本:『未完の仕事』
Unfinished Business: Women Men Work Family
『未完の仕事:女性 男性 仕事 家庭』
著者 アン=マリー・スローター
男性と女性 仕事と家庭の平等に向けた長い闘いに
終止符を打つ?力強く説得力のあるビジョン
アン=マリー ・スローターが2009年、
夢の仕事ともいえるアメリカ国務省政策企画本部長の職を、女性として初めて引き受けたとき、
彼女はワシントンD.C.での仕事と、ニュージャージー州郊外の自宅での家庭生活での責任を、
両方ともうまくこなしていく自信を持っていました。
夫と、まだ幼いふたりの息子たちも、彼女が仕事を続けることを、応援してくれていました。
しかも上司のサポートはこの上ないもの。
なにしろ当時の国務長官は、ヒラリー・クリントンだったのです。
ロースクール時代から注目を集めていた彼女は、出世コースを順調に走っていました。
ところがそこに生活が介入してきたのです。
結局、子育てのために、彼女は国務省を去る決心をしました。
そうして家族のためにもっと時間を取ることができるよう、大学での研究生活に戻っていったのです。
子育てのためにワシントンを去るという彼女の選択は、
彼女も属していたはずの、フェミニズムの思想に疑問を投げかけるものではないか、
という反応も見られました。
アトランティック誌に寄稿した彼女の記事
アメリカ中で激しい議論に発展し、
アトランティック誌の歴史をさかのぼっても、
もっとも読まれた記事のひとつとなりました。
以来、アン=マリー・スローターは、前進を続け、
仕事、生活、家族に対する長年の考え方から、自由になっていきました。
多くの女性のために「ガラスの天井」や「母親の育児ペナルティ(※注)」の解決策が
模索されてきましたが、トップクラスの女性と底辺の女性の収入の格差は、広がるばかりです。
(※注:スタンフォード大学社会学部准教授のシェリー・コレルらの研究によって、
男性にとって父親となることは、社会的に賞賛され、昇進にもつながる「育児ボーナス」
として働くのに対して、女性は出産・育児に伴って仕事を辞める場合が多く、
子供を持つことが「育児ペナルティ」として働くことがあきらかになった)
そんな中、アン=マリー・スローターは、男性と女性が、本当の意味で対等であるとは
どういうことか、そうして、私たちはどのようにしてそれを実現できるのか、
彼女は自分のビジョンをひっさげて、私たちの前にふたたび現れたのです。
彼女は女性解放運動を、ふたたび団結させ、
同じ旗の下、男性と女性が共に前進し、成長していくために
失われたピースの断片を見つけます。
アン=マリー・スローターは、私たち全員が、
自分の物語や、個々人の行動計画、変革に向けての広汎な輪郭を行動に移すことで、
女性と男性、仕事と家族の平等という「未完の仕事」を終わらせることができることを
明らかにするのです。
(翻訳:服部聡子)