トヨタに学べ!集客の応用テク「バーター」とは何か?

こんにちは、トイアンナです。「マーケティングとは何か」を簡単に説明するとき、私はよく「消費者の望みをかなえながら、売上と利益を伸ばす経営」と答えています。

経営には資金調達から社員の採用まで幅広い業務が含まれますが、その中でも「消費者・お客様」への施策を考える部分をマーケティングと呼んでいるのです。

そう考えると、あたかもマーケティングは消費者向けの広告を打つことだけが業務と思われがちです。しかしマーケティングの本質は「消費者のニーズに応えるためなら手段を問わない」柔軟さにこそ現れます。

「手段を問わない」というと物騒ですが、法的に問題のあることはいたしません。しかし「広告を量さえ打てば売れる」「何でもいいから有名人さえ起用すればいい」といったやり方は絶対に勧めないだけです。もしこういったマーケティングプランを提案されたら、「どこの芸能プロダクションから営業頼まれているんだろう?」と勘繰るくらいがちょうどよいでしょう。

そこで今回は、マーケティングでもやや奥の手として使われる「バーター取引」についてご案内します。

  • 物々交換はいまだに大きなインパクトを持つ

バーター取引とは「物々交換」です。会社を経営されている方なら、「〇〇をやってあげるから、代わりに口利きしてよ」なんて交渉をされたことがあるのではないでしょうか。これがバーター取引です。普段から社長さんが会社間の取引でなさっていることを、消費者のためにやるだけ。いたってシンプルな戦略です。

たとえば私は恋愛コラムを執筆しています。本来なら納品した原稿に対し代金をいただきますが「お金の代わりになるもの」で引き受けることもあります。たとえば「自社媒体で書籍を広告してもらう」といった便宜を図ってもらえるなら、原稿料の割引に応じることもあるでしょう。

このようにバーター取引は身近なものです。ほかにも例えば……

・ パンフレットのモデルさんへ謝礼の代わりに自社製品を無料プレゼント

・ 社員へレストランを無償利用させてくれたら、レストランの広告枠を提供

といったものです。

バーター取引は一見、マーケティングと関係ないものに見えます。しかし最終的に消費者へ届く広告枠を手に入れたり、モデルさんなどインフルエンサーを経由した消費者への告知チャンスを得たり……。最終的に消費者のメリットへつながる便宜を図るなら、バーター取引も立派なマーケティング活動です。

ビットコイン、電子マネー決済と近年はお金をオンラインでやりとりするのが当たり前になりました。難しいお取引も「お金で解決」するのが現代なら一般的です。しかし昔ならではのやり方であるバーター取引も、最新の戦略の中で脈々と息づいているのです。

  • Uber(ウーバー)でタクシーの世界は変わった

このバーター取引で、近年成功例がありました。トヨタです。まず、現在のタクシー業界について俯瞰してみましょう。アメリカで2009年、Uber(ウーバー)というタクシーアプリが生まれました。Uberを使えば、携帯電話からタクシーを呼び出すことができます。

それだけなら普通のタクシー会社と変わりませんが、Uberは自家用車を持て余している学生や、副業を求めていた一般人を「運転手」として採用。アプリ同士で「乗せたい人」と「タクシーを探す人」をマッチングさせたのです。これまで「タクシー運転手」として守られていた職業の垣根がなくなります。Uberによって普通の人が空き時間で他人を乗せて運び、お金をやりとりできるようになりました。

しかもUberは携帯で行き先を指定し、事前決済する画期的なシステムを導入。口頭で行き先を支持することによるミスや、思ったより高い金額を取られることもないのです。Uberの革命によって、一般顧客にとってタクシー事情は大変便利になりました。

  • トヨタのプリウス戦略に学ぶバーター取引

この「タクシー革命」を、静観するだけでは終わらせない会社がありました。トヨタです。トヨタは先手を打って、Uberとの提携を発表しました。具体的には、Uberで運転手をやりたいが、車を持っていない人向けにトヨタが格安で車両提供を実現したのです。

この提携はぱっと見ですと、バーター取引が発生していないように見えます。なぜトヨタはこんなキャンペーンを考えたのでしょうか?

それはトヨタが「プリウスに試乗してもらう」という目的を果たしたかったからでしょう。

通常、車の販促には試乗会を準備します。しかし車がよほど欲しい人でなければ試乗会にはやってきません。ところがUberでプリウスを使ってもらえるなら、一般顧客にもプリウスを「試乗」してもらえるのです。トヨタは格安でUberの運転手へ車を提供するかわりに、無料試乗会を街中で実現させました。この戦略はすぐれたバーター取引の例と言えるでしょう。

トヨタは、Uberを「競合になりうる会社だから」「自社の脅威だから」とはねのけることもできました。しかし消費者のトレンドを優先し、思い切った提携を実現しました。これこそ、マーケティング戦略の英断と言えるでしょう。

 

 


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com