起業時に大切なのは事業の拡張可能性ではない
by ガイ・カワサキ
元記事:http://linkd.in/1cdFbeK
(※著者の承諾を得て翻訳しています)
あなたのスタートアップは「ニワトリが先か、卵が先か」 という問題に直面していませんか?
起業して間もない時期に、事業規模が拡張できるかどうか、という問題は、多くの人が考えているほど重大な問題ではありません。
「スケールする」という言葉を聞いたことのない人のために言っておくと、
スケールするとは、やがて数十億ドルの収益を生み出す何百万人もの顧客が現れるから、
今のうちに、速く、安く、再現性のあるプロセスを築いておこう、という考え方のことです。
たとえば、もし市場に出た中古のプリンターを、ピエール・オミダイアが1台ずつテストしなければならなかったとしたら、
eBayの事業規模は拡張できません。
もしマーク・ベニオフが、すべての売り込みの電話をかけていたとしたら、セールスフォース・ドットコムも「スケール」できません。
もしジェームズ・ホンの両親が、ポルノであるかどうか写真を全部チェックしなければならなかったとしたら、
「ホット・オア・ノット(*1)」もスケールするようなことはなかったでしょう。
(*1. Hot Or Not:ユーザーが提供した自分の顔写真をほかのユーザーが評価するサイト。カリフォルニア大学に在学中のジェームズ・ホンが2000年に立ち上げると、すぐに1日あたり20,000pvにも上る人気サイトになった。)
立ち上げ間もない時期に、自分自身で大量のテストをしなければならない、と考えるのは、思い違い、いわゆる本末転倒というものです。
複数の場所では、ひとりの料理長が完璧に取り仕切ることができないから、といって、
レストランを一店しか開店しないのと同じようなものです。
レストランのスケールを検討する前に、30キロ圏内の人が料理を好んでいるかどうか、まず確かめるべきです。
つまり、ビジネスがうまくいっているかどうか、しっかり見る、ということです。
Photo by:Ben Salter
一例をあげると、私がアドバイスしている「チューター・ユニバース」という会社があります。
ここではスマートフォンを使った個人指導をおこなっています。
タクシーの配車サービス・アプリであるユーバーの、家庭教師版だと考えてください。
長期計画は、学生はどんなトピックでも質問でき、15分以内の指導を受けることができる、というものでした。
ところが当初、すべての科目を教えることができる必要最小限のチューターがいなかったのです。
多くのスタートアップは、こうした「ニワトリが先か、タマゴが先か」の問題に直面します。
十分なチューターがいれば、多くの学生を引きつけられる。
多くの学生が利用してくれれば、多くのチューターを引きつけられる。
こうした問題に直面したら、あなたならどうしますか?
答えは簡単です。
ちょっとしたトリックを使うのです!
あなたは社員を使って質問に答えたり、市場で採算が取れる最低限の規模になるまで
フィリピンで、高い教育を受け、英語を話せ、しかも安い人をチューターとして雇うのです。
疑い深い人や、経験の浅い人は反対するかもしれません。
「コストがかかるからといって、社員や外国人のチューターを雇うぐらいなら、
そもそも規模を拡大することなんてできないんだよ」と。
確かにこれは正論かもしれませんが、意味のないことです。
大切なのは、つぎの3点を確立することなのです。
- 多くの人に知らせること
- 学生に喜んでアプリをインストールしてもらうこと
- 学生が助けに対して対価を払ってくれること
要するに、何よりも大切なのは、みんながあなたの商品を買ってくれるかどうかということなのです。
買ってくれそうにないなら、あなたが規模を拡大できなくてもどうということはありません。
もし買ってくれそうなら、スケールの方法は見つかるでしょう。
私はスケールすることに遅れて、失敗したスタートアップを見たことがありません。
その代わりに私が目にしたのは、何百というスタートアップが
自分の商品に全力を注がずに立ち消えになった姿でした。
このコラムはガイ・カワサキの最新刊
『スタートの技術 2.0』(原題)の一部分を元にしたものです。
一読後、飛躍されんことを。
(翻訳:服部聡子)