売上を6割上げた奇跡の旅館に学ぶ「競合」の考え方

こんにちは、トイアンナです。
これまで何回か競合分析の方法についてお伝えしてまいりました。
「あなたの奥様を好きになる男は誰?」競合分析とは
今回はさらにステップアップして「意外な競合」の見分け方をお伝えします。

旅館の競合は「予備校」だった!?

ここで例題を出させていただきたいのですが、旅館の「競合」には、どんなものがあるでしょうか? 1分かけて考えてみてください。多分みなさまが思い浮かべる競合には、こういったものが含まれると思います。
・ホテル
・民宿
・キャンプ場
今なら、AirBnB といって一般の方がインターネットで募集して空き部屋に観光客を泊まらせるいわゆる「民泊」も盛り上がっていますね。

これらが競合であることは間違いないのですが、さらに思考の幅を膨らませて旅館とは『休みを過ごす場所』として価値があると考えてみましょう。そうすると、同じ『休みを過ごす場所』の競合が浮かび上がります。たとえば……。
『休みを過ごす場所』で競合する相手
・海外旅行
・予備校
・テーマパーク
・別荘
・テレビゲーム
・本
こうして見るともともと「競合」と考えていた企業とは全く関係ない企業が、競合になる可能性があることがわかりました。
子供の成績が下がれば、「旅館に泊まるのはやめて、そのお金で予備校に通わせなくちゃ」と親は考えますし、気になるマンガを一気に買ってしまったら、全巻読破するために休日を家で過ごすかもしれません。

婚約指輪の費用がかさむと旅館が閑古鳥になる

同じように旅館を今度は『大事な1日を過ごす場所』と捉えてみましょう。
『大事な1日を過ごす場所』で競合する相手
・高級レストラン
・葬儀のプレミアムプラン
・婚約指輪
・ビーチリゾート
・結婚式場
たとえばドラマでハワイのチャペルで挙式を行うシーンがヒットしたとしましょう。結婚を考えているカップルが海外へ流れてしまうので、日本の旅館は不利になります。婚約指輪の予算を増やしたら、その分新婚旅行で使う旅館へのお金はグレードダウンしてしまうかも。
このように「限られた予算でどこへお金を割くだろうか」と考えると、さまざまな競合が明らかになってきます。

奇跡の復活を遂げた旅館の競合分析

実は「優れた競合分析」ができたおかげで、売上を6割アップさせた「奇跡の旅館」があります。神奈川にある旅館Mは、もともとオーナーの本業が部品の製造業。旅館は製造業のお客様をもてなす「迎賓館」としての扱いでした。そのため一時は借入金が売上の3倍に膨らみ、オーナーの病没後は経営危機に陥っていました。しかしそこで新オーナーとなった息子さんは旅館を「他のホテルや宿泊施設」と戦わせない決意をします。交通の便が悪い旅館Mでは、太刀打ちできなかったからです。

その代わりに新オーナーが取ったのは、旅館を「特別な1日を過ごす部屋」として見直すことでした。実はこの旅館、かつて明治天皇陛下がご宿泊された部屋がありました。倒産直前の時期はその部屋を見学できる場所としていましたが、方針を一転。「天皇ゆかりのお部屋に泊まることができる」ことを売りにしました。泊まることができるだけならお客様も迷われたかもしれません、しかし新オーナーはさらに贅を尽くした料理を提案。チャレンジ試食回として原価を気にせずシェフへ新メニューを提案してもらい、最上級のコースでおもてなしする素地を作りました。

ただの高級レストランやホテルであれば、都内にいくらでも溢れています。しかし「天皇陛下がご宿泊されたお部屋」に自分も泊まり、最高の料理で「特別な1日を過ごす」場所であればどうでしょうか。結果として旅館Mへは富裕層や新婚旅行のお客様だけでなく、金婚式・銀婚式のご夫婦が多数来訪。売上は6割アップし、倒産の危機から一転、奇跡のV字回復を果たしました。

この成功は、あなたの成功事例にできる

旅館Mの成功事例は、決して他人の成功ではありません。あなたのお届けしている商品やサービスの「本当の競合」を考え直すだけで、ブレイクスルーとなる戦略を立てることができるのです。

ここからはぜひお客様が使う「時間」や「お金」という複数の目線であなたの競合分析してみましょう。
最後に例題を残しておきますので、私の書いたリスト以外にも競合を書き足してみてください。

・ 携帯充電器の意外な競合例
「いますぐ充電したい」という視点なら……電源プラグつきカフェ、友達の家、終電の遅い電車
「誰かに連絡を取りたい」という視点なら……ネットカフェ

・ 居酒屋の意外な競合例
「お酒を安くたくさん飲みたい」という視点なら……お酒のデリバリー店、業務用酒屋
「人に話しを聞いて欲しい」という視点なら……愚痴聞きサービス、カウンセリング、占い
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トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

「あなたの奥様を好きになる男は誰?」競合分析とは

こんにちは、トイアンナです。
いきなり不穏な質問で恐縮ですが、あなたの奥様はどんな人にモテると思いますか? 「そんなうちの妻なんて……」と謙遜するのは止しましょう。あなたが1度は惚れた女性、そして今は尊敬するパートナー(ですよね……?)となった奥様は今だって引く手あまたのはず。70年代ならいざ知らず、この時代なら10歳年下の彼氏を作るのだって珍しくありませんから奥様を付けねらう悪い虫だっているかもしれません。

と言っても、この話は決して「奥様に油断するべからず! 今すぐ興信所を付けてください」なんて物騒なメッセージではありません。奥様を狙う男性を想像することは、あなたのお仕事における「競合分析」と似たエクササイズになるがゆえのご提案です。

ライバルを想像するために、あなた自身を思い出そう

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」と孫子も述べていますが、あなたの奥様がモテる相手、つまりあなたのライバルになる男性はどんな人か。それさえ分かっていればあなたはライバルの男性より一歩抜きん出ることができます。そして付き合っていた当時、実際にあなたが勝利したからこそ奥様と一緒になることができたはずです。奥様に夢中になるような男性を想像する際のヒントとなるのはあなた自身。「結婚前、付き合っていた当時のあなたが持っていた強み」をリストアップしてみましょう。

まずは年収や職業のような、表面的なものから入ると簡単です。
・ 年収400万円
・会社員だったが、父の会社を継ぐ予定だった
表面的な「強み」が出揃ったら、次は多少「盛った」つもりで構いません。性格についてもあなたの強みを記してください。
・ 毎週1度は家族で出かける優しい性格
・ 誕生日にきちんとプレゼントを渡すマメさ
・トラブルが起きたときの包容力
こんな風に並べてみると「俺って意外といい男だなぁ」なんて思えてきませんか?そんな男性像が、奥様を今でも狙っている「ライバル」の姿でもあるのです。ですが不安になることはありません。付き合っていた当時のあなたと現在のあなたでは今の方がずっと奥様を深くご存知でいらっしゃるでしょうし、奥様が喜ぶ術も身につけたかと思います。あなたは今、間男が現れても奥様を守れる「勝者」なのです。

ライバルを想像するために、あなた自身を思い出そう

ここまでは奥様との馴れ初めを思い出していただきましたが、仕事でもこのような視点を持つと、競合の姿が浮かび上がってきます。あなたが口説き落としたいお客様は、いったいどんなライバルに狙われているでしょうか。そして、そのライバルはどんな強みを持っているでしょうか?今回は事例としてガラス製のテーブルウェアを制作しているA社を参考に、競合分析をしてみます。

もともとA社の強みは、1つ1つ手製で製作する「うすはり」のグラス。厚さわずか1mmの口当たりは、お酒を飲む上で決定的な違いをもたらします。自社グラスを使ってもらえる老舗のバーやレストランを徐々に増やしていましたが、その一方で、競合の外資系大手B社にシェアをどんどん拡大されている状態にもありました。

ここでB社の競合分析をしてみましょう。先ほどの「奥様のライバル」と同じように、まずは表層的な強みをリストアップすると分かりやすくなります。
・ A社と0.5mmしか違わない「うすはり」を大量生産できる工場
・高い耐久性で、食器洗浄機でも洗うことができる
・低い卸値
さらに深掘りして「お客様目線」の感情的な強みも記します。
・大量発注してもすぐ納品してもらえる安心感
・海外ブランドというカッコいいイメージ
・ 青山、心斎橋のようなシャレた地域にある直営店舗
こんな風に「機能」と「感情面」での強みをリストアップすると、競合の姿が見えてきます。

お手元の情報だけではお客様から捉えた自社とライバルの差が分からないようなときは、ぜひお客様へ自社の名前を伏せてお招きし、こんな質問をしてみてください。
・ ライバル社の製品をどれくらい買いたいか
・ なぜライバル社の製品を買いたくなるのか
・ ライバルの製品・サービスがなかったら他に何を選ぶか

ある地方都市で語学学校C社を運営している社長さんが、社名を伏せて英会話イベントを開催。イベントへ来訪された方へ上記の質問をしたところ、ライバルの語学学校D社を選ぶ方は「朝8時から運営している」ことを理由に挙げたそうです。そこでC社の社長さんは競合の強みを逆手に取り「C社は夜遅くまでやっています、お帰りが遅い方も勉強できます」という運営体制にしたところ、夜型の生徒さんを取り込んで事業拡大できたそうです。

競合の強みを知った上で、競合とは違う自社のサービスを売りにする。
これこそ、マーケティングの「差別化」を実現できた例と言えるでしょう。
競合の強みを学び「違う強さ」をアピールできれば、あなたの扱う製品やサービスも、まさに百戦危うからずです。

次回は、
「売上を6割上げた奇跡の旅館に学ぶ「競合」の考え方」についてご案内いたします。

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トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
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ビジネスにも多い「差別化ごっこ」:なぜ女性が髪を切っても気付かないのか? 

こんにちは、トイアンナです。
女性のささいな髪形の変化に気付くことができない。これは年齢問わず男性からよくご相談いただくものです。
前髪だけ1cm切った、髪色を少しだけ明るくした……そんな違いに毎回気付くことができる男性がいるならばさぞモテることでしょう。

とはいえ男性も学ぶもの。友人男性はある朝、女性スタッフが出勤してから、得意げにフロアを歩いているのが目に留まりました。こういうときは髪型が変化したときだ、と察した彼。「髪、切った?」と質問したところ「いいえ、髪は何も……変えたのはネイルです!」とたしなめられてしまったそうです。

ネイル、タイツの色、スカーフに化粧……いったいどうやってこんな違いに気付けと? と呪いたくなる、些細な変化を見抜くのは難しいものです。ですがそんな男性も趣味の領域となれば事態は一変。「この時計は盤面が全て手塗りで……」「革靴はパティーヌの最上級品で……」「手帳には結構こだわってて、こいつは各ページに糸綴じ製法が……」うっとりとした表情で語る、こんな男性をご覧になったことはありませんか?
男性だって、自分の好きな分野になればプロ顔負けの微細な違いに気付くことができるのです。

こんな風に、私たちは自分が熱中している部分なら細かな変化を察知することができます。しかしその一方で深い興味を持たない分野で起きた変化に対しては鈍感なもの
ここでビジネスに立ち返って考えていただきたいのが「あなたの製品・サービス」です。

あなたの製品に1番興味を持つのは「あなた」

あなたの製品やサービスへ1番深い興味を持っている人は誰でしょうか。答えは、あなた自身です。
例えばマーカーペンを販売している私の友人は、同じ「赤色のペン」でもインクの色からにじみ、長持ちする度合いまで誰よりも詳しく知っています。彼が扱っているペンは確かにインクがにじみにくいのが魅力です。しかしその魅力を誰も知りません。なぜなら、99%の人にとってペンのにじみ度合いは、深い興味を持たない分野だからです。

同じようなことは、他の業界でも起こります。
・ 他社より1.25倍ゴミをキャッチできる排水溝のネット
・ 今までで一番薄くて丈夫なスーパーの袋
・麻酔が上手な歯医者
・ 自由にメニューを組み合わせられるヘッドスパ

これらは全て同じ業界の人間であれば「すごい差別化だ!」と思うような変化でも、一般人には「どこが違うの?」と思われかねないものです。残酷な現実ではありますが、あなたが10年かけて作った盛大なイノベーションも、お客様から見たときには「女子のネイルが変わった」くらいにしか見られないというリスクがあるのです。

大切なのは「差別化」の伝え方

といっても「技術をどれだけ磨いても、差別化へは繋がらないから研究開発はいらない」という暴論を伝えたいのではありません。
まず、よい差別化とは「メッセージがお客様目線」になっているものです。先ほどの「差別化」は全て、製品やサービスを提供する側の目線でしか違いがわかりません。しかし全て下記のように言い換えてみたら、いかがでしょうか?

・カレーの残りも三角コーナーでキャッチ、排水溝が詰まらないネット
・5kgのお米を運んでも千切れないスーパーの袋
・無痛抜歯を約束できる親知らず専門の歯医者
・20種類のメニューから自由に選べるヘッドスパ

訴求している内容は全く同じでも、より「一般の方が興味を持つ言い方」に変わったと思います。このように差別化のほとんどは言い換えるだけでお客様の心に届く強いメッセージになります。

そもそも「差別にならない」差別化もある

その一方で「差別にならない」差別化もあります。たとえばこんな例です。

・友達を呼んだら300円オフになる割引券…「そのサービス、どこでもやってるよね?」と思われてしまいます。他社でもやっているようなキャンペーンを作っても、差別化にはつながりません。
・ 最寄りの喫茶店がわかる携帯電話の新機能…「それができたところで、何の役に立つの?」とお客様は考えてしまいます。お客様が直感的に今までと違ってすごい! と思っていただけるのでなければ、差別化にはつながりません。

このような差別化のダメ事例は、他業種であれば「なんでこんなのが差別化になると思ったの?」とすぐ気付くものです。しかし実際に自分が携わる製品になるとつい「これこそが差別化だ!」と妄信してしまいがちな落とし穴もあります。

自分が作った製品やサービスはわが子のように愛おしいもの。その子が市場でモテようがモテまいが「なぜ売れないんだ、こんなにいい子なのに」と考えてしまうのはごく自然な感情です。ですがもし、あなたが「市場でモテる」製品を作りたいのであれば差別化の最低条件は、下記を満たす必要があります。

(1)競合と比べて大きな差があること
(2)買い手にとっても「大きな変化」であること

従って、差別化をするためには競合とお客様の深い理解が必要となりますし、できれば製品ができた後ではなく「商品開発を始める前」から熟考する必要があります。差別化に繋がらない研究開発へ多額の投資をしてしまった後では、取り戻すのが難しくなるからです。

次回は、誰でも始められる簡単な競合分析のテクニックをお伝えしてまいります。

合わせて読みたい:男友達止まりの俺と 女を落とすアイツの違いは?「差別化」の秘密

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トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
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「差別化」の秘密:男友達止まりの俺と 女を落とすアイツの違いは?

こんにちは、トイアンナです。
今までに500人以上から人生相談を承ってきましたが、過去にこういったご相談がありました。

「仙台でしがない中小企業を経営している者です。たまに友達とパーティへ行くと「いい人だね」とは言ってもらえますが、いつも男友達止まりです。それに対してルックスも年収も俺より下で、ただの会社員をしている弟は女の子の手をいきなり握ったり、セクハラまがいのことをしたりするのにモテます。こういうのって、何でなんでしょうか?」

答えは、弟さんが他の人と「差別化」できているからです。

「違う」とモテる? 差別化戦略

合コンのように「自分のよさ」を見せたい場面では、みんな無難な「いい人」になりたがります。
「好みのタイプは、優しい人」
「あ、お肉取り分けるね」
「グラスが空になってるけど、もう1杯飲む?」
こういった言葉は「いい人」になりたがる男性がよく言ってしまうフレーズ。こういう発言であなたを悪い人だと思う人はいないでしょうが、誰もがこういう振る舞いをすることで、「たくさんいる男性の1人」に埋もれてしまいます。

ですが、堂々と振舞う男性は別です。モテる男性は「下の名前を呼ぶ」「軽いボディタッチ」など、下手をすると嫌われるかもしれない行動をさらりとやってのけます。もちろん拒否反応を示す女性もいますが「この人、ステキかも」とドキドキする女性も生まれるわけです。
この時点で「合コンに参加してきた5人の”いい人”たちと、1人の気になる彼」という差別化が生まれるのです。

ビジネスでも「差別化」が命

この事例は、仕事にたとえても同じです。身近な例で、コンビニの棚に並んでいる菓子パンを想像してください。
ずらりと一列に100個以上の菓子パンが並んでいる店内で、各企業のパンが自社製品を選んでもらおうとひしめき合っています。
季節限定の桜メロンパン、大食漢の男性も食べたいチキンカツサンド、女性の小腹に入るミニあんぱん……といった涙ぐましい企業努力の中で、誰よりもヒットした企画があります。

それはY社の商品にシールを貼り付け、数十枚溜めると必ずお皿と交換するというものでした。美味しさ、安さ、量と「パンと直接関係した」宣伝が並ぶ中で、なぜかお皿との交換を提案したY社のキャンペーンは、たちまち人気沸騰。今では毎年春になると必ず実施される風物詩となっています。

このように「他社とはちょっと違う」ことをアピールするだけで、商品そのものはたとえ優れていなくても、飛ぶように売れる仕組みを作ることができるのです。

「いい差別化」と「悪い差別化」を知ろう

とはいっても、何でもかんでも差別化すればいいわけではありません。ここで、合コンの事例に戻って考えてみましょう。
合コンで女性から「私、スピリチュアルが趣味で。好みのタイプは前世が武士だった人」と言われたら95%の男性はドン引きしませんか? 
これが悪い差別化の例です。
同じように合コンで男性が「俺、数学の勉強にはまってて。知ってる? xの36乗ってさ……」と2時間語ったとしましょう。
確かに他の男性と彼は差別化されるでしょうが、合コンの二次会も吹っ飛ぶに違いありません。
対していい差別化は「狙った相手の心へ響く」ものです。
合コンで、もし「ほんわかした、優しそうな女性」へ差別化したいのであれば「でも優しくしてるのって、くたびれない?」と相手の愚痴を引き出すといいでしょう。逆にサバサバした、キツめの女性が好きならば友達の口から「コイツ、本当にいい奴なんだけどいい人過ぎて癒し系にしかならないって女に振られたことがあってさ~」と語ってもらえば「私も癒されたいかも……」と心を動かせるかもしれません。

「いい差別化」のために相手を知る

いい差別化をしたいならば、相手のことを深く知らねばなりません。
相手が「この人、今までに会った人と違う!」と思わせるものを提供するためには、今までに出会ってきた商品や人を知る必要があるからです。合コンであれば元彼の話を聞いたり、恋愛観について質問してみたりすると、
「意外とグイグイ引っ張ってくれる男性が好きなんだな」
「前に趣味が同じ相手と付き合って大喧嘩した挙句に別れてるから、全然違う趣味の男性を選びたいんだ」
といった情報を得ることで「いい差別化」を図ることができます。

同様にビジネスであれば、今までにどんな商品を使ってきたかを顧客へ質問します。
過去にどんな商品が好きだったか、あなたの製品・サービスを選ぶ前の「元彼」を聞きだすことで、顧客の「心が動く」ポイントを調べてゆくのです。

次回は「差別化できているつもりで、できていない? 差別化ごっこのリスク」についてご案内いたします。

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トイアンナ
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消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
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売上に繋がるエクイティの育て方

こんにちは、トイアンナです。
飲み会の席で「可愛い子、紹介してよ」と言われたことはありませんか?
実はこの一言に、あなたの仕事で売上を爆発的に伸ばすメカニズムが詰まっています。

恋愛で、あなたの心がぐっと動く好みのタイプ。
たとえば「顔が石原さ○み」かもしれませんし「ぐいぐいデートで引っ張ってくれる」かもしれません。
こういう心を動かす便益のことを、ビジネス用語では
「ブランド・エクイティ」と呼ぶことを、前回の記事でお伝えしました。

今回はここからさらに踏み込んで、お客様の心にぐっと来るブランド・エクイティの作り方を
恋愛でたとえつつお伝えできればと思います。

可愛い子、ってどんな子?

ある飲み会で、あなたが冗談混じりに「ちょっと可愛い子、紹介してよ」と友達へ相談したとします。
律儀なあなたの友人は、1週間後に「紹介したい子がいるんだけど、ご飯会でもセッティングしようか?」と連絡してくれました。

あなた「いいね!で、具体的にどういう子?」
お友達「顔は可愛くて、趣味は料理って言ってたかな。
この前肉じゃがを作ってくれたけど美味しかったよ。
仕事は医療事務なんだけど、結構やりがいもあってがんばってるって言ってた。
穏やかな性格で、あんまり怒ったり泣いたりしてるのは見たことないかな……
ただ、男関係は結構ガードが固くて、清純派って言われてる子だよ」

あなたはここまで聞いて「すごくいいじゃん! ぜひ紹介してよ!」とお願いするかもしれません。

しかしここで1つだけ質問させてください。
3日後に、「今度、お友達から紹介される子はどんな子でしたか?」と質問されたらあなたは答えられますか?

料理上手、温厚な性格、可愛い顔……それぞれ素晴らしい特徴ですが、あまりに情報が多すぎて、覚えられないのではないでしょうか。

1つの気になるフレーズは覚えやすい>

逆に、お友達からこんな情報を言われたらいかがでしょうか。

あなた「で、具体的にどういう子?」
お友達「とにかくガンダムがめちゃくちゃ好きな子でさ。お前ときっと気が合うと思って」

1つしか紹介される子の情報はないのに「自分に合うか・合わないか」が一瞬で判るのではないでしょうか。
そしてきっと3日たっても、あなたは今度紹介される子が「ガンダムが好きな子」として覚えられるのではないでしょうか?

これは商品やサービスを売る上でも、同じです。
「私の治療院は渋谷駅から近く、全員国家資格を持っているプロのマッサージ師が対応します。事前アンケートで体質をチェックしてから施術を行いますので、短期間で効果を実感できます。さらにアジアンリゾート風の内装で高級感を味わいながらリラックス。料金は60分で3,500円とお得です!」

と書くよりも「高級リゾートでリラックス」と一言で説明されたほうが、心に残るのです。
経営をしているとどうしても製品やサービスの良さを伝えたいあまりに、たくさんのことを伝えたくなってしまいます。

しかし実は「1つだけのフレーズ」を思い切ってブランド・エクイティに選んだほうが、大人数の心に届くのです。

いいフレーズは「顧客でない人を排除する」

もうひとつ、いいブランド・エクイティが持っている条件があります。
それは「顧客でない人を排除する」点です。

たとえば冒頭の「可愛い子、紹介してよ」の答えとして出てきた「とにかくガンダムが好きな子」という紹介は、ガンダムが好きな男性には刺さりますが、アニメに興味がない男性からすれば「別にどうでもいい」条件です。

このように「あるターゲットの心を強く動かす」ブランド・エクイティは、逆に全く心が動かない層も作ります。
「高級リゾートでリラックス」できるマッサージ治療院の例でも、価格さえ安ければいいと考えている顧客や、余計な設備を好まない顧客は始めからお店に呼び寄せない効果があります。

「多くの人に来てもらうのが一番なんだから、ブランド・エクイティでお客様を排除しちゃダメじゃないか」と思われるかもしれませんが、この世に誰からも好かれる製品はありません。
世界中で老若男女問わず売れているコーラやマクドナルドでさえも、苦手な人がいます。

誰からも好かれる製品を作ろうとして無個性なアピールをしてしまうくらいなら、特定の人に愛されたほうが、売上は長持ちします。
「いくら出してもあなたの製品を買いたい」と言ってくれる人がどれほど見つけられるかは、ブランド・エクイティにかかっているのです。

まとめると、よいブランド・エクイティは「バチっと決まる1つのフレーズがある」特徴があります。
自社製品のブランド・エクイティを考えてみるときはぜひ1つのフレーズで、あなたの製品の良さを考えてみてください。

次回は、他社との差別化をブランド・エクイティで見せる方法について書いてゆきます。

関連記事:美容室をヒットさせるにはイケメンを雇え!? 成功する企業が持つ「ブランド・エクイティ」の秘密

 

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美容室をヒットさせるにはイケメンを雇え!?

成功する企業が持つ「ブランド・エクイティ」の秘密

こんにちは、トイアンナです。
今回はブランド・エクイティという技術を、美容院業界の例を使ってお伝えしたいと思いますが、
まずはヒットする美容院の秘密をご存知でしょうか?

バラの花をイメージしたゴージャスな内装が特徴の美容院チェーンAは、1990年代後半に創業。
10年間で200店舗を展開する大企業へと成長しました。
その魅力はたとえば下記のようなものです。

・ 化粧品売り場をイメージし、足を踏み入れるだけで美しくなれる気がする内装
・ 個室でヘアカットを受けられるプレミアムブースの設置
・美容師をランク分けし、料金設定を変えることで経歴が長い美容師を「ブランド」に

実はA社が伸びた時期、美容室市場は成長しないと言われていました
髪を切る人口は減っていく中で、割引キャンペーンで利益を削ってでも他店からお客さんを引き剥がすビジネスが一般的。
そんな中で、どうやってA社は爆発的に伸びたのでしょうか?

その答えがマーケティングの秘密こと「ブランド・エクイティ」です。

ブランド・エクイティとは?

ブランド・エクイティとは簡単に言えば「商品に対して感じる価値」のことです。
さらに簡単に言えば「ぶっちゃけ、この商品なにしてくれるの?」とお客様がスタッフに質問したときに、スタッフがお答えする内容のこと。
たとえばヤマト運輸のエクイティは「商品を安全に、明日届けてくれる」ことですし、
iPhoneのエクイティは「持っているとオシャレな人に思われる」ことです。

ここで大切なのは「ブランド・エクイティ」が機能的価値ではなく、感情的な価値であることです。
iPhoneは確かにハイテクな携帯電話で、テレビ電話からインターネット接続、写真撮影もできます。
しかしiPhoneの根源的な価値はそこではありません。
なんとなくオシャレで、最先端な「感じがする」ので持っているだけで自分がカッコ良くなれる気がする。
これがiPhoneのブランド・エクイティです。
iPhoneはインターネットに携帯から接続できるからではなく「持っているとオシャレな人に思われる」から売れたのです。

ブランド・エクイティがある、つまり商品にお客さんが「心で感じる価値」があると商品は売れます。
逆にどんなに素晴らしい機能があっても、
お客さんが「心で価値を感じられない」なら商品は売れません。

冒頭で挙げた美容室A社は「豪華な場所で髪を切ると、自分もゴージャスになった気持ちになれる」
という強いブランド・エクイティを用意しました。
そして「豪華な場所で髪を切ると、自分もゴージャスになった気持ちになれる」というブランド・エクイティを強めるために個室のプレミアムブースや、ランク分けしたトップ美容師を作ったのです。

ブランド・エクイティを設計し、その設計に沿った施策ができる商品やサービスには必ずファンができるのです。

ブランド・エクイティの例

もっと分かりやすくするために、美容室のブランド・エクイティの例をいくつかご提案してみます。

ブランド・エクイティの例1)
「イケメンに愛されてお姫様みたいな気持ちになれる美容室」

ブランド・エクイティを活かす戦略
・イケメン度でネット投票をしてもらい、イケメン順で価格を変える
・お客様のことを「姫様」と呼ぶ
・オプション料金で壁ドンをしながらブローするサービスを導入

ブランド・エクイティの例2)
「肌トラブルがある人が安心して通うことができる美容室」

ブランド・エクイティを活かす戦略
・トラブル別のヘアシャンプーを選べる診断チャートを用意
・肌が痛まないカラーやパーマ剤のみ採用
・肌に優しい化粧品ブランドと提携してサンプル配布

ここで大切なのは他社と差別化できる「ブランド・エクイティ」が作れたら、必ずエクイティに沿った戦略を練ることです。

たとえば「肌トラブルがある人が安心して通うことができる美容室」で、グラデーションがキレイに出るけれども髪が痛む液剤を売りにすると、お客様は「肌に優しいのに、肌に優しくないの……?」とちぐはぐな印象を抱いてしまいます。

ブランド・エクイティは「その商品が何をするか」と「その商品が何をしないか」を決めるものです。
やらないと決めたことは、手を出さない勇気をもつからこそお客様はあなたのサービスに違いを見出せるのです。

■ ブランド・エクイティの例

最後にブランド・エクイティとして正しい例と、正しくない例をいくつかご紹介します。

正しいブランド・エクイティ
○ 過払い請求でお客様が借金について「考える時間を減らせます」
○ 寝不足にならない、夜も「安心して」飲めるカフェイン無しのコーヒー

誤ったブランド・エクイティ
× 新機能で目覚まし時計の音色を365日変えられます
× パソコンが前よりふた回り、小さくなりました

正しいブランド・エクイティはお客様の「心で感じる価値」があることが伝わりましたでしょうか。
さあ、あなたの会社の製品のブランド・エクイティは何でしょう?
そしてあなたのお客様は、どんな感情をあなたの商品やサービスへ抱いていますか?
1度考えてみてください。
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消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
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「マーケティング」の基礎知識:「モテる人はお断り」

こんにちは、トイアンナです。
唐突ですが、あなたはモテますか?

学生時代から「あの、いつも同じ通学路なんですけど……、好きです!」と告白され、
バレンタインデーには靴箱にチョコが入りすぎて溢れんばかりでしたか?

それとも、バレンタインデーに「チョコが貰えるやつはいいよな」と少し羨ましく思いながら、
貰ったところで別にそんな甘いものが好きなわけでもないし……と少し強がってみたり、
男友達といることを選んだりするような甘酸っぱい学生生活を過ごしていましたか?

前者のような人は、マーケティングがいらない人ですから、ここから先は読まなくてもいいでしょう。
逆に後者の人こそ、マーケティングが必要な方です。
なぜなら、マーケティングとは
限られた資産の中で、自分がモテる場所」を探す技術だからです。

今回は恋愛を例にして、マーケティングがいかに成果を変えられるかをお伝えしたいと思います。

■ 全くモテない彼が引っ張りだこになったのは「モテる場所」を知ったから

ここで、マーケティングを使って恋愛が上手くいった実例をご紹介できればと思います。

ある40代の男性は、30代始めに起業しました。
お父様の会社を継いだ形にはなりましたが、地方のお得意様と細々と取引しているだけではいずれ競争が激しくなった時に会社がもたないと一念発起。
泥臭い営業から会計業務までがむしゃらに働き、全国区へ営業範囲を延ばすことに成功しました。

「そろそろ結婚したいな」と思った当時は42歳、ちょうど会社が軌道に乗ったころでした。
しかし地元の結婚相談所に相談したところ、ほとんど門前払いの冷遇を受けてしまいます。
結婚相談所から言われたのは「自営業の方はちょっと……」
「40代の男性は年齢的に厳しいとおっしゃる女性も多く」と、今までの努力を否定されるような言葉。

「もう結婚は無理かもしれない」と諦めていたそのとき、友人から銀座の異業種交流会へ誘われました。
今までは業務が忙しいからと断っていた彼も、1回だけ顔出ししておこうと参加したところ、信じられないくらいモテました。
その友人が「彼、ベンチャーの社長でさ、会社もめちゃくちゃ儲かってるんだよね」と女性陣に紹介してくれたのです。

地方では「安定性がない」と批判される中小企業の社長も、起業家が珍しくない都内では憧れの的。
その日だけで連絡先を10件以上交換した彼には、間もなく彼女ができました。

彼が結婚相談所に使ったお金は約100万円、対して銀座の異業種交流会は往復の交通費を足しても3万円。
彼は「自分がモテる場所」を知ったことで、お金も時間も余計にかけることなく、彼女を作ることができました。

この話は、ビジネスにそっくりそのまま当てはめることができます。
ある市場で受けなかったものが、別の市場では飛ぶように売れることがあります。
あなたの商品が売れなかったとしても、商品が悪いのではなく、単に売る場所が適していなかっただけかもしれないのです。

■ モテる場所を考えるのがマーケティング

このように、あなたの商品が「モテる場所」を探すことをマーケティングと言います。
濡れても洗える畳は、介護業界ではフローリングの床が一般的だから売れないかもしれません。
しかし、和室を入れる新築家屋で、ファミリー向け物件なら喉から手が出るほど欲しいでしょう。

商品・サービスを考えたときのお客様のイメージと、実際に買いたいと思っているお客様は違うかもしれません。

美容室の毛髪マッサージは、流行に敏感な20代女性よりも抜け毛が気になる40代男性に受けるかもしれません。
はっ水加工をしてくれるウェットティッシュは、家の掃除より洗車の仕上げで愛されるかもしれません。

「この商品は○○向けだから」と決め打ちしないで「もしかすると○○に受けるかもしれない。考えてみよう!」と
あなたの商品を新しい場所でバカ売れさせる技術。
それがマーケティングです。

■ より少ない資源と時間で

また、マーケティングで欠かせないのが「限られたお金と時間を有効活用する」考え方です。
先ほどの婚活の事例では、異業種交流会に行ったほうが結婚相談所よりも安く・早く彼女ができました。
予算が無限にある会社は存在しません。

だからこそ「マーケティング思考」では、あなたの商品・サービスが手間やお金をかけず、モテる場所を柔軟に探します。
モテる相手へアプローチすれば、「これ、いいね」と思ってもらえるので商品を買ってもらいやすいからです。

「マーケティングって、お金かかるんでしょ?」と思っていらっしゃる方もいるかもしれません。
しかし実際のところマーケティングはお金をいかに節約しながら、あなたの商品やサービスを売るかを考えるのが仕事です。

「最近はウェブの時代なんで、とにかくfacebookで告知しましょう!」
「お客様にウチの商品を知ってもらうために、まずは冊子を刷りましょう」
こんなことを言い出すマーケターがいたら要注意です。

本来マーケティングは「その冊子、本当に告知の役に立ってますか?」とあなたの商品がちゃんとモテているかを、確認するのが仕事のはず。
「とりあえず」で動いては、結婚相談所に100万円使った彼の二の舞です。
これから一緒に正しいマーケティング知識を身につけて「あなたの商品がモテる場所」を考えてみませんか?
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トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

マーケティングはビジネスの「人間ドック」

 勝つ経営者と負ける経営者の分かれ道

「営業も頑張ってくれてるんだけど、売りが立たない」
「満を持して新製品も作ったのに、前と販売実績が変わらなかった」
こういった失敗談を持つ経営者の方も多いのではないでしょうか。

成功したベンチャー社長の体験談にもこういった「過去の失敗」はつきもの。
その後、上場や大成功に至る経営者も多いことから、失敗は決してこの世の終わりではありません。
重要なのは「売れないぞ」となったときに、どうやって立て直すかです。

成功した経営者と、その後も失敗を続けて廃業へ至る経営者で明暗が分かれるのは
まず「失敗した!」となるべく早いタイミングで気付くことです。

そしてすぐに何が原因だったかを突き止め、次の一手を打つこと。
このように、ビジネスの失敗へ即座に気付き、
原因を突き止めてすぐ次の一手を打つ技術をまとめて「マーケティング」と呼びます。

人間にたとえるなら、人間ドックをして症状の原因を突き止め、
すぐ完治させる医者のようなものといえます。

マーケティングは販促ではない

ここまで読んで「えっ」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「マーケティングって、販売促進のことでしょ?
ウチだって販促用のリーフレット作ってるし、ホームページ作ってくれる子はいるよ」と。
実は、そういう仕事はマーケティングの真髄ではありません。

マーケティングの本業は「何が売上アップのネックになっているのか?」を
調べるところから始まるのです。

ではここで「マーケティングがうまく機能しているときと、していないとき」で
どう差が出るかを見てみましょう。
これは実際に私が失敗した起業の話です。

【事例】 帰国子女向け通信教育の事業で「失敗」!
毎年、海外の学校を卒業した「帰国子女」が1,000人ほど大学受験のタイミングで日本に戻ってきます。
日本の大学受験は「帰国子女入試」という特殊な試験を受けなくてはいけません。
各学習塾は月70万円というとんでもない相場で、帰国後に詰め込み試験対策を施します。
そこで、インターネットの動画を使った通信教育があれば授業料も安く抑え、受験指導ができると思いました。
しかし結果は泣かず飛ばず。1年で赤字が膨らみ、廃業しました。

マーケティングがあれば仕事の「健康診断」ができる

もしこの失敗した時期に、マーケティングの知識があったら何ができたでしょうか。
まずは1年もズルズル赤字を引きずる前に、売上が立たないことに気付き原因を分析します。
そして帰国子女への聞き取り調査からたとえば
・「予備校のお金を出すのは親であって子供ではない。
・子供向けのメッセージを宣伝文句に書いていても、親へはピンと来なかったのが失敗の原因だ」
と分析するはずです。

原因が分かれば、あとは簡単。
すべての宣伝文句を「ご帰国を控えたお父様、お母様へ」と書き換えるだけです。
当時こうしていれば、半年以内に事業を立て直せたはずでした。
マーケティングがビジネスの「健康診断」の役割を果たしてくれるからです。

マーケティングでわかる「お客様」の心

こういった失敗例は、話を聞く立場だと「なんだ、そんなことも分からなかったのか」と笑って読めるものです。
しかし同じような失敗例は中小企業・ベンチャー経営で山のように出てきます。
読者の皆さまはお客様のことを、どこまで分析できているでしょうか?

試しに、ご自身のお仕事で下記に当てはまることがすべて分かるか心の中で問いかけてみてください。

【あなたの仕事にお金を払う方の主なプロフィール】
・性別、年齢、職業は何か
・今抱えている「あなたの仕事に関係した」悩みにはどんなものがあるか
・悩みを解決するために、今あなたのサービス・商品を使っていない人は、どんな代替手段を使っているのか
・その代替手段にどのくらい満足しているのか
・なぜ、顧客になっていない方はあなたのサービス・商品ではなく代替手段を選ぶのか
・あなたのサービス・商品を使うと、顧客はどんな気持ちになるか
・代替手段を使うときと、あなたのサービス・商品を使った後の気持ちには差があるか

「ここまでお客様の考えていることを深く掘るの?」と驚かれた方は、きっとマーケティング職に向いている方です。
ここまでお客様の心理を深堀りするからこそ「何が売上に繋がっていないか」を掘り当てることができます。

売れないのはあなたのせいではない

会社の売上が思うように伸びないのは、あなたが悪いのではありません。

お客様の心へ商品やサービスが届く前に、商品が誤解されてしまったり、まだ知られていなかったりするだけです。
マーケティングは会社の商品とお客様の心の間にある「接続不良」な部分を探し出して「こうすればもっとよさが伝わるはず」と伝え方を修正していきます。

あなたの素晴らしいサービスや商品が少しでもお客様に広まるよう、マーケティングという道具をこのサイトで深めていただければ幸いです。

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トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com