進むオンライン広告への移行
by ジュリー・ボーデン・デイヴィス
従来、クリスマスシーズンに心温まるテレビコマーシャルを放送していたホールマーク社は、
今シーズンから広告をオンラインに移すことを発表しました。
オンライン広告は、実施しやすく費用効果の高い方法として、注目されてきましたが、
これまでテレビコマーシャルを中心に展開してきたホールマークやBMWのような大企業も、
インターネットに軸足を移しつつあるようです。
▲毎年クリスマスシーズンになると流れていたホールマークのTVCM
消費者の多くがテレビコマーシャルをスキップしているために、
企業の中には、移行戦略を採るところが現れている、と
エリック・ロフホーム・インターナショナル社のCEOエリック・ロフホームは考えています。
「移行にはいくつかの理由があります。
第1に、30歳以下のミレニアル世代は、もうテレビは見ません。
その代わりにインターネット配信を見ています。
そのために、テレビコマーシャルは、18-34歳の年齢層の観客を失いつつあるのです」
対象を幅広く取ったマーケティングは、
オンラインにターゲットを絞ったマーケティングほど効果的ではない、と言うのは
ギフト・カード・インプレッションズの創設者でありCEOでもあるブレット・グラスです。
「今日の消費者は、異なる世代ごとに、異なるメッセージの発信が必要となっています。
そうして、今日のデジタル環境下では、異なる媒体でそのメッセージを見るのです。
ホールマークの移行は、同社がミレニアル世代という急成長する消費者層に、
より大きなインパクトを与えようとする試みとして、意義のあるものです。
彼らはベビー・ブーマーほど慣習を重んじることがないからです」
インターネット・マーケティング戦略家であり、エレクトリック・ウェブCEOの
キリル・ストークもこれに賛同します。
「ホールマークが完全にデジタル部門に移行したことは、非常に大きな意味を持ちます。
クリスマスシーズンにホールマークの心温まるテレビCMを見ることは、
多くのアメリカ家庭では、一種の季節の儀式のようなものでした。
実のところ、ホールマークは何年にもわたるデジタル戦略があり、
この最新のステップが、現在のトレンドと一致したにすぎません。
デジタル広告の動向を把握している人なら誰でも、
その分野が急成長しつつあることは、十分理解しています」
テレビからインターネットへの移行の財政面での意義を指摘するのは、
『フック― 顧客を引きつけるためにブランドのストーリーをシェアし、売上を増やして成功を収める方法』
の著者であり、パワー・ストーリー・コンサルティングIncのリチャード・クレボリンです。
インターネットのおかげで、企業のターゲットとなる購買層は、
より注意深く安い買い物を選ぶことができるようになりました。
しかも、30秒のテレビコマーシャルよりも、長いビデオを、
オンラインで見ることができるのです。
企業の側は、無料で、大勢にシェアすることのできる
60秒から120秒の広告を作成できるようになったのです。
不可避的な転換
消費者が、より多くの時間をインターネットに費やしているのなら、
ブランドの側も彼らが実際に時間を過ごす場所で、彼らの前に立たなくてはならない、
と考えているのは、ライカブル・ローカル社副社長のニコル・クロースです。
オンライン広告戦略を採用しないことは、
新しいビジネスへと転換していくチャンスを逃すことにほかなりません。
追跡やレポート機能、機敏性、コストの最適化など、
オンライン・マーケティングは多くの面で格段の進歩を遂げ、
広告主は、これまでとまったく異なる効率性を手に入れたのです。
従来のマーケティング形式、たとえばテレビや印刷物、ラジオなどの収益が
下降しつつあるのを知っている広告主は、
インターネット・マーケティングに、もっとお金をかける必要を認めています。
ところが多くの広告主は、ネット上に場所を確保するのに遅れを取り戻そうと、
混乱している、と考えるのは、ユニオン・スクエア・メディアの共同創設者兼社長
ジョシュア・ケラーです。
「彼らがオンライン・マーケティングを無視しようとしているただひとつの理由は、
広告主がどのように最大限に活用すればよいのか、わかっていないからです。
インターネットに適応しなければならないことは否定できないのに、
インターネット・マーケティングをどうにかして回避しようとしているのです」
小企業にとってインターネット広告は敵か味方か?
小企業にとって、大企業がデジタル広告へ移行することによって、
自分たちの声が消費者に届きにくくなり、また広告費も高くなるのではないか、
市宇飛車に向けて強い印象を与えることがむずかしくなるのではないか、
という懸念を表明するのは、データ・ダイナミクスのCEOであり、
「デジタル・マーケティング・マシンを構築しよう」の著者でもあるケビン・レイトンです。
逆にロフホームは、この傾向は、小企業にとっても歓迎すべきものである、と考えています。
もはや広告費は、10年前ほど高価なものではなくなっています。
小企業でもプログラムされた広告を購入することで、
広告スペースと広告フォーマットを、好きなように選ぶことができるのです。
こうして宣伝コストを下げ、対象を限定することで、ターゲットに届きやすくなります。
大企業は高いコストをかけてインターネットを利用するけれども、
インターネット上では、小企業も大企業同様、効果を上げることができる、
とクレボリンは書いています。
つまり小企業は、自分のストーリーを、自分の市場のターゲットに向けて、
うまく語らなければならないのです。
インターネット上の消費者は、テレビCMほど高い品質のものでなくても
受け入れる傾向があります。
ですから小企業は、自分たちのコンテンツを作成するために
大きなプロダクションにまかせる必要はないのです。
しかもインターネット広告を出す機会は、
従来のテレビコマーシャルが1つの番組当たり、3-4回流すのがせいぜい比べ、
格段に多いことを指摘するのは、デジタル・マーケティング戦略家のジェイ・ヨークです。
つまり、インターネット広告という方法は、
大規模小売店と小企業が、同じ市場で闘うことができる、ということでもあります。
そのため、今後、より多くの小企業が、この分野の広告に参入することになるでしょう。
(翻訳:服部聡子)