次の波をつかめ ピーター・ティール講演会
ベンチャーキャピタリスト、ピーター・ティールが、
ハーバード・ビジネス・スクールの学生に、
テクノロジー部門での起業についてアドバイスを行いました。
PayPalの創業者として、ベンチャーキャピタリストとして
自分のノート・パソコンの中には、FacebookやTwitterの次に来るもののアイデアが詰まっている、
と考える何百人もの学生なら、ティールの話はぜひとも聞いておくべきでしょう。
世界最高の知名度を持ち、加えて挑発的な言動でも有名な
テクノロジー分野の起業家兼投資家が、有望な戦略を語ってくれる、というのですから。
2014年9月18日、ピーター・ティールはハーバード・ビジネス・スクール(HBS) の
アーサー・ロック・センターを訪れ、
「起業家スピリット」の専門家ウィリアム・サーマン(1955年卒業)とともに、
ビジネスとベンチャーキャピタルについて語りました。
ティールはイーロン・マスクやマックス・レフチンとともに1988年、
ペイパルを設立し、会長兼CEOを務めました。
このオンライン決済の草分けが登場したのは、
eBayユーザーの決済時の利便性を計るためだったのです。
eBayは、創生期にあったインターネットのなかで、広汎な人々を引きつけるサイトの一つでした。
「私たちが考えていたのは、そろそろメールとお金を連動させるべきなんじゃないか、ということでした」
ティールはこのように言います。
ところが、メールとお金を連動させるためには、
「受け入れられるための途方もない障壁」を乗り越えなければなりませんでした。
なにしろ顧客に新しい、まったくなじみのない決済方法に
慣れてもらわなければならなかったのです。
やがて成功を収めたペイパルは2002年、eBayに15億ドルで売却されることになります。
その後もティールは、数多くの創業に投資しています。
ビジネス向けSNSの「リンクトイン」、レビューサイト「イェルプ」、Facebookなどで、
いずれもティールは社外では初の投資者であり、同時にそれらの会社の重役でもあります。
大きな池の小さな魚にはなるな
ティールは学生に訴えます。
大きな池の小さな魚になるな、その代わりに新しい、もしくはいまだ、
人の目が届いていない市場に目を向けよ、と。
Facebookはハーバードで10,000人の学生を相手に始まったんです。
それが10日のうちに市場占有率はゼロから60%だ。
申し分のないスタートです。
当時、Facebookを誰も有望な投資先だなんて考えなかったのは、
それがちっぽけな市場だったからです。
ペイパルはeBayに集まる大勢の出品者のために始まりました。
小切手に代わる別の方法を求めていた20,000人から25,000人の
セラー(出資者)だけの市場だったのです。
私たちはほんの少人数の人に、従来よりずっとよい方法を提供し、
たった3ヶ月で30から35%のシェアを占めるようになりました。
私はそうしたやり方は、たいてい、非常にうまくいくものだと考えています。
ティールがプロモーションを行っている最新著
『ゼロから1へ ―創業とは何か、どうやって未来を創造するか』の中でも、
ビジネスの成功にとって、幸運や偶然は決して重要なファクターではないことが述べられています。
ビジネスで成功することを、宝くじか何かのように考えている人は、
すでに自分は金を失うぞ、と自己暗示をかけているんです。
ものごとの原因を、偶然のせいにするような人は……
怠惰といえるのではないでしょうか。
というのも、もう少ししっかり考えれば、どこが間違っているかわかるのに、
彼らはそれをしないのだから。
運だの偶然だのは、途中で考えるのをやめてしまう自分の言い訳にすぎない。
起業家にとって、起業に失敗した経験は学ぶ価値がある、という考え方は、
あまりに「過大評価」されているのではないか、とティールは言います。
というのも、失敗の原因は多岐にわたり、
後続の人も、そうした原因をすべて避けて通ることなどできはしないからです。
会社を興すということは
教育に役立つものではないんです。
たとえば、私たちには会社がありました、
倒産しました、
それでスターバックスで働きました、
だけどたくさんのことを学びました…だなんて。
こんなもの、ばかげた作り話ですよ。
最近、ティールは、外部のCEOに主導された起業より、
創設者主導の、熱のこもった起業の方を楽観視していると言います。
また、社会貢献や教育的なことを目指す起業観には悲観的である、とも。
善いことをして利益を上げようとすると、
結局どちらもうまくいかないことになりがちなんです。
私が見てみたいのは、使命感のある企業です。
儲けを出すことを超えて、何か使命を抱いているような企業。
もし誰もやらないんなら、自分たちがやるしかない、みたいな使命をね。
若い起業家が仕事のどこに目を向けなければならないかに関しては、
ティールはサーマンの研究を援用しています。
ハーバード・ビジネス・スクールの学生が、成功の機会などないに等しいような時に、
どのように実業界に参入したかという、歴史的分析研究です。
この点に関する私のテーゼは、挑戦ということです。
ここに自分の人生で何を得ようとしているのか、しっかり考え抜いたこともない気楽な連中がいる。
二年後、こうした連中はみな、なんとかして最後の波をつかまえようとする。
でも、波はすでにいってしまっているんです。
そうして最後にティールはこのように締めくくりました。
あなたがやらなければならないのは、次の波に向けて漕ぎだすことなんです。
元記事:http://news.harvard.edu/gazette/story/2014/09/catching-the-next-wave/
(翻訳:服部聡子)