ビジネスプランの「禅」

by ガイ・カワサキ

 

 

一冊の本ほどにも分厚いビジネスプラン作成に人生を捧げる前に、

ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載された

「起業:最初の一歩を踏み出すために必要な正式事業計画書」

という記事に引用されていた名言をご紹介しましょう。

 

――計画は役に立たない。だが、立案はすべてにまさる。

 ドワイト・D・アイゼンハワー

 

1985年-2003年、バブソン大学の卒業生の起業した116社を

分析した研究結果が発表されました。

成功の指標として、歳入、従業員数、実収入などを導入して比較した結果、明らかになったのは、

起業に際して正式なビジネスプランを準備したか否かは、

のちの成功に統計的な有意差が見られなかった、ということでした……

 

「本当のところ、私たちがやりたくないのは、1年間、

下手をしたらもっと時間を費やして、ビジネスプランを作成することなんです。

現実に顧客が来てくれるかどうかもわからないのに」

と、この研究の著者、バブソン大学のウィリアム・バイグレイヴ氏も言っています。

「でも、やるしかないんです」

と起業家の気持ちを擁護していますが。

 

さらに、起業家は下書きに何ヶ月も費やしたがために、

それが不備のある計画書であっても、しがみつく傾向があることも指摘しています。

 

この研究報告を読んで、計画もビジョンも、

コミュニケーションやチームワークといったものには必要ないのか、

と結論は出さないでください。そんなことはありませんから。

 

確かなのは、ビジネスプランはそれ自体で動き始めるものではない、ということです。

ツールではあるけれども、それ自体が目的ではありません。

 

効果を上げるビジネスプランを書くために学ばなければならないこと。

それが「ビジネスプランの禅」なのです。

 

 1. 実施要項に焦点を当てる

実施要綱は、ほんの1、2ページにすぎないものですが、

ビジネスプランの何よりも重要な部分です。

もしその箇所が、とびきりのもの、目を引きつけ、胸を高鳴らせるようなものでないなら、

投資家はそこから先は読んでくれないでしょう。

たとえあなたのすばらしいチームには誰がいて、

あなたがどんなビジネスモデルを持っていて、

どうしてその製品が新しい地平を開き、パラダイムシフトを巻き起こし、

革命的であるといえるのか、などと書いてあったとしても。

 

仮に、そのプランが純粋に社内向けだったとしても、

努力の80%は、しっかりした実施要綱を書くことに注ぐべきです。

ところが大半の人は、誰も説得できないどころか、理解さえしてもらえない、

膨大なエクセル表を作成することに80%の努力を傾注しているのです。

 

 2. 書くことには意義がある

 

多くの人は、投資家の気を引くためにビジネスプランを書きます。

ところがビジネスプランによって資金を集めようとしている起業家に対して、

大半のベンチャーキャピタリストは、その売り込みの間にGoサインを出すか、やめるか、

本能的に決断しています。

 

ビジネスプランを受け取る(そして、おそらくは目を通す)ということは、

注意義務に基づいた、機械的な段取りのひとつにすぎません。

仮に資金を集められなかったとしても、ビジネスプランを書くことには、

もっと有意義で大切な理由があります。

ビジネスプランには、目的(何を)、戦略(どうやって)、戦術(いつ、どこで、誰が)について、

経営陣を団結させる力があるのです。

 

 3.  作成は一人の手で

 

ビジネスプランの作成は、経営陣をも含めたグループワークではありますが、

実際に書くのはひとり(できればCEOが望ましい)に任せるべきです。

ひとりの筆者ではなく、複数の人間が分担し、コピーペーストで作業を進めた場合、

統一の取れた文書に仕上げることは大変困難になります。

 

 4. 計画の前にキャッチフレーズを

 

多くの人がビジネスプランを作成しますが、そのほとんどはガラクタです。

60ページのうち50ページが統計と、もったいぶった専門用語、略語、

「われわれに必要なのは、市場の1%のシェアである」

といった意味のない文句でできています。

そんなもので売り込もうとするのですから。

 

正しい順番はこうです。

まず完璧なキャッチフレーズの作成をし、

そのつぎにそれをもとにしたビジネスプランを書くのです。

ちゃんとしたキャッチフレーズは、事業計画書を蒸留したのちに出て来るものではありません。

それはなぜでしょうか?

その理由は計画を修正するより、キャッチフレーズを修正する方が、はるかに簡単だからです。

何通りかキャッチフレーズを作成してみて、使えるかどうかを試し、

そののちにビジネスプラン全体を書き始めるのです。

どんなにおおぜいの人が、全文を仕上げたのちに、要約を書いていることでしょう。

 

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 5. すっきりと、読みやすく

 

理想的なビジネスプランとは、20ページ前後、これは統計や補遺を含んでいます。

提出する事業計画書は、余計なものがないほうが良いのです。

20ページを超えると、10ページ増えるごとに、

計画書に目を通してもらえる割合は、25%ずつ下がっていきます。

 

多くの人は、ビジネスプランの目的を、

投資家に衝撃を与え、畏敬の念を起こさせ、お金を振り込んでもらおうとするためだと誤解しています。

 

実際は、ビジネスプランというのは、次の段階に進むためのものです。

保証人や顧客の確認といった、投資対象の資産価値・収益力・リスクなどの調査分析が、それに続きます。

考えている内容が煮詰められていればいるほど、計画書は短いものになっていきます。

計画書が短ければ、読む側も簡単に読み終えることができます。

 

 6. 財務計画は1ページ、キー・メトリクスをプラス

 

多くのビジネスプランには、5ヵ年事業として1億ドルという数字が最上段に計上されていながら、

項目欄には、鉛筆の予算といった細かいことが書かれていたりします。

これでは、誰が見てもあてずっぽうな数字を並べているだけだと思われてしまいます。

 

みなさんにお願いがあります。

エクセルの誇大妄想を1ページにまとめて、

事業をキー・メトリクス(※ 総利用時間や 総人口、年齢分布、性別比率などの統計データ)に基づく

予測を出してください。

たとえば、有料入場者数などの数字です。

こうしたキー・メトリクスは、仮説を確かなものにします。

万一あなたが、初年度、

フォーチュン誌が選ぶ500社の20%に製品を購入してもらえると見込んでいるならば、

一度、リハビリプログラムを検討してみた方が良いかもしれませんが。

 

 7. じっくり書け、迅速に行動せよ

 

私はこの言葉を、『イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』を著した、

友人のクレイトン・クリステンセンから借りました。

イノベーションのジレンマ

 

つまり、ビジネスプランを書くときは、

自分がこれから何をやるのか、

完全に理解しているように行動せよ、ということです。

熟慮を重ねるべきです。

間違っているかもしれませんが、ベストをつくすのです。

 

とはいえ、どんなに熟考して書いたからといっても、

新しい情報やチャンスに直面しても、計画書に固執してはいけません。

計画の実行においては、迅速さが求められるのです。

すなわち、柔軟性をもってすばやく動く。市場のことがわかればわかるほど、計画は変わっていきます。

 

以下に手順を述べます。

 

キャッチフレーズを決め、それをもとに1-2週間かけてビジネスプランを書く。

チームにも相談しながらビジネスプランを煮詰める。

(ビジネスに対するものの見方考え方が、それぞれ、どれだけ離れているかわかるはずです)。

 

ビジネスプランは、作業のための文書だと考えて、

これで実際のビジネスを動かしていこうなどとは考えないことです。

もしこのようにやっていけば、90%のライバルより、優れたビジネスプランが書けるはずです。

 

 

著者:ガイ・カワサキ


 

元記事:http://bit.ly/1Yqh2W5?

(翻訳:服部聡子)

 

理想的な投稿(ポスト)のためのチェックリスト

 

ソーシャルメディアを揺るがすほどの影響力を与えたくありませんか?

以下に挙げる10のチェックリストに従えば、あなたの投稿もまちがいなく効果をあげることでしょう。

 

1.シェアからシェアへと広げよう

    
あなたの投稿は、毎回「シェアテスト」に合格しなければなりません。

つまりその投稿は、あなたのフォロワーが、それぞれ自分のフォロワーと

シェアしたくなるほどすばらしい、ということです。

これは誠意のこもった「お世辞」です。

「いいね!」を押すのは、レストランでウェイターにチップを払うようなもの。

記事をシェアするのは、人にそこで食べてみて、と伝えることです。

 

2. NPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)を見習おう

    
ナショナル・パブリック・ラジオが提供するコンテンツは、

情報、考えさせる番組、エンタテインメントなど、さまざまなものです。

NPRは1年に数回、番組を中断して、寄付の呼びかけをおこないます。

多くの人が、番組の中断を受け入れ、しかも寄付を行う人も多いのは、NPRが役に立っているからです。

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あなたが商業的な目的でソーシャルメディアを使いたいなら、

販促活動を行ってもいいほど、すばらしいコンテンツを投稿する必要があります。

 

3. 大胆であれ

    
もしソーシャルメディアでうまくやりたいのなら、ノイズを突破しなければなりません。

そのためには、あなたにとって重要な問題を取り上げる場合は、大胆であることです!

あなたの投稿を好ましく思わない人は、フォローを外すでしょう。

ブランドは、個人とはちがって、その代償を払わなくてはなりませんが、

それでも、セールスフォース・ドットコムや、アップルは、

たとえばゲイの権利などの問題について、大胆に立場を表明しています。

 

4. 手短に

    
これまで、短かすぎる投稿というのを見たことがありません。

たいていの投稿は長すぎます。

ツイッターには、はっきりとした140字という制限がありますが、

他のプラットフォームに投稿する際は、もう少し文章が長い方がいいでしょう。

けれども、5文を超える長さが書きたかったら、

ブログに記事を書いて、そこに誘導するために、ソーシャルメディアを使ってください。

あなたがほんの数秒間で、人の注意を引きたいなら、

イーハーモニーではなく、ティンダーを考えるように。

 

5. ソースにリンクする

     
ひとつの投稿を短くした方が良いのは、ソーシャルメディアは創造の場ではなく、

情報を収集し、つなぎ合わせるキュレーションの場だからです。

あなたはフィルターであり、

既存のすばらしいコンテンツを、もっと多くの人に見つけてもらうための案内人なのです。

制作者にお礼をし、もっと詳しく知りたい人をそこへ誘導するためにも、

リンクを張ることは、効果的であり、倫理的なことでもあります。

 

6. グラフィックを加える

     
読者を引きつけ、交流を増やすために、投稿ごとにグラフィックを入れてください。

そのような単純なことだけで、契約を倍にすることもできるのです。

私はキャンバのチーフ・エバンジェリストになるずいぶん前から、

ソーシャルメディアにグラフィックを載せるために、

キャンバのツールは、簡単で、シンプルで、費用が安く、

しかも法的にも問題のないものだと思っていました。

私たちは、もっと世の中の人に、キャンバで学んでほしいと思っています。

ですからlynda.com「キャンバと一緒に動きだそう」というコースを作りました。

 

Canva

7. 最適なサイズのグラフィックを使う

     
グラフィックの話が続きますが、かならずそれぞれのプラットフォームで

最適なサイズのものを使用するようにしてください。

完璧な世界なら、すべてのプラットフォームが同一サイズのグラフィックを

サポートしてくれるでしょうが、ここは完璧な世界ではありません。

それまでは、それぞれのガイドラインに従って、グラフィックを作成しなければなりません。

ツイッター(1024 x 512)、フェイスブック (940 x 788)、ピンタレスト (735 x 1100)、

グーグル+ (800 x 600)、インスタグラム (640 x 640)です。

(キャンバはそれぞれのサービスに合わせたテンプレートを提供しています)

 

8. 投稿はひんぱんに

     
ソーシャルメディアでもっともありふれた失敗は、回数が少なすぎることです。

私は、ツイッターのアカウントで、だいたい1日当たり75回、投稿をおこなっています。

フェイスブックとグーグル+のアカウントでは、それぞれ1日あたり5から10回の投稿を。

あなたの読者が全員、同じ時間に起きているというわけではありません。

仮にそうであっても、人によってコンテンツの消化の仕方はさまざまです。

私はツイートを3回、8時間ごとに繰りかえしています。

そのことで文句を言う人もいますが、ソーシャルメディアでは、

一部の人をいらだたせるのは、正しく使っている、という証拠なのです。

twitter - What are you doing

9. フェイスブックでネイティブ動画を使ってみよう

     
これはフェイスブックのヒントです。

私の経験では、ネイティブ動画をフェイスブックにアップロードすれば、

ユーチューブのビデオをフェイスブックに埋め込んだ場合より、3倍のビューを得ることができます。

もしあなたがフェイスブックを使っているのなら、ネイティブ動画と、グーグルやユーチューブのビデオを比較してみませんか?

これを実際にやるとなると、あなたの手間は2倍になりますが、

ソーシャルメディアは、そもそもが楽なものではありません。

 

10. 「匿名」で行こう

     
ほとんどのブラウザで、あなたが「匿名」でウェブサイトを訪問することができるようになっています。

つまり、クッキーを残さない、ということです。

ウェブサイトの側では、あなたを認識できないか、あなただと特定はできず、

あなたのアカウントで自動的にサイン・インすることはありません。

また、あなたの投稿が、ほかの人からはどのように見えているかを再確認することもできるので、

ソーシャルメディアでは、ぜひ実行したいことです。

完璧な投稿をどのように作ったら良いのか、実際にわかっている人はいません。

けれども、実験を繰りかえすことによって、完璧に近づけることはできるはずです。

タイミング、長さ、グラフィック、テーマ、さまざまな要素を変えて、試してみてください。

そうして、実験を通して、何が一番効果があったかを、私(guy@canva.com)まで知らせてください。

 

 

著者:ガイ・カワサキ


元記事:http://linkd.in/1BIzQCt

(翻訳:服部聡子)

共同創設者を見つける技術

 

世間では「孤高のイノベーター」というイメージが好まれていますが、

このイメージは正しくありません。

成功した会社の多くは、少なくともふたりの人間の貢献によってスタートを切り、

成功にいたったのです。

 

陰と陽、作り手と売り手、夢想家と現実主義者、なんと呼んでもかまいません。

事が成ってから、世間は一方の創設者だけを 「イノベーター」 と持ち上げるかもしれません。

けれども、新しいベンチャーを立ち上げるのは、チームの仕事なのです。

レコード・レーベルCDベイビーの共同創設者、デレク・シヴァーズは、

このように言っています。

 

最初のフォロワーとは、孤独な変わり者を、リーダーに変える人のことだ。

 

状況によっては、最初のフォロワーが最初の顧客であるケースもありますが、

多くの場合、最初のフォロワーとは、会社の2番目の従業員、

すなわち共同創設者のことなのです。

 

会社が成功をおさめ、楽しく大きくなっていくためには、

すばらしい共同創設者以上に重要な要因は、ないといってよいでしょう。

逆に、無能だったり、怠惰だったり、誠実さに欠ける共同創設者以上に、

会社をうまくいかず、悪化させ、情けない事態に陥らせる要因も、まずありません。

 

このコラムでは、どうやって共同創設者を選べばよいのか、

その方法を明らかにしていきましょう。

 

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 ■□ 共同創設者が分かちあわなければならないもの


 

会社を成功に導くために、共同創設者には、共通点と相違点がなければいけません。

まず、あなたと共同創設者が一致していなければならない点をあげていきましょう。

 

◆ ビジョン

ビジョンという言葉は、夢想家のおかげで濫用される傾向にありますが、

共同創設者というソウルメイトにおいては、

スタートアップと市場がどのように進化していくか、

お互いが同じような直観を共有していることを意味します。

 

たとえば、創設者のひとりは、コンピューターのことを、

今後も大きな組織のビジネスの道具であり続ける、と考えていて、

もうひとりが、これからは小さく、安価で、誰もが使うようになる、と考えていたなら、

ふたりのビジョンがマッチしているとはいえません。

 

◆ 求めるものの大きさ

誰もが帝国を築きたいと考えているわけではありません。

また、誰もがライフスタイル・ビジネスを望んでいるわけでもありません。

何かを求めることに 「正しい」 も 「間違っている」 もありません。

求めるものは、一致するか、一致しないか、しかないのです。

創設者が最初から、自分たちが何を求めているかわかっているわけではありませんが、

それでも、少なくとも大筋で合意できているならば、心強いものです。

 

◆ どこまで深く関与するか

創設者は、同じレベルで関与していなければなりません。

スタートアップか、家族か、バランスの取れた生活か、どれが最初に来るでしょうか?

創設者の優先順位が異なっていたら、スタートアップの成功は、むずかしくなります。

 

創設者のひとりが、2年間働いたあとは、

そのスタートアップをさっさと売り払おうと考えているのに、

他の創設者は何十年と持ちこたえる会社を作ろうとしている…

というのでは、問題はかならず生じます。

 

理想を言えば、創設者はともに最低でも10年間は、

そこにとどまることで合意しておいてほしいものです。

 

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 ■□ 共同創設者に必要な相違


 

逆に、スタートアップが直面する、多くの困難を思えば、望ましい「ちがい」もあります。

異なるスキルやものの見方が、必要不可欠になってくるからです。

ここであなたと共同創設者が異なっていた方がよい点を、あげていきます。

 

◆ 専門分野

スタートアップには、最低限、製品を作る人(スティーブ・ウォズニアック)と

それを売る人(スティーブ・ジョブズ)が必要です。

立派な組織を築くためには、創設者たちがお互いを補っていかなければなりません。

 

◆ 方向性

細部を詰めることを好む人もいれば(マイクロスコープ)、

細部を無視し、大きな問題に頭を悩ますことを好む人もいます(テレスコープ)。

成功するスタートアップには、両方のタイプが必要なのです(ジャイロスコープ)。

 

◆ 視点

視点が多彩であればあるほど、ものごとは楽しくなります。

若い人と老人、裕福な人と貧しい人、男性と女性、都会人と地方に住む人、

エンジニアと販売員、技術屋と感情的な人、ムスリムとクリスチャン、

ストレートとゲイ、アンドロイドとiOS、マッキントッシュとウィンドウズ、

というふうに。

 

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 ■□ 忘れてはならないこと


 

共同創設者を選ぶプロセスは、リスクに満ちたものです。

というのも、共同創設者と袂を分かつことにでもなれば、

つらく、時間のかかる筋道を経なければならないからです。

 

これは多くの面で、結婚相手を選ぶことと似ています。

離婚の危機を孕んでいる、という面でも。

以下にあげるのは、念頭に置いておいてほしいことです。

 

◆ 急がない

創設者は何十年も一緒に働くことになる相手です。

あなたも結婚相手を追加したりはしないでしょう?

もちろんあなたが離婚の常習者でなければ、の話ですが。

 

結婚と同様、一緒になるのは早すぎるよりは遅すぎる方が良いのです。

解消は、きわめてむずかしいことなので、時間をしっかりかけてください。

 

◆ 資金力を強化する目的で、創設者を増やさない

創設者を追加する理由、従業員ではなく、特に創設者を加える理由があるとすれば、

あなたのスタートアップを、よりしっかりしたものとし、成功の見込みを増やすためでしょう。

 

けれども、自問してみてください。

「もし資金が必要でなければ、ほんとうにこの人を雇うだろうか?」

もし答えがノーなら、その人を雇うのは愚かなことです。

 

◆ 最高を想定し、最悪に備えた計画を

いつの世も、創設チームは空中分解するものです。

あなたのスタートアップは例外かもしれませんが、その場合に備えて、

誰もが(あなたも含みます)自分の持ち株を、長期的に保有しておくようにしてください。

こうすれば、大量の資産を所有している人が、四年以内に離れていく事態を防ぎます。

これは起業家的な意味でいう、婚前契約に当たるものです。

 

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最後に、実践的な戦術をお教えしましょう。

私が「ショッピングセンター・テスト」と呼んでいるものです。

 

あなたがショッピングセンターにいると思ってください。

そこであなたは共同創設者となるはずの誰かと会うことになっているのですが、

その相手はいまだ現れません。

 

あなたには選択肢があります。

こちらに向かって来る人の中から、ひらめきを頼りに駈けよって、こんにちは、と声をかけるか。

それとも、別の店に行くか。

 

もしあなたが出会った誰かに対して、強い第一印象を受けたとしても、

その人を共同創設者にしてはいけません。

これは、あなたが人生で結ぶことになる、2番目に重大な絆なのです。

実際には、もっとも重要かもしれません。

ですから焦らず、誤らず、できればただ一度だけ、その決定を下してください。

 

 

 

著者:ガイ・カワサキ?

(翻訳:服部聡子)

情報の高速化はマーケティングをどう変える?

 

 

『絶対的価値:(ほぼ)完全情報の時代に顧客に本当に影響を及ぼすもの(原題)』の中で、

著者のエマニュエル・ローゼンとイタマール・サイモンソンは、

新製品や新しいサービスの認知を確立するための、新しいアプローチを説明しています。

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 旧約聖書で、モーゼはたったひとり、神に会いに行き、

 与えられた神の言葉を、今度は各部族の長老に伝えます。

 ところがこうした徐々に伝播する、トリクルダウンアプローチは、

 今ではしだいに当てはまらなくなっている、というのです。

 というのも、インターネットを通じて、情報はどんどん速く、

 安価に、しかも完全なかたちで伝わるようになってきたからです。

 

 たとえば、新製品が出荷されて、わずか数時間の後には、

 大勢の人が、シーネットやアマゾンのようなサイトで、

 レビューを読むことができます。

 

イノベーター、アーリーアダプター、そうしてアーリー・マジョリティのユーザーは、

発売直後の数分以内に、自分の意見を表明します。

リークがあれば、出荷以前に。

 

情報は、もはやトリクルダウン方式で届くものではありません。

それは速やかに、無料で、遠くまで拡散するものなのです。

新刊が出る。

誰がニューヨーク・タイムズに書評が載るまで待って、それからアマゾンで買うでしょうか?

 

この 〈 速く、無料で、完全 〉 ?という新しい情報の本質が、マーケティングを根本的に転換させるのです。

 

1. 有名人は重要でなくなる

 

製品を評価し、自分の意見をすぐに拡散させることは、多くの人に可能になっています。

有名人の発売後のレポートは、今でも重要視されてはいますが、

購入やトライアルのきっかけ作りという意味では、さほど必要はなくなっています。

「どこにでもいる人」が、新しい「重要人物」なのです!

 

2. ブランドは重要ではなくなる

 

情報が不完全で時間のかかるものであった時代、品質を保証するものとして、

人々はブランドのお墨付きに依存していました。

ところが書籍販売ビジネスを見てみると、

アマゾンの星の数の平均や、一般人が投稿した最初のいくつかのコメントの方が、

出版社の名前よりも、重要視され、目立つようになっています。

 

3. ブランドに対する愛着心は一時的なものに

 

理想社会では、あなたが過去に製品を買ったメーカーは、将来に渡ってもすばらしい製品を作りだすはずです。

現実社会では、かならずしもそうではありません。

たとえば、フェイスブックで記事をシェアするのが好きでも、

フェイスブックのメール・サービスを使ったことがない人もいるでしょう。

こうしたことを総合すると、メリットとは新しいマーケティング戦略なのです。

 

以下は、この新しい世界で勝ち残る方法です。

 

4. コントロールするという幻想を捨てる

 

全知全能は、幻想でしかありません。

誰が可能で、誰が助けてくれるか、あなたにはわからないのです。

また、あなたのマーケティングや広告で、誰かをコントロールすることもできません。

ですから、あなたの製品をとにかく送り出し、流れに身をまかせましょう。

 

5. 多くの種をまく

 

プランターではなく、野原に種をまくのです。

これは数の戦略です。種が多ければ多いほど、たくさんの花が咲くのです。

あなたにはどの種がヒマワリを咲かせるか、わからないのですから。

 

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ピラミッド方式で、頂点にいる有名人を通して接触できる人もいれば、

何千という種をまくことによって接触できる人もいます。

起業に関する多くの問題と同じく、

どちらが正しく、どちらがまちがっているというものではありません。

何が効果があって、何が効果がないかということでしかないし、

何が効果があるかは、実験によって初めて明らかになるのです。

 

 

このコラムはガイ・カワサキの最新刊『スタートの技術 2.0』(原題)の一部分を元にしたものです。

一読後、飛躍されんことを。

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著者:ガイ・カワサキ


元記事:http://linkd.in/1G2MdQl

(翻訳:服部聡子)

TEDのように話すには

 

 

TED(テクノロジー/デザイン/エンターテインメント)は、2014年3月、30周年を迎えました。

TEDの登場以来、基調講演のあり方は、大きく様変わりしつつあります。

TEDの「講演」は、オンラインで1日200万回以上のペースで視聴されており、

さらにそれより規模の小さい、独立したTEDxのイベントが145ヵ国で開催されていることもあって、

 

TEDの講演を見たことがある人は、現在、非常に多くなっています。

そのため、今後、私たちがプレゼンテーションするときは否応なくTEDと比べられることになるでしょう。

 

500回分にも及ぶTEDの講演(150時間)を分析し、

再生数2千万回を数える人気スピーカーへのインタビュー、

さらにはコミュニケーション分野の神経科学者との対話をふまえ、

カーミン・ギャロは、TEDのすばらしい講演には、共通してあるものが備わっていることを見つけたのです。

 

もし、あなたが聞き手に影響力を与え、あなたの考えで人を動かしたいのなら、

つぎのプレゼンテーションでは、その「共通して備わっているもの」を、ぜひ取り入れてください。

 

ここではカーミンの

『TEDのように話す:世界のトップの頭脳が編み出した人前で話すときの秘訣』

からのアドバイスを紹介しましょう。

 

 

Photo:DSC06245 By:hahatango

1. あなたの情熱を伝えよう

 

あなた自身が情熱を持っていなければ、人の情熱をかきたてることもできません。

自分自身を掘り下げて、話題と自分の深く、有意義なつながりを確かめてください。

自分の熱い思いを観客に表明することに、躊躇しないでください。

 

 

Photo:Sheryl Sandberg By:www.geteverwise.com

2. 少なくとも3つのストーリーを話す

 

フェイスブック最高責任者(COO)シェリル・サンドバーグは、このように言っています。

彼女はTEDの講演の準備をしていました。

事実やデータを満載して、個人的な話題はすべて排除したのです。

すると、ある友人が強く言いました。

 

「もっとあなた自身の話、 ワーキング・マザーとしてのチャレンジみたいな、

あなただけにしかできない話を聞かせて」と。

 

サンドバーグはそのアドバイスを聞き入れ、講演を変更し、まったくちがったものにしたのです。

 

そうしてその話は、講演と同じタイトルの『リーン・イン 女性、仕事、リーダーへの意欲』

という本となって、 一躍ベストセラーになり、世界中で話題となりました。

 

 3. ツイッターの投稿にぴたりとはまるタイトルをつけよう

 

TED.comで視聴できる1600の講演をあらためて見てから気がついたのは、

タイトルがすべて――ひとつの例外もなく――、140文字以内に収まっている、

ということです。

 

つまり、ツイッターの制限字数に当てはまるのです。

 

視聴回数の多い講演を見てみましょう。

 

ケン・ロビンソン『学校教育は創造性を殺してしまっている』

 

ブレネー・ブラウン『傷つく心の力』

 

サイモン・シネック『優れたリーダーはどうやって行動をうながすか』

 

もしあなたのタイトルが140文字以内に収まっていなければ、もういちどよく考えてください。

 

 

4. ユーモアを、ただし控えめに

Photo:Sir Ken Robinson By:eschipul

 

教育専門家ケン・ロビンソンのTEDの講演は、これまででもっとも人気の高いもので、

2千万回を超える視聴回数があります。

同時に、大変ユーモラスな講演でもあります。

 

ところがケンは、一度も 「ジョーク」 は言っていません。

かわりに、個々の出来事にもとづいた見解を、ユーモラスに語るのです。

 

「このあいだ、ディナーパーティに出席しました。

――実は、教育関係者というのは、あまりディナーパーティに招待されたりはしないんですがね、

まあ、そこで、ひとたび自分が教育関係者だ、なんて言うと……」

 

ユーモアを交えながら、ひとりの観客の顔に、にっこりと笑いかけています。

 

 5. 聞き手の五感を刺激する

 

時には観客を、スライドから外の世界に連れ出してあげてください。

実演や、びっくりするようなことをやってみるのです。

 

かつてビル・ゲイツは、マラリアの原因についてプレゼンテーションしている最中に、

TEDの観客席に向けて蚊を放したことがあります。

 

彼のパフォーマンスは夜のニュースでも取り上げられるほどのものとなりました。

予想外の出来事を、無視できる人など存在しません。

 

  6. パワーポイントのスライドは、文字より画像を

Photo:TEDxParisSalon - 27 nov 2012 By:Emmanuel Vivier

 

TEDのスライドで箇条書きを見ることは、ほとんどありません。

写真や画像、動画、それから注意深く選ばれた、ごく少数の言葉です。

 

パワーポイントやプレジ、アップル・キーノートといったデザイン・ソフトウェアを使う際の共通テーマは、

「箇条書きを使わない」です。 絶対に。

 

 7. 18分ルールを守る

Photo:Chris Anderson By:pmo

もしあなたの名前がビル・ゲイツや、シェリル・サンドバーグ、 ボノやスティングでないならば、

あなたの持ち時間は18分です。

 

TEDのキュレーター、クリス・アンダーソンは、 18分あれば真剣な議論は十分できるし、

少なくともその間は人の注意力をつなぎとめておける、 と言っています。

 

 8. 観衆に何か新しいことを伝える

Photo:Rokia Traore By:whiteafrican

 

人間の脳は目新しいものを放っておくことはできません。

いつも何かしら新しいもの、わくわくするようなものを探しています。

びっくりするような情報、新鮮な、予想もしていない情報を盛り込んでください。

 

 9. 練習を重ねる

 

TEDの講演者の中には、18分間の講演のために、200回も練習を重ねる人が何人もいます。

あるスピーカーのパフォーマンスはあまりにすばらしく、オプラ・ウィンフリーの目に留まるほどでした。

 

今日、彼女のキャリアはオプラのサポートのおかげで復活を遂げ、TEDの中でも有名な講演となっています。

 

 10. 自分らしくあれ

 

 

お芝居はほとんどの人に見破られてしまいます。

自分ではない誰かのまねをしようとすると、観衆からの信頼を失うだけになってしまいます。

 

嘘偽りのないあなた自身、正直なあなたであってください。

 

 

もしかしたら、あなたがTEDで講演を頼まれることはないかもしれません。

それでも、TEDのようなプレゼンテーションをおこなうようになれば、

聞き手に感銘を与え、あなたの夢に手が届くチャンスは、 はるかに大きなものとなっていくでしょう。

 

著者:ガイ・カワサキ


元記事:http://bit.ly/1QPIoQt

(翻訳:服部聡子)

社内起業家として成功するために

 

大企業で働きながら、同時に起業家として働いている人もいます。

彼ら社内起業家も、会社に属さない起業家と同じように、

革新的な製品を作りだすことを夢見ています。

 

彼らもまた、試作品を作り、宣伝し、売り込み、自力で立ち上げ、人材を募集し、

資金集めをし、パートナーを探し、販売し、サポートしなければなりません。

このコラムでは、企業の一員でありながら、なおかつ起業を考えている人のために、

何をしなければならないか、説明したいと思います。

 

皮肉にも、名の知れた会社の社員をうらやましく思っている起業家は、少なくありません。

ラッキーな連中は、莫大な資金と、大規模な営業部門、フル装備の研究室、

いくらでも拡張していける工場、確立されたブランドを好きなように使えるじゃないか、

おまけに医療と歯科治療の給付まで……。

そんな贅沢な環境で新製品の開発ができるなんて、どれほどすばらしいだろう。

ガレージで開発を続ける起業家たちは、そのように思っているのです。

 

でも、もう一度、考えてみてください。

そんな最新設備の中で新しい製品を作りだすのは、簡単なのではなく、ただ、違うのです。

私はこの点に関して、ニール・アナリティックスのデータ・サイエンス所長、ビル・ミードと共同で分析しました。

その上で私たちは、社内起業家に向けた提案リストを考案しました。

 

 1. 優先するのは会社である

 

社内起業家の第一の(唯一ではないにしても)モチベーションは、

つねに自分を雇っている会社の業績アップでなければなりません。

 

社内起業家制度は、自分が注目を浴びたり、帝国を築いたり、

会社から全速力で飛び立つためのカタパルトを設置するためのものではありません。

 

あなたが製品の良いアイデアを持っていれば、最初から大勢の同僚を引きつけることができます。

あなたが自分の個人的な利益のためではなく、会社のために働いているならば、

同僚はみんなあなたを応援してくれるでしょう。

 

Beth concepting ideas for the Health Axioms

 

2. 金の卵を産むニワトリは殺してしまおう

 

会社にありのままをぶちまけて、敵を作る必要はありません。

ですが、あなたの任務は新しい製品を作りだすこと。

そのために、いまある製品が用済みになってしまうことも、起こりうる事態です。

 

たとえば、マッキントッシュ・コンピューターは、アップルIIを殺すことになりました。

アップルにとっては、競合している会社がマッキントッシュを開発した方が良いことだったのでしょうか?

それとも、マッキントッシュなど、決して開発されず、その道が閉ざされてしまった方が良かったのでしょうか?

とんでもないことです。

 

3. こっそりと行動しよう

 

ガレージで開発していたふたりの男にとっては、できるだけ大きな注目を集めることが、重要でした。

努力の成果を知ってもらえれば、資金調達も容易になるし、

パートナーシップを結ぶことも、取引を成立させることも、従業員を雇うことも、簡単になります。

 

けれども、社内起業家にとっては、その逆が真なのです。

あなたのプロジェクトが、誰も無視できないほど、先に進んでいるか、

会社全体が、それが必要だと認識してもらえるようになるまで、

経営陣からは放っておいてもらえるようにしておきましょう。

 

4. ゴッドファーザーを見つけよう

 

多くの会社に、「ゴッドファーザー」的な存在がいます。

しかるべき何かを支払っておけば、日々のちょっとした政治的な力関係から、

私たちの身を安全に保ってくれるような存在です。

彼らはどちらかというとアンタッチャブルで、経営陣からも気を使われています。

 

社内起業家は、そうしたゴッドファーザーを見つけ、アドバイスや、技術的・経営的な面からの意見をもらい、

いざというときには自分たちのプロジェクトを守ってもらわなければなりません。

 

5. 別のビルに部屋を持とう

 

社内起業家が大企業のメインストリームで仕事をすることは、死を意味します。

あらゆる部署の上司が、こんなアイデアは無駄だと主張して、切り刻まれてしまうからです。

 

ピーター・ドラッカーはこのように言っています。

「現実に進行中の堅固な仕事の前では、

新しいことはいつでも、取るに足らない、見込みのないものに思える」

 

Correspondance visuelle 5

 

6. 夢を持っている人に希望を与えよう

 

どんな会社にも

「こんなばかでかくて間抜けな会社じゃ、イノベーションなんて起こせない」

と考える、シニカルな人はいるものです。

 

実は彼らは、イノベーションが現実のものとなるのを見たい、理想家でもあるのです。

大企業には、無視され、忘れられ、屈辱を感じつつ、服従を強いられている、有能な人がいます。

彼らは踏みつけにされているかもしれませんが、死んではいません。

 

そんな人々に、あなたが体制の中心部に杭を打ち込もうとしていることを知らせれば、

かならず物心両面の助けが得られるでしょう。

こうした人々のイノベーションを求める気持ちが、あなたを助け、実を結んだとき、

あなたのゴールは、彼らの昇進につながります。

 

7. 社内の転換を予測し、うまく利用しよう

 

会社が変化することを、社内起業家は歓迎しなければなりません。

市場の変化などの外部要因や、新しいCEOの就任などの内部要因によって会社の構造が転換するときは、

あなたにとって、チャンスかもしれないのです。

 

有能な社内起業家なら、こうした変化を予想し、いざその段になれば、新製品を公開できるようにしておくべきです。

「これが私たちが取り組んできたことです」 と。

 

それが、社内に巣食う愚か者だと、こんな具合。

「配置転換を今、知ったところです。

6ヶ月間の猶予とアナリストのお許しがいただければ、新製品戦略を作成いたします」

 

8. いまあるものを足がかりにしよう

 

大企業の内部でイノベーションをおこなおうとすることのマイナス面は、

明確に文書化することを求められる点です。

 

イノベーションを少しでも簡単にするために、

会社のいまあるインフラを有効活用することを、躊躇しないでください。

設備だけではなく、ほかの部署にいる社員までもが、チームの一員であると感じられるように、

友だちの輪を拡げていくのです。

 

9. データを集め、共有しよう

 

経理担当者や法律家の呼び出しを受け、あなたのプロジェクトの存在理由を問われる日が来るでしょう。

運が良ければ、そんな日が来るまで、もう少し時間の余裕があるでしょうが、いずれにせよ、やってくるのです。

 

その日のために、

(1) 使用した金額と、得た金額のデータを集めておく

(2) そのデータを公開し、シェアする

 

大企業では、データを公開していれば、反対勢力の出現を抑えることができます。

けれどもひとたび反対勢力が登場してから、データを入手しようとしても、手遅れになりかねません。

 

9. 副社長にお越し願おう

 

副社長にプロジェクトを賛同してもらうことが、第一歩でしょうか?

 

いいえ、ちがいます。

賛同は、最後の一歩です。

 

副社長には、あなたのアイデアを「自分のもの」にしてもらい、

支援というより自分が「発見し」、

自分が後ろ盾となってあなたにやってもらうのだ、と思いこませるのです。

 

機が熟したら、あなたは確実に、副社長に「偶然」発見してもらわなければなりません。

これは、プロジェクトのスタート許可を求めることとは、まったくちがうものです。

 

10. 完了後は解散しよう

 

社内起業の利点は、社のメインストリームより早く、新製品を開発できる点にあります。

起業家グループがもし、全体から切り離され、超然としたままで存在し続けると、

あれほど効果をあげたはずのグループ内部の一体感が、不幸なことに、

グループの失墜を招くことになりかねません。

 

11. 脳を再起動しよう

 

ここで説明した実践は、社内起業家の多くがこれまでに経験したり、学んだりしてきたこと、

時には大企業で教えられてきたりしたこととも、異なっているかもしれません。

ほんとうのことは、既存の会社の内部で要求される新しい行動パターンを編みだしながら、

何か新しいことを始めることによって明らかになります。

何より大切なことは、あなたの脳を活性化することなのです。

 

 

このコラムはガイ・カワサキの最新刊『スタートの技術 2.0』(原題)の一部分を元にしたものです。

ご一読後、飛躍されんことを。

 

著者:ガイ・カワサキ


元記事:http://linkd.in/1EOuQlD

(翻訳:服部聡子)

イノベーションの技術

 

 

    イノベーションとは、起業家精神にとって、特殊な道具である。  

    イノベーションが源となり、富を創造するという能力が花開く。   

                       ― ピーター・ドラッカー

 

 

ピーター・ドラッカーは正しいことを言っています。

イノベーションとは、富を生むものです。

イノベーションとは、実際、ひどく困難なことですから、 もうけが出るのもあたりまえなのかもしれません。

 

このコラムの目的は、イノベーションの原理を説明することです。

私はそれを、アップル社の前線で、また、私が起こした3つの企業で、

アドバイザーを務めた多くの企業を通して、学んできました。

私は間違いなど犯したことがなかった…、と言えれば良いのですが、 きっとそれは事実ではないでしょう。

私の言うとおりにやってください

― 実際に私がやった通りではなく。

 

1. 意味を作りだす

 

あなたが、何かほんとうに意味のあることを通して、

どのように世界を変えていこうとしているのか はっきりと決めてください。

アップルはコンピューターを大衆のものにしました。

グーグルは情報を大衆のものにしました。

イーベイは商取引を大衆のものにしました。

 

これらの企業は意味を作りだし、意味を作ることによって、結果的に大きな利益を生み出しました。

 

2. マントラを作る

 

なぜ、自分が意味を作りだそうとしているのか、説明できるような、

3つから4つの言葉からなる、自分のマントラがあるはずです。

 

たとえばナイキのマントラは、私が思うに「本物のアスリートのパフォーマンス」にちがいないと思います。

またイーベイは「大衆化された商取引」でしょう。

私のマントラは「人々に力を与える」。

 

要するに、なぜ自分が存在しなければならないのか、マントラが説明してくれるのです。

 

3. つぎのカーブにジャンプしよう

 

あまりに多くの企業が、同じ成長カーブ上で争っています。 1880年代に、氷を切り出す産業がありました。

 

 

冬の間、氷の塊を切り出す会社がいくつもあったのです。

ところが氷工場ができて、氷を切り出す会社はいずれも廃業に追い込まれました。

 

 

というのも、氷工場なら、天候の制限を受けないからです。

やがて冷蔵庫会社ができて、今度は氷工場が廃業に追い込まれました。

 

 

個人で冷却装置を所有すれば、よりいっそうの利便性が得られるからです。

つぎの成長カーブにジャンプするときに、 さらにいえば、つぎのカーブを作り出したときに

ほんとうのイノベーションは起こります。

 

4. すばらしい製品はDICEE

 

DICEEとは、Deep(=深い)

Intelligent(=知的な)

Complete(=完璧な)

Empowering(=力を与える)

Elegant(=エレガントな)

の頭文字を取ったものです。

 

「深い」とは、多方面における特徴と力を持っている、ということです。

 

「知的」というのは、人の感じている痛みと必要性を、 その企業が理解している、ということです。

「完璧な」というのは、満足できるトータルソリューションを、その企業が提供している、 ということです。

 

「力を与える」というのは、顧客がその製品と格闘するのではなく、

その製品を使って、より良いことができるようになる、という意味です。 ?

「エレガント」というのは、製品がうまくできている、ということです。

 

5. 安っぽく思えても心配しないで

 

革新的な製品の中に、チャチな側面があったとしても、 出荷するとき、不安にならないでください。

イノベーションが、最初から完成された状態で起こることはまずありません。

 

たとえばMacコンピュータはソフトウェアがなく(私のせいです)、

ハードディスクもなく(ソフトウェアがなければ、いずれにせよさほど意味がないのですが)、

スロットもなく、色もありませんでした。

 

もし会社がすべてが完璧になるまで出荷を待っていたら、 そんな日は来ないだろうし、

市場は素通りして先に行ってしまいます。

6. 「100の花を咲かせよう」

 

私はこの言葉を毛沢東から拝借しました。

イノベーターは、人々がその製品をどのように使うかについては、 柔軟である必要があります。

エイボンは「Skin So Soft」という製品を、肌をやわらかく保つために開発しましたが、

子供のいる人々が、それを虫除けに使っても、そのままにしておきました。

 

アップル社は、スプレッドシート/データベース/ワードプロセッサー機能のコンピュータを開発しましたが、

顧客はそれをデスクトップパブリッシング・マシンとして利用していることがわかりました。

教訓は、種は植木鉢ではなく、野原にまこう、ということです。

さまざまな花を、好きなように咲かせてやれば良いのです。

 

7. 両極化を怖れない

 

ほとんどの企業は、 統計上のいかなる年齢層にも、

いかなる社会的経済的バックグラウンドを持つ人にも、

どのような地域に居住する人であっても、 すべての人がほしくなるような、聖杯を作りだそうとしています。

 

けれども、そんなものを求めても、得られるのは、確実に凡庸なものとなります。

それより、ある一部の人々を幸せにするような、すばらしい製品を作ってください。

それ以外の人々が不幸になったらどうしよう、と心配するのはやめてください。

最悪なのは、結局、どんなリアクションも引き出すことができない場合です。

そんなことが起こるのは、企業があらゆる人を幸せにしようとしたからなのです。

 

8. 新しい考えを生みだそう

 

私は、製品には安っぽい側面があってもかまわない、と言いました。

けれども、安っぽいままであってもかまわない、とは言っていません。

企業はバージョン1.0を改良し、1.1、1.2 … 2.0と進化させていかなければなりません。

イノベーションを出荷すること自体が大変なので、これを実行に移すのはむずかしい教訓といえます。

なにしろ社員というものは、自分たちの送り出した完璧な製品に、

ケチをつけられることがたまらなくいやなものだからです。

けれども、イノベーションは、 終わってしまった出来事などではなく、進化し続けるプロセスなのです。

 

9. ニッチであろう

 

イノベーションという輝かしい聖杯は、ユニークであり、しかも価値のあるものを創造するところにあります。

イノベーションを起こしたければ、意味を作りだし、限界に迫り、歴史を作っていかなければなりません。

エンジニアであれば、これまでに類のない、しかも価値のあるものを作るのです。

マーケターであるならば、製品がユニークで、価値あるものだと、世界に向かって伝えるのです。

 

10. 完璧なキャッチフレーズを

 

比類のない展示販売をおこなうには、3つのカギがあります。

第1に、導入部をカスタマイズします。 聞き手を大切にし、その相手に合わせてやてみせる必要があるのです。

第2に、製品を通して、夢を売るのです。

この製品によって、人生がどのようにすばらしいものになるか伝えます。

業界用語を使わず、これを所有することで、どのような利益があるのかを説明するのです。

 

第3に、プレゼンテーションでは、10-20-30ルールを守ることです。

スライドは10枚、説明は20分、フォントサイズは30です。

 

11. 傍迷惑な人のせいで気持を腐らせない

 

傍迷惑な連中は、そんなことやっても無駄だ、とか、やらないほうがいい、とか、

必要ない、とかと言いたがるものです。

そんな連中の多くは、どう見ても負け犬です。

負け犬など無視するのは簡単。

 

でも、金持ちで、セレブで、権力を握っているような「ボケナス」は、危険です。

というのも、彼らは賢い、と見なされているからです。

けれども、そんな連中は運が良かっただけ。

彼らにはつぎの上昇曲線など理解できないし、なおさら受け入れることなどできはしません。

イノベーションというのは、読む(あるいは書く)のは簡単でも、成し遂げるのは、困難なものです。

 

これまでにあげた11は、イノベーションの基礎にすぎません。

けれども、意味を作り、上昇カーブにジャンプするまで、休まず仕事を続けていけば、

いつかイノベーションに到達するはずです。

 

著者:ガイ・カワサキ


元記事:http://bit.ly/1gAzTMc

(翻訳:服部聡子)