーモラスに語るのです。

 

「このあいだ、ディナーパーティに出席しました。

――実は、教育関係者というのは、あまりディナーパーティに招待されたりはしないんですがね、

まあ、そこで、ひとたび自分が教育関係者だ、なんて言うと……」

 

ユーモアを交えながら、ひとりの観客の顔に、にっこりと笑いかけています。

 

 5. 聞き手の五感を刺激する

 

時には観客を、スライドから外の世界に連れ出してあげてください。

実演や、びっくりするようなことをやってみるのです。

 

かつてビル・ゲイツは、マラリアの原因についてプレゼンテーションしている最中に、

TEDの観客席に向けて蚊を放したことがあります。

 

彼のパフォーマンスは夜のニュースでも取り上げられるほどのものとなりました。

予想外の出来事を、無視できる人など存在しません。

 

  6. パワーポイントのスライドは、文字より画像を

Photo:TEDxParisSalon - 27 nov 2012 By:Emmanuel Vivier

 

TEDのスライドで箇条書きを見ることは、ほとんどありません。

写真や画像、動画、それから注意深く選ばれた、ごく少数の言葉です。

 

パワーポイントやプレジ、アップル・キーノートといったデザイン・ソフトウェアを使う際の共通テーマは、

「箇条書きを使わない」です。 絶対に。

 

 7. 18分ルールを守る

Photo:Chris Anderson By:pmo

もしあなたの名前がビル・ゲイツや、シェリル・サンドバーグ、 ボノやスティングでないならば、

あなたの持ち時間は18分です。

 

TEDのキュレーター、クリス・アンダーソンは、 18分あれば真剣な議論は十分できるし、

少なくともその間は人の注意力をつなぎとめておける、 と言っています。

 

 8. 観衆に何か新しいことを伝える

Photo:Rokia Traore By:whiteafrican

 

人間の脳は目新しいものを放っておくことはできません。

いつも何かしら新しいもの、わくわくするようなものを探しています。

びっくりするような情報、新鮮な、予想もしていない情報を盛り込んでください。

 

 9. 練習を重ねる

 

TEDの講演者の中には、18分間の講演のために、200回も練習を重ねる人が何人もいます。

あるスピーカーのパフォーマンスはあまりにすばらしく、オプラ・ウィンフリーの目に留まるほどでした。

 

今日、彼女のキャリアはオプラのサポートのおかげで復活を遂げ、TEDの中でも有名な講演となっています。

 

 10. 自分らしくあれ

 

 

お芝居はほとんどの人に見破られてしまいます。

自分ではない誰かのまねをしようとすると、観衆からの信頼を失うだけになってしまいます。

 

嘘偽りのないあなた自身、正直なあなたであってください。

 

 

もしかしたら、あなたがTEDで講演を頼まれることはないかもしれません。

それでも、TEDのようなプレゼンテーションをおこなうようになれば、

聞き手に感銘を与え、あなたの夢に手が届くチャンスは、 はるかに大きなものとなっていくでしょう。

 

著者:ガイ・カワサキ


元記事:http://bit.ly/1QPIoQt

(翻訳:服部聡子)

ネガティブイメージ・キャンペーン

最近、大手カジュアル衣料品チェーン店で買い物をした。
いつものとおり会計をしていると、レジの店員が最後に
「ご意見をお聞かせください」というようなことを言いながら、
アンケートはがきを商品の袋に入れた。
 
その申し訳なさそうな顔が何とも印象的だった。
他の店舗でも同様だった。最後に必ず一言添えながら、アンケートが同封された。
そのとき私が思い出したのは2つ。
1つはそのチェーン店の売上高が大きく減ったという最近のニュース。
 
それからもう1つは、昔勤めていた会社で、破たんした山一證券出身の人が言っていた
「アンケートって会社が行き詰まるとやるんですよね」という言葉だった。
 
絶好調のときのその衣料品チェーン店のレジの店員は、こんな顔はしていなかった。
 
勢いがあって、さすが大手と思わせる接客ぶりであった。
今でももちろん、みな感じが良いとは思うのだが
(競合の某海外アパレルの接客態度には、本当にあきれるときがある)、
はがきを入れるときの店員さんには、何だかみな一様に負のオーラが漂っているような気がした。
 
ビジネスは結局イメージに尽きると思う。
とくにこういった小売業であればなおさらであろう。
「売上が前年比大幅減」で
「店員がはがきを申し訳なさそうに入れる」店の服は、
たとえそれがまったく同じでも、
「売上が絶好調」で「店員の威勢が良い」店の服とは違うような気がするのである。
 
顧客の声が聞きたいのなら、他にもっと方法があるはずである。
単純に、すべてのレジで一言添えてはがきを挟み込むコスト自体が膨大なことに加えて、
店員も顧客も、みんなの気持ちが盛り下がるマイナス効果絶大のキャンペーンである。
 
ちなみにその山一證券出身の同僚が言っていたのは、山一がつぶれる直前の時期は、
やたら社内アンケートのオンパレードであったという話であった。
 
そのとき私(とその同僚)が勤めていた会社も業績が低迷し、社内調査を繰り返していたので、
彼の一言は、周りの空気を凍らせるのに十分な説得力のあるものであった。
 
あなたの会社はどうだろうか。
社内であれ社外であれ、アンケートをしているだろうか。
 
もちろんそれが効果的な場合もあるだろう。
貴重な情報やリストが手に入るかもしれない。
しかしそれは、そのコストと効果と影響を十分見積もった上でやっているものだろうか。
 
ちょっときつい言い方をするならば、自分で考えることをあきらめた末に、
「我々には顧客や社員の声が分かりません」
と丸投げしてはいないだろうか。
 
私はちなみにこの衣料品チェーン店を応援したいと思っている。
日本を背負って立つ存在として、海外でもいっそう頑張ってほしいと思っている。
 
だからこそぜひ彼らにはお願いしたい。
同じ膨大なコストをかけて顧客の意見を収集しようとするのなら、
当然ながらはがきをそのまま捨ててしまった私でも思わず返信してしまうような、
何か秘策を考えてほしいのである。
 


(新海祥子)

 

日本人のあいづち

人の感情の90%は、言葉以外の要素、身ぶりや表情、声のトーンなどで相手に伝わっているといいます。
ところが私たちは、自分の言葉に向けているほどの注意を言葉以外のものに向けているでしょうか?
私たちが気づかないところでコミュニケーションを左右している身ぶりについて、考えてみました。

あいづちというのは、日本人特有のしぐさだというと、
驚く人もいるかもしれません。

もちろん外国人も、相手の話に合わせて、うなづいたり、”Un-huh”と言ったりすることもありますが、
あくまでもこれは「同意」を表明するというニュアンスがあり、日本人のあいづちとは、少しちがうように思われます。

社会学者の多田道太郎も『しぐさの日本文化』の「あいづち」の章で、

日本人のしぐさということで私がまず思いつくのは「あいづち」である。

と言っています。

あいづちとは、多田によると、「鍛冶で、弟子が師と向かい合って互いに槌を打つこと」から来ているといいます。

弟子と師が槌をトンカントンカンと打ち合わすところを、向かい合うふたりの仕草になぞらえているのでしょう。
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wikipedia「刀工」

外国人は打ってくれないあいづち

あいづちというと、私が思い出すのは、こんな経験です。

高校時代、私は近所に住む外国人の家に、英語を習いに行っていたのですが、
そこで最初に気がついたのは、先生があいづちをまったく打ってくれないことでした。
私の眼にぴたっと視線を合わせたまま、通じているのかいないのか、じっと黙ったままなのです。

私もまだろくに言葉も出ないころで、”come” と “go” を言い間違えたりするときだけ訂正をしてくれるのですが、
それ以外は私が言葉に詰まって四苦八苦していても、じっと次の言葉を待っているのです。
相手の視線をはね返しながら話し続けるだけで、全身汗びっしょりになりました。
おそらくそれは、単に語学力の問題や、相手が外国人であるという緊張感ばかりではなかったはずです。

そのとき初めて、日本人が相手ではないと、あいづちというのは打ってくれないことを知ったのでした。
そうして、日本人である私にとって、あいづちのない話というのが、どれほど緊張感を増し、疲れるものかということに、
このとき初めて気がついたのです。

相手によっては誤解されることもあるあいづち

ふだん、私たちは意識しないまま、人の話を聞きながら、あいづちを打っています。
日本人同士なら、お互い、気にも留めないしぐさですが、外国人が相手だと、こんな摩擦を生むこともあります。

以前、聞いた話なのですが、あるアメリカ人が、日本人に頼み事をしました。
日本人はうなずきながら、”Oh, yes,” “yeah” ” I see.” としきりに言います。
アメリカ人は、てっきり相手が頼み事を聞いてくれるものだとばかり思っていたのですが、
最後に「それはできない」と断られてしまったというのです。
アメリカ人は、日本人は不誠実だ、何を考えているか本当にわからない、と、腹を立てた、というのです。
おそらくこの日本人は、日本でのあいづちを、そのまま英語でやってしまったのでしょう。
私はあなたの話を聞いています。
あなたも大変なのですね。
あなたの気持ちもよく理解できます。
それで、それからどうしたのですか?
もっと聞かせてください。
そういう意味でのうなづきや、”Oh, yes,” “yeah” ” I see.”だったのでしょう。

このことは逆に、私たちが無意識にしているあいづちがどういうものか、教えてくれます。
日本人のあいづちは、相手の言葉に賛同を示すというより、私はあなたの話を聞いていますよ、というサインなのです。

Photo by:Dean Wissing

話を引き出すのは「聞いている」という身ぶり

子供の頃、授業中におしゃべりしていると、先生が怒るのは、あたりまえの光景でした。
子供だった私は、別に悪いことをしているという意識もなく、
怒られた時だけ静かにして、じきにおしゃべりを再開したものです。
やがて、人前で話をする機会を得て気づいたのは、
自分が話しているときに私語を交わされるのは、なんともいえず辛い、ということでした。

聞いてもらえないと、事態に支障をきたすという実際的な理由より、むしろ、精神的に辛くなってくるのです。
そのとき初めて、先生が怒っていた本当の理由に思い至りました。
私語を交わしている側は、軽い気持ちでそうしているのでしょうが、話す側からすれば、自分の話を無視して、私語に興じる姿は、
おおげさに言うと、自分の存在が否定されているような気持ちになるのです。
逆に、こちらと目を合わせて、うなずきながら聞いてくれる人がいるのがわかると、
話す口調にも自然に力がこもって、あとでふり返っても、良い話ができたな、と満足できるのでした。
結局のところ、話を引き出すのは、話し手の側よりも、聞き手の「聞いている」という身ぶりということになるのでしょう。

「聞いている」という身ぶりは、さまざまな文化によって異なる現れ方をするものです。
日本人のように、頻繁にあいづちを打ったり、うなずいたりする文化もあれば、
相手の眼をじっと見つめ、ほとんど身動きもせず「一心に聞く」という文化もあるのでしょう。

けれどもそれは「聞いている」というサインであることには変わりはないはずです。
おそらくあいづちを打ってもらえず、冷や汗をかいたかつての私も、日本人の最後のノーに腹を立てたアメリカ人も、
異なる文化に直面したとまどいだったのでしょう。

そうしてその根底にあったのは、相手は自分の話を本当に聞いてくれているのだろうか、
という不安だったのだろうと思うのです。

コミュニケーションというと、私たちはどこかで、
「自分の考えや思いを、相手に伝えること」という風には思っていないでしょうか。

けれども、「伝えること」を引き出すのは、相手の「聞いている」という身ぶりだとしたら。
真摯な「聞いている」という態度こそが、コミュニケーションを支えているのだとしたら。

面接でも、ミーティングでも、商談でも、私たちのコミュニケーションのあり方は、少し、変わっていくのかもしれません。

 

 


(服部聡子)