本:『大胆であれ』

 

Bold: How to Go Big, Create Wealth and Impact the World

『大胆であれ:成功し、富を築き、世界に影響を与える方法』

  著者 ピーター・H・ディアマンディス

 

ニューヨークタイムズ・ベストセラー『楽観主義者の未来予測』の共著者、

ピーター・ディアマンディスの待望の新作です。

この『 Bold (大胆であれ)』は、

進歩が速まる一方のテクノロジーや、

常識を打ち破る思考、

クラウドパワー・ツールを使って、

莫大な富を産み出し、

数十億もの人々にインパクトを与えたい人に向けた、

ラディカルなガイドブックです。

 

『大胆であること』は、3つの部分から成り立っています。

 

第1部は、飛躍的な成長を続けるテクノロジーに焦点が当てられています。

 

今日の速まる一方の技術は、

フォーチュンの世界企業500社に選ばれるような大企業を混乱させる一方、

「アイデアがあります」という起業家を、

「10億ドルの会社を経営しています」と言うようになるまでに押し上げることを

可能にしています。

著者が取り上げるのは、今日の3Dプリンターや人工知能、ロボット工学、

ネットワークとセンサー、合成生物学などが持つ力。

ディアマンディスは、それに対して、卓越した洞察力を示していきます。

 

第2部でスポットが当てられているのは、心理学から見た「大胆さ」についてです。

 

億万長者となった起業家の、ラリー・ペイジ、イーロン・ムスク、

リチャード・ブランソン、ジェフ・ベゾスの行動の動機について、描かれていきます。

 

さらに、ディアマンディスはこれまでに、

シリコンバレーを拠点とするユニークな教育機関、シンギュラリティ・ユニバーシティ、

Xプライズ財団、プラネタリー・リソーシズ、法人ヒューマン・ロンジェビティ

など15の起業をおこなっていますが、その経験を通じて得た

起業家としての秘訣を明らかにしていきます。

 

第3部で取り上げるのは、社会資本についてです。

 

今日、誰もが、ますます緊密に結びつく人間の集団に大きな影響を及ぼす

チャンスがあります。

ここで著者は、インセンティブ競争や、百万ドルのクラウドファンディングの立ち上げを

企画する方法を教えてくれます。

 

そうして最後に描かれるのは、コミュニティをいかに作るか、ということです。

 

急速に伸びていく集団は、自ら進んで参加する人々を生み、

今日の起業家が思い描く、大胆な夢を実現するのを助けていく、

とディアマンディスは語ります。

 

『大胆であれ』は、マニフェストであり、マニュアルでもあります。

今日の指数関数的に増加する起業家にとって、新しく登場した技術を利用するための

頼りになるリソースであり、思考を測るものであり、

人々の集団の持つすさまじい力を明らかにした書です。

 


元記事:http://amzn.to/1DR9ek2

(翻訳:服部聡子)

うまくダメ出しする方法

by クリスチャン・ジャレット

 

相手の間違いを指摘しないことは利己的な行為

 

仕事仲間のまずい仕事ぶりを目の当たりにしたとき、あなたはどうしますか?

それを指摘し、注意するのは楽しいことではありませんが、

ほんとうは、きわめて重要で、相手にとっても親切な行為です。

私たちの誰もが、現在、どのような状況にあろうと、過去に何をしていようと、

進歩していくことは可能です。

けれどもそのためには、自分に欠けている点を、

信頼できる誰かから、指摘してもらう必要があるのです。

 

間違った点の指摘や批判は、潜在的な贈り物です。

医療産業や航空産業などの業界では、人の命を救うことさえあります。

けれども指摘や批判をおこなうことは、簡単なように思えて、

一歩まちがえると、きわめて危険な結果を招きかねません。

人間関係や信頼を壊すかもしれないのです。

では、どうしたら思いやりのある評価と不愉快なコメントの間で、

うまくバランスを取ることができるのでしょうか。

 

ダメ出しをおこなうためには、まず第1に、信頼関係を築いておく必要があります。

研究によると、自己評価の低い人は、マイナスの評価を差し控える傾向があるといいます。

とりわけ対面でその傾向が強くなるのは、嫌われたくないから、

あるいは、批判的な言葉が自分に投げ返されるのを恐れているから、

という理由があるからなのでしょう。

 

別の研究では、「自己監視」傾向の強い人

(自分が社会的に見て適切なことをしているか、非常に気になる人)

も、同僚にマイナスの評価を出せないということが明らかになっています。

とりわけその会社が、静穏という企業文化を持つようなところなら、

その傾向はいっそう強まるでしょう。

 

自己評価の低い人は、批判を控える傾向がある

 

逆説的に聞こえるかもしれませんが、自分がどう思われるかを気にして、

マイナスの評価をしない、というのは、利己的な行為です。

あなたのエゴは、いったん脇へ置いて、

自分がきらわれたら、とか、良い人と思われたい、などと考えるのはやめましょう。

 

正当な批判を適切な態度でおこなうことは、相手にとっての利益であり、

あなたがもっと有能な同僚や上司となる機会でもあるのです。

逆に、あなたがマイナスの評価を控えるということは、

相手の成長の機会を奪っているということになります。

それだけではありません。

相手もやがて自分の失敗に気づき、

さらにあなたにはチャンスがあったにもかかわらず、注意してくれなかった、

と思いいたるかもしれません。

 

ですから、あなたが黙っていたせいで、今日は人気者でいられるかもしれませんが、

明日のトラブルの種を抱え込むことにもなりかねないのです。

 

The Argument.

批判は、人ではなく、プロセスに対しておこなうもの

 

人は、マイナスの評価に対して、

それぞれの気質や信条に応じて、異なった反応を示します。

そうしてその反応が、私たちが批判を形成していく手がかりになるのです。

 

相手の批判を素直に聞く人で、

目標をもっと学んだり、修得したりすることに置いている人であれば、

批判的な評価を受けても、過ちを訂正したり、もっと精進を重ねたり、という、

建設的な反応を見せます。

彼らは批判を学ぶチャンスと受けとめるのです。

 

逆に、柔軟性に欠ける人、

目標を自分の能力を示すことや、高度な仕事を成しとげることに置いている人だと、

マイナスの評価を受けることが、助けにならない場合もあります。

?そういう人は、自分本位に受け取って、腹を立てたり、批判を避けようとしたりするかもしれません。

「自分は文章を書くのが下手だから/頭が悪いから」などと、

自分の性質だから仕方がない、とばかりに、マイナスの評価を途中でさえぎろうとします。

 

そうしてまた、マイナスに評価されたことが引き金となって、

あなたに対する信頼感を失っていったり、

「あのバカは自分が何を言っているか、わかってないんだ」

といって、徹底して批判を拒もうとする場合もあります。

 

ちがいはここにあります。

良くなろう」という思考パターンの人と、

良くあろう」という思考パターンの人がいるのです。

 

批判される側のこうしたちがいを逆に利用して、

相手に望ましい反応をしてもらえるような批判を作ることもできます。

 

相手に対して、あなたがうまくやれなかったのは、

容易に修正できる、外部的な原因だと説明することによって

(「この記事がうまく書けていないのは、十分な調査と知見が得られなかったからだ」)

相手にとって重要なのは、あなたがどれだけすごい人であるかを示すことではなく、

もっと学ぶことにある、と暗に伝えると、

批判が建設的な反応を生む可能性が高くなるのです。

 

つまり、相手が実際に次のステップに踏み出せるように

(「今度はもっと気をつけて、十分な調査をやっておきます」)

あなたはそれとなく微調整のきっかけを与えてやる、ということです。

 

ところが、相手の仕事ぶりに対する批判となった場合は、

次のステップはもっと曖昧なものになってしまいます。

(「次はもっと頑張ります」)

 

Talk

 

相手の進展をそれとなくうながしたいときは

具体的に次の一歩が踏み出せるような提案を

 

全体から見て適切で、恩着せがましくさえなければ、

あなたが出したマイナスの評価も、

実践的な、相手に合わせた改善ステップと組み合わせることで、

相手の基本的な能力に対する評価ではないことが、はっきりとわかってもらえます。

(「この記事は、君のライターとしてのスキルを思ったら、十分とは言えないな。

君だったら、この分野の専門家と話して調査を重ねたら、もっと良い記事が書けるはずだ」)

 

最近の研究では、間違った箇所に対する指摘も、こうしたやり方なら、

受け手が自分がどこまでやり遂げたかを理解できることで、

さほど自己嫌悪に陥らなくてすむことがわかっています。

 

また、相手に対して意見を述べることによって、受け手の反応を形成することもできます。

たとえばもしあなたが、誰かのやったまずい仕事ぶりを取り上げて、

別の同僚と比較するようなことがあれば、

仕事仲間の間にライバル心や、成果主義の考え方を生み出す怖れがあります。

このような状況で、あなたが批判的な評価を下せば、おそらく彼らは腹を立てるでしょう。

 

どんなマイナスの評価でも受け入れられる基礎を築くことが、

あなたがまず第一にやっておかなければならないことです。

 

もしあなたが「何ができるか私に見せてくれ」という態度で仕事を割り当てたなら、

あとでその仕事のできが不十分なことを指摘した場合に、

ひどい反応が返ってきても、驚いてはいけません。

 

その代わりに、この仕事は学び、上達するチャンスだと相手に悟らせることができれば、

仮にあなたがマイナスの評価を下したとしても、

相手はもっと心を開き、生産的なものとして受け取ってくれるでしょう。

 

*** *** *** *** *** *** ***

 

大胆に、辛抱強く、建設的な批判をおこなえば、

相手を助け、相手が向上するのを助けることができます。

 

けれどももっと大切なのは、私たちの行動が、信頼という文化に貢献することです。

そこは仕事仲間が「良くやった」と背中をポンとたたき合うだけでなく、

ミスを指摘し、それを改善する方法を指摘できるような場でもあります。

そうやって、私たちみんなが成長していくのです。

 

 

著者:Christian Jarrett (心理学者、British Psychological Society’s Research Digest blog


元記事:http://bit.ly/1ahUQYY

(翻訳:服部聡子)

 

 

内向的な人のための交渉術

by ジニー・ソスキー

 

 

これまでの人生の大半、私は自分のことを外向的だと思ってきました。

子供の頃、友だちとあまりにも大きな声でおしゃべりしていたせいで、よく叱られたりしたものです。

いろんな集団スポーツもやってきましたし、そのなかで大勢の人と交流を重ねました。

夜、家に帰ってリラックスする、というのは、私にとっては

ふだん一緒に遊んでいる友人たちを家に招くことでした。

 

けれども、同時に私は本を読むのも大好きでした。

図書館で借りてきた、出たばかりのスリラーを、丸くなって読むひとときは、

私にとって何にも代えがたい喜びでした。

 

マラソン中、たったひとりで走っているときは、私の中に活力がよみがえるのを感じました。

それに、夜、カウチに丸まって、「バチェラー」という番組を見るのも大好きでした。

 

多くの人と同じように、私も 「内向的」 と 「外向的」 の中間にいます。

そうしてこのことは私のキャリアに大きな影響を及ぼしてきたのです。

 

自分が何にも増して 「内向的だ」 と感じてしまうのは、交渉している時です。

私の交渉はたいてい、  

黙りこくったまま、頭を曖昧に動かし、相手が何か申し出てくれたなら、

内容にかかわらずそれに飛びつく、

で終わってしまいます。

 

きっとそれは私だけではないでしょう。

交渉というのは、多くの人にとって怖ろしいことですから。

 

でも、もし自分のキャリアを (そうして自分の給料の額も) 豊かなものにしたければ、

なんとかしなければなりません。

 

交渉となると、急にぎこちなくなってしまう内向的な人は、どのような対処をしていけばよいのでしょうか。

もちろんその答えは、外向的な友だちに交渉してもらう、ではありません。

内向的な人も、交渉のプロセスのなかではカギになっていく

「強み」 を持っているのです。

 

  内向的な人は自分の強みを交渉で発揮しよう

 

内向的な人が恥ずかしがり屋だと一般にいわれますが、かならずしも事実ではありません。

研究者はいまだに人を「外向的/内向的」と厳密に分類しようとしていますが、

スーザン・ケインの『内向型人間の時代 ――社会を変える静かな人の力』によると、

内向的か、外向的かというのは、

心地よく活動できる、外界からの刺激の強度の差 でしかない、というのです。

内向型人間の時代

 

外向的な人は、外部から多くの刺激を必要とします。

たとえば、大勢の人と、社交的な環境で、

活発に交流する、といったことです。

 

それに対して、内向的な人は、

夜、自宅で心許せる友だちと、好きな映画を観るような、

低いレベルの刺激を好ましいと感じるのです。

 

 

交渉に際しては、外部からの低い刺激を好ましいとする傾向が、有利に働く場合もあります。

ハーバード大学の研究によると、 孤独な状態でいると、

人は他者へ感情移入する能力がより高まる のだそうです。

 

内向的な人はたいてい、黙って人の話に耳を傾ける能力に長けているはずです。

このスキルは、同時に、交渉相手をどうしたらその気にさせるのかを見抜く技術でもあるのです。

 

ブログの中でケインは、内向的な人は「調停者」の役割を果たすことが多い、と指摘します。

交渉の中で、調和ばかりを求めていては、相手につけこまれるかもしれませんが、

その傾向をうまく活かせれば、とてつもない強みとなります。

 

それはどうしてでしょう?

「調停者は細かいことにいらだちにくい傾向があります」 とケインは言います。

「些細なことがらをめぐって議論が続いていたとしても、気持をそらされたりしません。

内向的な人は、生まれながらに調和を求める人なのです」

 

ふたつのグループ間で、共通の解決策をさぐるという交渉のシナリオにおいて、

ごく自然に調和を模索する内向的な人は、天賦の才をもっているといえます。

 

となると、こうしたスキルを交渉時、どのように活かしたらよいのでしょうか。

おそらくあなたは几帳面な人でしょう ?(これもまた内向的な人の特徴です)。

ですから、ここにそのプロセスを紹介します。

 

  内向的な人は、どうしたらもっとうまく交渉できるか

 

本当のことをいうと、以下にあげるステップは、

内向的な人、外向的な人の両方に効果があるものです。

この中のいくつかは、私の同僚であるロブ・マサブニーのアドバイスに基づいており、

それを内向的な人向けに手直ししています。

 

これからあげることを念頭に置いておけば、自分本来の強みを活かして、交渉に当たることができるでしょう。?

 

準備

 

交渉のプロセスの中で、内向的な人が一番時間をかけるところです。

交渉中にあわてたりするのを避けるためには、念には念を入れて準備をしておきたいもの。

以下、用意する必要のあることをあげていきます。

 

1) 関係を明確にしておく

これは一度限りの交渉ですか?

それともこれから先、何ヶ月間かは一緒に働くことになりますか?

前者なら、交渉は少々押しが強くてもかまいません。

後者であるならば、配慮が必要ですが、自分が求めるものについては、はっきりと態度で示しましょう。

何よりもまず、自分がどちらで行くか、決めておくこと。

それが交渉のプロセス全体を決めてしまうのですから。

 

2) 最高のシナリオを立てておく

しばらくのあいだ、楽観的になってみましょう。

交渉の結果、すべてがうまくいくとすれば、どうなるのが一番いいと思いますか?

求めるものは何ですか?

相手は何を望んでいるのでしょうか?

そのシナリオは、双方にとってwin-win ですか?

 

3) 最悪のシナリオも決めておく

楽観タイムはおしまいです。

今度は起こりうる最悪の事態、それでもなんとか納得できる、という条件を、思い描いてみてください

これがいわゆる「底」です。

 

もうこれで、どの時点で交渉を打ち切るべきかがわかりました。

交渉がその線に達したら (もしくはその線を越えたら)、

自分はその場を離れた方がいい、というラインが明らかになったのです。

最低ラインを引いておくことは、つけこまれないために何よりも大切なことです。

さらに、線を引くことで、交渉戦略をリセットしやすくなるのです。

 

4) 達成するべきシナリオ、避けるべきシナリオに沿った戦略を立てる

何が理想的な状況かわかったので、そこに到達するまでの計画を立てます。

当然、話し合いが台本通りに進むはずはありません。

けれども、どうやってそこに行くかのシナリオをいくつか用意し、

綿密に計画を立てることに持ち前の整理整頓能力を発揮するのです。

交渉中は、感情移入スキルを発揮して、相手の立場に身を置いて、気持を想像します。

 

もし「X」と言ったら、相手はどう感じるでしょうか?

どのように反応するでしょうか?

自分の望ましい目標に近づくためには、どのように反応したら良いでしょうか?

このプロセスが終わった時点で、おそらくいくつかのシナリオの概略はできているでしょう。

つぎは、そのシナリオを実現するために、武装する番です。

 

 

5) 戦略実現のための戦術を選ぶ

まずは自分がどの戦術を使うか、明らかにしておく必要があります。

そうして、それを実行に移すために、模擬交渉で練習しておくのです。

親しい友人や協力してくれる人を見つけて、一緒に交渉をやってみましょう。

では、つぎにうまく交渉するためにやっておいた方が良いことをあげておきます。

 

◆ 「イエス/ノー」ではない、オープン・エンド・クエスチョンを

ある点について真正面から議論するのではなく、 相手の意欲や優先順位を知るために、

質問をなるべくたくさんするようにします。

たとえば、新しい仕事に就くのを、もう少し先に延ばしたいと交渉しているとします。

担当者が「8月10日から仕事を始めてください」 と言ったとしたら、こう尋ねましょう。

「その日程は動かせませんか? その仕事はその日に始めなければならない理由があるのですか?」

続く質問にも自由に答えられるようにしておくことで (イエス/ノーで答えるような質問ではなく)、

相手の意図がどこにあるかわかり、会話をどこの方向へ引っ張っていったら

いいのかを理解することができます。

 

この戦術は、弁護士時代のケインの役に立ちました。

『マクリーンズ』誌のインタビューによれば、ある交渉の席で、

ケインは以下のようにして勝利を収めたといいます。

 

交渉が始まるとすぐ、ケインは質問を始めた。

「多くの質問をしました」 とケインは当時をふりかえる。

そうして、相手の答えに耳を傾けた。

「その人の性格によらず、実りある交渉には、質問が決定的に重要です」

結果的に彼女のシンプルな質問は、部屋の雰囲気を変えていった。

「銀行家たちは長口舌をふるったり、自分の優位を誇示したりするのをやめました」

そうして両者の間に実質的な話し合いが始まったのだという。

最終的に協定が交わされ、翌朝、銀行サイドの首席弁護士がケインに電話してきた。

「うちの事務所で仕事をしないか」

と申し出があったのである。

「感じが良いのに、ここまで手強い相手には、今まで会ったことがない」 と言って。

 

◆ わかりやすく言いかえる

話し合いの間、交渉相手と大筋では合意していることを確認しておきましょう。

それに加えて、相手の言ったことをまとめる時間も必要です。

内向的な人は、聞き上手なので、このようなことは、ごく自然にできるでしょう。

 

◆ アンカーの使い方(時には避け方)を知る

アンカーは、話し合いの際の基準値となるものです。

たとえば賃金交渉の場合、アンカーは最初に提示される数字のことです。

以降の交渉は、この準拠枠にもとづいてなされます。

こちら側が6万ドルをアンカーとして提示したなら、 4万5千ドルではなく、

6万ドル前後の数字で話を詰めていかなければなりません。

 

もし自分でアンカーを定めるつもりなら、ケインの言葉は良いヒントとなるでしょう。

 

これは事前にやっておかなければならない宿題です。

まず、数字を決めます。

自分にとって望ましい数字、けれども、相手から見ても違和感を抱かせないような数字です。

やりすぎてしまえば、無知(相場を知らないやつだな)と思われるか、

鼻持ちならないやつ(いったい誰が身の程をわきまえない人間とつきあいたいでしょうか?)

と思われるか、です。

賃金交渉や、関係を良好に保っておく必要のあるような場面では、

とりわけ気をつけてください。

アンカーは、むしろ一度限りの交渉、

たとえば車を買うときのような場合にふさわしいのです。

 

もし投げかけられたアンカーをかわしたいとき、つまりは「しりごみ」の気持を示したいときには、

そのアンカーがどれほど非常識なものか、ボディランゲージを使って相手に知らせればよい、

とケインは言っています。

実際に、たじろいでみせたり、眉を上げたり、

「本当ですか? 少し変ではないですか? もう一度、やりなおしましょうか。

今度はもうちょっと妥当な範囲で」 と言ってみるのも効果的です。

 

◆ 間をおく

直観的に、間なんておかない方がいいんじゃない? と思うかもしれません。

でも、沈黙は静かな武器です。

とりわけ、相手がありえないようなアンカーを持ち出してきたような時には。

それに、黙ったままでいるというのは、こちら側にとっても普通ではない申し出をするときにも、

うまいやり方です。 どうしてこうしたいか、と、あまりに説明し過ぎるよりも、

自信にあふれているように見えるからです。

 

◆ いくつかのキーワードを避ける

友人のマサブニーは、以下に挙げる言葉を避けるように言っています。

「ちょっと」 : 

「ちょっとやっているところです」などというと、

自分がやっていることがいかにもたいしたことではなさそうに聞こえます。

「たぶん」 : 

交渉に当たるときには、信頼のおける物腰で臨みましょう。

「たぶん…、おそらく…」の代わりに「間違いなく」を使います。あるいは、何もつけない。

「しなければならない」 :

ほかの人が主語の「しなければならない」という言葉は、

その人を自分の思い通りにしようとしている印象を与えます。

「~みたいな」 :

 これもまた毅然とした印象を損ねる言葉です。絶対に避けましょう。

「残念ながら」 : 

このあとに続くのは良くない話だとわかるので、誰もそこから先は聞いてくれません。

「えー、あー、あのー、まあ……」 :

つなぎ言葉は聞き苦しいものです。

 

 

交渉開始、ディスカッションの幕を開けましょう

 

さあ、実際に交渉をやり抜く時がやってきました。

これまで多くの準備をしてきたので(おめでとう!)、

つつがなく進んでいくはずですよね?

 

話し合いはレシピ通りには進まないものなので、この領域での万能チェックリストは存在しません。

けれども、以下にこれ以降のおおまかな流れを示しておきます。

1) 相手側が何を望んでいるかはっきりさせるために、話してもらう

最初は相手に話を始めてもらいましょう。

オープン・エンド・クエスチョンを投げかけ、相手側が実際に求めているものを明らかにします。

このとき、聞く能力を十分に発揮します。

相手側の求めているものや必要なものを予測するために、これまで多くのことをやってきましたが、

その予測が正しかったかどうか、理解しておく必要があります。

そうしなければ、議論のスタート地点に立てないからです。

交渉そのものよりも、この部分を 「共同作業」 としてとらえ、しっかりやっておけば、

以降の交渉の舵取りが簡単になるでしょう。

 

2) 話し合いをこちら側のシナリオにできるだけ近づける

内向的な人は、計画通りの成果を得るために、押しつけがましくなったり、

強気に出たりするのを好みません。 けれども、相手側と話し合っているときには、

その目標を常に頭の中に入れておかなければなりません。

話し合いのゴールに焦点を定めておけば、その場その場で使う戦術についても、頭がよく回るはずです。

 

 結論が出たら

 

おめでとう! 結論が出ました――これで誰もがハッピーになるはずです。

でも、話し合いを終えるまえに、以下に述べるふたつのことをやっておく必要があります。

もちろん、相手に常識があることはわかっていますが、交渉というもやの中では、

簡単に忘れ去られることもあるのです。

 

1) 合意したことを、もう一度、言葉にする

内向的な人の得意な、積極的に耳を傾ける能力を発揮します。

両者が最終的に合意したことを正確に言葉にし、はっきりと記録を残して交渉を終わりましょう。

そのまとめを聞いて、相手側が交渉を続行したがるかもしれません。

けれども両者はその件に関してはすでに合意したのだから、こちら側はつぎのステップに進めるはずなのです。

2) つぎのステップを告げる

話し合いの結果をふまえ、誰が、何をするかを明らかにする必要があります。

交渉の最後にこのプロセスを経ることによって、内向的な人は、

いっそう安心してつぎのステップに進むことができるでしょう。

ということで、これでおしまいです。

 

事前に詳細なプランのアウトラインを立てておき、そのプランを予行演習することによって、

交渉で望むものを得るための備えは十分できているはずです

たとえ内向的であろうとなかろうと。

この他に、内向的な人が交渉時、役に立つヒントはありますか?

 

著者:ジーン・ソスキー


元記事:http://blog.hubspot.com/marketing/introverts-successful-negotiating

(翻訳:服部聡子)

 

 

 

ミレニアル世代のMBAホルダーが求めるもの

 

1980年代から2000年までに生まれた「ミレニアル」世代のビジネス・スクール卒業生たちは、

給与にさほどの重きを置いておらず、

それよりは充実感や社会的影響を持つこと、起業家精神などを重視していることがわかりました。

 

ウォートン・スクールの2014年の卒業生のうち、

起業、もしくは自営業に就いたのは55名で、 これは5年前とくらべると、50%の増加になります。

 

また、ロンドン・ビジネス・スクールでは、

MBA卒業生が金融サービス業界に就職する割合が、

2007年の段階では46%であったのに対し、昨年は28%まで低下しました。

 

「ビジネス・スクールに志願するミレニアルズに関心があるのは、

社会事業や『良いことをして収益を上げる』ことなのです」

MBA入学コンサルタント業をおこなっているエッセイ・スナークは語ります。

 

「彼らは終身雇用などというものは、夢にも考えていません」

Business Because

 

MBA卒業生にとって、銀行や大手コンサルタント会社は、

何か他の仕事に移る前に、スキルを身につける場でしかないようです。

 

事実、一企業にとどまる人にとって、昇進はよりむずかしいものとなりつつあります。

ウォール・ストリートで働く 「圧迫された中流」(※訳注)

(※社会の中で、 インフレと増税の打撃をもっとも強く受けるとされる中流階級を指す)

の30代銀行家は、 昇進の機会がほとんどないのではないか、という危機感を抱いています。

 

たとえばゴールドマン・サックスは、取締役会への昇進を2年ごとに行っていますが、

2010年にくらべて2012年は、その数が39人も少なかったのです。

そこから最終的に共同経営者の地位まで上りつめることができるのは、

限られたほんの数名でしかありません。

 

多くの学生たちは、大企業で働くことを、疑い始めています。

女性の卒業生たちもまた、銀行に入ることを優先しなくなり、

eコマースやテクノロジー・セクターに関心を持つようになっている。

 

「ミレニアル世代の一員として、私たちは男子学生よりも、『成功』に焦点を当てています。

自分たちの情熱で、成功を引き寄せたいのです」

と、MBA卒業生でeコマースサイト VIP SOULを創設したファビオラ・パロミノは語ります。

 

ビジネススクールの側も、こうした学生の「社会貢献をしたい」という意欲に答えようとしています。

 

オックスフォード・サイード・ビジネススクールの学部長であるピーター・テュファーノは

「世界規模の問題に取り組むことが、ビジネス・スクールの目標なのです」

と言います。

 

エスマー・チフィエロは、アストン・ビジネス・スクールの卒業生です。

彼女は国連開発プログラムで、3年間ナイジェリアで過ごしたあと、

現在は、母校のアストン校で、ハルト・プライズのキャンパス・ディレクターとして働いています。

ハルト・プライズとは、次世代の社会貢献活動を担う学生を募るコンペティションです。

「大勢の人の命を救うために、社会に影響を与えることは、 何より充実感があるし、

自分が生きていく上で『成功している』と感じられます」

と彼女は語っています。

 

ビジネスビコーズ・ニュース


元記事:http://bit.ly/1yFkJse(抄訳)

(翻訳:服部聡子)

 

エバンジェリズムの技術

by ガイ・カワサキ
元記事:http://bit.ly/1QCvc0E
(※著者の承諾を得て翻訳しています)
 
ずいぶん前の話ですが、私はアップル社で大きな変革を成し遂げました。
 
当時の役職は「ソフトウェアエバンジェリスト」。
私の役目は、ソフトウェア開発者に対して、Macコンピューターの啓蒙活動をおこなっていくことでした。
 
やがて私の肩書きは「チーフエバンジェリスト」となり、
開発者のみならず、生産性を上げたい、創造性を高めたいと考える人すべてに、
Macコンピューターを伝えていく役割を担うようになったのです。
 
アップル社を去ってから、私は数多くのことをやってきました。
著述家、講演者、起業家、ベンチャーキャピタリスト、アドバイザー、もちろん父親でもありました。
けれども今日まで一度も「チーフエバンジェリスト」という肩書きを使用したことはありません。
というのも、この肩書きは、世界を変革しうるようなもの、
少なくとも、変革に向けての大きな推進力となるような創造物にしか使えないものだからです。
 
Macコンピューターは世界を変えました。
Macによって、コンピューターは大衆のものになったのです。
Googleも世界を変えました。
誰もが情報を手にできるようになりました。
eBayもまた世界を変えました。
誰もが商取引の世界に参入できるようになったからです。
 
20年間、さまざまなものを見てきて、私はCanva社にめぐりあいました。
ここなら、デザインをみんなのものにすることを通じて、世界を変えることができる、と。
だから私は現在Canva社のチーフエバンジェリストをやっているのです。
 
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私たちはCanva社の「コンテンツマーケティング」に対して、大きな自信を持っています。
それは、読者と顧客に対して価値ある情報を私たちが提供する、というものです。
 
私たちが定義する「価値あるもの」というのは、自分の人生をより良いものにできる「何か」のことです。
むしろ、売り上げを増やしたり、利益を出したり、というのとは対立するものです。
この精神に基づいて、製品やサービスを伝えていくエバンジェリズムの方法をご紹介しましょう。

すばらしいものにしよう

ガラクタを世間に広めるのは、非常に困難です。
素晴らしいものを伝えることの方が、はるかに簡単です。
私が学んだのは、
エバンジェリズムの第一歩は、すばらしい製品やサービスにあるということでした。
 
すばらしい製品やサービスとは、以下に挙げる5つの長所を備えているものです。

深いものであること

つまり、製品やサービスが、多様な特質を備えているかどうかということです。
というのも、良い製品やサービスは、さまざまな人のニーズに応え、
その人にとって必要性が最大となる、まさにその時に応じるものでなければならないからです。

知性の感じられるものであること

人々は、製品やサービスを利用しながら、
誰か頭の良い人が、自分がこれまで抱えていた問題や苦痛に気がついて、解決してくれたのだ、と感じます。

完成度の高いものであること

完成度の高い製品は、あらゆるニーズに応えるものです。
たとえばすばらしいソフトウェアとは、単なるダウンロード可能なファイルではありません。
文書化機能があり、サポートが受けられ、一連の拡張機能をも備えたものを指します。

人に力を与えるものであること

すばらしい製品やサービスは、人に力を与えます。
というのも、そのおかげで人は成長できるからです。
すばらしいものがユーザーを拒絶することはありません。
人の味方となってくれるものです。

エレガントなものであること

つまり、製品やサービスが単に機能的であるばかりでなく、
人々がより簡単に、よりすばやく使えるような設計がなされている、ということです。

「信念」を市場に出す

製品やサービスは、どれだけすばらしいものであったとしても、
それ自体は部品やコードの切れ端の寄せ集めに過ぎません。
それに対して、「信念」は人の生き方を変えます。
 
どれほどすばらしい製品やサービスを生み出しても、それだけでは十分ではありません。
それを市場に出し、人生をよりよいものにする手段であることを説明しなければならないのです。
スティーブ・ジョブズはiPhoneを、188ドルの部品の寄せ集めとして市場に出したわけではありません。
エバンジェリストは、iPhoneが高い倫理に基づくものであり、
お金と商品やサービスの交換を超えるものであることを、はっきりと理解しておく必要があるのです。

「信念」を愛する

「エバンジェリスト」は肩書きではありません。
それは生き方そのものです。
つまり、エバンジェリストは自らが伝え、広めようとしているものを愛していなければなりません。
 
どれだけ素晴らしい人であっても、製品やサービスの「信念」を愛していないのなら、
その製品のエバンジェリストにはふさわしくありません。
自分が愛せないものを、わざわざ広める必要はないのですから。
 
このことは、雇用にも大きく関わってきます。
高い教育と関連職種の経歴だけでは十分ではありません。
エバンジェリストが製品やサービスを愛するのと同じくらい、社員にも大切なことなのです。
 
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▲「エバンジェリスト」は仕事の肩書きではない。生き方である。(ガイ・カワサキ)

売り込みは最小限に

自社製品に対して、「革命的」「パラダイムシフト」「飛躍的」などという派手な形容を使って説明をすべきではありません。
 
Macコンピューターは、「パーソナルコンピューティングにおける第三のパラダイム」などではありませんでした。
単純に(そうして強力に)、1人が1台のコンピューターを使ってできることの生産性と創造性を上げていっただけです。
 
人々が買うのは「革命」ではありません。
頭が痛いときに「アスピリン」を買い、体調を整えるために「ビタミンサプリ」を買うだけのこと。
ですから、売り込みは限定的なものにとどめ、シンプルをこころがけるべきです。

改宗させるより、新規開拓を

ある宗教の信者を、別の宗教に改宗させることは、きわめて困難です。
Macコンピューターを誰よりも激しく拒んだのは、MS-DOS信者でした。
反対に、すぐにユーザーとなってくれたのは、これまでパソコンをさわったこともない人でした。
 
ある人が15分間、製品やサービスについての説明を受けても、
それを「受け入れ」ようとしないのであれば、見切りをつけ、別を当たった方が良いでしょう。

「信念」を試してもらおう

エバンジェリストは、見込み客の知性を疑いません。
だからこそ、広告や販促のためのプレゼントなどを使って、無理やり購入させようとはしません。
代わりに製品の「テストドライブ」する機会を提供し、決定は相手に委ねます。
 
エバンジェリストは自社製品が優れていることを知っているので、
購入前に試してもらうことに、まったく懸念を抱いたりはしないのです。
 
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デモンストレーションを学ぶ

「すばらしいデモンストレーションができないエバンジェリスト」というのは、矛盾した表現です。
自社製品やサービスについてのしっかりしたデモンストレーションができないような人は、
エバンジェリストには向いていません。
デモンストレーションをおこなうことは、呼吸するように無意識に、
第二の天性といえるほど、深く自然に身についたものでなくてはなりません。
この資質があったからこそスティーブ・ジョブズは、アップル社製品における世界最高のエバンジェリストとなったのです。

安全で簡単な初めの一歩を提供しよう

「信念」が受け入れられるまでの道のりは、ツルツルした斜面のようなもの。
障害はすべて除いておきましょう。
例1:「新しいコンピューターを1台、試すからといって、IT関係のインフラ全体を改修する必要はありません」
例2:「環境団体に参加するからといって、自分を木に鎖で縛りつける必要はありません」
例3:「ウェブサイトに登録するために、外国語を話したり、特別なキーボードを用意したりする必要はありません」

肩書きや家柄は無視しよう

エリート意識はエバンジェリズムの敵です。
もしエバンジェリストとして成功したいなら、地位や家柄は無視して、
あるがままの姿を受け入れ、誰に対しても敬意とやさしさを持って接するべきです。
 
経験的にいえるのは、秘書や助手、インターン、パートタイマー、見習いの人たちのほうが、
CEOや副社長よりも、新製品やサービスを受け入れやすい傾向があります。

嘘は絶対につかない

嘘はモラルの面でも、倫理的にも、誤った行為です。
嘘をつくと、自分が何を言ったか、いつも気にかけていなければならないので、
余計なエネルギーを使うことにもなります。
本当のことしか言わないでいれば、どんな嘘をついたか心配する必要は一切ありません。
 
エバンジェリストが伝えるのは、すばらしいもの。
だから、その特徴や利点に関する嘘をつく必要はないのです。
エバンジェリストは自分が扱っているもののことを知悉しているため、
無知を隠すための嘘も必要ありません。

友の存在を忘れない

上り調子の時こそ、人には親切にしましょう。
というのも、うまくいってないときにも、その人たちとまた会うからです。
 
iPodを買う可能性がもっとも高いのは、Macコンピューターを持っている人です。
アップルが次に販売するものなら何でも試してみよう、と考えているのは、iPhoneの所有者です。
ものごとはなんでもそういうふうになっていますから、友人のことはいつも心にかけておきましょう。
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▲上り調子の時も人に親切にしよう。下り調子になった時、かならずまた会うからだ。(ガイ・カワサキ)

結論

エバンジェリストと営業マンの違いは何か、とよく聞かれます。
答えはこれです。
 
営業マンが何よりも強い関心を注ぐのは、歩合であり、ノルマや契約を取ることです。
エバンジェリストは、心から他者の利益を考えています。
「これを試してみてください。あなたの役に立ちますから」
 
この違いを覚えておいてください。そうすれば間違いありません。
 

 

 

著者:ガイ・カワサキ


元記事:http://bit.ly/1QCvc0E

(翻訳:服部聡子)

 

 

 

次の波をつかめ ピーター・ティール講演会

 

ベンチャーキャピタリスト、ピーター・ティールが、

ハーバード・ビジネス・スクールの学生に、

テクノロジー部門での起業についてアドバイスを行いました。

 

PayPalの創業者として、ベンチャーキャピタリストとして

 

自分のノート・パソコンの中には、FacebookやTwitterの次に来るもののアイデアが詰まっている、

と考える何百人もの学生なら、ティールの話はぜひとも聞いておくべきでしょう。

 

世界最高の知名度を持ち、加えて挑発的な言動でも有名な

テクノロジー分野の起業家兼投資家が、有望な戦略を語ってくれる、というのですから。

 

2014年9月18日、ピーター・ティールはハーバード・ビジネス・スクール(HBS) の

アーサー・ロック・センターを訪れ、

「起業家スピリット」の専門家ウィリアム・サーマン(1955年卒業)とともに、

ビジネスとベンチャーキャピタルについて語りました。

 

ティールはイーロン・マスクやマックス・レフチンとともに1988年、

ペイパルを設立し、会長兼CEOを務めました。

 

このオンライン決済の草分けが登場したのは、

eBayユーザーの決済時の利便性を計るためだったのです。

eBayは、創生期にあったインターネットのなかで、広汎な人々を引きつけるサイトの一つでした。

 

「私たちが考えていたのは、そろそろメールとお金を連動させるべきなんじゃないか、ということでした」

ティールはこのように言います。

ところが、メールとお金を連動させるためには、

「受け入れられるための途方もない障壁」を乗り越えなければなりませんでした。

 

なにしろ顧客に新しい、まったくなじみのない決済方法に

慣れてもらわなければならなかったのです。

 

やがて成功を収めたペイパルは2002年、eBayに15億ドルで売却されることになります。

 

その後もティールは、数多くの創業に投資しています。

 

ビジネス向けSNSの「リンクトイン」、レビューサイト「イェルプ」、Facebookなどで、

いずれもティールは社外では初の投資者であり、同時にそれらの会社の重役でもあります。

 

An intimate chat between PayPal founder Peter Thiel (left) and HBS entrepreneur prof. Bill Sahlman inside HBS Burden Hall. Kris Snibbe/Harvard Staff Photographer

 

大きな池の小さな魚にはなるな

 

ティールは学生に訴えます。

大きな池の小さな魚になるな、その代わりに新しい、もしくはいまだ、

人の目が届いていない市場に目を向けよ、と。

 

Facebookはハーバードで10,000人の学生を相手に始まったんです。

それが10日のうちに市場占有率はゼロから60%だ。

申し分のないスタートです。

 

当時、Facebookを誰も有望な投資先だなんて考えなかったのは、

それがちっぽけな市場だったからです。

ペイパルはeBayに集まる大勢の出品者のために始まりました。

小切手に代わる別の方法を求めていた20,000人から25,000人の

セラー(出資者)だけの市場だったのです。

 

私たちはほんの少人数の人に、従来よりずっとよい方法を提供し、

たった3ヶ月で30から35%のシェアを占めるようになりました。

 

私はそうしたやり方は、たいてい、非常にうまくいくものだと考えています。

 

ティールがプロモーションを行っている最新著

『ゼロから1へ ―創業とは何か、どうやって未来を創造するか』の中でも、

ビジネスの成功にとって、幸運や偶然は決して重要なファクターではないことが述べられています。

 

ビジネスで成功することを、宝くじか何かのように考えている人は、

すでに自分は金を失うぞ、と自己暗示をかけているんです。

ものごとの原因を、偶然のせいにするような人は……

怠惰といえるのではないでしょうか。

 

というのも、もう少ししっかり考えれば、どこが間違っているかわかるのに、

彼らはそれをしないのだから。

運だの偶然だのは、途中で考えるのをやめてしまう自分の言い訳にすぎない。

 

起業家にとって、起業に失敗した経験は学ぶ価値がある、という考え方は、

あまりに「過大評価」されているのではないか、とティールは言います。

 

というのも、失敗の原因は多岐にわたり、

後続の人も、そうした原因をすべて避けて通ることなどできはしないからです。

 

会社を興すということは

教育に役立つものではないんです。

たとえば、私たちには会社がありました、

倒産しました、

それでスターバックスで働きました、

だけどたくさんのことを学びました…だなんて。

こんなもの、ばかげた作り話ですよ。

 

最近、ティールは、外部のCEOに主導された起業より、

創設者主導の、熱のこもった起業の方を楽観視していると言います。

また、社会貢献や教育的なことを目指す起業観には悲観的である、とも。

 

善いことをして利益を上げようとすると、

結局どちらもうまくいかないことになりがちなんです。

私が見てみたいのは、使命感のある企業です。

儲けを出すことを超えて、何か使命を抱いているような企業。

もし誰もやらないんなら、自分たちがやるしかない、みたいな使命をね。

 

若い起業家が仕事のどこに目を向けなければならないかに関しては、

ティールはサーマンの研究を援用しています。

ハーバード・ビジネス・スクールの学生が、成功の機会などないに等しいような時に、

どのように実業界に参入したかという、歴史的分析研究です。

 

この点に関する私のテーゼは、挑戦ということです。

ここに自分の人生で何を得ようとしているのか、しっかり考え抜いたこともない気楽な連中がいる。

二年後、こうした連中はみな、なんとかして最後の波をつかまえようとする。

でも、波はすでにいってしまっているんです。

 

そうして最後にティールはこのように締めくくりました。

 

あなたがやらなければならないのは、次の波に向けて漕ぎだすことなんです。

 

ハーバード・ガゼット


元記事:http://news.harvard.edu/gazette/story/2014/09/catching-the-next-wave/

(翻訳:服部聡子)

 

 

なぜブランソンは航空会社を設立したのか?

ヴァージン・グループの創設者にして会長、 常にさまざまな話題をふりまくサー・リチャード・ブランソン。
そんな彼がヴァージン・アトランティック航空を設立したきっかけは、意外な出来事でした。
 
30年前、リチャード・ブランソンはヴァージン・アトランティック航空を設立しました。そもそもどうして彼は航空産業に参入しようと決意したのでしょうか?
 
HP Matterが作成したビデオの中で、ブランソンはその理由を明らかにしています。
 
ことの始まりは、英領ヴァージン諸島に行く途中、 プエルトリコで立ち往生したことです。航空会社は、乗客数が足りないからフライトをキャンセルする、 と言ってきたのです。
 
「ちょうど私は美しい女性をそこに待たせていたんです。飛行機を一機、借りることに決めました。ついでに黒板も借りて、ジョークのつもりで『ヴァージン・エアライン』と書いたんです。片道39ドル、ともね。そうして同じように予約を取り消しにされた乗客の間を回ったんです。するとどうでしょう、私の1号機は満席になったんです」
 
以来リチャードは、乗客のことを考えない航空会社に心底うんざりするようになり、このままではいけないと思ったのでした。そこでボーイング社に電話をかけ、 747sが売りに出ていないかどうか尋ねてみたのです。新しい航空会社はこのようないきさつで誕生しました。
 
ブランソンは言います。
「私たちは、競合する航空会社とはちがう、何か特別なものを始めようと思っていました」
 
ヴァージン航空は、いまなお「特別」です。何時間にもおよぶフライトで、乗客に窮屈な思いをさせる航空会社が多い中で、ヴァージン航空はもっと快適な旅を提供しています。

 

1991年、すべてのクラスで、チャンネルの選択が可能な ひとり向けのTVスクリーンを提供したのは、

ヴァージン・アトランティックが最初でした。

 

もともとは娯楽産業への参入からスタートしたリチャードでしたが、

航空産業に参入していったのも運命だったのかもしれません。

 

母親のイブは1940年代、スチュワーデスだったし、

彼の叔父は第二次世界大戦中スピットファイアに乗っており、

撃墜されたものの、無事、生還を遂げたのです。

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―Virgin Travel


元記事:http://bit.ly/1MMFyx4

(翻訳:服部聡子)

 

ハーバードは日本人の入学を待っている

 

 

ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の学部長、ニティン・ノーリアは、

「日本からもっと多くのMBA志望者が現れてほしい」

とウォール・ストリート・ジャーナルで語りました。

 

ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューでノーリアは、

日本からの受験生が減少しているのは、

日本がここ数年、内向きにな傾向が強まっているからではないかと考えているようです。

 

これまで毎年900人のHBSの学生のうち、日本人学生は30-40人、占めていました。

私たちが懸念するのは、現在それが4-5人まで落ちていることです。

アジア地域の中で、減少しているのは、日本だけなのです。

1980年代、日本人は世界経済に大きく関与していました。

ところが日本はいま、当時より内向的になっています。

日本は世界第三位の経済大国なのですから、

私たちにとって、日本と手を携える方法を見つけていくことは、重要です。

 

HBSの外国人学生の割合は、かつてはヨーロッパからの留学生が中心でしたが、

ヨーロッパに数多くのビジネススクールが設立されたことで減少し、

ラテン・アメリカからの留学生が増加しました。

さらに、近年はアジアからの学生が爆発的に増えています。

 

  日本人のGMAT受験生は減ってはいないが…

 

現在では、ハーバード・ビジネス・スクールでは、

アジアからの留学生がどこよりも多く、14%を占めていますが、

ほとんどが中国とインドです。

それも、以前は香港からの留学生がほとんどだったのですが、

現在は、中国本土からの留学生が3/4を占めるまでになりました。

 

一方日本では、MBAの学力試験であるGMATの受験者数は、

過去五年間、比較的安定しています。

2014年6月30日に行われたGMATでは、2,612人の日本人が試験に臨みました。

2010年の2,680人にくらべ、わずかに減少しています。

 

このテストを運営しているGMACによると、日本の志願者は、

シンガポールや香港、イギリスやフランスへの出願が増加している、とのことです。

また、2012年の日本人受験者のうち、

アメリカの大学に出願した受験者の平均スコアは67%で、

初めて70%を割り込みました。

2008年に日本からアメリカの大学に出願した受験者のスコアは77%です。

さらにノーリアは、

「エネルギー産業からの志願者が、突然、飛躍的に増加したことには驚きました」

とも語っています。

 

Photo:harvard business school - professor joe lassiter By:Christopher.Michel

 

  授業料値上げを上回る奨学金の伸び

 

ノーリア学部長は、ハーバード・ビジネス・スクールの奨学金制度は、

年々、充実の度合いを増していると言っています。

 

「授業料の4%上昇に対し、5-7%、奨学金を増やすことで対応しています」

 

いまでは授業料の平均28%が奨学金でまかなわれており、

昨年度は約半数の学生が、なんらかの奨学金を受けました。

20年前にはそのようなことは考えられなかったそうです。

 

 HBSが直面するもの

 

HBSにとっての最大の試練は何か、という問いに対して、

ノーリアは、多くの若者が自分の前途を築く上で、

MBAを必要としなくなっていることである、と答えました。

 

現在アメリカでは、2年間のMBAプログラムを希望する学生の割合が、

2000年から20%も低下しているということです。

 

「なによりも大きな問題は、多くの人々が、

ビジネススクールに行く必要があるのだろうか、と考えるようになっていることです」

とノーリアは言います。

 

「ビジネススクールの黄金時代は1950年から2000年にかけてでした。

当時は、キャリアを積むためには、MBAを取った方がいい、と

あたりまえのように考えられていたのです。

その面でのMBAの必要性は、変化しています」

けれども、自らもインド出身者であるノーリア学部長は、

インドの状況が将来の動向を示しているかもしれない、と指摘します。

 

「インドでは、この間、ビジネススクールが急増し、1,000校もが開校しました。

ところがその結果、人々はMBAの学位を取るだけでは十分ではない、

教育の質こそが重要だ、と考えるようになり、統廃合が進んだのです。

同じことがアメリカでもおこりつつあります。

人々は、教育の質こと重要であると気づくようになってきたのです」

 


元記事: http://bit.ly/1zIqWsb

 

(翻訳: 服部聡子)

シェアされるコンテンツを作る12の方法

by レベッカ・ラディス

 

ネット上でのあなたの最大の武器は、コンテンツです。

コンテンツはクライアントを引きつけるだけでなく、潜在顧客に行動をうながします。

けれどもオーディエンスを引きつけ、シェアしたくなるような、魅力的なコンテンツを作成しようと思っても、

どうしたらよいかわからないのではないでしょうか。

あなたがすでにブログやソーシャルメディアのサイトで文章を書いているかどうかによらず、

以下にあげることは、革新的で、シェアしてもらえるような、

魅力的なコンテンツを書くのに役立つでしょう。

 

シェアしてもらえるコンテンツを書くには

 1. あなたの価値と意図をはっきりさせる

 

ホームページの広告文、ネット外のマーケティングにかかわらず、

コンテンツを通じて、あなたが提供している価値と意図は、

単に潜在顧客に向けての教育的効果だけでなく、すばやい決断を助ける効果があります。

 

『決断の法則―人はどのようにして意思決定するのか?』の著者、ゲイリー・クラインは、

同書の中で、意図を明確に伝えることは、意志決定の障害となるものを取り除くことによって、

人々に「離陸」するのに必要な情報で武装させることだ、と言っています。

 

 2. 競争相手を分析する

 

あなたのビジネスのことを書くときは、

まず、あなたの仕事上の競争相手は何を書いているか、読んでおいてください。

サイトを訪問して、もっともシェアされているコンテンツを分析します。

どこがうまくいっていて、どこがそうでないか?

もしあなたなら、どこを改善できますか?

 

 3. 理想的な読者を思い描く

 

あなたに最適な読者とはいったいどのような人か、

また、読者はどんなコンテンツに価値を感じているかを知っていれば、

コンテンツ作りも順調に進んでいきます。

 

まず、顧客イメージを作るところから始めてみましょう。

あなたの理想的な読者はどんな人か、職業は何か、どうしてあなたの製品やサービスが必要なのか、

書き出してみてください。

 

Photo:Lost in Thought ByJohn-Morgan

 

 4. 効果的な画像をおく

 

画像は、読者をあなたのコンテンツに引きつける、とてもよい方法です。

おもしろいものでも、ドラマティックなものでも、パッと目を引くようなものであってもいいのですが、

あなたの仕事やブランドの印象や雰囲気に、かならずマッチするようにしてください。

 

さらに、イメージを通じてあなたの会社の物語を伝えるロゴ・デザインを特注し、

あなたのブログに付け加えることによって、広めてください。

そうしてピンタレストやグーグル・プラス、フェイスブックやツイッターにも

その画像を固定してください。

 

5. 魅力的なタイトルをつける

 

読者に「クリックしてホームページにアクセスしてください」

「読んでください」 「リツィートしてください」「シェアしてください」

と呼びかけるのが、記事のタイトルです。

 

クリエイティブでありながら、同時にかならずエンド・ユーザーのことを、念頭に置いてください。

あなたの潜在顧客がアクセスするのはどんなコンテンツか、よく理解した上で、

その情報に沿ったタイトルを作ります。

 

 6. しっかりした構成のコンテンツを組み立てる

 

あなたが投稿するのが、ブログであろうと、ほかのソーシャルメディアであろうと、

しっかりした構成は、きわめて重要です。

投稿を読み直してみてください。

読みやすさはどうでしたか?

 

ブログにリストを導入することを検討してみてください。

リストがあると、スキャンしやすくなるし、

インターネットを巡回しているロボットが、あなたのコンテンツをすばやくスキャンする助けにもなります。

 

ソーシャルメディアの投稿では、なるべく短く、けれどもおもしろいものを心がけてください。

質問したり、ある話題に関してのあなたの意見を提供したりして、

会話のきっかけを作ってください。

 

Photo:Containter Structure 1 By:hometownzero

 

 7. パーソナルブランドを確立するために、充実したつながりを作る

 

コンテンツの作成を始める前に、情報をシェアしてもらうためには、

人間同士のつながりが、根幹に関わっていることを覚えておいてください。

健全なつながりを築くことで、信頼を重ねれば、あなたにも、あなたのコンテンツにも、人は集まってきます。

 

 8. サクセス・ストーリーをシェアする

 

あらゆるビジネスには、物語があります。

あなたの物語は、どのようなものですか?

あなたの物語を、現実でも、またどんな方法でも、伝えていってください。

 

物語は、読者と潜在顧客をあなたの会社に結びつけます。

彼らにあなたの会社のことを知ってもらい、覚えてもらいましょう。

 

 9. 調子を変える

 

ソーシャルサイトに単調な投稿を続けてばかりだと、

あなたのターゲットとするマーケットにも、すぐに飽きられてしまいます。

ブログポストの調子を変え、イメージや引用句、質問、フィードバックなど、

会話の価値を高めるものならどんな付随的な内容でも、投稿の中にはさんでいってください。

 

このように考えてみてはどうでしょう。

もし誰かと対面して会話しているなら、あなたはあなたの製品とサービスを勧める話ばかりはしないでしょう?

相手の話に耳を傾け、返事もするでしょう。

オンラインでもそれは同じことなのです。

 

Photo:The Peace of Wild Things By:Muffet

 

 10. 成功するための計画を立てる

 

コンテンツ作成を、あなたの毎日のマーケティング戦略の一部としてください。

 

編集カレンダーを作成し、トピックスや記事のアイデア、ソーシャルメディアへの投稿をリストにして、

あなたの作業を焦点化し、継続していきましょう。

 

 11. 報道価値のあるコンテンツをシェアする

 

あなたの業界や分野の最新ニュースは、つねに更新しておきましょう。

関連記事を添えて、コンテンツをタイムリーなものにしていきます。

最新の記事を読んだとき、あなたはどのように感じましたか?

あなたがそれを取り上げようと思った、カギになるものは何ですか?

また、どうしてあなたのオーディエンスはそれを知っていた方が良いのですか?

 

ソーシャルメディアでシェアする場合は、内容と同様、全体のつながりが重要です。

 

 12. メールリストを作成する

 

メールリストの作成は、本年のあなたのソーシャルメディアとコンテンツ戦略の最重要課題です。

加入者名簿を使ってオーディエンスを引き留め、

あなたのブログ投稿や、キャンペーン、製品を勧めてください。

そうやって加入者をあなたのコンテンツに向かわせることは、

読者数とトラフィック増やすだけでなく、

トップオブマインド(※たとえば「炭酸飲料」と聞いて、消費者が最初に頭に浮かぶ製品のこと)となり、

シェアを押し上げることにつながります。

 

著者:レベッカ・ラディス(ソーシャルメディア戦略家)


元記事:http://rebekahradice.com/create-content-that-gets-shared/

(翻訳:服部聡子)

 

 

仕事が悪夢に変わる理由

by ロバート・ライシュ

 


2014年、オックスフォード大学より出された「10年後多くの職業がコンピュータに取って替わられ、

現在の仕事は半減する」という予測は、大きな衝撃を巻き起こしました。

コンピューターに職を奪われた人間はどうしたら良いのか?

そんな危機感に対する答えのひとつが、「共有型経済(またはシェアリング・エコノミー)」です。

インターネットを活用して、車や部屋の所有者が、それを求めている人と直接交渉し、空いた施設や時間を活用しよう。

「所有」→「共有」へと意識転換を図ることによって、仕事が減少しても人々が幸せになれるような社会を築こう……

そうした理想を掲げる「共有型経済」に対し、本稿の著者、ライシュは厳しい現実をつきつけています。


 

「共有型」経済は残りカスの共有

パターンが定まった仕事はプログラムされたロボットが何でもこなし、

利益の全てはロボットの持ち主が吸い上げる、

そんな経済が支配する世界に住むというのはどんなものでしょうか?
そのような世界で人間が取り組むのは、パターンが定まっておらず予測がしにくい種類の仕事です。

雑用、急場しのぎ、使い走りや修理、運転手や配送係などなど。

こまごましていますが急に、そして時と場合を問わず必要になるものです。

稼ぎは、かき集めても食べていくので精一杯といったところでしょうか。

 
覚悟はできていますか?

私たちが全速力で突っ走る先に待つのは、こんな世界に他ならないのです。
配車サービスのウーバーの運転手、即時配達を謳うインスタカートの利用者、

空き部屋を貸し出すエアビーアンドビーの部屋の貸主がこういった人々にあたります。

仕事仲介サービスのタスクラビットで仕事を探す人、アップカウンセルのオンデマンド弁護士、

そしてヘルスタップのオンライン・ドクターも含めていいでしょう。
このような人たちのことをメカニカル・タークと言います。
やんわりと言えば、「共有型」経済ということになります。

ですがより正確には、「残りカス共有型」経済と言うべきでしょう。
ほぼどんな仕事でも、様々なタスクに切り分けて必要なときだけ外注に任せるということが、

最新のソフトウェア技術をもってすれば可能です。

報酬額はその仕事の、そのときどきの需給バランスで決まります。

また、労働力を求める顧客側と供給する労働者側のマッチングはオンラインで行われます。

労働者は、仕事の質と信頼度の良し悪しについて評価付けされます。
利益の大方はソフトウェアを所有する企業に行き、

オンデマンド労働者に押し付けられるのは、残りカスばかりとなるのです。
アマゾンの「メカニカル・ターク」を見てみましょう。

アマゾンは「人間の知性が活かせる仕事のための労働マーケット」とうたっています。

 

ですが実際のところは、インターネット求人掲示板なのですが、

頭など使う余地もない退屈極まりない小口の雑用仕事を、

極小の報酬で募集するものばかりなのです。

 

確かに、コンピューターにはこれらの仕事をこなすことはできません。

どの仕事にも最低限ではありますが、一定の判断能力が求められるからです。

そこで人間の出番となり、雀の涙ほどの報酬のために労働するのです。

例えば、3ドルで製品の説明書を書くとか、

30セントで何枚かある写真のうちからベストのものを選ぶとか、

50セントで手書きの文字を解読するとかそのような仕事です。
取引が成立するたびに、アマゾンが分け前をごっそり持っていきます。

30年前に、正社員のものだった仕事が

企業側による判断で、契約社員、個人事業主、

フリーランスやコンサルタントに割り振られるようになり始めましたが、

現代の我々が直面する現状は、これの当然の帰結と言えます。
これは、リスクや不確定要素を労働者に課すものだったのです。

計画以上の時間を要する可能性があり、想定外のストレスを生むかもしれない仕事を、

労働者側に負わせるためのものだったのです。
さらには最低賃金基準、労働時間、労働条件を規定する労働法を回避するためのものでした。

労働法こそは、労働者が団結し賃金や手当の向上のために交渉する根拠となっていのです。
ですが、現代のオンデマンド労働はリスクの一切を労働者側に押し付けます。

あらゆる最低基準を完全にないがしろにするものなのです。
結果として、オンデマンド労働は19世紀的な出来高賃金制の労働への逆行と言えます。

19世紀、労働者たちは力を削がれ、法的権利もなく、あらゆるリスクを負わされて、

無給とも言えるような状態で働きづめに働いていたのです。

Uber in Beijing
ウーバーの運転手は自分自身の車を使用し、必要となれば自分の保険を使い、

働きたいだけあるいは働けるだけ働き、ウーバーにはたんまりと上前を献上します。

一方、労働者の安全だとか社会保証とかは、

ウーバーに言わせれば「雇用者ではないから責任はない」ということになるのです。
アマゾンのメカニカル・タークの利用者たちの報酬は、小銭と言ってしまえるほどの金額です。

誇張ではありません。

最低賃金?

残業代は5割り増し?

アマゾンは、売り手と買い手を結びつけているだけで、それらの責任は負わないと言っているのです。
オンデマンド労働を擁護する人たちは、そのフレキシブルであることを強調します。

労働者は好きな時間に自分の都合で働くことができ、

カレンダーの閑散時を有効利用できるというのです。
「人々が閑散時をマネタイズ出来るようになっている」と、

ニューヨーク大学ビジネススクールのアルン・サンダララジャン教授は言います。
ですが、この議論では、「閑散時」と本来の休息のための時間が混同されています。
1日24時間に変わりはありません。

「閑散時」が労働時間に変わり、その労働時間が、先が読みにくく低賃金のものだった場合、

労働者個人の人間関係や家族、健康は影響を受けはしないでしょうか?

Day 313 / 365 - BBC iPlayer
オンデマンド労働を支持する人は、また、最近の研究結果を持ち出して見せます。

ウーバーが行った研究では、ウーバーの労働者たちは「幸せである」という結果が出ているというのです。
では、仕事の賃金がより高く時間が安定していたなら、

労働者たちの幸福度はさらに上がりはしないでしょうか?
中間層所得が30年にわたって伸び悩み、

経済的収益はほぼ全てがトップ層に吸い上げられてしまうような経済においては、

手頃な副収入を得られる機会は実に魅力的に映るでしょう。
ですが、だからといってその副業が、実際に好条件であることを意味する訳ではありません。

本業の方がどれだけ悪条件であったかを示すに過ぎないのです。
擁護派はさらに指摘します。

オンデマンド労働が拡大するにしたがって、労働者たちは互いに集まってギルド的な集団を形成し、

グループ保険や社会保障を購入するようになるだろうというのです。
ですが、注目すべきは、オンデマンド労働者たちがその交渉力を

報酬改善や労働時間の安定のために用いていないことです。

そうなると、これは労働組合を意味し、

ウーバーやアマゾンとその他のオンデマンド企業は歓迎しないでしょう。
経済学者の中には、人々の労働力の効率的利用に資するということで、

オンデマンド労働を賞賛する人たちもいます。
しかし、我々が向き合う最大の経済学的課題は、人々の効率的利用などではありません。

仕事と、仕事から得られる利益の適切な配分こそが課題なのです。
この適正配分という物差しの上では、残りカス共有型経済は、

私たちを一気に退化せしめているのです。

 

著者:Robert Reich 経済学者、文筆家

おもな著書に『ザ・ワーク・オブ・ネーションズ21世紀資本主義のイメージ』


元記事:http://www.alternet.org/robert-reich-why-work-turning-nightmare

(翻訳:角田 健)