本:『アメリカ経済のルールを書き換える』
Rewriting the Rules of the American Economy: An Agenda for Growth and Shared Prosperity
『アメリカ経済のルールを書き換える:成長と繁栄の共有に向けての計画』
著者 ジョゼフ・E・スティグリッツ
格差は、選択の結果である。
アメリカはチャンスの国であり、
一生懸命に働き、強い意志を持っていれば、
誰もが成功とよりよい暮らしを手に入れることができる……
実際は、そんなことはありません。
今日のアメリカは、先進国の中でも、不平等の度合いが高く、
経済的流動性の面で、後れを取っているのです。
何十年にも渡って、大多数の労働者の賃金が頭打ちになっている一方で、
経済的利益は、上位1%の層に偏って集中するという状態が続いています。
教育、住宅取得、保健医療費など、個人が成功するために、
欠くことのできない領域にかかる費用は、高騰に高騰を重ねています。
構造的な差別は根深く、女性や有色人種をがんじがらめにしています。
そうしてアメリカの子供たちの5人に1人を超える割合が、
貧困の中で生きることを余儀なくされています。
しかもこのような傾向が、将来さらに悪化する方向に進行しているのです。
経済学者の中には、今日の厳しい状況は、グローバリゼーションと技術の進歩による
市場の不可避的な結果である、と言う人もいます。
もし平等を望むなら、経済成長を犠牲にしなければならない、と。
けれどもそれは真実ではありません。
アメリカの格差は、誤った構造規則が、
経済成長を抑制する方向へ導いた結果生じたものです。
労働者保護と家族のサポート・システムをはぎ取り、
税システムを、長期投資という観点ではなく、目先の利益のために構築し、
大きすぎて潰せない金融機関に、事実上の公共のセーフティ・ネットを提供し、
完全雇用よりも富の蓄積を促進する財政・金融政策を選んだ結果が、
現在の状態となったのです。
(翻訳:服部聡子)