人は城、人は石垣、人は堀

ジェイ・エイブラハム氏の哲学を深く考えるとき
私の頭に浮かんでくる1人の人物がいます。
それは、500年前の日本を生きた
名高い戦略家 武田信玄です。

戦国時代の日本は、それはそれは殺伐としており
親兄弟間の殺し合いすら、日常茶飯事だったとか。
あの織田信長が実の弟を討ったことは有名な話ですね。

信玄も父を追放し家督を継いではいるものの
毎年のように多額の仕送りをしていたそうです。
信玄はまた、独裁者ではなく
家臣との戦略会議をよく開いたといいます。
また、当時としては非常に珍しく
身分によらず実力のある者を進んで招き入れる
そんな 器の大きい人物でもあったとか。

そんな信玄の、数ある名言の中にこんなものがあります。
「人は城、人は石垣、人は堀、情けは見方、仇は敵なり」
信玄が家臣をとても大切にしていたことが伺える一言です。

ところで、
「なぜジェイ・エイブラハムの翻訳裏話で武田信玄なの?」と
皆さんうすうす疑問に感じていることでしょう。
いよいよ本題です。

“Team”

この一言をどう訳すか。
これに、私たちは迷ったことがあります。

「え?普通に『チーム』じゃダメなの?!」
と、多くの方が疑問に思われることでしょう。
ときにはこんな、何の専門用語でもない一言を訳すのに
私たちは多いに悩むことがあります。

それは、スタートアップを考えている人たちに向けた
動画の字幕を訳していたときのことでした。
ジェイさんは、スタートアップをする人が今後雇う人材を指して
“your team”と言ったのでした。

もちろん「チーム」という言葉は日本語でも普通に使われているけれど…
一般的に日本人が「チーム」という言葉を聞いて
頭に思い描くのは、ビジネスではなくスポーツなのでは?

そう、スラムダンク、キャプテン翼、はたまたアタックNo.1のような…
とにかくその言葉には、友情、涙、熱血、団結といったイメージが
付いて回るものではないでしょうか。

「では英語のteamは違うの?」というと
そんなことはありません。
ただし、大企業、中小企業に関わらず
また上司や部下が入り混じっているかどうかに関わらず
一緒に仕事をする仲間を“team”と呼ぶのは
ごくごく普通のことと言えます。

でも日本では違うのではないか、と私たちはふと思ったのでした。

文字が何秒かのうちに現れて消えてしまう字幕の場合には
言葉のイメージが非常に重要です。
ここで「チーム」という言葉を使って、
スラムダンクを連想させてしまって良いのか?!

ではどうすれば?
いくつかの提案がありました。
「スタッフ」「従業員」などの訳を当てようかと。
もちろんそれでも意味が通る訳にすることはできました。

が…

結局のところ私たちは、敢えて「チーム」という訳を選びました。
ジェイさんがそのとき伝えたかったのは
まさにスポーツのチームに関して私たちが連想するような
「心のつながり」だと思ったからです。

ジェイさんの卓越論からは
「人を敬って、大切にすればするほど、自分の得るものは大きくなる」という
メッセージが伝わってきます。

なんだか私は、先ほどの信玄の名言を思い出すのです。

日本企業の間でも「チーム」という言葉と考えが
もっと浸透していくといいな~と
そんな願いを込めて訳を選んだ、島藤翻訳チームでありました。

(a_washiyama)


a.washiyama

a_washiyama:
ShimaFuji IEM 翻訳チームのメンバーです。
翻訳家としてまだまだ勉強中ですが、ジェイさんのお考えを分かり易く、正確にお伝えできるよう、邁進して参ります!

意外なところで孟子と出会う

Jayさんの文章を訳していて、
You shouldn’t steal from yourself.
という文章に出くわしました。

直訳すれば、「あなたはあなた自身から盗むべきではない」ということですが、なんとなくよくわからない言葉です。前後のつながりもよくわからず、意味が取れません。

こんなふうに周りから浮いている言葉というのは、たいてい引用句の一節にちがいない、と思って検索してみました。
ビンゴ!です。
それも、なんと孟子だったのです。
有名な「惻隠の情」の箇所です。

惻隠(やさしさ)、羞悪(悪を憎む心)、辞譲(謙譲の心)、
是非の心(何が正しくて何が悪いかを判断する心)が生じぬ者は人とはいえない。
人にこの四端が存するのは、人に手足があるが如きものである。
この四端はそもそも己に備わっている。
それにも関わらず、自らそれを見失っているのは自らを害する者であると言える。
(”Readings in Classical Chinese Philosophy”からの筆者訳)

最後の
one is unable to be virtuous is to steal from oneself.
これが “steal from yourself” の原意だったのです!

つまり、自分に本来備わっているものを、自分で盗んで(無くして)はならない、ということだったんですね。以前もJayさんの文章の中に「孫子の兵法」が出てきたことがありましたが、うーん、Jayさんの博識、恐るべし、というところ。

でも、こんな風に疑問が氷解する瞬間は、とても楽しいものですね!

この孟子の一節も出てくる文章の翻訳は、今後「卓越論上級編」として、学習会やセミナーなどで皆様のお手元に届くかと思います。
そんなとき、ああ、こんな思いをしながら訳していたんだな、と(ちょっとだけ)思い出していただければ幸いです。

(ハットリサトコ)


hattori01ハットリサトコ: ShimaFuji IEM 翻訳チームに所属しております。
ジェイ・エイブラハムの『限界はあなたの頭の中にしかない』と巡り合い、
従来のビジネス書にはなかった深い思想性に強い共感を覚え、
現代の社会でもっと多くの人に読んでもらいたい! と強く思うようになりました。
難解なジェイさんの思想と取っ組み合いをしながら、
チームのみなさんと、あーでもない、こーでもない、と頭をひねる毎日です。

 

サンケイビジネスアイに掲載されました

サンケイビジネスアイさんに掲載いただきました。

 

島藤個人としてもインタビューされています。

http://www.sankeibiz.jp/business/news/161129/bsc1611290500006-n1.htm

第1回メンタークラブ関西支部勉強会の報告

1月6日大阪で開かれた第1回メンタークラブ関西支部勉強会「質問の仕方」に、翻訳チームのスタッフとして参加させていただきました。

他者紹介のワークとは?

会員のみなさんが3つのテーブルに分かれて着席したあと、最初に行ったのは
①他者紹介のワークでした。

私たちは自分がどう外から見えているかわかりません。
ほぼ初対面のメンバーに、自分を紹介してもらうことを通して、自分がどのように他者の目に映っているかを知り、自分では気づかずにいた「自分の資産」を発見するきっかけとなるワークです。
また紹介する人にとっては、他者をよく見、その人の好さや個性を見つけ出し、それを言葉にする、というワークでもあります。

第一印象の重要性はよく言われることですが、実のところ私たちは初対面の人から驚くほど多くの情報を受け取っています。
ところがその情報の中身を、本人が知る機会はほとんどありません。
反対に受け取っている側も、それをはっきり言語化して意識にとどめることをしないため、多くの場合あいまいなまま、以降のコミュニケーションを規定するものになっていきます。

それを言語化し、しかもネガティブな言葉ではなく、ポジティブな言葉でそれを表現するというワークは、紹介する側も、される側も、得るところの多いものだと思います。

各テーブルとも、和気藹々とした雰囲気の中で、活発な話し合いがなされていました。

質問を掘り下げる

そのあとはいよいよ本題の
②質問を掘り下げるワークです。

壁にぶつかったり、行き詰ったりしたときに、私たちに必要なのは、優れた他者の視点であり、知恵や経験です。ところが適格なアドバイス、実践につながるアドバイスをもらおうとしても、適格な質問をしないでいると、どれほど優れた人であっても一般論になってしまいます。

私たちは、これまで受けて来た教育でも、職場環境の中でも、「適格な質問をする」方法を習ってきませんでした。
そのため、本当に聞かなければならない要点を、自分でも見つけることができず、漠然としたことを質問してしまったり、本質とは無関係なことに目を奪われて、要点を外したことを聞いてしまったりします。
ですからメンタークラブでは、今回「質問をする」ということに的を絞って、話し合いを行うことにしたのです。

今回特に意識したのは、「英語的思考で考える」ということでした。
動詞が主語の次に来る英語とはことなり、動詞が最後に来る日本語の性質から、私たち日本人の話は、
「~がどうなって、こうなって、ああだからこうなんだ」という形になりがちで、
「私がどうする」という形になりにくい、という問題があります。

“I think …, because….”
(私は…だと思う、というのも、これがこうしてこうなっているからだ)

という形式で話すことによって、その人が状況をいかに把握し、それに対してどうしていこうと考えているかが明確になっていきます。

日本人の質問にありがちな、状況をだらだら説明したあと、だからどうしたらいいですか、という、その人がこれから何をどうしたいのかも明確にならない質問から脱却するための最善の方法が、「英語的思考での質問の組立」ではないかと考えたのです。

集まったメンバーが抱いている質問を
「なぜそれが問題なのか」
「なぜそう思うのか」
「なぜ…」
「なぜ…」
と繰り返すことを通じて、問題を深めていく。
そうやって、その人が本当に聞きたい問題、逢着している問題をつかみ出していく、というワークでした。

2人1組で、途中パートナーを替えながらそれぞれの問題を話し合ったあと、最後にひとりずつ、メンバーの方にそれを発表していただきました。それに対して島藤代表からのコメント、それから「英語に翻訳できるかどうか」(英語的思考になっているかどうか)の観点から私がコメントを述べさせていただきました。

まだまだ話は尽きなかったのですが、閉館時間となり、次回のスケジュールとこのような学習会を全国に広げて行こう、またメンバーの方がぜひシェアしたい、と思われるお友だちにもお誘いいただくことを確認して、終了となりました。

第1回勉強会を終えて

今回の勉強会は、メンバーの方々の温かい雰囲気の中で、活発な討論がなされていくのを、興味深く拝見しておりました。遠くからご参加くださった方からも、終了後に「来た甲斐がありました」とのお言葉をいただき、うれしい気持ちでいっぱいになりました。

私たちがこれまでいた環境では、「自分の本当の意見を言わない」ことが良しとされてきました。つまり、自分の主観は全体の調和を乱すもの、という、陰に陽に感じられる圧力の中で、自分の考えではなく周囲が求める意見を言うことが良いこととされてきたのです。
「他人と同じ」であれば無難である、「他人と同じ」なら集団の中で孤立しないで済む。

でも、そうすることが、自分にとって苦しいことは、実は誰もが気づいてきたはずです。
けれども、どうしたら良いか、どうしたら自分の本当の意見を、チームワークを乱さず、なおかつ自分も全体も良くする方向で主張したら良いのか、そのモデルを示してくれる人が身近にはいませんでした。だから、自分の意見を表明することどころか、自分の頭の中だけでも確立することすら、私たちの多くは苦手なのだと思います。

まず、第一歩として、そんな息苦しさを取り除ける場、自分が本当に思っていることを言える場を、皆さんと共に作っていけたらな、と思います。

「勉強会」と名がついていますが、誰かが教え、誰かが教えられる、という関係性ではありません。相互に教え合い、学び合える、そんなフラットな場なので、ぜひ多くの方々のご参加をお願いしたいと思っています。

メンタークラブ学習会には、メンタークラブ、または戦略的思考学会のメンバーであればご参加いただけます。
ぜひ奮ってのご参加、お待ちしております。

ジェイ・エイブラハム メンタークラブとは
戦略的思考学会とは


服部聡子(ShimaFuji IEM 翻訳チームリーダー)
出産・退職後、在宅で働ける資格を身につけるために翻訳を学び始める。
約5年フィクション/ノンフィクションの下訳、ウェブ・ライターを経て、
『限界はあなたの頭の中にしかない』に巡り合い、深い共感を覚え、弊社に。