アップセルを成功させるには

by ニール・パテル
 
アップセルは多くのビジネスモデルにとって、必要不可欠なものです。
企業の中には、将来のアップセルを当てにして、損を覚悟で商品やサービスを販売しているところもあります。
 
いくつかのSaaS企業のリーダーとして、私は試行錯誤しながら、アップセルを成功させるテクニックを見つけてきました。
 
ビジネスは、ひとつとして同じものはありません。
また、顧客も一人ひとり異なるものです。
けれどもこの手法は、あなたのビジネスにかならずアップセルをもたらすでしょう。
 
その前に、そもそもアップセルとは何なのでしょうか。
 
アップセルとは、顧客が最初に考えていたものより、高額の商品を購入してもらう販売テクニックのことです。
 
すでに購入に乗り気の顧客の弾みを活かし、利益を倍増させることを目指します。
私のアップセルのモデルは、ビジネスの利益の30%以上をアップセルから上げることです。
現在の顧客にアップセルしてもらえれば、新規顧客を獲得するコストの1/5-1/10のコストしかかからないため、
きわめて理にかなっているのです。
 
では、以下にその方法を明らかにしていきましょう。

1. 顧客の最初の購入品と関連するものを

マクドナルドで注文したことがある人は、レジで「ご一緒にポテトもいかがですか?」と聞かれたことがあるはずです。
フライドポテトはハンバーガーに良く合うものです。
マクドナルドのアップセルは、あなたのもともと予定している購入品と、関連するものになっているのです。
 
ホスティング・サービスのブルーホストも、同じことをしています。
ブルーホストはさまざまなアップセルの商品紹介を行なっていますが、
ホスティングの拡張や、ドメインのセキュリティ、追加ドメインなど、どれも関連商品です。
 
関連性が、アップセルの成功のカギです。
顧客は、ある商品を買うことによって、顧客となります。
その商品を増やす、またはグレードアップすることがアップセルであるということを確認しておいてください。
 
以下に例をいくつかあげておきます。
・ ナイフを売っているのなら、ナイフ・シャープナーも売ってください。
・ ソフトウェアを売っているのなら、プレミアム・サポートも売ってください。
・ サングラスを売っているのなら、マイクロファイバー・クリーニング・クロスも売ってください。

2. 顧客に自発的に購入させる

SaaS企業の中で、アップセルにきわめて優れている会社として、セールスフォースがあります。
彼らは「ストレージ容量の制限」という形で、アップセルを行っています。
容量や処理能力に、あらかじめ制限を組み込んでおくことは、SaaSプロバイダーにとってはすばらしいアップセルの方法です。
ユーザーはもっとデータ保存や容量が必要になったときに、購入しなければならなくなるからです。
この方法を使うことによって、アップセルのために大きな労力を払う必要はなくなります。
顧客自身がその必要性を理解し、良識的な決断をしてくれるからです。
 
ジョエル・ヨークはこのことを「発見のデザイン」と呼んで、このように説明しています。
「顧客は、ニーズの成長とともに、ジャストインタイムの能力を自然に探りあて、自分のものにしていくでしょう」
何よりも成功する確率が高く、苦情も起こらないアップセルとは、
 
顧客が自分に必要なものを理解して、自発的に購入する場合です。

3. アップセルを割引する

顧客はアップセルの気配を、すぐに察知します。
彼らはアップセルに関しては、ただひとつの観点からしか考えません。
それはいくらするのだろう?
アップセルがあまりに高価なら、彼らは話に乗ってはきません。
ところが割引価格のアップセルだと聞くと、興味を示します。
経験則から、このようなことが言えます。
 
アップセルは、最初の購入品の価格の1.5倍(もしくはそれ以下)に収めなければなりません。
 
顧客はその価格を合理化しようとします。
「そうだな、自分はこれをもう買っている。これは100ドルだ。でも、こっちを買ったがもっと良いらしい。
50ドル余分に払うぐらい、いいじゃないか」
 
もし、もっと高額のアップセルを提案したければ、かならず分割払いのプランを提示してください。
たとえば6か月間、わずか1か月29ドルの支払い、と伝えることで、
お買い得であるというイメージを、相手に持たせることができるのです。

4. アップセルは初回購入後に

あるSaaS企業でのアップセルの失敗として、私が気づいたことに、
顧客が支払いを完了する前に、アップセルを持ちかけたケースがあります。
 
顧客によっては、あまりに売ろうとする気持ちがあからさまに感じられると、嫌気がさしてしまうことがあります。
顧客が買い物を止めてしまう最大の理由は、価格が上乗せされたり、引き上げられたりすることなのです。
 
支払手続きが完了する前のアップセルは、リスクがあると考えた方が良いでしょう。
それを避けるために、顧客が購入した後、アップセルの提案してはどうでしょうか。
 
顧客の手間を省くために、二回目の購入時には、支払い情報の入力を省略するのです。

5. 問題解決につながる商品を販売する

顧客が購入する商品のほとんどには、興味深い特徴があります。
そうした商品は、問題を解決しながら、さらに新たな問題を提示しているのです。
 
・ ハンバーガーを買う。→塩気があって、カリカリした食感のものがほしくなる。→フライドポテトを買う。
・ ナイフを買う。→切れ味が鈍る。→シャープナーが必要になる。
・ ソフトウェアを買う。→それを習う必要ができる。→補助教材を買う。
・ サングラスを買う。→指紋がついてしまう。→拭くためのクロスが必要になる。
 
自分が売ろうとする商品のことを、よく考えてみてください。
そうして、その商品が新たに引き出す問題や課題がないか、考えてみてください。
そうして、その新しい問題の解決策を、アップセルとして顧客に提示するのです。
何も思いつかなくても、類似の品目を紹介することもできます。
 
たとえばアマゾンが顧客に提案するのは、いずれもアップセルやクロスセルの商品です。
「よく一緒に購入されている商品」
「この商品を買った人はこんな商品も買っています」
「この商品に関連するスポンサー プロダクト」
「関連商品と比較」
「関連商品をお買い上げいただいたことのあるお客様に、商品のご案内」
 
あなたもこうやって、つねに何かを販売することができます。
問題を解決することに焦点を当てた商品の提案をしてみてください。

6. リスクを除去する

成功する販売プロセスには、かならず保証が含まれています。
 
アップセルの場合、それはさらに重要になってきます。
顧客はアップセルの気配を感じると、自然に用心し始めます。
あなたが顧客の信用を得ようと懸命に取り組んでいけば、アップセルが成功するチャンスも高くなります。

結論

アップセルのすばらしい点は、利益幅が高いことにあるのではありません。
 
アップセルを通して、あなたは顧客を、より長く確保できるのです。
多く買う顧客は、長く留まる顧客でもあります。
アップセルによってあなたは、販売実績を上げ、より多くの利益を上げるだけでなく、
顧客をつなぎとめ、新しいものに目移りさせないことができます。
 
付加価値のある優れた商品と、アップセル戦略によって、あなたは満足する顧客を、数多く獲得できるでしょう。

 

 

 


元記事:http://onforb.es/1PjyXuz

(翻訳:服部聡子)