デモンストレーションの神になるには

by ガイ・カワサキ
元記事:http://linkd.in/1INjpc3
(※著者の承諾を得て翻訳しています)

スタートアップの経営者たちが集まって、自社製品の6分間のデモンストレーションを行う、というイベントが、年に数回行われます。
集まった観衆は、ベンチャー・キャピタリストやアナリスト、ジャーナリストといった人々です。
このイベントの名前は、必然的に「デモ」

これはすばらしいイベントです。
とりわけあなたが今、まさにダンスが進行していることに気がついているならば。
なにしろ起業する人々は、ベンチャー・キャピタルなど不要だといわんばかりにふるまい、
ベンチャー・キャピタリストの側も、スタートアップなど不要だとばかりにふるまっているのですから。
(売春宿でお上品なふりをしてみせるみたいに)。

この記事は、「デモ」のステージであれ、どこであれ、しっかりしたデモンストレーションをおこないたいと考える人に向けたものです。

デモンストレーションは、製品を市場に出し、資金を集め、販売し、報道機関を集め、新入社員を雇うための、重要なスキルです。
ですから、あなたも熟達する必要があります。

 デモンストレーションの価値があるものを作成しよう

デモンストレーションの神になることを望むなら、まず、しっかりした製品を作成しなければなりません。
デモンストレーションはすばらしいPRの機会ではありますが、準備が整っているときに利用するものであって、
イベントがあるから、というだけで利用すべきではないのです。
あなたの商品がありきたりなものであっても、デモンストレーションさえしなければ、
ぱっとしないものだと知っているのはあなただけです。
けれども、デモンストレーションをおこなえば、世界中がそのことを知ってしまうのです。

 すべてのものを2つずつ持ちこむ

商品だけでなく、そのコピーも置く場所は用意されています。
そうして機材も。
ですからステージに立つ前の晩、壊れたときのためにふたつ、ものによっては3つ、
コンピューターや携帯、サムドライブなど、デモンストレーションのために必要なものは何でも、持ちこんでおきましょう。

 前もって準備する

デモンストレーションの最中に、もたもたするようなこと、
たとえばハードディスクのフォルダやファイルを探したりするようなことがあってはなりません。
6分間のデモンストレーションのために準備する時間は、何週間もあります。
前もってすべての準備が整っていなければ、あなたが間抜けに見えるだけです。

 コントロールできない要因を排除する

デモンストレーションの最中に、インターネットに接続していることは、当然のことと考えて良いでしょうか?
答えは、イエス、です。
でも、いずれにせよ、万一に備えておかなければなりません。
もちろんホテルでインターネットは使えますが、何百という人が一度に使ったらどうなるでしょう?
ローカルサーバーを使って、あなたのサーバーにアクセスできるかどうか、試しておいた方が良いでしょう。

別に実システムを披露する必要はありません。
あくまでこれはデモンストレーションなのですから。

 「衝撃と畏怖」戦略で始める

私は友人であり、『偉大なデモ!:驚くほどすばらしいソフトウェア デモンストレーションを創造し、 実行する方法』の著者であるピーター・コハンから、この言葉を借りました。

コハンは(そうして私も賛同しますが)1分間で観衆の心をつかまなければならない、といいます。
だんだん盛り上げていく組み立て方では駄目だと。
「衝撃と畏怖」、すなわち、あなたの商品の、なによりもすばらしい部分からスタートするのです。
目標は、最初にみんなの心を興奮させることです。

 ジョークはカットして

自分のジョークはおもしろいだろうか、と考えるようなジョークは、おもしろくありません。
デモンストレーションを、ジョークで盛り上げる人など、ほとんどいないのです。
逆に、ジョークを言って、受けなかったら?
信頼と、勢いを失ってしまうでしょう。
受けたときの利点より、マイナス面の方がはるかに多いのです。

 ひとりでやろう

デモンストレーションは、ひとりきりでやった方が、効果があります。
ふたりの共同創設者が一緒にやれば、それだけ強力に映るのでは、と思うかもしれませんし、
世間にも、どれだけふたりがうまくやっているか、示すことができる、とも思っているかもしれません。
けれども、ひとりの人間がデモンストレーションをおこなうのさえ、むずかしいのです。
ふたりの人間が、交互にデモンストレーションをやるとなると、困難さは4倍になります。
デュエットが好きなら、カラオケ・バーに行ってください。

 業界用語は使わない

シンプルな言葉遣いで簡潔に話す能力は、何より望ましいものです。
もしかしたらあなたは、世界最高のソフトウェア製品を世に送り出そうとしている起業家かもしれません。
けれども、あなたが夢にまで見たベンチャー・キャピタル、コンシューマ・デバイスのパートナーは観客席にいるのです。
もし彼があなたのデモンストレーションを理解できなければ、
彼がオフィスに戻って、同僚に話すことはないでしょう。
オーディエンスには、耳で聞くものではなく、目で見るものを通して印象づける必要があります。

 質問は最後に出してもらおう

「デモ」には、質問のための時間はありません ― ありがたいことに。
けれどもどんなときでも、質問は最後に出してもらうようにしてください。
というのも、オーディエンスが何を聞いてくるか、あなたにはわからないからです。
彼らの質問があまりに深く、あなたは戻って来られなくなるかもしれません。

 最後は感嘆符で終わろう

始まりは、高い調子で。
一度観衆を驚かせたら、いったん下がって、彼らに「どのように」したらいいかを見せます。
「何が」すばらしいのか、だけでなく、「どのように」を示すことによって、
ごく普通の人間が、自分たちにもそれができるということを理解するようになるのです。
そうして、最後はまた高い調子で閉めます。
これはスティーブ・ジョブズの基調での巧妙なやり方でした。
彼はいつも 「もうひとつ( one more thing )」と、巧みに引きつけたのです。

私はこのアドバイスを何百人というスタートアップにしてきました。
そうして、何十万人もの人々が、ネット上でこのアドバイスを読んできました。
けれども、デモンストレーションの多くは、未だにつまらないものです。
それはおそらく、人々がこのアドバイスは無知な大衆に当てはまる、と考えているからでしょう。
つぎの上昇カーブに飛び乗ることのできない、パラダイムシフトを引き起こすこともない、
自分たちのように特許出願中の製品も持っていない、
自分たちのようにプレゼンの才能もない連中に当てはまるのだ、と。

もしかしたら、あなたもそう考えているひとりかもしれません。
だとしたら、あなたは間違っています。
あなたも、このアドバイスの対象となる読者なのです。
あなたもこれから苦労して学んでいくところなのです。

このコラムはガイ・カワサキの最新刊『スタートの技術 2.0』(原題)の一部分を元にしたものです。

ご一読後、飛躍されんことを。

 

 

 


元記事:http://linkd.in/1INjpc3

(翻訳:服部聡子)