交渉の達人になるために

by レイ・トンプソン

 

 

確かに私はレディー・ガガが好きなのは認めるけれど、

“Born This Way(こうなったのも生まれつき)”を歌う彼女はまちがっています。

少なくとも、交渉に関しては。

Born This Way Album

 

実のところ、「生まれつきの」ネゴシエーターとは、これまで会ったことがありません。

これまでに出会った最高のネゴシエーターは、自力でそうなったのであり、

両親のおかげでそうなったのではありませんでした。

 

にもかかわらず、きわめて多くの人が、ネゴシエーターとして成功を収めた人は、

そうなるDNAを持っていたのだ、とか、

交渉の能力は、外見と同じように、生まれつきのものだというふうに考えています。

彼らはおそらく、どんなにがんばっても、運命は変えられない、と思っているのでしょう。

 

私は、この神話に異を唱えたいと思います。

というのも、この説のおかげで、私たちは自分の交渉の能力を、進歩させようとしないからです。

ここで私は経営科学が示してきた、交渉の能力が生まれつきのものではなく、

私たちが伸ばしていくものだという証拠をあげて、説明しましょう。

 

Baby

 

第一に、実行することと交渉についての証拠をあげましょう。

ほとんどの人は、交渉のトレーニングを受けること、及び、経験を重ねることで、

劇的にその能力を向上させていきます。

たとえば、ある実験では、交渉のテストを8回重ねた被験者の追跡調査をおこないましたが、

経験を重ねることで、被験者の学習曲線は、急激に成長し、

パフォーマンスは10%から30%も向上しました。

 

当然のことながら、他の人々より、上手なタイプはあります。

ある研究で、私は実験で4つのタイプを比較しました。

いくつかの異なる交渉の事例と情況について、

被験者をランダムに以下の4つのグループに分けたのです。

 

・講義を聞くだけのグループ

・フィードバックを受けるグループ

・専門家のやることを見るグループ

・たとえや類推を用いて学ぶグループ

 

最低だったのは、単に講義を聞いていただけのグループでした。

そうして、もっとも効果的な戦略は、シミュレーションを含む、たとえや類推を用いる学び方でした。

 

第2に、あなたが交渉にアプローチするときに、マインドセットに着目します。

あなたは交渉は、学べるものと考えますか?

それとも、生まれつきの才能だと?

 

たとえば、カリフォルニア大学バークレイ校のハース校のローラ・クレイ教授の研究チームは、

ある被験者のグループに、交渉のスキルは学ぶことができるものであると伝え、

別のグループには、先天的に受け継がれるものであると伝えました。

そうして、全員に、まったく同じビジネスの交渉をおこなってもらったのです。

 

結果は、交渉のスキルは学ぶことができると聞いた方が、遺伝と聞いたグループより、

かなりうまくこなすことができたのです。

 

このマインドセットは重要です。

もちろん私たちは、すべての面において、信頼度95%の統計に基づいているわけではありません。

それでも、自分が現場で最高の交渉をおこなっているわけではないと感じているビジネスパーソンは、

筋肉を鍛えるように、応答のトレーニングをおこなえば、スキルを身につけることができるのです。

 

 ビジネスの現場で最高の交渉を

 

最後に、ひとたびあなたが自分の交渉技術を改善できると理解するならば、

あなたの最大のハードルは、適切な時と場所でその知識を用いるということです。

私は研究を通じて、「不活性な知識」の問題を扱ってきました。

すなわち、経営者やリーダーのほとんどが、自分に必要な効果的な交渉スキルを備えているのに、

実際に、もっともそれが必要なときに、それを引き出すことができないということです。

 

幸いなことに、私たちはこの「不活性な知識」の回避方法を見つけました。

 

授業やセミナーや仕事の中で、あなたがスキルや戦略を学んだときは、

かならず少なくとも2つの情況を思い描いて、

スキルや知識をあてはめてみてください

 

このように複数の情況を考えることで、あなたは自分の知識をさまざまな情況で

移し替えることができるようになります。

そうすることで、あなたはうまく軌道に乗せることができるのです。

 

著者:レイ・トンプソン(ケロッグ経営大学院教授)


元記事:http://bit.ly/1LqqcZv

(翻訳:服部聡子)