小企業が顧客を魅了する方法

by ガイ・カワサキ
元記事:http://bit.ly/1LPVjO1
(※著者の承諾を得て翻訳しています)
 
私は小企業と取引することが大好きです。
小売店であろうと、ネット上であろうと、自分自身の買い物、ほかの人のため、あるいは趣味や娯楽、仕事上の取引であろうと、そんなことは関係ありません。
何とか世界を変えてやろうとがんばっているスタートアップが生み出した、商品やサービスを見つけることが、私は大好きなのです。
そうして、そんな小企業のオーナーを手助けしたいと心から願っています。
だってその人たちは、社用のジェット機で飛びまわったり、投資銀行家とランチしたりしませんからね。
 
ですからここで、小企業が顧客を魅了するための10の方法をお話したいと思います。

「魅了する」とは?

私は「魅了する」という言葉を商品やサービスや組織やアイデアで、人を喜ばせる作用 と定義しています。
顧客に愛されることで、双方とって利益となるような、 自発的で長続きのする支持が得られるのです。
あなたの営む小さな企業がもっと愛されるようになったらいいと思いませんか?

1.  現場には、感じが良く、有能で、熱意のある人を配置する

私はいつも笑顔で、自分が話していることの内容をしっかりと把握していて、自分が売ろうとしているものが大好きなスタッフとやりとりするのが好きです。
 
ところが少なからぬ企業が、もっとも給料の安く、経験の浅いスタッフを、カウンターやフロントデスクに配置して、最善の結果を期待しています。
これでは意味がありません。
 
一度、自問してみてください。 「うちの会社の第一印象は良いだろうか?」と。
もし、良くないなら、誰よりもふさわしくない人を最前線に置いているのかもしれません。

2.  信頼していることを示す

自分を信頼してくれないような人を、信頼することはできません。
スタート時は小さかったのに、のちに巨大になった企業を見てみましょう。
オンラインで靴の小売りを始めたザッポスは、 送料ばかりでなく返送料も無料にすることで、私に対する信頼を示してくれています。
デパートのノードストロームは、もし私が商品に欠陥があったと言えば、言葉をそのまま信じてくれます。
アマゾンは、7日間以内ならキンドルの電子書籍を返品できます。
7日間もあれば、たいていの本なら読んでしまえるというのに、です。
 
もしあなたが私を信頼してくれるなら、私もあなたを信頼します。
そうして、そこから関係が始まっていくのです。

3. 加入するときの障害を取り除く

初めての人にも、製品やサービスが簡単に利用できるようにしてあげてください。
アカウントを新しく作るときに、10の領域にもわたる 個人情報を記入させたりしないで。
キャプチャ・システム(※登録時にゆがんだ文字を読み取らせる画像認証)の際に、サンスクリット語の知識など求めないでください。
相談には事前予約など求めないでください。
その代わりに、いつでも、誰でもが、あなたの企業と取引にすんなりと入っていけるように、間口をスムーズにしておいてください。

4.  支払いは簡単に

ひとたび商品やサービスを購入すると決めたら、 注意書きや「目」のマークなどを使って、簡単に支払いできるようにしてください。
そのためには、何種類かの支払い方法や使いやすいショッピングカート、手ごろ感のある送料・手数料を導入することが大切です。
 
ガラクタを売りつけてお金を巻き上げようとする企業よりタチの悪いものがあるとしたら、
それは、立派な商品があるにもかかわらず、支払うのがとんでもなく厄介な企業でしょう。

5.  ひとつの領域を深く掘り下げる

香港にあるスタンリー・マーケットには、数多くの店があり、その多くがTシャツやみやげもの、おもちゃ、カバン、電子機器、カメラなどを売っています。
1ドルのもうけが出るなら、なんだって売ってやろう、という種類の店です。
ここで私が買い物をする店はたったひとつ。
タムズ・アート・ギャラリーです。
というのも、この店は、石作りの印章だけを売っているからです。
タムの店で扱うものはたったひとつ。
ですから、この店が、自分が扱っている商品を深く理解していることが、すぐにわかります。
 
私からのアドバイスは、ひとつのものに焦点をしぼりなさい、ということです。
Tシャツだけを扱っている「スレッドレス」や、 おもちゃだけを扱っている「チーキーモンキー」、カバンの「エドワーズ・ラゲッジ」、 エレクトロニクスの「フライズ」、カメラの「キーブル・アンド・シュチャット」、 ヨーグルトの「ミヨ・ヨーグルト」のように。

6.  DICEEを売る

DICEEとは、すばらしい製品やサービスの持つ、
Deep(深い)
Intelligent(知的な)
Complete(完全な)
Empowering(力を与える)
Elegant(エレガントな)
という5つのクオリティの頭文字を表しています。
 
DICEEの製品、サービスとは、 フル機能が搭載されたものであり(深い)、
顧客にとって「必要なのは何か」を理解したものであり(知的な)、
サポートがしっかりしたものであり(完全な)、
それを使えばよりよいことができるものであり(力を与える)、
使いやすいものである(エレガント)ことを指しています。
自分が提供しているものが、DICEEにかなっているかどうか、自問してみてください。

7.  実際に試してもらう

顧客は賢明な人であると想定してください。
脅して無理やり買わそうとするのではなく、買うかどうかの決定を、相手に委ねるのです。
 
そのために、製品やサービスを実際に試してもらいます。
それが車の試乗であれ、デザートの試食であれ、カメラの試し撮りであれ、機械工具であれ、 実際に試してもらうことには、効果があります。
 
でも、試してもらうことができたとしても、戦いはまだ半分。
試したからには買ってもらわなければ、とでも言おうものなら、 顧客はたちまち去っていきます。

8.  特色を伝えよう

「1ギガバイトの容量」とはどういうことか、 本当に理解している人がどれくらいいるでしょうか?
製品やサービスにはどれほどの性能があるか、 どれほどのことができるかを伝えるためには、特色を打ち出すことです。
 
たとえば、あるデバイスに、何曲保存できるかといえば、記憶容量が何ギガバイトある、と説明するよりも、相手にはっきりと伝わります。
私なら、この料理を食べればどれほど体重が増えるか教えてくれるレストランに足繁く通いたいと思います。
というのも、この店は、私の健康に気を配ってくれている、という突出した点を感じることができるからなのです。

9.  悪い知らせは早く

緊急事態は起こるものです。
商品には問題が出ますし、 配達は遅れます。
スタッフが病気になることもあります。
 
多くの企業は、悪いニュースから生じる影響を、可能な限り抑えようとします。
けれども、回避できない事態が起こったら、顧客の耳に入る前に、こちらから率先して知らせましょう。
自分たちが問題の存在を把握していることを知らせるだけでなく、かならず解決すると告げることで、問題の主導権を自分たちが握っていることを示すのです。

10.  影響力を持っている人に考慮する

お金を払う人と、これを買おうと決める人が異なっている場合があります。
多くの企業は、それが同じ人であることを前提にしていますが、実際にはかならずしもそうではありません。
 
購入に重要な影響を及ぼすのは、配偶者であったり、兄弟や同僚であったり、親や祖父母、子供のこともあります。
昨今では、だれがその家庭の本当のトップなのかはそれほど明白ではないので、影響力のあるさまざまな人にアピールするものであることが大切なのです。
ついでながら、わが家ではそれが娘に当たります。

「yes」の持つ力

私をとりこにするたったひとつの、けれども力強い言葉は、
コンピュータのデフォルトの「Yes」という言葉です。
 
というのも、この言葉は上記の10の点をすべて含んでいるからです。
この「Yes」は、顧客が間違っていて、不合理なことをしていることが証明されない限り、顧客が正しく、合理的であると信じてくれていることを示しています。
特別注文? Yes!
早期出荷? Yes!
返品は全額クレジットカードに払い戻し?  Yes!!と。
 
もし誰にでもそんなことをしていたら、倒産してしまうよ、 と数学は教えてくれるかもしれません。
けれども全員がそのような扱いを求めてくるわけではありません。
実際のところ、ほんの少数の、例外的な人々です。
けれども、ひとたびそのような扱いをしてもらえれば、人々はあなたがしてくれたことを多くの人に伝え、広めるエバンジェリストとなってくれるでしょう。
 
だとしたら、それは価値ある例外といえます。
あなたが魅了されたのは、どんな小企業ですか?

 

元記事:http://bit.ly/1LPVjO1


(翻訳:服部聡子)