心理学を利用してマーケティングを改善する5つの方法
by ジェレミー・エレンズ
心理学は、マーケティング戦略のあらゆる局面で活用することができますが、
かならずしも成功に結びつくわけではありません。
このコラムはコンバージョンの心理学を応用したものです。
ここでの内容をあなたのビジネスにも活用し、
ランディングページのコンバージョン率を最適化し、
幸せな顧客を創出していきましょう。
1. 過去の経験の法則
あなたの製品やサービスに対して、潜在顧客がどのように反応するかは、
あなたのブランドが、顧客ひとりひとりの目線にかなうかどうかにかかっています。
あなたのブランドを訪れた潜在顧客が最初にすることは、
顧客自身の過去の経験とあなたの製品を比較することです。
過去の経験の法則が教えてくれるのは、
潜在顧客の過去の経験が(それがあなたのビジネスにどう関連していようと)
現在の経験を補強するということです。
マーケターの主流が、この法則を捨て去り、
潜在顧客がいま目にしているものをいっそう引き立たせようと、
自社製品やサービスを差別化しようとしていますが、
それはかならずしも正しいとは限りません。
Fab.com.でのケース・スタディを見てみましょう。
Fab.com は、インターネットによる通信販売をおこなっている小売業者ですが、
ウェブサイト上で、ユニークな「カートに入れる」ボタンの実験をおこないました。
上記の写真では、CTA(※行動を誘発するもの)ボタンの画像と、
そこに記された文字が異なっています。
左のカートが描かれたCTAボタンがオリジナルのものです。
右のバリエーション2は、オリジナルのものにくらべて
CTR(※広告クリック率)の上昇は、15%にとどまりましたが、
中央のバリエーション1はCTRが49%も上昇しました。
これらの結果は、オリジナルのCTAボタンが、洗練されたデザインにもかかわらず、
CTAとしては十分に役割を果たしていなかったことを物語っています。
つまり、消費者は精算するときのボタンに
「カートに入れる」と書いてあることに慣れているので、
そうではないものを見ると、とまどってしまうのです。
顧客の予想とかみ合っていないものは、
仮にあなたが従来のものよりもずっと優れていると考えたとしても、
CTRやコンバージョン率を下げるかもしれません。
これは、行動心理学とデザインが衝突した一例といえるでしょう。
マーケティング戦略を立てる上で、それぞれに異なった心理学的な傾向と、
それが演じる役割を理解するのは、簡単なことではありません。
消費者が異なれば、特徴も異なります。
けれども、上記のようなスプリットテストをおこなうことによって、
徐々にターゲットとするマーケットの特徴を、はっきりと理解できるようになり、
変化がどのようにパフォーマンスに影響を与えるか、
予測できるようになるでしょう。
2. 幸福と痛みの心理学
今日、マーケターの間では、まず、なにを置いても顧客、ということが常識となっています。
顧客次第であることを示す、もっとも簡単な方法のひとつは、2人称視点で物語ることにあります。
このランディングページは、すべて “you”、「あなた」を使っています。
文章はふたつとも、直接的な対象である「あなた」に呼びかけていて、
それによってオーディエンスは、
「このビジネスは、自分の幸福や、自分が下す選択、
自分がどのような気持になるかを気にかけてくれている」
という感覚が得られ、安心できるのです。
潜在顧客に幸せな気分になってもらう要素をリストにすれば、膨大なものになるでしょう。
たとえば、笑っている人々やかわいい動物の写真、明るい色や、顧客からの推薦文など。
けれどもなによりも効果的なのは、潜在顧客が求めているものを盛り込むより、
避けたがっていることを盛り込むことです。
この考え方は、痛みの心理学の
「喜びの量は、あらゆる痛みを取り除いたときに、極限に達する」
という考え方を援用しています。
これは何も、ランディングページで悲惨な画像を宣伝し、
潜在顧客を怖がらせようという意味ではありません。
以下の例を見てください。
▲ 最初に目に飛び込むところに「あご」と大きく書かれ、
それが二重あごのことであり、「二重あごを隠したいですか?」と書いてあることがわかるようになっている
このランディングページは、多くの人が直面している、コンプレックスの元凶に直接訴えかけるものですが、
同時に、それを取り除くという解決方法をも提示しています。
そうすることによって、潜在顧客の置かれている状況に共感していることを示し、
助けの手をさしのべ、関係を築いていくのです。
「痛むところを叩け!」
というのは、このアプローチを説明するのに最適の用語ではないかもしれませんが、
ふり返ってみて、あなたのビジネスがほんもので、
人生を変えたがっている人に、真に効果的な解決を提供できるものであるなら、
あなたのオーディエンスの自意識に訴えかけることは、
少しも不道徳なことではありません。
3. 費用対効果分析の心理学
そのキツネは狩るだけの価値があるだろうか?
こう考えている人の内部に起こるプロセスを明らかにするのが、費用対効果分析です。
言葉を換えれば、あなたが提供しているもの、
たとえば電子書籍やオンラインセミナー、
その他のリード・マグネット(※マーケターが潜在顧客のメールアドレスと引き替えに提供するものの総称)
を手に入れることは、
潜在顧客がやらなければならないこと、
たとえばメールアドレスを提供したり、アンケートに答えたりすることに引き合うかどうか、
ということです。
ウェルスフロント社プロダクト・デパートメントの副部長エリオット・シュムクラーは、
顧客の葛藤をなくしてあげることの重要性を訴えます。
ひとたび訪問者をあなたのサイトに呼び寄せることができれば、
あとはあなたの意図したアクションを訪問者に取ってもらえるように、
できるだけシンプルにした方がいい、と説明しています。
すなわち、CTAボタンは大きくし、
メール受け取り承諾フォームは小さく、
精算プロセスのページや、記入フォームのページは少なく等々
ということです。
そうすることで、あなたの顧客は、購入までの精神的な負担を減らすことができます。
たとえば、メール受け取り承諾フォームのオプションの欄さえ、
どれほどの負担を強いているか、以下の例が示しています。
左のオリジナルのフォームにあるオプションの「会社名」の欄を
右は削除しただけで、その結果、1200万ドルの増収をもたらしました。
たったひとつの欄を削除したことが、8桁の収益をもたらした…
これは事実なのです。
4. 同盟者を集める
成功した企業の中には、共通の「敵」を作ることで、
顧客との連帯感を植えつけているところがあります。
非営利団体や人権キャンペーンが発する熱情を考えてみてください。
そんなふうに感じるのも、彼らが一緒に闘おうと呼びかけているからなのです。
個人向けや企業間のビジネスは、友情の感覚をはぐくむものです。
アップルとマイクロソフトのケースは、その好例でしょう。
アップルとマイクロソフトの今なお続くライバル関係は、
あまりに長きにわたっているので、
履歴書にどちらのチームに属しているか、記入する欄を設けてくれと、
どうして二社が頼まないのか、不思議なほどです。
同じことを、このコラムの冒頭でふれたミュージシャンたちもやっています。
アップルとPCは、友好的な競争心を、それぞれのフォロワーの間に醸し出してきたのです。
「チームを選ぶ」というアイデアは、愛着心をはぐくみます。
長い間、顧客を続けてくれている人は、将来的に、
勧めればワンランク上の商品でも購入してくれる
アップセリングがやりやすくなる顧客でもあるのです。
5. 明るい希望を
このコラムの最後のポイントは、
聞くだけなら簡単そうでも、実際にやってみるとそうでもないことかもしれません。
それは、オーディエンスが確かにそのとおりだ、とうなずいてくれるような
コンテンツを書く、ということです。
明るい希望を持つ、というポリシーは、
共感と楽観主義が感じ取れるコンテンツを書くことによって、具体化されます。
たとえば、どこかよその宇宙では、陸運局がコマーシャルをしているかもしれません。
「列に並んで長く待つのは、つらい経験です。
でも、私たちがお手伝いします」
ポイントは、共感し、それからあなたには解決方法がある、と安心させることです。
そうすれば、顧客の予感も、確証が与えられるのです。
もうひとつの例を以下に挙げます。
▲CEOの78%は、マーケターはROIに焦点をあてていないと考えています。
私たちはそうしています!
明るい希望を徐々に作り上げていくことの究極の目標は、
AからZまで、あなたが予測することです。
もしあなたが潜在顧客の注意を引くことができたら、
相手に感情移入し、あなたにはその解決策があることを証明するのです。
そうすれば、あなたはセールスファネルによって潜在顧客はしぼりこまれ、
買う準備ができるまでになっていきます。
売り文句など口にしなくても。
あなたの戦略のさまざまな局面で、心理学的なトリガーを実行することは、
あなたのオーディエンスが、ランディングページとやりとりする方法を
最適化してくれるでしょう。
ランディングページのコンテンツを見た顧客が、
どのように、また、どうして、あなたの予測どおりに彼らが行動するのかを理解しておくことは、
コンバージョン率をあげ、将来にわたって、顧客に持続可能な解決策を作りだす上で、
きわめて重要なことです。
著者:Jeremy Ellens(起業家・マーケター)
元記事:http://blog.hubspot.com/marketing/conversion-psychology
(翻訳:服部聡子)