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ガイ・カワサキから高校を卒業する君たちへ

1995年6月、ガイ・カワサキがパロ・アルト高校で行った卒業式訓辞

元記事:http://linkd.in/1EHShcG
(※この記事の翻訳は著者からの承諾を得てあります)
 
今日、ここでみなさんにお話できるのは、私の人生にとって画期的な出来事です。
 
私は40歳です。
22年前、私はみなさんの席にいて、自分が40歳になる日など、決して、絶対に来るはずがない、と信じていました。
あなたがたを前にスピーチするということの意味を思うと、私は少し怖ろしくなります。
 
ひとつには、私の卒業式で40のおっさんが話すのを聞きながら、こんなやつ絶対に信用するもんか、と思っていたからです。
私は、みなさんが危惧しているような、退屈なスピーチをするつもりはありません。
このスピーチは、短くて楽しい、退屈ではないものにしたいと思っています。
 
私は今日、大人になってから過去を振り返り、初めて理解できたことの話をしようと思います。
いわゆる後から出て来た知恵、みなさんがいるその席から、こちら側にくるまで、
私が20年間にわたって蓄積してきた知恵のことです。
 
やみくもに私の話を信じてはいけません。
私が「真実」だということを、そのまま受け取らないでください。
ただ、よく聞いてください。
たぶん私の経験が、少しは役に立つこともあると思いますから。
 
ここではデイビッド・レターマンの『レイト・ショー』にならって、
トップ・テン・リストの形式でお送りしましょう。
ええ、40才の老人でも、まだ11時過ぎまで起きていられるんです。

第10位: できるだけ親のすねをかじってください

2年前、ここで私が卒業式のスピーチをおこなったとき、これが一番人気のある後知恵でした。
もっとも、親御さんの見方はちがいましたが。
ともかく、そのことで私は自分が間違っていないことを知ったのです。
 
私は高校、大学を通じて、まじめな東洋人でした。
カレッジレベルの授業を受け、単位を履修して、3年半でしゃにむに大学を終えました。
旅行もしなかったし、休みも取りませんでした。
というのも、そんなことをしていると、仕事の準備ができないじゃないか、
卒業が遅れてしまうじゃないか、と思っていたからです。
 
正直に言いましょう。
私はせっかくのチャンスをふいにしてしまいました。
みなさんは、残りの一生を働いて過ごさなければならないのです。
ですから、スタートを焦ってはいけません。
大学教育は、長引かせなさい。
今は、人生を胸いっぱいに吸いこむ時間です。
住宅ローンや車のローン、子供の教育費を抱える前に。
 
外国旅行をするために、一学期そっくり使ってください。
就職やインターンシップにお金なんか使わないでください。
ご両親の小金(もしかしたら大金かもしれませんが)を使いながら、
自分が夢中になれるものを探求してください。
 
大学の在籍期間は、少なくとも6年までは延長することができます。
職場に入り、君たちよりもものを知らないくせに、お金だけはたくさん稼いでいるような連中の
奴隷になって働く期間は、可能な限り遅らせましょう。
加えて、子供を養う楽しみを、ご両親から奪ってしまうべきではありません。
 
Absaroka-Beartooth Wilderness, Goose Lake

第9位 幸せではなく、喜びを追求してください

きっとこれが、一番むずかしいレッスンになると思います。
おそらく君たちは、人生のゴールが「幸せになること」だと思っているでしょう。
犠牲を払いながら、一生懸命勉強して、仕事したとします。
けれども、そこで得られる幸せは、概して予測通りのものです。
 
いい家、いい車。すてきな物。
嘘だと思わないで聞いてほしいんですが、幸福なんてものは、ほんの一瞬の、はかないものです。
 
それに対して喜びは、予測できません。
喜びは、興味のあることを夢中になって追求しているときに訪れますが、
これは幸福のように、目に見える結果となって現れるものではありません。
 
幸福ではなく、喜びを追求する。
このことは、これから先、数年間は、つぎの言葉に翻訳できるでしょう。
 
自分が心から好きなことを勉強する、ということです。
これも保護者の方には人気のないものなんですが。
 
私の大学時代は、言わば「マーケティング主導型」でなされました。
あとひとつ、東洋的な事情です。
私はもっとも就職のチャンスがありそうなところをねらい、それに向けて準備をしたのです。
 
まったく愚かなことでした。
世の中で生計を立てるには、実にたくさんの方法があるし、
「正しい」コースを選択するかどうかなど、どうでもいいことなのです。
当初のマッキントッシュ・チームに、古典的な「コンピューター・サイエンス」の学位を
持った人はいなかったはずです。
 
保護者の方々は、地域での責任がおありだと思います。
でも、お子さんには、どうか自分の跡を継がせよう、自分の夢を叶えさせよう、とはなさらないでください。
私の父は、ハワイ州の上院議員でした。
父の夢は、弁護士になることでしたが、高校までの教育しか受けることはできませんでした。
そこで私を弁護士にしたがったのです。
 
父のために、私はロー・スクールに進みました。
そうして自分のために、そこを2週間で止めました。
これによって、自分が本来持っていた知性がどのようなものだったか、
はっきりと実証したのだと思っています。

第8位 既知のものを疑い 未知のものを受け入れよう

君たちが人生で犯しやすい最大のまちがいは、知っていることを受け入れ、知らないものに抵抗することです。
ほんとうは、そのまったく逆でなければなりません。
つまり、よく知られていることに疑問を抱き、未知のことは受け入れるのです。
 
氷についての短い話をひとつしましょう。
1800年代、氷産業は北東部で栄えた産業でした。
いくつもの会社が、凍った湖や池から氷のかたまりを切り出し、世界中に売っていたのです。
一度で最大、200トンの氷が船積みされ、インドに向かいました。
溶けずにそこに着いたのは、100トンでしたが、それでも十分な利益をあげたのです。
 
けれども氷産業は、氷を製造する機械を発明した会社に敗北しました。
いつでも、どこでも氷を作ることができる会社の出現によって、もはや氷を切り出し、船で運ぶ必要がなくなったからです。
 
ところが製氷メーカーも、冷蔵庫会社にビジネスを追われることになりました。
製氷工場で氷を作ることにくらべて、自宅で冷凍保存することがどれほど便利か、想像してみてください。
 
君たちは、氷の切り出し業者たちは、製氷業者の強みを目の当たりにして、彼らの技術を取り入れようとした、と思うでしょう?
けれども、彼らが実際に考えることができたのは、すでに知っていたことばかりでした。
もっとよく切れるノコギリ、もっといい倉庫、もっといい輸送機関。
 
つぎの製氷業者たちも、冷蔵庫の利点を見て、そのテクノロジーを取り入れたと思うでしょう?
でも、実際には、氷の切り出し業者も製氷業者も、知らないことを受け入れることができず、
自分たちの成長カーブから、つぎの成長カーブへと、ジャンプすることができなかったのです。
 
すでに知っていることを疑い、知らないことを受け入れてください。
そうしなければ、君たちも、氷の切り出し業者や、製氷業者と同じことになります。
 
Filling the Ice House

第7位 外国語を学び 楽器を演奏し ノンコンタクト・スポーツをしよう

外国語を学んでください。
私は高校でラテン語を学びました。
そうすれば、ボキャブラリを増やすことができるだろうと考えたからです。
実際、そうなりました。
 
けれども、今日ではラテン語を使って会話しようにも、バチカンを除けば困難をきわめます。
それに、私があんなに苦労したにもかかわらず、ローマ教皇は私にアドバイスを求める電話をしてくれません。
 
それから、楽器を弾けるようになってください。
今日、私と音楽の唯一のつながりは、私がガイ・ロンバードにちなんで名づけられたということだけです。
それで良かったことといえば、たったひとつ、ガイのお兄さん、カーメンにちなんで名づけられなかった、ということだけ。
今思えば、楽器を演奏できていれば、一生、音楽と一緒にいられたのです。
その代わりに私はタワーレコードでCDを買わなくてはなりません。
 
私はフットボールをやっていました。
フットボールが大好きでした。
フットボールはマッチョなスポーツです。
しかも私はインサイド・ラインバッカーで、
ほぼまちがいなく、マッチョなスポーツの中でも、もっともマッチョなポジションでした。
 
けれども、君たちはバスケットボールや、テニスなどの、ノンコンタクト・スポーツもやっておかなければなりません。
つまり、盛りを過ぎても楽しめるスポーツです。
40歳になって、22人の男を集めて、スタジアムでフットボールをすることは、
ラテン語で会話するのと同じくらい、むずかしいことです。
けれどもかわいらしい、白いテニスウェアを着た人なら、今でもテニスを楽しむことができるのです。
おまけにマッチョなフットボール選手たちはみんな、
今ではすわってぼーっとテレビを見ながら、ビールを飲んでいるのですから。
USC vs. UCLA Football 2012

第6位 勉強を続けよう

学ぶことはプロセスであって、一回限りのイベントではありません。
私は、学位を取ったとき、これで自分の勉強は終わった、と思いました。
けれども、これは真実ではありません。
 
勉強をやめてはいけません。
事実、いったん学校を出てしまうと、勉強はむしろ簡単になってくるのです。
というのも、どうして学ぶ必要があるのか、関連性が見えやすくなってくるからです。
 
君たちは今、組織化された専用の環境で学んでいます。
ご両親のお金を使って。
でも、学校と学ぶことを混同しないでください。
学校へ行っても、ひとつも学ばないことがあります。
逆に、学校へ行かなくても、おそろしくたくさんのことを学ぶこともできるのです。

第5位 自分を好きになることを学ぶ あるいは自分が好きになれるまで 自分を変える

私はドラッグの常用者だった過去を持つ、40歳の女性を知っています。
彼女には3人の子供がいます。
彼女がドラッグを常用するようになったきっかけは、高校でマリファナを吸ったことでした。
 
私は別に君たちに、ドラッグをするなとお説教するつもりではありません。
実は、私も高校でマリファナを吸ったことがあるんです。
ビル・クリントンとはちがって、私は吸いこみました。
もうひとつ、ビル・クリントンとはちがって、その煙を吐き出しもしました。
 
この女性が私に語ったところによると、
彼女はしらふのときの自分が大嫌いだったせいで、ドラッグを始めたのだそうです。
ドラッグが好きだったわけではなかったのだけれど、あまりに自分が嫌いだったのです。
彼女はドラッグが解決策になると考えたのであって、ドラッグが原因ではありませんでした。
 
自分の人生が下降スパイラルをたどっていることに気がつき、初めて彼女は人生を変えようとしたのです。
自分の問題を解決してください。
自分の人生を整えてください。
そうすれば、ドラッグなど必要ありません。
ドラッグは解決策でもなければ、ドラッグが問題でもないのです。
 
率直に言わせてもらうと、喫煙、ドラッグ、アルコール、あと、IBMのパソコンを使うことは、愚かさの証しです。
この点に関する反論は受け付けません。
 
childish melancholy

第4位 あまり早く結婚しない

私は32歳で結婚しました。
ちょうどいい年齢だったと思います。
君たちもその年ごろになるまでは、自分がいったい何者なのか、おそらくわからないでしょう。
そうして、自分が誰と結婚しようとしているのかも、わかっていないはずです。
 
遅すぎる結婚をした人を、私は知りません。
早すぎる結婚をした人は、大勢知っています。
どうしても結婚するんだ、と決めたなら、
彼もしくは彼女が今、何をしていたとしても、相手をそのまま受け入れる必要がある、
ということを、心に留めておいてください。

第3位 勝つために勝負し 勝負するために勝つ

勝つために勝負することは、君たちにできるもっともすばらしいことのひとつです。
それによって、君たちは潜在能力を開花させることができます。
さらに、君たちがほかの人のために、世界をよりよくすることができるし、
より便利なものにすることができる、より高い展望を切り開くこともできるのです。
 
もし負けてしまったらどうでしょう?
負けるときは、かならず何か立派なことに挑戦してください。
プリンストン大学経済学部教授、アビナッシュ・ディキシットと
イェール大学スクール・オブ・マネジメント教授バリー・ネイルバフはこのように言っています。
 
「失敗することになるとしたら、困難な任務で失敗した方がいい。
失敗は、将来、あなたに対する期待値のグレードを下げることになるだろうから。
失敗が致命的になるかどうかは、あなたが何をやろうとしているかにかかっている」
 
単純に言うと、勝つことは君たちと、君たちの競争相手を向上させるための手段であって、目的ではありません。
 
さらに、勝つことは、もう一度、勝負するための手段でもあります。
試されることのない人生は、生きるに値しませんが、空疎な人生は試す必要もありません。
勝利によってもたらされたお金や力、満足や自尊心は、浪費されるべきものではないのです。
 
勝つために勝負することのほかに、君たちには第2の、もっと重要な義務があります。
もう一度、自分の魂がより深く、幅広く、高くまでたどりつけるように、勝負することです。
結局のところ、君たちの最大の競争相手は、自分自身なのですから。
 
11-05 Bsktbll - Chaos vs Rivals 97

第2位 絶対性に従う

勝つために勝負することは、汚い勝負をしてもいいということではありません。
歳を取ればとるほど、ものごとは絶対的なものから、相対的なものに変わっていきます。
君たちが幼かった頃、嘘をつくこと、だますこと、盗むことは、絶対に悪いことでした。
 
君たちが歳を取るにしたがって、とりわけ仕事をするようになれば、
「システム」に取り込まれて、相対的な言葉でものごとを考えるようになるでしょう。
「自分はよりたくさん金をもうけた」
「自分はもっといい車を持っている」
「自分は休暇でもっといいところへ行った」
 
悪いことに関しても、「自分はパートナーほどひどく税金をごまかしていない」
「ほんの2,3杯飲んだだけだ、コカインはやっていない」
「自分は所要経費をほかの人ほど水増ししていない」
 
これはまったくの誤りです。
できるだけ、絶対性を守り、それに従ってください。
嘘は絶対つかない、絶対ごまかさない、絶対盗まない。
誰が嘘をつき、どのようにごまかし、何を盗んだかなどは覚えておく必要はまったくないのです。
絶対に、絶対的な善と悪は存在するのです。

第1位 家族や友だちがいなくなってしまう前に 一緒に楽しもう

これは何よりも大切な後知恵です。
多くの説明は必要ないでしょう。
ただ、繰りかえすだけです。
 
家族や友だちがいなくなってしまう前に、一緒に楽しんでください。
 
ひとたび彼らがいなくなってしまえば、お金も、権力も、名声も、代わりにはなりませんし、
呼び戻すこともできません。
 
私たちに最高の喜びをもたらしてくれたのは、私たちの赤ちゃんでした。
今度は君たちの人生で、子供たちが最高の喜びをもたらしてくれることでしょう。
とりわけ、子供たちが4年間で大学を卒業してくれたなら。
 
Family Portraits
 
それからもうひとつ、君たちには特別な後知恵を授けることにします。
おそらく君たちのご両親は、今日私のために数千ドル払ってくださったでしょうから。
ただ、これは私も認めるのがいやなんですが。
 
歳を取るに従って、君たちも親が言うことは正しかったとわかるようになります。
 
ますますそんな場面は増え、最後には、君たち自身が君たちの親となるのです。
私には、いつか君たち全員が「ああ、ほんとうにその通りだった」と言う日が来ることがわかります。
私が言ったことを、よく覚えておいてください。
 

 


元記事:http://linkd.in/1EHShcG

(翻訳:服部聡子)