本:『はみだし者の経済学』
The Misfit Economy: Lessons in Creativity from Pirates, Hackers, Gangsters and Other Informal Entrepreneurs
「はみ出し者の経済学:海賊、ハッカー、ギャング、闇起業家に学ぶ創造力のレッスン」
著者:アレクサ・クレイ、カイラ・メイヤ・フィリップス
創造力、イノベーション、セールスマンとしての能力、起業家精神は、
どこから学ぶべきなのでしょうか?
本書の著者たちは、驚くようなところから学ぶことができる、と言います。
海賊や密造者、偽造者、詐欺師など、
いわゆる「社会の裏街道」に生きる人々から学べるのだ、と。
世界でもっとも偉大なイノベーターというと、誰を思い浮かべますか?
おそらくスティーブ・ジョブズやトマス・エジソン、
ヘンリー・フォードなどの名前が上がってくるでしょう。
たいていの場合、そうしたものです。
ところが、本書は彼らを取り上げることはありません。
この本が光を当てるのは、誰も聞いたことのないような人々なのです。
それでも読み進むうちに、彼らもジョブズやエジソンやフォードと同様に、
イノベーションをおこない、起業家であり、
新しい世界を夢見るビジョナリストでもあったことがわかってきます。
彼らが活動したのは、人でごった返すシェンチェンのストリートや、
ソマリアの刑務所、洪水で水浸しになったタイの沿岸の街でした。
海賊であったり、コンピューターのハッカーだったり、いたずら者だったり、
元ギャングのリーダーだったりしました。
そんな彼らが世界を股にかけ、暗黒街や裏社会の経済の中で、イノベーションを成し遂げ、
無数の難題を解決していったのです。
こうしたイノベーターたちの実体は、
社会と経済の安定に脅威をもたらす「異端の起業家」像とはほど遠く、
彼らが示した意想外の独創性や、パイオニアならではの方法と実践は、
私たちがおおいに学び、正式な市場においても適用しうるものです。
『はみ出し者の経済学』は、既成の経済の枠からはみ出したところで経済を築き上げた、
非公式なイノベーションの物語です。
隠れた天才たちの姿を検証しながら、問いかけていきます。
未来を見通した、知られざる人々とは、いったい誰なのか?
彼らはどのような働きをしたのか?
彼らはどのように自分たちの組織を創りあげていったのか?
彼らは自分たちのイノベーションの、どのような触媒となっていったのか?
そうして最後に、あなたは、あなた自身の世界に対して、
ここで得た教訓を、どのように活かしていくのでしょうか?
(翻訳:服部聡子)