ダニエル・ピンクのセールス成功戦略
by ブルーナ・マーティヌッチィ
たとえあなたが本来の意味での「販売」の地位にいなくても、
あなたはセールスに携わっています。
そう主張するのは、ダニエル・H・ピンクのベストセラー
『人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで、誰もが成功する!』
です。
関わっているビジネスが何であれ、
あなたは自分のアイデアを取り入れてもらおうと、
人を説得し、おだて、動かそうとすることに、
多くの時間を費やしているはずです。
私たちはこの、ピンクが呼ぶ
「売らないセールス」
をもっとうまくやることで、
大きな成功をつかむことができる、と続いていくのです。
社会科学の最新研究を援用しつつ、わかりやすい言葉で、
ピンクはこの「売らないセールス」の素晴らしい新世界のロードマップを
提供してくれます。
私たちは先日、販売の心理学、セールスにおけるEQ(感情指数)の役割や、
ビジネスを成功に導くツールなどについて質問しました。
もし相手が何を感じているか理解できれば、
あなたはもっと効果的に、その人の役に立つことができるでしょう。
結局のところ、新しいセールスの世界とは、そういうことなのです。
今日の経済では9人のうち1人が販売に携わり、
残りの8人もまた、あなたの言う「売らないセールス」、
たとえば、購買には関係のない行為ではあっても、
ほかの人に影響を及ぼしたり、説得したりするような「セールス」に関わっている、
と述べておられます。
この極めて重要な領域で成功を収めるために、重要な戦略を3つ挙げるとしたら、
何でしょうか?
第1に、自分ではない人の視点から眺めてみることです。
たいていの場合、私たちは人に何かを強制することはできません。
その代わりに、彼らの視点と関心を理解し、一致点を見いだす必要があります。
第2に、比較してもらうことです。
人の決定は、絶対的というより、むしろ相対的に行われるものです。
あなたのアイデアや商品やサービス、提案を、単独で提示するのではなく、
もうひとつの選択肢と比較してもらうのです。
第3に、「出口車線」を用意してください。
誰かに何かしてほしいときは、気軽にできるようにしてあげる必要があります。
EQは私たちのセールスの能力を高めるために効果があるでしょうか?
相手の感情的な状態を理解するということは、有能な売り手にとってだけでなく、
立派な人であるためにも効果的な極めて重要なスキルです。
セールスの場面では、相手の気持ちを理解していれば、
相手の役に立てる機会は増えるでしょう。
「セールスの素晴らしい新世界」とは、結局のところ、そういうことなのです。
セールスのプロセスでの「視点取得」(※他者の視点から世界を見ること)とは、
共感とは違うのですか?
これは極めて重要な質問です。
社会科学者は視点取得と共感を、2卵性双生児に喩えることがよくあります。
極めて関係は深いけれども、同一のものではありません。
視点取得は、認知能力、つまり、思考に関するものです。
共感とは、情動的な反応、つまり、感情に関するものです。
どちらも極めて重要ですが、セールスに関していうなら、
視点取得がいっそう大きな力を持つ場面が多いでしょう。
「リーダーシップの新しいモデル」について、教えていただけますか?
新しい環境で成功するために、
ビジネスオーナーに必要な役割やスキルはどんなものでしょうか?
やがては時代遅れになるようなスキルはありますか?
リーダーシップの世界では、過去10年間で、影響力と説得の考え方が
大きく変わっていったことを、考慮に入れなくてはなりません。
第1に、リーダーはもはや従業員や仕入先、顧客に対して、情報の優位性はありません。
そのため、透明性に逆らうことは、恥ずべき行為、またはそれ以上のものである、と
考えられるようになっています。
そのことは同時に、情報にアクセスすることの重要性よりも、
私たちの周囲で渦巻く、錯綜する情報に筋道をつけることの方が
重要だということでもあります。
つまり、情報を整理し、意味づける「センスメイキング」のスキルが、
いっそう重要になっているのです。
第2に、今日では才能がある人は、組織が才能がある人を求めるほど、
組織を必要とはしていません。
この力関係の変動は、リーダーはもはや強制的であったり、支配的であってはならず、
個々人の自己主導性やチャレンジ、成長を促進するために、
より多くのことをしなければならない、ということです。
最後に、リーダーは、モチベーションとは一体何なのか、
正しく理解していなければなりません。
モチベーションとは、人が別の人のために何かをすることではありません。
自分自身のために行うことなのです。
ですからリーダーの仕事は、人々が自己主導性や創造性、生産性が発揮できるような
情況を整えることです。
あなたの最新の「ドライブ・ワークショップ」から、
小企業のオーナーが次の段階にステップアップするために、何かヒントはありませんか?
従業員が何でもやりたいことができる、
彼らが自治権を持った「小さな島」を設置してください。
「ハック・デイ」や「ハッカソン」「金曜夜の実験場」、何でも良いので名前をつけ、
1日あたり15分、日常の仕事とは別に、みんなが自分に興味のあることや、
気になっている問題の解決に取り組むことのできる時間を確保するのです。
きっと驚くほどの結果が現れるでしょう。
もうひとつ、公式の勤務評定を撤廃します。
大企業の中でもアドビやアクセンチュアなどは、すでにそうしています。
その代わりに従業員と共に、もっと定期的で、活発な、フィードバック・セッションを行うのです。
たとえば週1回のマンツーマンのセッションや、定期的な面談、
同僚間の会話でさえも、前進を手助けし、彼らの遂げた進展を見る上で、
驚くほどの成果を上げることができます。
(翻訳:服部聡子)