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本:『X ビジネスがデザインと出会う経験』

X: The Experience When Business Meets Design

著者 ブライアン・ソリス

 

 

ブランドが 体験者によって定義される 新時代にようこそ

今日、あなたのブランドは、顧客にどのように経験されているか、知っていますか?

顧客がそのブランドのことを、実際はどのように感じているか、知っていますか?

あなたの聞こえないところで、顧客が何と言っているか、知っていますか?

常時接続の世界では、誰もが情報にコネクトでき、人々は相互に繋がっています。

ですからあなたのブランドも、そんな世界に生きる顧客の経験によって創りあげられていくのです。

ですから、消費者の体験を、ブランドの側がはっきりと言葉にできないでいると、

ブランドイメージは、人が経験したりシェアしたりするものによって、かんたんに覆されていきます。

 

『X ビジネスがデザインと出会う経験』は、ベストセラー作家であるブライアン・ソリスが、

なぜ優れた商品であっても、もはや消費者を満足させられなくなっているのか、

なぜクリエイティブ・マーケティングや、特別な顧客サービスが、

かならずしもうまくいかなくなっているのか、その理由を明らかにしていきます。

『X』では、なぜビジネスの将来が、経験に基づくものにあるのか、

また顧客に意味のある経験をさせるとは、どのようなことなのか、についても

明らかにされていきます。

 

これは、一般的なビジネス書とは異なるものです。

本書は、デジタルとアナログが出会う世界で、人が、現実と結びついた、

感覚を揺さぶられるような体験をすることを、改めて考えさせるものです。

本書で描かれる美的見地は、新しい視点と洞察をもたらすような感情を呼び起こし、

あなたの顧客の心をつかむ助けになってくれるはずです。

さらに、各ページごとに満載された本書のデザインは、

本書で主張されている原理に沿って、展開されています。

 

著者のブライアン・ソリスは、経験の重要性を教えてくれるだけではありません。

あなたは本書を通して、望まれるデザイン、

有意義で調和した経験となっていくデザインの方法、

さらには以下のことを楽しく学ぶでしょう。

 

・私たちの経験だけに基づいたデザインは、私たち以外の人にとって、どのような障害となるか

・どうして共感や新しい視点は、創造性やイノベーションを解き放つのか

・現実世界での、また実行過程での思考におけるUX(ユーザーの経験)の重要性

・あらゆる行動の中にある、人間中心設計の人間性

・マーケティングから商品デザイン、包装に至るまでの、ハリウッド的ストーリーテリングの技術

・経験型設計を目指す、アップルの全体的アプローチ

・異なる経験をすることと経験的マッピング・アプローチの価値

 

ビジネスの未来は、経験をいかに設計していくかにあり、

あなたはビジネスがデザインと出会う世界の建築家なのです。

 

 

 


元記事:http://amzn.to/1OgdraX

(翻訳:服部聡子)

 

 

 

 

パワフルなプレゼンテーションをデザインしよう

by アンナ・ゲレロ

 

 

90年代のクリップアートとモーションエフェクトを覚えていますか?

テンプレートを使ったお粗末なプレゼンテーションの時代は終わりました。

 

美しくデザインされたスライドを作ることが、これまでにないほど簡単にできるようになったのです。

 

仕事や学校で、プレゼンテーション資料を作ってみませんか?

印象的なデザインは、プレゼンターのアイデアを際だたせ、劇的な効果を発揮します。

コミュニケーション能力を向上させることができるのです。

 

プレゼンテーションデザインのスキルを向上させるために、つぎ5つのヒントを試してみてください。

 

 01 .  デザインテクニックを使う

 

canva-presentation-01

箇条書きの点にこってみたり、タイトルを3Dにしたり……

そんなことは、もう忘れてかまいません。

プレゼンテーションが退屈なものである必要はないのですから。

メッセージが印象的に伝わるように、あなたのデザインスキルを使って

美しいスライドを作ってください。

以下のステップは、このスライドを作るために用いた方法です。

 

  •  背景に使用した画像にはフィルター処理をおこなって、「上海」らしい雰囲気を出しました。
  •  透過させた白い四角形は、テキストホルダーとして、拡大させています。
  • ? 異なる色とサイズのフォントは、テキストが読まれる順に応じて、大きさを変えてあります。
  •  テキスト部分を切り離すために、上と下にラインを配置しています。

 

 02.  画像はマス目状に配列する

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画像をそのまま配置するのは避けてください。

画像をマス目状に配置することで、画像にプロフェッショナルなエッジが加味されます。

 

マス目の中に、計画的に画像を配置します。

下の2枚の写真が、斜めの線を共有しているのに対し、

上の写真が硬質の水平の線を有していて、互いに補い合っていることに注目してください。

 

マス目状に画像を配置すれば、テキスト用に余白部分をたくさん残すことにもなります。

そのおかげでテキスト部分が、グラフィックに印象負けすることがなくなるのです。

 

 03.  シンプルなスライドに、印象の強い表紙を合わせる

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「レス・イズ・モア(少ないほど豊か)」というのは、余分なものを一切排することを通して、

より良いデザインを構築しようという考え方です。

この考えをみなさんのスライドにも応用してみてください。

 

多くの要素(画像や図形、異なるフォントなど)を詰め込むのを避けて、メッセージがはっきり伝わるようにします。

スライドの単純さとバランスをとるために、くっきりした印象の表紙を加えます。

上にあげた表紙のスライドの中で、画像がどのように背景として使われているか、

さらにテキスト部分の形と対になっていることに、目を留めておいてください。

 

 04.  同じフレームを使う

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フレームは、伝えたい情報を入れるすばらしい入れ物です。

上のフレームは、図形を透過させて作成しています。

自分の作ったフレームを繰りかえし使うこと。

これはよいプレゼンテーション・デザインの、カギとなる原則です。

 

 05.  スライドを繰りかえす

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一度、満足できるスライドができたなら、それをテンプレートとして保存しておきましょう。

繰りかえし使うことができるし、スライド本体として、コンテンツをそれに当てはめていくころができます。

もしプレゼンテーションを定期的に行っているのなら、つながりを表すことができるし、

時間の大きな節約にもなります。

 

ちょっとしたデザイン上の小技なのですが、

ボールドの数字と箇条書きの点は、情報に区切りをつけるためのすばらしい道具です。

 

 

 

著者:アンナ・ゲレロ(canva)


元記事:http://bit.ly/1s0Yeuf

(翻訳:服部聡子)

新しい「購入」ボタンでモバイル市場は変わるか

by コナー・ドウアティ、ヒロコ・タブチ

 
サンディエゴで広告代理店取締役を務めるデニス・チャップマンは、

毎日自分が何時間、服やプレゼントを検索しながらスマートフォンの画面を見ているかと思うと

ゾッとする、と言います。

そのくせ、実際に買い物をするのは、アイフォンではなく、

長年キッチンの机に置いてある、長年使っているデルのパソコンを起動させるのです。
「最近ではスマホで買い物をしようとさえ思いません」

とオンライン・ショッピングの経験を語るのは、ミズ・チャップマンです。

「ほとんどの場合、個人情報の入力は親指で、やり直しばかりなんです。

デスクトップで作業をしたほうがずっと楽に感じます」

Lynx - WordPress Theme - productshot

現在、グーグル、フェイスブック、ツイッター、ピンタレストなどのいくつかの企業は

「購入」ボタンをシンプルにすることで、

スマートフォンのブラウザでの買い物と、PCでの買い物の間のギャップを埋めようとしています。
購入ボタンはインターネットの初期段階からありました。

アマゾンの「ワンクリック注文」などに代表されるように、ボタンに

クレジットカード情報や、希望する配達先を、あらかじめ入力しておくのです。
けれども新しい購入ボタンは、テクノロジー企業が消費者と小売業者との仲介役となります。

ワンクリック注文の対象を、何千という小規模の小売業者に拡げて、

スマートフォンのタッチスクリーン上での、わずらわしいクリックをなくすのです。
膨大な量の情報が指1本で扱える世界からみれば、

購入がわずらわしいことなど、ささいな問題かもしれません。

けれども、テクノロジー企業にとっては重大事です。

なにしろ、数十億ドル単位の広告報酬が、スマホ利用者によってさらに拡大しつつある中、

オンラインショッピングの成否がかかっているのですから。
毎日、スマホの画面に目をこらしながら3時間近くを費やしながら、

アメリカ人のほとんどは、オンライン・ショッピングをパソコンで行っています。

大きなスクリーンとキーボードのあるパソコンは、

画面を見るのも、クレジットカード情報の入力をするのも、扱いやすいからです。

今年、アメリカ人がインターネットを見る時間の約半分は、

スマートフォンを通してであることが分かりました。

ところが電子商取引の売り上げは、そのうちの約1/5にすぎなかったことを

イーマーケターは報告しています。

iPhone 6 "one-handed mode"

「消費行動は、モバイルへと根本的に移っています。

ところが、費やされる時間と金額の間には、大きな隔たりがあるのです」

とヴァージニア州レストンにあるリサーチ企業コムスコアにて

マーケティング・インサイト副社長を務めるアンドリュー・リプスマンは言います。
新しい購入ボタンに取り組む企業は次のような理論を持っています。

成長しているスマホ業界では、多くの人は文字入力よりも画面タップを利用しています。

そのため決済のプロセスをもっとわかりやすくすることによって、

買い手の抵抗感が減れば、売上が増大する、と。
モバイルアプリは、この面で、良いモデルとなっています。

というのも、モバイル・アプリでは、人はウェブサイトへログインしたまま、

さらにクレジットカード情報を登録したままにしていられる、クローズド・システムを構築し、

その中でのタクシーの呼び出しから食料の買い物など

いろいろな注文を画面タップでおこなっているからです。

しかし、アプリをダウンロードする前提であればよいのですが、

オンライン上でランダムに商品を探し、買い物をするにはあまり適したものではありません。
コムスコアはスマートフォンからでは商品の画面が小さい、

配送や支払いのオプションを確認するボタンが小さくて使いづらい、

といったクレームがユーザーから出ていると報告しています。
「スマートフォンが広範に普及し始めた当初、

必要性に駆られて、画面の小さいバージョンのウェブサイトが作られましたが、

うまくいった企業はどこにもありませんでした」

とサンフランシスコにある、ピンタレストなどのモバイル決算システム会社

ストライプの共同設立者であるジョン・コリソンは言います。
ピンタレストの「購入可能ピン」は次のようなものです。

ピンタレストのアプリに、配送先情報とクレジットカード情報を入力します。

買いたいものを見つけたときは、「購入する」をクリックします。

この時点で小売業者には、配送先情報とクレジットカード、

もしくはアップル・ペイによる支払いという情報が伝えられます。
テクノロジー企業側としては、画面にある広告をクリックしても、

クレジットカードを利用して、「コンバージョン」してくれなれければ儲けになりません。

モバイルサイトで小売業者の出す広告をクリックすることにより生まれる売り上げは、

デスクトップを利用した際のものより84%低いと

インターネット検索広告会社アドマーケットプレイスは報告しています。
アドマーケットプレイス社長アダム・J・エプスタインによれば、

このコンバージョン率の著しい低さは

なぜモバイル検索広告料が、デスクトップ広告の値段の半額かということの

説明になっている、とのことです。

Shopping trolley with lower tray.

もちろん、パソコンの決済ページが快適であるということではありません。

けれどもモバイル端末が普及する以前に、

オンラインで購入することと、実際に店舗に出向くことの手間を比較すると、

決済ページで少々手こずったとしても、

実際に車を運転し、店に行き、商品を買い、家に戻るといった面倒にくらべれば、

どうということもなかったのです。
「モバイルに関して言えば、モバイルとパソコンとの比較になります。

取引をもっと増やそうとするなら、パソコンのものよりシンプルでなければいけません」

とエプスタイン氏は述べています。
グーグルほどモバイル広告に力を入れている企業はありません。

グーグルはデスクトップ、ラップトップパソコン上の広告スペースを一大支配下に置き

世界で最も価値ある企業になりましたが、

その企業もモバイル機器へのシフトチェンジを加速しています。
グーグルはアメリカを含む10か国において、

今年初めてモバイル検索が、パソコンでの検索を上回ったことを発表しました。

アメリカ広告企業はパソコンよりも、モバイル検索広告に投資することが見込まれています。

イーマーケターによればモバイル検索への投資は128億5千万ドルに対し、

パソコン検索に対しては128億3千万ドルとされています。
ここ数年、グーグルは重要な収入源であるコスト・パー・クリック(1クリックあたりのコスト)が

低下しており、ユーザーのクリック毎に支払われる広告収益の平均も低下しています。
「パソコンで行われていたのは、いわゆるeコマース、電子商取引でした。

検索し、商品を買うか予約を入れたりするなど、一連のプロセスが、

閉じた環の中で行われていたのです。

そのため、私たちにも追跡調査が可能でした」

と、グーグル・パフォーマンスメディア部門副部長であるジェイソン・スペロは言います。

Top Shop Girl

スマートフォンは、オンラインと店頭ショッピングの境界線を曖昧なものにします。

店内で買い物をしているときでも携帯電話を利用したり、

注文する電話番号を探すのに利用するためです。
しかし広告が購入に直接繋がるのであれば、消費者にとっても便利ですし、

おそらく広告料金も上がります。
近年グーグルはホテルの広告など、

掲載されている広告を通じて直接予約ができるような形式を公開しています。

スペロ氏によれば、新しい購入ボタンの公開は、今年の後半になり、

グーグル・プロダクト・アド内で利用できるようになるとのことです。
このことが小売業者にとってどうなるか、現時点で判断することはできません。

購入ボタンがオンライン公開されるようになれば、

買い物客にとっては、ショッピングサイトを探して買い物をする必要性が減り、

特定の店に行って買い物をするような習慣は、さらに減ることでしょう。
コムスコアのリプスマン氏はこの件に関し楽観的で、

購入ボタンは携帯機器ショッピングによる売り上げは向上すると考えています。
ピンタレストの「購入可能ピン」に共同で取り組んでいる

メイシーズのデジタルメディア部門副部長セレナ・ポッターは

店の収入がどこから入るかにはこだわらない、と述べています。
「お客様には買い物をしてもらいたいだけです。

どこで情報を得て、どのように決算するかは当社に問題はありません」

と彼女はコメントをしています。

 

 

ニューヨーク・タイムズ 2015年 7月15日)


元記事:http://nyti.ms/1ClPI3L

(翻訳:横手祐樹)

行動のためのデザイン

近頃目にする「デザイン思考」という言葉は、一体、何を指しているのでしょうか?

また、今日の市場で成功を収めている製品の多くが、

デザインを強く意識したものであることを見ても、

デザインの持つ意味が高まりを見せていることに気付かされます。

 

ですが同時に、存在感を増し続けるデザインも、今日、ある課題に直面しているといいます。

それはどのようなもので、どうやって解決していけばいいのでしょうか?

ハーバード・ビジネス・レビューに掲載された”Design for action”という記事では、

米デザインコンサルタント会社IDEOのCEOティム・ブラウンと、

「デザイン思考」や「統合思考」を提唱し多くの著作を持つロジャー・マーティンが、

実例を交えて解き明かしていきます。

ここではその記事の内容をご紹介していきます。

 

新しい挑戦

目に見え、手に触れられるものを形作ることから始まったデザインが、

その対象の幅を広げています。

ハードウェア、インターフェイス、さらにはユーザーが製品に対して持つ印象、

体験の全てを含むユーザーエクスペリエンスが、

デザインの対象とされてきました。

そして今日に至り、企業の戦略立案や、

様々な組織とステークホルダーが効率的に協働するための仕組み作りにまで、

デザインの概念が適用されるようになっています。

 

しかし、デザインの対象物がより複雑化するにしたがって、

ある課題が浮き彫りになってきました。

作り上げられたデザインの対象物を、異なった利害関係を持つ複数のステークホルダーに、

どのようにして受け入れさせればいいのか、という問題です。

従来のような、ハードウェアのデザインであれば、

このような問題を意識することは多くありませんでした。

記事では、このように述べています。

 

既存製品に類する新製品のローンチは、普通は、良いことと考えられています。

例えば、自動車であれば、既存車種のハイブリッド車のバージョンなどが

あげられるでしょう。

新しい売り上げを生み、組織全体にとってネガティブな点はないように思われます。

組織やそこでの人々の働き方に大きな変化をもたらすものではなく、

そのため本質的に、新しいデザインのせいで誰かの首が危うくなるとか、

既存の権力構造が揺るがされるといった恐れはないのです。(”Design for action”

 

ですが、デザインの対象物がより複雑さを増すに従って、

それがもたらす波及効果は無視できないものになってきています。

新しい、複雑化されたデザインには、導入にあたっても、

デザイン的な視野から注意を向ける必要があるのです。

本文中では、自動運転車を例にとっています。

 

長大なサプライチェーンや幅広い関連産業が互いに依存しあっているビジネスの場合は、

新しいデザインを現状に統合させることが、さらに大きな課題として立ちはだかります。

例えば、自動運転車が成功するためには、自動車メーカー、技術を開発する者、

制度の面、市や国の当局、関連するサービス業、

そしてエンドユーザーがこれまでなかったやり方で一致団結して、

取り組む必要があります。

保険業者は、リスク査定ではユーザーとどのように関わるのか?

自動運転車から得られたデータが交通の把握や規制のために供される場合、

プライバシーはどのように守られるのか? (引用同)

 

介入のデザイン

このように、対象物が複雑化するにつれ、デザインは周囲を幅広く巻き込み、

関与するステークホルダーも数を増し、受け入れが容易でなくなってきます。

ですが、大規模で画期的なデザインの導入に際しては、

下記の二つのアプローチを同時にとることで、定着の可能性が増すというのです。

すなわち、対象物のデザインと、現状への介入のデザインです。

 

従来、製品のデザインを行う者は、ユーザーを調査し製品概要を作成するところから始めていました。

その上で、実際の製作に入ってデザインを作り上げ、クライアント企業が製品ローンチを行う。

しかし、このやり方では、ユーザーの反応を正確に予想することは困難でした。

 

そこでデザイナー達は、できるだけ早い段階でユーザーのもとを訪れ、

完成度の高いものでなくても、プロトタイプを提示して、フィードバックを得ることを始めたのです。

そしてこれを繰り返し、ユーザーが満足するまで試作を繰り返したのです。

 

こうすることで、クライアント企業が製品をローンチする頃には、

市場での成功はほぼ約束されたものとなっていたのです。

また、これを行うことで、資金やクライアント企業の内部での承認も得やすくなったといいます。

つまり、現状への介入の仕方にデザイン的な思考を取り入れることで、

新しい製品デザインそのものの導入が容易になった、ということです。

 

design

 

新しいペルーのデザイン

さらに本文では、より大規模な仕組みのデザインと介入のデザインの例として、

ペルーのインターコープ・グループをあげています。

CEOのカルロス・ロドリゲス=パストールJr.は、

銀行グループのCEOでありながら社会変革を胸に抱き、

ペルー経済を変貌させるには厚い中産階級の存在が不可欠であると考えていました。

そのためにロドリゲス=パストールが行ったものの中に、

農村部でのスーパーマーケットの経営があります。

 

もし、インターコープが従来と同じようなビジネスの知恵にならうなら、

すでに中産階級が形成されつつあった首都リマの

富裕な地域に注目していたでしょう。

ですが、ロドリゲス=パストールは、

地方にも同じように中産階級が必要であると考えました。

地方での中産階級の育成に雇用創出が必要なのは明らかです。

雇用創出のためにインターコープができることは、

スーパーマーケット・チェーンを出店することでした。

2003年にロイヤル・アホールドから購入して、

スーペルメルカドス・ペルアノスと名前を変えさせていたのです。(引用同)

 

しかし、ロドリゲス=パストールは、

スーパーマーケット・チェーンの展開が雇用創出には寄与するものの、

地方の農家の生活を困窮させていることにも気がつきました。

地方の小規模農家は衛生基準が低いことも多く、

大規模生産者に比べて倦厭されてしまっていたのです。

 

そこでインターコープは、地方の農家とのつながりを通じて、

地方での農業生産を活性化する必要性が出てきたのです。

インターコープは、2010年には、コ

ルポラシオン・アンディーナ・デ・フォメント(NGO)とワンカヨ地方政府の助けを借りて、

ペルー・パシオン・プログラムを始めました。

このプログラムは、農家と小規模な製造業者が、

近隣のスーペルメルカドス・ペルアノスに商品を供給できるように、

生産能力を高める援助を行うものです。

そして時間が経つうちに、それぞれの地域一帯、

あるいはペルー全体に、独力で商品を納める事業者も出てくるようになったのです。(引用同)

 

このようにしてインターコープは、ビジネスをデザインし、

その現状への導入をデザインし、中産階級の拡充という目標を達成してきました。

ステークホルダーの利害を注意深く読み取り、

巻き込んでいくための手順を入念に計画してきた結果です。

そして記事は、下記の文章で終わるのです。

 

デザイン思考は、手に触れられる製品のデザインのプロセスを

改善するためのものとして始まりました。

ですが、それで終わりではありません。

インターコープや他の成功のエピソードが示すのは、

画期的な新しいアイディアと体験に人を巻き込んでいくことに伴う、

目に見えない課題に取り組むときこそ、

デザイン思考の原則はより力を発揮する可能性を秘めているということなのです。(引用同)

 

 

 


角田 健 (引用:「行動のためのデザイン」:ハーバード・ビジネス・レビュー)