最新の研究が教える「良い」顧客サービスとは
by レン・マーキダン
理論上は、顧客に喜んでもらえるサービスを提供する「秘訣」など、きわめて単純なものです。
- 感情移入
- 感謝
- 有益であること
どれもたやすいことのように思えます。
この3つのスキルを向上させれば、準備完了、なのですから。
確かに「ありがとうございます」の言い方をマスターし、
語調や言葉の選び方による相手の受け取り方の変化を理解することによって
上記の3つを組み込むことはできるでしょう。
けれども現実には、顧客に満足してもらうことは、それほど単純ではありません。
実際に効果を上げた方法が、予想もしなかったことだった、というのも、よくある話です。
顧客が提供されたサービスの、どんなところに喜び、どんなところに腹を立てるかは、
私たちの直観に反していることがきわめて多いのです。
1. あなたは良いニュースと悪いニュース、どちらから話し始めますか?
――状況によります
あなたはこれまでどれほど、良いニュースと悪いニュースのどちらから初めてほしいか、
と、 誰かにたずねたことがあるでしょう。
昔からのお定まりの言い方ですが、実はちがいがあることがわかってきました。
あなたが口にする順番で、顧客の気持ちと行動を、実際に変えることができるのです。
カリフォルニア大学リバーサイド校で研究者たちは、被験者にニュースを配信する順序のテストをおこない、
反応や行動を測定しました。
そこで興味深いことがわかったのです。
悪いニュースを聞かされた人は、つぎの話で気分が良くなる傾向が見られたのに対し、
あとで悪いニュースを聞かされた人は、そのニュースをもとに、行動しなくては、という気持にかられたのです。
通常の顧客サービスでは、顧客に満足してもらいたいので、
悪いニュースを先にもってくるのは良い考えです。
けれども、顧客を説得し、行動に移してもらいたいようなときは、 良いニュースから始めましょう。
2. 優れた顧客サービスには、速さより大切なものがある…
世間一般の通念では、顧客からの「ヘルプ」への対応は、速ければ早いほど満足度が高まる、とされています。
おそらく一般的には、その通りでしょう。
ところが、そのほかにも速さよりもっと重要な要素があることは、しばしば見過ごされています。
ギャラップは、銀行でサービスを受けた後、契約にいたった顧客がどのように感じたか、調査をおこなっています。
迅速なサービスを提供してくれる銀行に対しては、 6倍の人が、さまざまな面で取引をおこないたい、
と答えたのに対し、
「人的要因」での支持率が高い銀行(窓口のスタッフが礼儀正しく、親身な応対をしてくれる)では、
9倍もの人が全面的な取引をおこないたい、と答えたのです。
ウィリアム・J・マキュアンは、『ブランドとの結婚』のなかで、このように言っています。
速さはひとつの要素ではあるが、
親身で的確なサービスを提供してくれる銀行窓口にくらべると、
重要さでははるかに劣る。
速さに焦点を当てるより、むしろ徹底した気配りや、親身な顧客サービスを重視してみましょう。
3. … ただし、ソーシャルメディアでは何よりスピードがものをいう
顧客の期待――顧客の満足感は、「期待」にかかっています――は、
あなたとのコミュニケーション手段によって変わってきます。
メールや電話、また対面のサポートでは、速さはさほど重要ではないかもしれませんが、
ソーシャルメディアでは、即応性が何にもまさる切り札となります。
ソーシャルメディアのリサーチをおこなっている「ソーシャルハビット」の調査によると、
ソーシャルメディアのユーザーの32%が、ブランドに連絡したときは30分以内の返信を期待しており、
42%のユーザーが、60分以内の返信を期待しています。
また、そうした顧客は、夜間や週末だからという理由で、待たされることをいやがります。
57%の顧客が夜間や週末でも、通常の営業時間と同様に、すばやく返信がもらえることを望んでいるのです。
これはかならずしもフェアとはいえないかもしれませんが、事実です。
顧客はソーシャルメディアでは、スピーディな対応を期待しているのです。
4. 末永く続く顧客を獲得したい? では「喜び」を超えるものを
顧客を喜ばせるやり方については、多くの人がさまざまに語っています。
そうした習慣を身につけることはすばらしいことですし、ビジネスの成長にもつながるでしょう。
けれども、顧客を喜ばせたからといって、 あなたが顧客の「特別な相手」になれるとは限りません。
愛着を持ってくれる顧客を作りだすためには、もっと有効な方法があります。
それは、顧客の手間を省く、ということです。
カスタマー・コンタクト協議会の2007年の調査によると、7万5千人を超える顧客が、
カスタマー・サービスの窓口と、電話、チャット、メールなどでコンタクトを取ったということです。
その結果から明らかになったのは、顧客がその企業に愛着を抱くようになった最大の要因は、
問題解決のために、顧客がやらなければならない作業を、企業が軽減してくれたことでした。
この結果を、どうやって取り入れたら良いでしょうか?
答えはとても簡単。
顧客が問題解決のために何かをする必要があった場合には、それを代行してあげればよいのです。
あなたの顧客は、自分のアカウントを更新するために、リンクをたどり、
フォームに記入する必要があるのでしょうか?
彼らのために、アップデートをしてあげましょう。
あなたの顧客は、自分が抱える問題のせいで、トラブルシューティングのステップを、
ひとつひとつ踏んで、実行していかなければならないのでしょうか?
スカイプやグーグル・ハングアウトのスクリーンを用意して、ていねいにわかりやすく説明してあげましょう。
顧客はしばしば、問題解決のために、多くの作業をしなければなりません。
- 別の番号に電話してください。
- 郵送してください。
- フォームに必要事項を記入してください。
こうした顧客の手間を取り除くことによって、双方の労力を減らすことができますし、
さらにはあなたの予想外の(予想外、ではない方が良いのですか)アプローチに、
たいそう驚いてもらえるでしょう。
5. 企業と取引を停止する最大の理由は何ですか?
答えを聞くと、驚くことでしょう。 以下にヒントがあります。答えはこれ以外です。
- 価格
- 製品に欠陥がある
- 競合他社の広告
確かに、これらはすべて、顧客の流出を引き起こしかねないものではあります。
けれども、2010年のライトナウ社による顧客体験レポートによると、
人が企業と取引をストップする最大の理由は、 顧客サービスの面で、いやな思いをしたことによります。
実際に、82%の人が、劣悪な顧客サービスを受けたことで、企業と関係を絶っています。
一方、満足のいく顧客サービスを提供し、顧客に喜んでもらえれば、予想にたがわず、
かならず大きな見返りがあります。
満足した顧客は、平均で9人の人々に、自分の経験を伝えるのです。
満足した顧客はコスト削減にもつながります。
さらには既存の満足した顧客ひとりあたりに対する販売の可能性は、
新規顧客への販売の可能性の14倍にも相当するというのです。
結局、劣悪な顧客サービスは、あなたの企業をつぶしかねないものであるのに対し、
優れた顧客サービスは、顧客との強い絆を築き、解約率を削減し、顧客の維持率や照会を増やし、
あなたのビジネスを急成長させることができるのです。
著者:?レン・マーキダン(マーケター、コピーライター)
元記事:http://blog.hubspot.com/marketing/surprising-customer-service-data