女性起業家が経済成長をうながす

 私の中にはいつも、起業家である自分が存在していました。

 可能性を作りだし、それを自分のものにしたい、という意志が、

 絶えることなくあったのです。

 今では安全にふるまうより、起業家であることの方がずっと気分が良いので、

 いつも起業家でいることにしました。

 ―― ビアンカ・デ・ラ・ガーザ

 

 

テレビ業界で17年間を過ごしてきたベテラン、ビアンカ・デ・ラ・ガーザは、

2014年、自分のメディア会社を起ち上げ、

土曜夜、自分の名をタイトルにした「ビアンカ」という30分番組をスタートしました。

 

bianca_unanchored

 

このデジタル時代に、メディア会社を起業し、

深夜、いわゆる男性の時間帯に放送を開始する?

過去にどれほど実績があったとしても、生やさしい挑戦ではなかったはずです。

けれども大きなチャンスをつかもうとしていたのは、ビアンカだけではありません。

企業の常識でいけば、安定軌道に乗っていることが実感できるはずの時期に、

出世コースから飛びだして、新しいキャリアを築こうとする。

そんな女性が増えているのです。

ベンチャー企業が高い成長を続けていくためには、

女性が起業へ全面的に参入していくことが重要なのはどうしてなのでしょう?

 

答えは単純です。

女性の参加によって、経済発展がもたらされるからです。

 

20世紀、経済成長が長期に渡って続いた背景には、

女性が労働力人口に参入したことが追い風になっていたことがあげられます。

急成長企業の中に、わずか10%でも女性が設立した会社が加わっていけば、

今世紀もアメリカが高度経済成長を遂げていく上での追い風に、

かならずなっていく、と言えるでしょう。

 

先日のカウフマン財団のレポート「経済の希望の源:女性起業家」の著者は、

その中で、急成長する女性起業家は、

もはや「社会の平等という観点から見て、望ましい存在」というレベルではない、

と書いています。

 

経済成長の観点からも、

また、アメリカの人口の半数を占め、

また教育を受けた人口の過半数を占める人々を、

経済成長とイノベーションの原動力として十分に活用できていない現状の点からも、

女性起業家の急成長は、

今後、アメリカ経済を待ち受ける「長期停滞」を回避するための絶好のチャンスである。

 

自分のメディア会社を、しなやかなスタートアップの精神で起ち上げたビアンカですが、

当初、一部の地域でしか放送されていなかった「ビアンカ・非ニュースキャスター(Bianca Unanchored)」も

5か月のうちに、9つの局を通じて全国的に放送されるようになりました。

ブロードキャスターの草分けであり、起業家でもあるオプラ・ウィンフリーは、

650人のスタッフを、直接に雇用しています。

おそらくビアンカのメディア会社も、彼女のビジョンに合わせて

オプラ・ウィンフリーと同等か、それ以上の規模に拡大していくでしょう。

では、アメリカの将来の経済的安定にとって不可欠といわれている、

他の先駆的な女性起業家はどうでしょうか。

 

彼女たちはどうして立ち上がろうとしているのでしょうか。

そうしてなぜ、彼女たちは今こそ起ち上がらなければならないのでしょうか。

 

この問いの答えを求めて、

私は最前線で活躍する3人の女性に話を聞きました。

deborah_jacksonデボラ・ジャクソンは、1980年、

ゴールドマン・サックスからキャリアをスタートさせた

ウォール・ストリートのベテランです。

その彼女は2012年にプラムアレイを起ち上げました。

プラムアレイは、女性が起業した会社の経済力を高め、

資本へのアクセスを提供することを目的としています。

 

JMathews

「America’s Advocate for Women in Business」

(ビジネス界の女性のためのアメリカ弁護士会)の

ジェシカ・イーブス・マシューズは、

受賞歴のある起業家であり、

知的財産権とビジネス専門の弁護士であり、

『ワンダー・ウーマン:欧米女性がいかにして世界を救うか』の共著者でもあります。

 

 

ジーン・サリバJeanne Mariani Sullivanはテクノロジー業界で30年以上の投資の経験を持つ

ベンチャー・キャピタリストです。

また「スターベスト・パートナーズ」の共同創設者でもあり、

シニア世代、または世代横断的な起業を支援する

Eプローブスタジオのアドバイザーでもあります。

 

起業を阻む3つの障壁の消滅

 

これまで独立し、事業に参入しようとする女性にとって、

 

・資金の問題

・情報が得られないこと

・協力者が見つけられないこと

 

が主な障壁になってきました。

ところが今日ではそれが取り除かれ、女性を取り巻く状況は、変化を見せています。

 

デボラとの対話は、まっすぐに実際的な話へと入っていきました。

彼女は、現在の状況をこのように指摘します。

 

起業するのに必要なお金は、以前より少なくてすみますし、

インターネットやソーシャルネットワーク経由でテクノロジーを活用したり、

必要な人を見つけることが、簡単になっているのです。

 

また、起業は現在、非常に人気があるために、

ネットばかりでなく、現実社会でのサポートも、受けやすくなっています。

 

ジーン・サリバンは私に対してこのようなメールをくれました。

 

この5年間で、投資家や投資家との会合の場だけでなく、

ビジネス促進施設や起業支援制度、コワーキングスペースも

飛躍的に増加しています。

アメリカ全土に、利益を共有したり、技術支援などをおこなうコミュニティが

建設されるにつれて、成功が成功を生むようになっています。

 

多くの女性にとって、コストの低下と参入のたやすさだけが、

起業を希望する理由ではありません。

 

wall street chart newspaper

 

2008年から始まった世界的な金融危機で、

多くの雇用者は(仕事を失った人ばかりでなく、失わなかった人も含めて)

終身雇用と雇用の安定は、当然のことではないのとを思い知らされたのです。

たとえ良い仕事をしたとしても、間違いなく賃金が支払われるわけではなく、

終身雇用は、もはや目標ではない。

となると、問題は私たちの内面ということになります。

 

「あなたが社会の一員として、成し遂げたいことは何ですか?」

 

この面を語ってくれたのは、ジェシカ・イーブス・マシューズでした。

 

起業家になる前、ジェシカはマイクロソフト共同創設者ポール・アレンの

顧問弁護士として、非常に多忙な生活を送っていました。

成功し、高い地位にある多くの女性の多くがそうであるように、

自分の仕事にもっとはっきりした意味を求めていたのです。

 

女性というだけで、女性はリスクを負っています。

けれども経済的な独立と同様に(時にはもっと)重要なのは、

仕事に情熱を持ち、充実感を得られるかどうか、ということなのです。

私はシアトルのトップクラスの法律事務所という、居心地の良い

世界から離れることにしました。

 

何かもっと大きなこと、自分の人生にとって意味のある、

そうして私の娘や、来るべき世代の人々に受け継がれていくようなものを

残したかったのです。

そうして、今の世界を少しでも良くしたい、とも思っています。

12-3年間、訴訟や富裕層のための法律処理に携わってきて、

私が残すものがこんなものであってはいけない、と思うようになったのです。

行動を起こさなければ、と。

 

職場の、古くさい「男性優位」方式と、

会社の収益への絶対的な献身(「個人よりも仕事優先」というお題目)の中で

長年、何とか成功しようとしてきた多くの女性は、

同じような結論に達するのではないでしょうか。

何かすばらしいこと、やりがいが感じられるようなことに挑戦することは、

仮にリスクがあったとしても、やってみる価値があると思うのです。

その他にも、女性が起業するようになった根底には、

テクノロジーと女性の経験が集約されたこと、と指摘するのは、ジーン・サリバンです。

ファッションやヘルスケア、医療の進歩やインターネットで買える商品など、

インターネットにはきわめて多くの産業が集約されています。

女性はインターネットを通して、膨大な知識をたくわえ、経験を積み、

才能を磨いてきました。

 

起業は一時的な流行なのか?

カウフマン・レポートによると、アメリカの経済的繁栄の鍵となるのは、

起業の飛躍的増大に女性が積極的に参加するかどうかである、とのことです。

 

けれども多くの女性たちにとって、起業への情熱は、

一過性のものではなく、永続的と本当に言えるのでしょうか?

 

私はこのことを、デボラ、ジェシカ、ジーンに聞いてみなければなりませんでした。

もし株式会社アメリカが、ふたたび大規模な雇用創出を実現し始めれば、

私たちの「起業熱」は、安定した給与の前に、色あせてしまうのでしょうか?

 

それに対する3人の共通する回答は、

女性と起業家精神が起こした経済変動は、一時的なものではない、というものでした。

 

デボラ・ジャクソン

これは少しずつ、絶えず形を変えながら続いていくでしょう。

起業家精神はつねにありましたが、今日のものは少しそれとは異なっており、

今後も進化を続けていくでしょう。

そうして、今後さらにアメリカ株式会社よりも自由なものとなっていくでしょう。

 

ジェシカ・イーブス・マシューズ

私はこれまで約10年にわたって、こうした変動の一翼に身を置いてきました。

ですから、これが一過性の流行ではないことを、自信を持って言うことができます。

文化や経済というものは、周期性があるものなので、

起業家精神に向ける注目が永久に続くとは言えません。

けれども、それが近い将来、終焉を迎えるものであるとは決して思いません。

そうして、その過程で、驚くべき変化やイノベーション、進展が、

かならず起こると思います。

 

ジーン・サリバン

起業家精神は、アメリカ経済、そうして地球規模の経済の成長にとって、

重要な推進力となるでしょう。

大学4年生やビジネススクールの卒業生たちに聞いてみてください。

その大半は、起業をすぐにでも、あるいは時期を見て始めたいと考えているはずです。

こうした才能ある起業家予備軍が、状況に変化をもたらしているのです。

 

女性起業家は、現在も、そうして今後も引き続き、アメリカのGDPを改善させていくでしょう。

これは単に、すばらしいトレンドいうのではなく、

誰の目にも明らかな経済的繁栄の指標なのです。

 

著者:ケリー・ヘイ (投資家・スピーカー)


 

元記事:http://bit.ly/1KBsVn8

(翻訳: 服部聡子)