ピッチ(売り込み)の技術
by ガイ・カワサキ
元記事:https://www.linkedin.com/pulse/art-pitch-guy-kawasaki
(※この記事の翻訳は著者からの承諾を得てあります)
「我思う、ゆえに我あり」という言葉は忘れてください。
起業家にふさわしいのは、「我売り込む、ゆえに我あり」です。
売り込みは、お金を得るためだけにするのではありません。
それは合意を得るためであり、その合意こそがセールスやパートナーシップ、新規雇用などの良い結果をもたらすのです。
ここでは良い売り込みを構成する、重要な要素を紹介しましょう。
準備
ミーティングの席に着く前に、出席者全員の経歴やソーシャルメディアのアカウントを調べておきましょう。
その上で、あなたのプロジェクターを持ちこみます。
それからプレゼンテーションをロードした2台のノートパソコン、VGAアダプタも2つ、プレゼンテーションのコピーを保存したUSB、
さらにそのどれもが動かない場合に備えて、プレゼンテーションのプリントアウトを用意します。
ステージをセットする
ミーティングが始まると同時に、あなたはこれから行う売り込みの舞台を作っておかなければなりません。
最初に聞くべきことは
「お時間をどれほどいただけますか?」
ということです。
それから
「これからお伝えさせていただくことに関して重要と思われることがございましたら、3つほどあげていただけませんか」
とたずねます。
それから
「これから手短にプレゼンテーションをさせていただきますが、最後にご質問をいただけますでしょうか」
とお願いします。
F18のように
起業家は、「売り込み」という名の物語の第一章は、自伝から始めなければならないと思いこんでいます。
個人的な話をすれば、このチームのすばらしさが聞き手に伝わるものと思われているからです。
き手の側は、このスタートアップはいったい何をしているところなんだ? と首をかしげているというのに。
飛行機に喩えるなら、こうしたプレゼンテーションは、
ボーイング747が飛び立つ前に3キロほど走っているようなものです。
そうではなく、航空母艦の100メートル足らずのデッキから、一瞬で飛び立つF18をあなたはお手本にしなければなりません。
10-20-30 ルールを守る
プレゼンテーションの 10-20-30 ルールとは、
10枚のスライドを、20分以内に、30ポイントのフォントサイズで、というものです。
10枚のスライドに収めようと思えば、あなたは要点をぎりぎりまで絞りこまなければなりません。
20分間というのは、そもそもミーティングは開始が遅れがちになるものだし、
さらにウィンドウズなどを使っていた日には、プロジェクターが動くまでに40分かかるかもしれないからです……。
また、30ポイントのフォントサイズを使っていれば、
あなたは売り込みを棒読みするのではなく、語って聞かせることができます。
話すのはひとり
起業家の多くは、投資家が投資するのはチームに対してである、
だから売り込みでもチームワークを発揮しなければならない、と考えています。
そんな思い込みがあるものだから、4、5人の社員がプレゼンに参加して、それぞれが分担して話すようなことをするのです。
誰もがせりふのある役をもらえるという方針は、学校の劇ならすばらしいものでしょう。
ですが、売り込みは、学校の劇ではありません。
小さな人に答える
プレゼンテーションをおこなっている人の肩に、小さな人がすわっている、と想像してみてください。
プレゼンターが何か言うたび、小さな人がぼそぼそと言います。
「それがどうした?」
あなたも自分の肩にいる小さな人の言葉に耳を傾けなければなりません。
というのも、あなたの話していることの重要性は自明のものではないし、
ましてや万人をうならせるようなものでもないからです。
ですから意見を述べるたびに、小さな人の投げかける 「それがどうした?」 を思い浮かべてください。
売り込みはひんぱんに
慣れることによって、満足のいくものができるようになります。
あなたが自分の売り込みに慣れ、落ち着いてできるようになれば、大きな効果が期待できるでしょう。
慣れるための早道はありません。
何度も売り込みをおこなうしかないのです。
口を閉じ、メモを取り、反芻する
メモを取っている姿は、「私はあなたは頭の良い人だと思っている」ということを訴えています。
「あなたの話は、書き留める価値がある。ぜひ勉強したいです。私は勤勉です」と。
メモを取ることには、記録した情報の価値に加えて、こうしたメリットもあるのです。
さらにミーティングの終わりに、あなたの聞いたことを要約し、
自分の得た情報が正しいかどうか確認するために、それを相手にも聞かせてください。
その後、翌日までに、売り込みを通して取り交わした約束、たとえば追加情報の提供などを、すべて果たしてください。
リライトする
ひとつの売り込みを5回ほど重ねたあとは、あなたはそのプレゼンテーションを捨て、白紙の状態から再スタートを切ってください。
この売り込み“version 2.0”では、それまでにあなたが得た知識を、パッチワークのようにはぎあわせるのではなく、
認識の全体構造としてのゲシュタルトに反映させていってください。
元記事:https://www.linkedin.com/pulse/art-pitch-guy-kawasaki
(翻訳:服部聡子)