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売上に繋がるエクイティの育て方

こんにちは、トイアンナです。
飲み会の席で「可愛い子、紹介してよ」と言われたことはありませんか?
実はこの一言に、あなたの仕事で売上を爆発的に伸ばすメカニズムが詰まっています。

恋愛で、あなたの心がぐっと動く好みのタイプ。
たとえば「顔が石原さ○み」かもしれませんし「ぐいぐいデートで引っ張ってくれる」かもしれません。
こういう心を動かす便益のことを、ビジネス用語では
「ブランド・エクイティ」と呼ぶことを、前回の記事でお伝えしました。

今回はここからさらに踏み込んで、お客様の心にぐっと来るブランド・エクイティの作り方を
恋愛でたとえつつお伝えできればと思います。

可愛い子、ってどんな子?

ある飲み会で、あなたが冗談混じりに「ちょっと可愛い子、紹介してよ」と友達へ相談したとします。
律儀なあなたの友人は、1週間後に「紹介したい子がいるんだけど、ご飯会でもセッティングしようか?」と連絡してくれました。

あなた「いいね!で、具体的にどういう子?」
お友達「顔は可愛くて、趣味は料理って言ってたかな。
この前肉じゃがを作ってくれたけど美味しかったよ。
仕事は医療事務なんだけど、結構やりがいもあってがんばってるって言ってた。
穏やかな性格で、あんまり怒ったり泣いたりしてるのは見たことないかな……
ただ、男関係は結構ガードが固くて、清純派って言われてる子だよ」

あなたはここまで聞いて「すごくいいじゃん! ぜひ紹介してよ!」とお願いするかもしれません。

しかしここで1つだけ質問させてください。
3日後に、「今度、お友達から紹介される子はどんな子でしたか?」と質問されたらあなたは答えられますか?

料理上手、温厚な性格、可愛い顔……それぞれ素晴らしい特徴ですが、あまりに情報が多すぎて、覚えられないのではないでしょうか。

1つの気になるフレーズは覚えやすい>

逆に、お友達からこんな情報を言われたらいかがでしょうか。

あなた「で、具体的にどういう子?」
お友達「とにかくガンダムがめちゃくちゃ好きな子でさ。お前ときっと気が合うと思って」

1つしか紹介される子の情報はないのに「自分に合うか・合わないか」が一瞬で判るのではないでしょうか。
そしてきっと3日たっても、あなたは今度紹介される子が「ガンダムが好きな子」として覚えられるのではないでしょうか?

これは商品やサービスを売る上でも、同じです。
「私の治療院は渋谷駅から近く、全員国家資格を持っているプロのマッサージ師が対応します。事前アンケートで体質をチェックしてから施術を行いますので、短期間で効果を実感できます。さらにアジアンリゾート風の内装で高級感を味わいながらリラックス。料金は60分で3,500円とお得です!」

と書くよりも「高級リゾートでリラックス」と一言で説明されたほうが、心に残るのです。
経営をしているとどうしても製品やサービスの良さを伝えたいあまりに、たくさんのことを伝えたくなってしまいます。

しかし実は「1つだけのフレーズ」を思い切ってブランド・エクイティに選んだほうが、大人数の心に届くのです。

いいフレーズは「顧客でない人を排除する」

もうひとつ、いいブランド・エクイティが持っている条件があります。
それは「顧客でない人を排除する」点です。

たとえば冒頭の「可愛い子、紹介してよ」の答えとして出てきた「とにかくガンダムが好きな子」という紹介は、ガンダムが好きな男性には刺さりますが、アニメに興味がない男性からすれば「別にどうでもいい」条件です。

このように「あるターゲットの心を強く動かす」ブランド・エクイティは、逆に全く心が動かない層も作ります。
「高級リゾートでリラックス」できるマッサージ治療院の例でも、価格さえ安ければいいと考えている顧客や、余計な設備を好まない顧客は始めからお店に呼び寄せない効果があります。

「多くの人に来てもらうのが一番なんだから、ブランド・エクイティでお客様を排除しちゃダメじゃないか」と思われるかもしれませんが、この世に誰からも好かれる製品はありません。
世界中で老若男女問わず売れているコーラやマクドナルドでさえも、苦手な人がいます。

誰からも好かれる製品を作ろうとして無個性なアピールをしてしまうくらいなら、特定の人に愛されたほうが、売上は長持ちします。
「いくら出してもあなたの製品を買いたい」と言ってくれる人がどれほど見つけられるかは、ブランド・エクイティにかかっているのです。

まとめると、よいブランド・エクイティは「バチっと決まる1つのフレーズがある」特徴があります。
自社製品のブランド・エクイティを考えてみるときはぜひ1つのフレーズで、あなたの製品の良さを考えてみてください。

次回は、他社との差別化をブランド・エクイティで見せる方法について書いてゆきます。

関連記事:美容室をヒットさせるにはイケメンを雇え!? 成功する企業が持つ「ブランド・エクイティ」の秘密

 

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トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

美容室をヒットさせるにはイケメンを雇え!?

成功する企業が持つ「ブランド・エクイティ」の秘密

こんにちは、トイアンナです。
今回はブランド・エクイティという技術を、美容院業界の例を使ってお伝えしたいと思いますが、
まずはヒットする美容院の秘密をご存知でしょうか?

バラの花をイメージしたゴージャスな内装が特徴の美容院チェーンAは、1990年代後半に創業。
10年間で200店舗を展開する大企業へと成長しました。
その魅力はたとえば下記のようなものです。

・ 化粧品売り場をイメージし、足を踏み入れるだけで美しくなれる気がする内装
・ 個室でヘアカットを受けられるプレミアムブースの設置
・美容師をランク分けし、料金設定を変えることで経歴が長い美容師を「ブランド」に

実はA社が伸びた時期、美容室市場は成長しないと言われていました
髪を切る人口は減っていく中で、割引キャンペーンで利益を削ってでも他店からお客さんを引き剥がすビジネスが一般的。
そんな中で、どうやってA社は爆発的に伸びたのでしょうか?

その答えがマーケティングの秘密こと「ブランド・エクイティ」です。

ブランド・エクイティとは?

ブランド・エクイティとは簡単に言えば「商品に対して感じる価値」のことです。
さらに簡単に言えば「ぶっちゃけ、この商品なにしてくれるの?」とお客様がスタッフに質問したときに、スタッフがお答えする内容のこと。
たとえばヤマト運輸のエクイティは「商品を安全に、明日届けてくれる」ことですし、
iPhoneのエクイティは「持っているとオシャレな人に思われる」ことです。

ここで大切なのは「ブランド・エクイティ」が機能的価値ではなく、感情的な価値であることです。
iPhoneは確かにハイテクな携帯電話で、テレビ電話からインターネット接続、写真撮影もできます。
しかしiPhoneの根源的な価値はそこではありません。
なんとなくオシャレで、最先端な「感じがする」ので持っているだけで自分がカッコ良くなれる気がする。
これがiPhoneのブランド・エクイティです。
iPhoneはインターネットに携帯から接続できるからではなく「持っているとオシャレな人に思われる」から売れたのです。

ブランド・エクイティがある、つまり商品にお客さんが「心で感じる価値」があると商品は売れます。
逆にどんなに素晴らしい機能があっても、
お客さんが「心で価値を感じられない」なら商品は売れません。

冒頭で挙げた美容室A社は「豪華な場所で髪を切ると、自分もゴージャスになった気持ちになれる」
という強いブランド・エクイティを用意しました。
そして「豪華な場所で髪を切ると、自分もゴージャスになった気持ちになれる」というブランド・エクイティを強めるために個室のプレミアムブースや、ランク分けしたトップ美容師を作ったのです。

ブランド・エクイティを設計し、その設計に沿った施策ができる商品やサービスには必ずファンができるのです。

ブランド・エクイティの例

もっと分かりやすくするために、美容室のブランド・エクイティの例をいくつかご提案してみます。

ブランド・エクイティの例1)
「イケメンに愛されてお姫様みたいな気持ちになれる美容室」

ブランド・エクイティを活かす戦略
・イケメン度でネット投票をしてもらい、イケメン順で価格を変える
・お客様のことを「姫様」と呼ぶ
・オプション料金で壁ドンをしながらブローするサービスを導入

ブランド・エクイティの例2)
「肌トラブルがある人が安心して通うことができる美容室」

ブランド・エクイティを活かす戦略
・トラブル別のヘアシャンプーを選べる診断チャートを用意
・肌が痛まないカラーやパーマ剤のみ採用
・肌に優しい化粧品ブランドと提携してサンプル配布

ここで大切なのは他社と差別化できる「ブランド・エクイティ」が作れたら、必ずエクイティに沿った戦略を練ることです。

たとえば「肌トラブルがある人が安心して通うことができる美容室」で、グラデーションがキレイに出るけれども髪が痛む液剤を売りにすると、お客様は「肌に優しいのに、肌に優しくないの……?」とちぐはぐな印象を抱いてしまいます。

ブランド・エクイティは「その商品が何をするか」と「その商品が何をしないか」を決めるものです。
やらないと決めたことは、手を出さない勇気をもつからこそお客様はあなたのサービスに違いを見出せるのです。

■ ブランド・エクイティの例

最後にブランド・エクイティとして正しい例と、正しくない例をいくつかご紹介します。

正しいブランド・エクイティ
○ 過払い請求でお客様が借金について「考える時間を減らせます」
○ 寝不足にならない、夜も「安心して」飲めるカフェイン無しのコーヒー

誤ったブランド・エクイティ
× 新機能で目覚まし時計の音色を365日変えられます
× パソコンが前よりふた回り、小さくなりました

正しいブランド・エクイティはお客様の「心で感じる価値」があることが伝わりましたでしょうか。
さあ、あなたの会社の製品のブランド・エクイティは何でしょう?
そしてあなたのお客様は、どんな感情をあなたの商品やサービスへ抱いていますか?
1度考えてみてください。
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トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
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