中年女性実業家の挑戦

by ビビアン・ザン
(これは”:http://bit.ly/1Cw0QKf”の記事を翻訳したものです)

シリコン・バレーの誤解と闘う女性たち

 
現代の起業家活動モデルの中で、40代から50代の女性が起業した会社が急成長を遂げています。「起業とは20代の男性のおこなうもの」という思い込みが未だ一般的な中、この事実は続く女性のさらなる挑戦をうながすことになるでしょう。

「今日、会社をスタートさせるのは、25歳の男性エンジニアばかりではありません」
こう語るのは、ポートフォリアのCEOであり創設者、トリシュ・コステロです。

「実際、これまでも起業するのが若い男性だけ、ということはなかったし、現在はもっと年齢の高い人が、数多く起業しています。女性にとって、子供を持つということは、人生がより複雑になるということです。やがて子供があるていど成長して、私たちは今度は、創造的なエネルギーを、真に立派な会社を創りあげることにふり向けるようになったのです」

カウフマン・ファンデーションが昨年発表したレポートによれば、年代別の起業では、45-54歳の起業が、ほかのどの年齢層よりも多いことがわかっています。新規起業者の中で、この年齢層の割合は、2003年には25.2%だったのに対し、2013年には30%まで上昇しました。
一方で20歳から34歳までの年齢層は、2003年の26.4%から、2013年には22.7%に低下しています。

反面、こうした年齢になって会社をスタートさせた女性の多くは、特有の問題、女性差別だけではなく、年齢差別という問題にも直面している、といいます。

これを受け、アビーポストの創設者であるシンシア・シェイムズ、カンガドゥーの創設者サラ・シェーアー、ルビー・リボンの創設者アナ・ゾノサらは、人生の第二幕に寄せる期待をくじこうとする、女性起業家特有の諸問題の克服に向けて、共に進んでいこうとしています。
 

競合相手は自信過剰の20代

 
シリコン・バレーの投資家のパターン認識は、きわめて現実的なものです。もし、あなたがそのパターンから外れていたなら、あなたにとっては不利に働くことでしょう。

「20代の男性は、私たちとはまったく異なるスタイルの売り込みをしていきます。彼らは質問に対して、かならずしも答えを知っている必要はなく、熱意がありさえすれば十分なのです。逆に、そのために彼らの話には説得力があるのです」

こう語るのは、カンガドゥーの創設者シェーアーです。
彼女は、忙しい両親やその友人が、もっと助け合いながら育児ができるようなアプリを40代で開発しました。

「あなたが戦っているのはこういう相手だということを、知っておく必要があります。ですからふさわしい投資家に的を絞り、中年の女性創設者であることを補うためにも、自信を持って相対することです。」
 

アウトサイダーだと感じる場面は多い

 
「ミーティングに出席して、その中の最年長者であるというのは、やりにくいものです」

こう語るのは、大きなサイズの服を販売するアビーポストを立ち上げたシェイムズです。彼女は2012年、40代前半で起業しました。

「でも、そこにすわったまま、自分が最年長であることをくよくよしているだけだと、完全に疎外されたような気分を味わうことになるでしょう。こんなところで、私はいったい何をやっているの? みたいな気持ちに。私は1994年からIT業界にいたので、周囲が若い人ばかり、というのが、どういうものか、わかっていました」と彼女は続けます。

「私はそんなことは気にしません。そういう性格なんです。私はクールなんです。サッカー・ママではないし、ママ・ジーンズなんて絶対にはきません。最年長者だからといって、物怖じする必要なんて、どこにもありません」

シェイムズは、こうした状況では意識的に年齢が有利に働くことを思い出すようにしている、と言います。自分には、どんなに頭の良い20代でも持っていない経験知がある、と。

「40代の女性には、さまざまなことをうまくやりくりする能力があります。その能力のおかげで、私たちは最高の起業家になれるはずだと思うんです」
 

たとえ不快な質問をされても

 
シェイムズもシェーアーも、若い男性なら(女性でも)決してされないような、家庭生活についての質問をこれまでにされてきた、といいます。シェイムズが初めてある投資家から、子供がいるというのに、どうやって会社を経営できるのか、と尋ねられたときは、予想もしなかった質問に驚いて、答えることができませんでした。2度目に聞かれたときは、彼女は用意していたとおりの答えをしました。投資家に、あなたはどうやって両立させていらっしゃるのですか、と聞き返したのです。

けれどもシェイムズは、これは良い返事ではなかった、とふり返ります。
「こうした状況では、自分の気持ちや、会話の雰囲気を損なわないようにしなければなりません」

シェーアーはアドバイスします。
「20代ではこんなことは話題にもなりませんでした。私も子供を持つつもりもありませんでしたから。でも、私の場合、女性であることについて、とやかく言われたことがないだけでも、幸運なのかもしれません」
 

実績で証明するしかない

 
無意識の偏見がそこらじゅうにある、とシェイムズは言います。しかも、ほとんどの男性投資家は、中年の女性が解決しようとしている問題を、自分に引きつけて考えることができません。

「私は実際に、ある投資家から『大きなサイズの服が必要な連中は、金を持っていないじゃないか』と言われたことがあります」

中年の女性起業家が、男性投資家とつながりを持つことは、簡単ではないので、資金のための売り込みをする前に、十分な数の顧客を確保しておくことが重要だ、と語るのは、ゾノサです。ゾノサは52歳の時、退職して、ルビーリボンを起ち上げました。

「20代から30代のあいだは、私には成功する会社を築くだけの信頼がありませんでした。起業を決意した段階で、あなたがすでにしっかりしたキャリアを築いていたとして十分に目を見開いておかなければなりません。起業するとは、もうひとり赤ちゃんを持つようなものなのですから」

今日、ゾノサは自社製品を店舗やサロン、またリビングルームでも売る、800人の女性スタッフを擁しています。

以前、コステロは、名の通った野心的なエンジェル投資家を紹介してもらおうと投資家窓口に問い合わせたことがあります。窓口の女性は彼女に、その投資家は「性的な機会」を探しているだけだから、会う価値はない、と教えてくれました。

「問題は、25歳の男性は、消費者の主流ではないということです。テレビゲームと大画面テレビでは、アメリカの中心的な消費者かもしれませんが」とコステロは言います。彼女は50代でポートフォリアを起ち上げました。

「アメリカの消費者の中心は女性で、消費財の85%は彼女たちが購入しています。ほとんどの企業の製品を購入しているのもまた、彼女たちなのです。」

最高の投資家とは、主流の消費者だった経験を活かして創設されたちゃんとした会社に、目を向けることができる人のことです。彼らなら、起業家としての成功は、青年期、とりわけ20代の男性に限るものではないことを証明しようとしている、人生も半ばになって起業した女性たちのことも認めることができるでしょう。

「れんがの壁に突き当たるたびに、私はそれを乗り越えるか、下をくぐるか、ぶちこわすかしてきました」と語るのはシェイムズです。

「どんな女性起業家にも当てはまる私のおすすめの方法は、力ずく、ということです。とりわけ、中年になって会社を始めようとする人にとっては、ね」

著者:ビビアン・ザン(フリーランス・ライター)


元記事:http://bit.ly/1Cw0QKf

訳:服部聡子(ShimaFuji IEM 翻訳チームリーダー)
出産・退職後、在宅で働ける資格を身につけるために翻訳を学び始める。
約5年フィクション/ノンフィクションの下訳、ウェブ・ライターを経て、
『限界はあなたの頭の中にしかない』に巡り合い、深い共感を覚え、弊社に。

5月10日メンタークラブ地域勉強会大阪が開催されました

今回も北海道や静岡など遠隔地から参加された方や、初参加の方も交えて、熱い議論が活発に交わされていきました。

今回のテーマはジョイント・ベンチャーとリレーショナル・キャピタル(信頼関係の資産)。
どちらもジェイ・エイブラハムのカギとなるコンセプトですが、とりわけリレーショナル・キャピタル(信頼関係の資産)は誤って理解され、ジョイント・ベンチャーと混同されていることの多いコンセプトです。

自分のビジネスの足りないものは何だろう?
それを持っているのは誰だろう?
そう考えて、自分のビジネスが求めているものを持っている人と提携し、ビジネスを推し進めていくのがジョイント・ベンチャーです。

一方、リレーショナル・キャピタル(信頼関係の資産)の深い意図を理解しやすいように、実際のワークにして提供しました。

今回のメンタークラブでは、自分の実際にやろうとしているビジネスを、まずジョイント・ベンチャーの観点から、自分に欠けているのは何か、自分は今何が必要か、というところから話し合っていきました。それぞれが「自分に欠けているもの」を発言したところ、即座に、それなら私のところにある、私が関係者を知っているので今度紹介できる…とメンバーからの提案があり、新しいマッチングの可能性がつぎつぎに生まれていきました。

さらにその後、リレーショナル・キャピタルの観点から自分のビジネスを改めて見直す段階になると、今度は逆に自分の持っている(これまでに気づかずにいた)資産が明らかになり、それぞれのビジネスが、いっそう具体的になったり、ほかとのつながりが見いだせたりして、深まっていきました。

ほかの人に向けて自分の考えを説明することで、自分の中で整理され、また考えの足りないところや問題点が見えてきます。また、人からの意見を聞くことで、新たな視点を自分のものにすることができます。話し合うことを通して、新たなつながりが生まれていき、そのつながりがまたビジネスの新しい展開の可能性を開いていく…。それぞれバックグラウンドも違うし、経験も違いますが、志を持つ人同士の話し合いは、非常に密度が濃く、刺激的で、同時にとても温かく楽しいものでした。

メンタークラブでは、奇数月に行われる各地勉強会のほかに、各週のオンラインセッションも実施しています。無料で体験ができるので、興味をお持ちの方はぜひご参加ください。

各地の勉強会は、それぞれの地域のリーダーが、関西は、代表島藤真澄が講師を務めています。島藤が発表したカリキュラムを、関西で参加したリーダーが各地に持ち帰り、ファシリテーションしています。

 


ハットリサトコ
ShimaFuji IEM 翻訳チームの一員です。出産・退職後、在宅で働ける資格を身につけるために翻訳を学び始めました。
約5年フィクション/ノンフィクションの下訳、ウェブ・ライターを経て、『限界はあなたの頭の中にしかない』に巡り合い、深い共感を覚え、ShimaFujiIEMのチームに加わわっています。

超富裕層に超個人主義―「超」に振り切る集客で観光大国日本を実現できる

こんにちは、トイアンナです。
政府が「観光大国」として日本を活性化する目標を定め、2015年の3倍となる6,000万人の観光客誘致を達成しようとしています

そして政府の「観光立国」に伴い、下記の動きがすでに生まれています。

・宿泊施設の増加
観光客を誘致したいなら、宿泊先なしには始まりません。日本ではホテルだけでなくAirBnBに代表される「民泊」が増加。
さらに高級ホテルグループ「星野リゾート」も庶民派エリアの新今宮に建設が始まり、再開発が進んでいます。

・多言語に配慮したサービスの普及
宿泊施設の次は「交通の便」です。都心部はすでに私鉄・JR共に公共機関が縦横無尽に走っています。一方で駅名が英語表記だと長くて暗記できなかったり、駅の出口が多すぎて道に迷ったりといった「わかりやすさ」には課題が残っていました。読者の皆様も新宿や梅田駅の「迷宮」に迷われた経験はございませんか? 初めて日本へ来た観光客が日本の複雑な交通網を理解することはまず不可能です。

2016年より都内ではJRの駅名に遠し番号が振られ、駅名が判らなくても乗降者できるようになっています。たとえばローマ字だと長い「Musashi-Koganei(武蔵小金井)」を覚えなくてもJC15という通し番号だけで乗降できるようになり、案内する側・される側も便利になりました。

・グローバルサービスの参入
さらに飲食店のデリバリーサービス「Uber Eats」を始めとした、世界的企業が日本へ次々と参入しています。慣れ親しんだサービスなら安心して観光客も使えるため、集客には欠かせません。

ところがこういった状況を尻目に、日本企業の多くは未だ「何をすればいいか」と戸惑っている段階です。

本来ヘアサロンや歯医者などは外国人来訪者が増えれば大きな売上アップのチャンスになるのですが、「うちは英語のできるスタッフもいないし」と日本人顧客にばかり目を向けてはないでしょうか?

日本は観光客を増やすチャンスをいくらでも持っている

もともと日本は観光客を増やすポテンシャルが高い国です。

・「グルメの首都」と呼ばれる最高のレストラン群
・沖縄から北海道と「冬と夏」を両方楽しめるリゾート
・京都を中心とした歴史的建造物の多さ
・家族連れでも安心の治安

ここまで集客できる要素があるのに「むしろ少なすぎる」のが日本の観光客数。その原因はサービスの「画一化」にあると、経営者デービッド・アトキンソンは指摘します。

超富裕層向けサービスがない国、日本

たとえば、日本のホテルでは年収10億円あるような超富裕層に対応できる施設がほとんどありません。ロンドンの一番高いホテルは1泊1万ポンド。なんと144万円です!(2017年5月3日現在)一体誰が使うんだ、とお思いになるでしょうがロンドンを一望できることが人気で、満室なこともしばしば。

それに対して東京で一番高いと噂の「アマン東京」でも、1泊が20万円を超えることはめったにありません

また、ロンドンを始めヨーロッパでは「追加料金を払って他の客より先に入場する」サービスがよく見られますが、日本では貧富に関係なく大行列を作って待つのがよいこととされています。例外はディズニーとUSJくらいです。

しかしその一方で、こう考えたことはないでしょうか? 「あの展示会は行ってみたいけど混んでるからいいや」と。我々と同じことを富裕層は考え、日本でお金を落とさないのです。

このように日本では「そこそこお金持ち」までしかターゲティングできておらず、マーケティング上「超富裕層」向けサービスが不足しています。

超〇〇を狙えば、市場を独占できる

そしてこの現象は「超富裕層」だけではありません。サービスが画一化してしまったせいで、個性ある観光ができていないのです。観光客に日本で思いっきりお金を落として欲しいなら「超〇〇」な方へターゲティングしてマーケティング施策を練る方が成功します。

たとえば……

①アニメファン向きのツアー:
コミックマーケットの時期に合わせてアニメファンを誘致。
アニメの「聖地巡礼」から同人誌即売会の交渉まで代行

②グルメツアー:

日本の有名レストランを巡ることを目的としたツアー:
レストランの予約時間以外はすべて自由行動にし
予約の取りづらい一流レストランを一斉手配

ここではツアーだけを例にしましたが、歯医者なら「超富裕層向けセラミック施術」を用意できます。ヘアサロンならアニメファンを見越して「キャラクター名を言ってもらえれば再現したヘアスタイルにするサービス」を準備するだけでも大きな売上アップへ繋がります。

日本ではとかくサービスの均質化を求めますが、むしろこれからは「差別化」の時代。観光立国として「超〇〇」と呼べそうな尖った顧客を獲得していきましょう。

参考文献:
デービッド・アトキンソン『新・観光立国論―イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」』


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

 

安易な無料配布で700人のリストラ!?マーケティングの失敗例に学ぶ

こんにちは、トイアンナです。
「集客のため、無料で商品サンプルを配る」施策は、わざわざ教わらなくても誰もが経験する王道のマーケティングです。

スーパーの試食品などは日常的に見かけますし、引っ越し業者がお見積りだけでくれるプレゼントはなかなかの量。お米から洗剤一式まで無料配布されると、ついその会社を選びたくなりませんか? こういった施策をマーケティングでは「サンプリング」と呼びます。

返報性の原理を利用した無料配布

サンプリング戦略がここまで広く採用されているワケは、費用対効果がいいからです。すなわちサンプルを配った分だけ、集客へ繋がる可能性が高いから。

高級車のように単価が高かったり、何度もリピート購買を狙えなかったりする商品では使えませんが、食品や消費財、美容室のトリートメントなど「何度も使ってくれる」「比較的安い」商品にはうってつけです。

ではなぜサンプリングは費用対効果がいいのでしょうか。その秘密は心理学における「返報性の原理」にあります。

多くの人は人からものをもらうと「何かお返しをしなくては」と考えます。それどころか、自分が親切をした上でお返しをしない人へは不快感すら抱くこともあります。たとえばタダで置いてあるからと飲食店のつまようじをゴッソリ持ち帰る人がいたら「この人、タダだからっていくらなんでも……」と思うでしょう。

このように「親切心に何かでお返ししたい」と感じることを返報性の原理と呼びます。

無料サンプリングはこの「タダだからって貰いっぱなしじゃ申し訳ない」という気持ちを利用して、お返しに何か購入しよう、と動機づけるのです。

今回は飲食店を例として見てみましょう。これまでの成功例に多いサンプリングは「無料のコーヒー」配布です。古くはカルディが2009年に実施し、短期間で店舗数を4.4倍へ拡大させました。

最近ではマクドナルドの100円コーヒー無料配布キャンペーンが記憶に新しい方もいらっしゃるかもしれません。

何社かが繰り返しているキャンペーンであっても、業界が違えば目新しく映ります。カルディはおしゃれな輸入食品店。ファストフード店のマクドナルドが同じ施策をすれば充分「新しい!」と興味を持っていただけるのです。

しかし、これらの成功例だけを胸に「ウチも配ろう」とは思わない方が賢明です。

無料コーヒーで700人の雇用危機を生んだWaitrose

いくつもの店舗で成功例とされてきた「無料コーヒーの配布」。ところが全く同じ施策で売上アップどころか、多数の店舗閉店へ追い込まれたスーパーマーケットの大手チェーンがあります。

イギリスの大手スーパー「Waitrose」が同様に無料コーヒーを配布した結果、「無料」に惹かれるだけで何も商品を購入しない客が殺到。結局、スーパーへ来店してもコーヒーだけもらって1品も買わない悲劇を生みました。今年だけでWaitroseは6店舗を閉鎖、それに伴い700名のスタッフが雇用継続の危機を迎えています。

では、カルディやマクドナルドは成功したコーヒーの無料配布でWaitroseはなぜ失敗したのでしょうか?

ブランドイメージにそぐわない戦略は売上を奪う

ここでWaitroseの情報を少し追加させていただきます。Waitroseはイギリスの高級スーパーで、日本で言えば紀伊国屋や成城石井のような存在です。強みは無農薬食材や世界中から集めた豊富な品揃え。日本食もお蕎麦や寿司を始め「わさび豆」まで扱う豊富さです。これらの強みと引き換えに商品の価格は高く、庶民はまず訪れません。

そして無料のコーヒーに惹かれる層はその「庶民」だったのです。

Waitroseにとって「無料配布」に惹かれるような層はターゲット顧客ではありません。
ですからいくら人を呼び込んでも、お客様になりそうな人はほとんど呼び込めていなかったのでしょう。

対してマクドナルドやカルディは、ごくごく普通の方が使う場所。「無料」に敏感な家族連れも多いため、そのまま店舗内購入が見込まれます。

Waitroseのように「高級」なブランドイメージを作ったら、たとえ世間が値下げラッシュに沸いている時期でも高級路線を貫く必要があります。ロレックスやフェラーリが「今だけ30%割引!」という施策をしても、いい顧客が集まらないのと同じです。

消費者は返報性の法則より強く「一貫したブランドイメージ」を求めます。「他社も成功しているし……」と安易にマーケティング戦略をマネすると、ブランドイメージを傷つけ、長期的な売上ダウンへとつながりかねません。

他業種の戦略から学び、自社へ適用するのは優れたマーケティングの応用方法です。他方、単にコピー&貼り付けした施策ではブランドイメージに反したやり方となり、却って売上を傷つけることがあります。社員から施策を募る際は自由にアイディア出しをしたのち、ブランドイメージを保てる施策だけ厳選する必要があるのです。

参考文献:重田修治『なぜか買ってしまうマーケティングの心理学』


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
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女性のためのBizワークショップ大阪が行われました

4月12日、大阪で開かれた「島藤真澄・女性のためのBizワークショップ」に参加しました。

メンタークラブでの勉強会から派生した女性向けのワークショップがスタートしたのは、この4月からです。4月8日に博多で第1回が開催され、私が参加した12日の大阪は、その第2回でした。お目にかかるのも初めての方ばかりということで、少し緊張しながらの開始でした。

まず、みんなでワークをやって緊張をほぐします。
初めて言葉を交わす人でも、ひとつのワークに取り組むことで、あれこれと考える間もなく、自然と言葉を交わしています。気がつくとずいぶん前からの知り合いのように、気軽に話ができるようになっているのです

全員のワークが終わったら、今度は自己紹介。
自分がこれまでやってきたこと、現在やっていること、そうして行き詰りを感じていること。

この「自己紹介」も、単に自分を紹介するだけには留まりません。自分が感じている行き詰り、物足りなさの中に、「本当の自分」「本当に自分がやりたいこと」が隠れています。ふだんは自分自身でも気が付いていない、「本当の気持ち」に気づくきっかけになります。

そうしてこのワークのおもしろいところは、それをほかの人と共有することによって、自分が行き詰まりを感じていることが、今度は別の人の「解決策」につながり、それがこれまでにはなかった新しいビジネスへとつながっていく、というところです。

自宅で「在宅秘書」(この言葉を作ったのもその方だそうです!)をしながら、400人にも上るシングルペアレントの会を結成された方、これまで事務職をされていたけれど、結婚を機にこれまでの職を離れて、もっと自分が生き生きとできるような新しい仕事、新しい働き方を求めておられる方、離婚後、「食」のスペシャリストになるために、栄養士の資格を取ろうと、子供を育てながら短大に行き、資格を取られた方、フラワーアレンジメントの有資格者で、フラワーショップの経営の経験もお持ちの方…

それぞれの経歴、さまざまなバックグラウンドをお持ちの方が、できること、持っているものを出し合い、足りないところを、別の人の持っているものやできることで補い合う話し合いをしながら、新しいビジネスの可能性がいくつも生まれていきました。そうしてこの話し合いをもとに、実際に動きが始まっています。
かつて日本では、女性は二十代の半ばには結婚し、家庭に入り、専業主婦となることが、「当たり前」のライフコースだった時代がありました。男性が一家の「稼ぎ手」となって会社で働き、女性は家の中で家事・育児を担う、という分業体制が、社会にとっても望ましいことだったのです。

ところが現代では、社会の側が「働き手」としての女性の力を求めています。不況や労働環境の悪化によって、女性の経済力がなくては家庭が成り立たない、という厳しい背景もあります。にもかかわらず、女性の給与は依然として低いまま。女性の貧困、とりわけシングルマザーの貧困が問題になっていますが、問題なのは彼女たちが働いているのに、貧困を余儀なくされている、ということです。

その一方、従来から女性の役割とされてきた「家事・育児・介護」の役割の中心を担うのは、依然として女性が期待されています。とりわけ、女性にしかできない「出産」は、女性のキャリアを考える上で、避けては通れない大きな問題でもあります。

現代の日本で、女性が「自分らしく生きていく」ためには、何が必要なのか。そうして自分に何ができるのか。自分のできることは、誰の、どんなことに役立っていくのか。ワークショップでは、さまざまなことが話し合われましたが、その根本にあるのはそういうことなのだ、と強く感じました。

もちろん、実際の雰囲気はまったく堅苦しいものではなく、和気藹々とした中で、活発に意見や感想が出し合われていました。そのときが初対面であったにもかかわらず、私自身、皆さんとずいぶん以前からの友達のように感じられ、今後もぜひ集まりたい、と思いました。「他者紹介」のワークの効果を、みなさんもぜひ体験してみてください。

これからもこのワークショップは全国で続いていきます。
4月23日は四日市で開催です。
もう一歩先へ進みたい、つぎの扉を開けたい、という気持ちをお持ちの方の参加をお待ちしています。


ハットリサトコ
ShimaFuji IEM 翻訳チームの一員です。出産・退職後、在宅で働ける資格を身につけるために翻訳を学び始めました。
約5年フィクション/ノンフィクションの下訳、ウェブ・ライターを経て、『限界はあなたの頭の中にしかない』に巡り合い、深い共感を覚え、ShimaFujiIEMのチームに加わわっています。

「雨が多いイギリスで傘を売るな」マーケティングで欠かせないヒアリングの技術

こんにちは、トイアンナです。
私は現在イギリスに住んでいますが、日本製品は食事から雑貨まで高品質なことで知られ、愛されています。特にトレンドへ敏感なロンドンではいたるところに寿司屋やラーメン店があり、異国感が薄れてしまうほど。

雑貨ではMUJI(無印良品)、UNIQLOが名だたるブランド品と並んで出店しており、特にUNIQLOのヒートテックは大ヒット商品となりました。

このような成功例を踏まえ「同じように高品質なものをヨーロッパへ出せば売れるのではないか」と日本企業の多くが進出を試みています。しかしその多くは辛くも惨敗し、撤退せざるを得ない現状があります。なぜ日本の製品は素晴らしいのに、現地で売れないのでしょうか。

今回は「自分が知らない分野」へ進出する際にありがちなマーケティングの失敗例と回避術をお伝えします。

雨が多い国だからと傘を売ろうとする国、日本

イギリスは雨と霧の国――そう聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。昨年はドラマ『シャーロック』が流行りましたが、その中で多くの殺人事件やバトルシーンが霧の中起きていました。

そうすると、日本企業の担当者はこう考えます。「イギリスは降水量が多い? だったら日本の傘はよく売れるに違いない。ざっと調べてみたが、イギリスの傘は粗悪でデザインもシンプルすぎる。日本の傘は丈夫でコンパクト、さらにデザインが豊富。さらに手軽に買える値段でもある。これなら輸出するだけで売れるはずだ」

そう考えて傘を売ると、これがさっぱり売れません。それもそのはず、イギリス人は雨が降っても傘を差さないのです。

浅いマーケティング分析では測れない真の需要とは?

イギリスの雨は日本と違い、ぽつぽつと大人しく降り、そしてすぐ止みます。1日中雨の日は珍しく、長くて1時間で止むのが特徴。むしろ雨は降らないままどんより曇りだけが続くことも珍しくありません。

こういった雨が多いと、傘をいちいちさすのも面倒くさいからと、折り畳み傘を持ち歩く人も少ないのです。

道端で雨が降りだしたときイギリス在住者が取る反応は以下の2つ。
(1) 気にせず歩き続ける
(2) カフェにでも入って雨がやむのを待つ
これでは雨で売上が上がるのは、傘より駅近くのカフェでしょう。

イギリスでは傘が売れない代わりに、防水ジャケットとカバンがよく売れます。傘をささずに歩き続ける雨の中で、パソコンやお菓子を持ち運ぶならカバンに防水機能が欠かせません。日本のようにオシャレで口の空いたバッグなど持ち歩いてはあっという間に水で中身が濡れてしまいます。

一時日本のランドセルがイギリスで売れていると話題になったことがあります。これも売れるのは納得。防水性・軽さ・丈夫さのどれもがイギリスの気候に合っているからです。

売れる商品、集客できるサービスの裏には必ず消費者のニーズに合ったマーケティング戦略があります。そして正しいマーケティング戦略は「〇〇だからXXが売れるだろう」という机上の空論ではなく、地道なヒアリングで成り立っています。

「現場の消費者にこそ売上アップの答えがある」というマーケティングの考え方は、営業を経験された方にとっては腑に落ちるのではないでしょうか。マーケティングとは多くの日本企業が強みとする営業力を、取引先の代わりに消費者へ向ける技術です。

真実はヒアリングの中に

もしこれまでに「マーケティングは会議室で話し合うばかり。営業しか現場を知らないんだ」とお考えになっているのであれば、それはこれまでに接触したであろうマーケターが与えてしまった誤った印象です。マーケティングを生業にするものの一人として、こういう誤解が生まれたことを申し訳なく思います。

正しいマーケティング戦略の基盤は、営業と同じ現場にあります。マーケティングにとっての現場とは顧客・消費者の声です。

マーケティングでは消費者が「これなら絶対に買う」と仰っていただくことが、営業にとって「よし、うちで扱おうじゃないか」とお取引先に確約していただくことに等しくなります。

多くの企業では何も考えず飛び込み営業をするよりも、長期的に利がありそうなお取引先を選んでからご挨拶へうかがうでしょう。マーケティングでやみくもに傘を売らず、自社の製品が好まれそうな地域や消費者を探すのも同じことです。

イギリスへ傘をやみくもに輸出するような失敗を避けるためにも、すべての企画に先駆けたヒアリングは欠かせません。もしマーケティングへ割くことのできる予算が限られているのであれば、リーフレットやWebサイトを作る費用を後回しにしてでも、ヒアリングへ真っ先に予算を割いてください。

ヒアリングは明日の利益にはつながらないかもしれませんが、1年後、2年後に歴然とした差を生みます。手っ取り早い果実よりも大きな成功を目指すため、消費者の声へ耳を傾けていただければ幸いです。

 

 


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

3.10メンタークラブ関西勉強会が開催されました

3月10日 大阪中央公会堂大会議室において、ジェイエイブラハム・メンタークラブ関西勉強会が開催されました。

最初に14名の参加者が、4つのグループに分かれて着席しました。
初対面の方も多かったので、今回も前回同様、「他己紹介」のワークからのスタートです。

「他己紹介」というのは、初対面の人を文字通り「紹介」するワークです。相手のバックグラウンドなど何も知らないところで行うために、本当の「第一印象」のみの紹介なのですが、自分が初対面の人からどのように見られているかがわかり、これまで気づかなかった自分の「資産」に気づくことができるのです。

 今回初めて私も中に加わったのですが、相手の方の印象を言葉にする作業を通じて、自分が驚くほど多くの印象を受け取っていることに気づきました。それだけでなく、ふだん初対面の方と話をするというのは、緊張したり、ぎこちなくなったりするものですが、このワークを通すと、自然に打ち解けることができ、一気に距離が縮まっていくことが感じられました。

「他己紹介」の次に行われたのが、「導入ファシリテーション」として「コネクションゲーム」です。
まず、人数分用意された小さなメモ用紙に、メンバーそれぞれが、自分の頭に瞬間的に浮かんだ言葉をひとつ、書いておきます。その中から2枚をランダムに抜き出して、全員で相談しながら2つの言葉を結びつけていく、というワークです。

 ジェイさんは、さまざまな文書やセミナーの中で、繰り返し「点と点をつなぐ」ことの重要性を述べていらっしゃいます。点と点の関係性を見出すことによってビジネスが生まれる、関係のない人同士をつなげることで、新しいビジネスができてくるものだ、と。しかもそうした発想は、ある日突然生まれるのではなく、ふだんからのトレーニングが重要です。「コネクションゲーム」の目的もそこにあります。まったく異なる2つの言葉につながりを見つけるトレーニングなのです。

 それぞれのグループから「愛」や「精神」「夢」「ビジョン」といった抽象的な言葉や、「金」、あるメンバーが師事した先生の名前、眼鏡の汚れなど、具体的な言葉が結びつけられ。そこからミクストリアリティや、見ている側の視力に合わせてくれるブラウザの話、「慈悲」という言葉に含まれている「悲しみをとりのぞく」という意味がマーケティングの根本にあるのではないか、など、それぞれのグループでバラエティに富んだ話がなされていきました。

「言葉を磨く」

 いよいよ本日のテーマである、キャッチコピーやヘッドラインを作ることに進んで行きました。
 最初に確認されたのは、私たちが作るべきコピーというのは、イメージ広告ではなく、お客様のアクションにつながるもの、お客様の問題を解決してくれる場所であることがわかるとともに、ほかとは区別される「私」の特性が際立つUSPがはっきりと打ち出されていなければならない、ということでした。

 そのためにまず、自分にとってのお客様とは誰かを明らかにしていかなければなりません。自分はどんな人の問題を解決してあげたいのか、自分の理想とするお客様とはいったい誰なのか、お客様のペルソナを決定することから始めます。というのも、身近にいない、よくわからない人をペルソナにすると、たいていうまくいかないからです。

 自分がつきあっていきたいお客様のイメージを書き出し、その上で、その人の困っていることを、表向きと本音の2種類に分けて考えていきます。
というのも、「食器が多くて台所が片づかなくて困る」という問題を抱えている人は、本当は「ふだん寂しい毎日を過ごしていて、別居している子や孫にもっと来てほしくて、つい食器を買い込んでしまう」からかもしれません。その人の本当の困りごとや悩みに刺さる提案を行えば、その人は行動を起こせるからです。

 さらに、USPというのは、意外に自分が気づいていないところにある、ということに話は進んで行きました。人は、難なくできることについては、意外に無頓着なものです。むしろ、努力を重ねてやっと身につけた能力や技術の方を、高く評価してしまいます。ところが、本当のその人の強みというのは、難なくできること、なぜできるのか自分でもよくわからないことにあるのです。この指摘は、わたし自身も思い当たるものがあり、非常に腑に落ちるものでした。

 こうして自分のUSPを作っていくプロセスを全員で共有し、最後に参加メンバーひとりひとりが今日の感想を語っていきました。
なかでも車いすで参加してくださったメンバーの方が、一語一語絞り出すようにして発言してくださった
「理解の障害を取り除くことができれば、関係を築くことは難しくないと思いました」という言葉には、深く胸を打たれました。

 そのあと、ワークにもご参加くださった社労士の先生から、助成金についてのご説明があり、会場の制限時間ぎりぎりまで、実り多い話は続いていきました。

 メンタークラブの定例会は、今後も各地で開催されます。
和気藹々とした雰囲気のなか、内容の深い、共に学べる機会としての「勉強会」。
皆様のご参加を心から願っています。

◆ 今後の日程

3月13日(月) :東京:日比谷図書館会議室 18:30-21:00
3月14日(火):名古屋 :県産業労働センター特別会議室 18:30-20:30
博多, 北海道::未定

*5月は、13日の出版直前の開催となります。ふるってご参加ください
5月8日(月):東京 日比谷図書館小ホール 18:30-21:00
5月9日(火):名古屋 :県産業労働センター特別会議室 18:30-20:30
5月10日(水):大阪 中央公会堂 大会議室18:30-21:00

7月12日 (水):大阪 中央公会堂 大会議室18:30?21:00
7月20日 (木):東京(場所未定)
9月、11月もそれぞれの地域で開催します

メンタークラブとは


服部聡子(ShimaFuji IEM 翻訳チームリーダー)
出産・退職後、在宅で働ける資格を身につけるために翻訳を学び始める。
約5年フィクション/ノンフィクションの下訳、ウェブ・ライターを経て、
『限界はあなたの頭の中にしかない』に巡り合い、深い共感を覚え、弊社に。

戦を略する

紀元前500年前後に中国で活躍した武将、孫子は

それまでに人々が考えていた「戦とは何ぞや」という

概念をひっくり返したと言われています。

それまでの時代には、戦の勝敗は天命が左右するものと

考えられていたそうです。

孫子は過去の戦を分析し、戦法を書にまとめました。

その中でも特に有名な概念は

「戦わずして、勝つ」というものです。

これが「戦略」つまり「戦を略する」という考えに

つながっていったものと考えられているそうです。

「戦わずに勝つなど、卑怯な!!」

と、思ってしまいそうになる私ですが

これは日本人固有の感覚でしょうか。。(武道の影響とか?)

でもよくよく考えてみるとそれは、スポーツの話でもなく

ゲームの話でもなく、多くの人命が関わる戦の話です。

避けられるのであれば戦いを避けるのは真っ当と言えます。

ジェイさんはよく”Strategy” (「戦略」)という言葉を用いますが

ShimaFuji IEM翻訳チームでは長いこと

この言葉の訳に悩んできました。

もちろん、ジェイさんが語るのは戦ではなくビジネスです。

色々な専門用語を使われる師ですが、軍事用語は

その中でも特に多く使われています。

しかしながら、軍事用語とジェイさんの思想が

相容れないような気がして、私はなんとなく違和感を

感じてきました。

師の考えや方法論は攻撃的なものではなく、

むしろ人間の本質や、ロジックに基を置いています。

それはゲーム感覚で人を操るものでもなく、

むしろ相手を尊重し、その気持ちに寄り添うものです。

そんなときに孫子が言うところの「戦略」つまり

「戦を略する」という考えを知って、腑に落ちました。

孫子は、己を知り、相手を知ることが戦のカギを握る、と

説いています。

そのようにしてはじめて、戦の規模を最小限に抑えて勝つための

出方を知ることができると。

ジェイさんがいつも「自社や競合が、何をどんな動機で

どのように、誰に向けて行っているのかを分析しなさい」と

仰っているのを思い出します。

孫子においても、ジェイさんにおいても

それは「ラクして勝とう、ラクして儲けよう」という

考えとは真逆の思想です。

それはむしろ、損失や疲労を最小限に留めながら

成果をあげるために、よく学びよく考える、という部分に

重きを置いているように思えます。

同時に、「戦略」の第一歩が把握と分析から始まることも

分かります。

ちなみにこの孫子は、冷淡な一面もあったことで

知られているようですが、現代の戦略家・ジェイ師に

冷淡さは感じられません。

ミーティングで大切な話をしている途中でいきなり

「真澄の眉毛はキュートだね!」と言ってきたりと

お茶目な一面に、いつもほっとさせられている私です。

(a_washiyama)


a.washiyama

a_washiyama:
ShimaFuji IEM 翻訳チームのメンバーです。
翻訳家としてまだまだ勉強中ですが、ジェイさんのお考えを分かり易く、正確にお伝えできるよう、邁進して参ります!

倫理的は論理的

ジェイさんの文章を初めて読んだとき、目を引かれたのがethical(倫理的な)という単語が何度も出てくることでした。

倫理的という言葉は、それほど日常的な言葉ではありません。政治家の汚職事件の際に言われる「政治倫理が問われる」といった表現や、犯罪報道の中で「倫理観が欠如している」などといった表現などで目にする程度でしょうか。

倫理とは、人が生きていくうえで、ある行為をすることが「よいか、悪いか」― 自分にとって、あるいは誰かにとって「有利か、不利か」「得になるか、損になるか」ということではなく、「人間としてこうすることが善であるのか悪であるのか」、という判断の基準となるものです。それが法律に関する文章などではなく、マーケティングの文脈の中で登場することに驚いたのでした。

やがてジェイさんが、マーケティングは非常に大きな力を持つものであり、その力をもってすれば、良いことも悪いこともできる、と述べておられる箇所にも行き当たりました。また別の文脈でも、繰り返し、「マーケティングは人をmanipulate(操る)ものではありません」と言っておられることも目にしました。

そのころ偶然、私は宮部みゆきの『ペテロの葬列』という小説を読みました。その中に興味深い人物が出てくるのです。

不幸な幼少期を過ごした頭脳明晰な登場人物は、世間を見返してやろうと、相手がどんな人間であるのかをたちどころに見抜く直観力と、持ち前の巧みな弁舌、カリスマ性を生かして、1970年代、怪しげな自己啓発セミナーのトレーナーとなります。そうして多くの人をだまし、詐欺の片棒をかつぐようになるのです。

それを見て、私ははっきりと腑に落ちたのです。だからこそ倫理的であることが必要なのだ、と。
同じように鋭い直観力と、適格な言葉の使用、カリスマ性を備えているジェイさんとその登場人物が、決定的に異なっているのは、まさにその点だったのでした。

小説の中にも「人を教え導くというのは、本来、非常に尊い技だ。難しい技でもある。そうそう誰にでもできることではない。だからこそ教育者には適性というものがあるはずだ。だが、適性だけでは道を誤ることがある。教育の目的の正邪を見極める良心を欠いてしまえば」という言葉が出てくるのですが、ジェイさんは個々人の心のはたらきというニュアンスの強い、いくぶん曖昧なところのある「良心」という言葉ではなく、もっと社会性の強い「倫理」という言葉を選ばれたのだと思いました。

では、自分の行為が「倫理的」に見て間違いがない、と担保するのは、いったい何なのでしょうか。

ジェイさんはあるインタビューの中で、このように話しておられます。

人生には3つの要素があります。倫理、公平、法律の3点です。法律というものは、法律家がちょっと変わった解釈をしたぐらいでは、変えることはできません。
しかし倫理と公平は非常に主観的です。私がいつも見極めたいと考えているのは、その企業や業界が、私の目から見て、理にかなった運営をしているかどうかです。

ここでジェイさんは「倫理的なビジネスを行っている企業は、理にかなった運営をしている」と述べておられるのです。

「倫理的な人」というと、私などはどうしても「雨ニモマケズ」に出てくる、宮沢賢治が「ワタシモナリタイ」といった人のことをつい想像してしまうのですが、その人の生き方は果たして論理的と言えるのでしょうか? この人は周囲の人々を幸せにすると言えるのか。また、持続可能性といった観点から見るとどうでしょう?(ちなみに宮沢賢治自身は土地改良に尽力したことが知られています)

以前、翻訳チームのメンバーが「翻訳裏話」の中で、ジェイさんの言葉を紹介してくれました。

あなたの会社で働く人は、あなたに一生を捧げているのです。彼ら、彼女らがあなたに必要とされていること、大切に思われていることを感じさせてあげなくては。シングルマザーの社員がいるのであれば、彼女のためにもっと何かできることはありませんか?彼女の息子さんのために何かしてあげていますか?(「commitment」)

先日のテレビ会議のセッションの中で、このジェイさんのアドバイスを実行に移した方から、アドバイスのおかげで利益が3倍にもなった、という結果報告があったのです。

倫理を論理的に実践することが大きな結果を出した、というまぎれもない実例がここにありました。

論理的とは、ちょうど1+1の答えが、誰がどこでやっても2になるように、三角形の内角の和が、いつでもかならず180度であるように、いつ、誰が、どこで行っても、かならずそうなるような、普遍的なことです。

嘘をつこうと思えば、自分以外の人が正直でなければ、嘘は成立しません。全員が嘘つきであれば、嘘はもはや嘘としての意味を失います。「犯罪は割に合わない」と言いますが、みんなが犯罪を犯し合っているような社会は、誰も長くは生きていられないことを考えると、この言葉は、倫理的にばかりでなく、論理的に考えてもその通りなのです。

自分だけが得をするような行為は、論理的とは言えませんし、逆に、自分だけが我慢する行為というのもまた、論理的とはいえません。
その意味でも「私は論理的な人間です」とおっしゃるジェイさんは、同時にきわめて倫理的な人でもあるのでしょう。

長い年月にわたって、一流のマーケターであり続けてきたジェイさんからは、マーケティングだけでなく、実に様々なことが学べると思うのでした。


ハットリサトコ
ShimaFuji IEM 翻訳チームの一員です。

神は細部に宿る、という言葉は、まさに翻訳のためにある、と信じ、言葉ひとつひとつと格闘する毎日です。残念ながら、木を見て森を見ず、どころか、葉っぱ1枚の葉脈に目を奪われて、森の存在を忘れることもしばしば。

お客様目線

ビジネスでは、商品開発からマーケティング、販売、フォローアップまで、「お客様目線」で考えることが大切だと言われています。

昨年12月に行なわれたビジネスサミットと経営塾に参加しているとき、「お客様目線」という言葉が頭の中に何度も浮かびました。ジェイ・エイブラハム氏がお客様、つまり参加者の立場に立って常に行動していたからです。今まで翻訳してきた文章の中で何度も「クライアントの立場に立って」という言葉がありましたが、これほど徹底的に実践しているのを目の当たりにして、その言葉の重みを強く感じました。

たとえば、参加者の理解度を常に確認しながら話していたことが印象的でした。講演中に話がひと区切りつくと、「ここまでの内容はわかりますか」と参加者に問いかけていました。あまり反応が見られないと「わからなければ首を横に振ってください」と呼びかける場面もありました。

また、エイブラハム氏が関わってきた世界各地のさまざまな業種の実例をあげて説明し、「参加者のみなさんが自分のビジネスで実践できることを持ち帰ってもらいたいのです」と言って、参加者が行動を起こすように促していました。

休憩中には、私たちスタッフに「内容はどうだったか」「参加者の反応はどうか」と必ず尋ねてきました。また、そこから派生して、日米のリアクションの違い、教育システムの違い、言葉の構造の違いなどについて話し合うこともありました。

そして休憩後は、参加者やスタッフのフィードバックに合わせて話す内容を変えていくのです。たとえば、参加者にあまりなじみのないコンセプトを話したときは、具体的な例を含めてもう少し説明してから次の項目に移っていきました。

このように、すべての言葉や行動が参加者の立場に立って生まれたものでした。ジェイ・エイブラハム氏の「クライアントの立場に立って」という言葉を身にしみて理解できたと同時に、世界トップのビジネスコーチのこの真摯な姿勢と柔軟な対応を目の前で見て圧倒された数日間でした。


watanabe_makiko:

ShimaFuji IEM 翻訳チームの一員です。
難解な言葉や韻を踏んだ表現、英語圏独特の考え方に出会うとワクワクします。その英語を通して、書き手や話し手の人柄が表われているからです。どのような日本語に訳していこうか、と考えながら日々格闘しています。